気をつけたい不正出血

10年前に乳癌の治療を受けた60歳のCさん。

その時の治療は、手術とホルモン療法を受けられました。最近茶色い不正出血が続いたので検査をしたら、子宮体癌ということがわかりました。

乳癌の手術後にはタモキシフェン(商品名:ノルバデックス)というホルモン剤が使用されることが多いのですが、これを服用すると子宮体癌になる危険率があがってしまうのです。

このタモキシフェンの作用は、女性ホルモンであるエストロゲンの働きを阻害します。エストロゲンは、乳ガン細胞の増殖を促しますので、タモキシフェンがエストロゲンに対抗することで、患側の乳癌細胞の増殖を抑制もしくは停止させたり、反対側の発生を防止する効果があると考えられてきました。

また、タモキシフェンは、閉経前の妊娠率を上げることも明らかになっています。不妊の治療として排卵を誘発する目的で、タモキシフェンを使用している国もあるようです。反対に、閉経前で妊娠を希望しない人は、避妊の処置をする必要があるということです。

この乳癌予防には良い「タモキシフェン」ですが、子宮体癌を招く可能性が大きいことは、近年になって分かってきたことで、医師から説明を受けていない人も多いようです。

乳癌でホルモン療法を受けた人は、その可能性が大きいこともあるために、年に1回の婦人科検診を必ず受診され、「過去にホルモン療法を受けたことがあることを告げること」、「不正出血がある場合はそのことも告げること」を行ってください。

なかなか婦人科検診にてその事実を医師に伝えない人が多いようですが、早期発見、早期治療のための正しい情報は必ず伝えるようにしてください。家族のためにも必要なことです。

無月経克服の次に

34歳のMさん。昨年の9月に生理が来てから4ヶ月無月経の状態。ご結婚2年目で「早くに子供を」と望んでおられた矢先の出来事でした。

早速病院に行き検査をした結果、「多嚢胞性卵巣症候群」という診断でした。今回4ヶ月も無月経だったのは、卵胞が未熟のために無排卵状態となった結果だったのです。

なかなか自力では排卵が起こらない、というので排卵誘発剤によるタイミング法をされていましたが、それでもなかなか恵まれず、「漢方薬の力を借りたい」と来店されたのは、今年の5月でした。

Mさんは、排卵誘発剤を使用してのタイミング法を続ける方針でしたので、漢方薬で改善したい時期は低温期で、低温期に「シベリア霊芝」や「桂枝茯苓丸」などを処方しました。漢方薬により質の良い卵ができることで、排卵後、高温期ができ、受精しなければ生理が来る、という段階を踏んでいくことになります。

漢方薬を服用されてから2周期目の7月にはまだ安定した月経周期ではありませんでしたが、3周期目の8月には、30日に安定し、質の良い卵ができるようになってきました。

そして10月末の排卵期。

やはり自力では難しいようで、内服薬の「クロミッド」を服用したけれどもそれでも排卵せず、結局HMG製剤「フェルティノーム」の注射後、HCGの注射をする「HMG-HCG療法」を行われました。これは強力な排卵誘発法になります。あまり何度も繰り返し行われることは副作用のことのあり、おススメできませんが、今回はとても質の良い卵胞が育ったということで、Mさんたってのご希望でした。

しかし、その結果、昨日に「陽性反応」の報告を受けました!

無月経克服より約半年。次の嬉しいステップに進むことができました。

まだまだ安心はできませんが、また次の嬉しいステップを踏めるようにMさんと共に時を刻んで行きます。

子育てはゆっくりと

全国の児童相談所に、毎日様々な相談が寄せられます。

その中でも、昨年度に受けた「児童虐待に対する相談」は、33,408件。一昨年度よりも25%強増加したことが、集計結果にて明らかになりました。

虐待の種類別の統計は、「身体的虐待」が14,881件(44.5%)、「保護の怠慢・拒否」が12,263件(36.7%)、「心理的虐待」が5,216件(15.6%)、「性的虐待」が1,048件(3.1%)でした。

我が子といえども親のものではありません。思い通りに行かないことはたくさんあるものです。それが思わず「虐待」に繋がってしまうのでしょうか。

47歳のKさんが、「子育て」について次のように書かれています。

「子育てを通して痛感したのは、上を見たらキリがないということ。

自分の子供に対して『もっとこうしよう』『もっとこうなったらいいのに』と期待すればするほど、際限がなく、できないと感じるたびに落ち込んでしまう。

『これくらいでいい』『これだけできるのだから上出来』と、我が子に接してあげることが大切。他人と比べすぎないことが大事だ。」と。

あまりにも他人と比べすぎて本当の「我が子の良さ」を見落とし、我が子が目指していない方向へ無理に導こうとする結果、子供が反抗し、思い通りに行かないために「思わず手が出る」ということになるのかもしれません。

不器用だけれどもその子なりに目指そうとしているものが何なのか、をゆっくり見つめてあげることが大切です。きっと我が子の「良さ」が光っているはずです。

悪阻(つわり)解消法

人によって様々な症状が現れる「悪阻(つわり)」。

安定期に入るまでの時期に酷い人が多いようですが、安定期を過ぎてもまだその症状が出ている人も居ます。

通常であれば「気持ち悪い症状」は、その原因を除去すれば良いのですが、「悪阻」の場合は、その原因が「お腹の中に赤ちゃんが居ること」なものですから、その原因を除去するわけにもいきません。

こんなとき、漢方では上焦(じょうしょう)を治す生薬である「黄芩」の煎じ液を服用してもらいます。少々苦いですが、その煎じ液を少しずつ何回にも分けて服用してもらうことにより、「吐き気」や「むかつき」を和らげてくれます。

また、その「黄芩」に加えて、「むかつき」を解消してくれるツボを刺激することで、さらに悪阻を和らげてくれます。

そのツボは、「内関(ないかん)」です。

心包経(しんぽうけい)という経絡に属するツボで、みぞおち部分のつまりを取り除いてすっきりさせる働きがあります。

(前回の「チャングムの誓い」では、毒のある実を食べて失神していた女の子のこのツボに鍼を刺して、毒素を吐かせていました。そのツボです!同じツボでも刺激方法により、吐かないようにさせたり、吐くようにさせたりするのです。)

ただし、まだ安定期に入らない不安定な時期のときは、あまりこのツボを刺激しすぎない方が良いです。その代わりに、みぞおち部分を「みぞおちから外に向かって」やさしくマッサージするのが良いです。

もし、鍼灸院が近くにあれば、その部分に接触鍼か金鍼を当てる(接触させるか当てるだけで、刺しません!)施術をしてもらうことをオススメします。

妊娠することは喜びですが、悪阻は辛いですよね。是非、「黄芩」と「ツボ刺激」にて乗り切ってください。

うれしい知らせ

昨日はお2人の妊娠が判明しました。

1人の方は35歳のSさん。周期療法を始められて6ヶ月後に妊娠されたのですが、心音が聞こえないままに9週目に掻爬されました。それから後は少し気分もゆったりとして、体調を維持する程度に漢方を継続されて8ヶ月目になります。

前回のこともありますので、病院からは黄体ホルモン剤と血栓の予防薬を処方されました。漢方では<婦宝当帰膠>をベースにし、流産防止に<補気剤>を少量使っていただきました。

もう1人の方は30歳のHさん。5歳の子供さんがおられ2人目をめざすものの、その後2度流産を繰り返したため漢方を使い始めることになりました。体調を整えられ、スムースに妊娠されましたが体温から判断すると要注意。

<補気剤>に加え、流産防止のための漢方薬を使うことにしました。

偶然ですが、同様の経過の方が同日に妊娠判明するとは驚きであるとともに、とてもうれしい日でした。 (記:古村 学)

排卵誘発剤の新たな治療法

通常の「排卵誘発剤」は、副作用を伴います。

一度に多数の小さな未成熟な卵子ができてしまう「多嚢胞性卵巣症候群」の人には排卵誘発剤が有効なのですが、一方で卵巣が腫れ、腹水や胸水が溜まる「卵巣過剰刺激症候群」と呼ぶ副作用が現れやすくなります。

その「副作用」が起きない「排卵誘発剤となる薬」に着目し、成果をあげているクリニックがあります。

「排卵誘発剤となる薬」とは、乳がんの再発防止などに使用する治療薬である「レトロゾール」です。

この薬に排卵を促す作用と関連があることに着目し、それを実際に不妊治療を受けている患者に服用してもらった結果、副作用は見られず、正常な排卵を促すことができ、約6割の患者が妊娠できたという結果が出ています。

さらに、従来の「排卵誘発剤」は費用が5万円ほどかかるうえに、注射であるために通院しないとなりませんが、「レトロゾール」による新治療は、費用も5千円程度で、錠剤のためにどこでも服用できるといった、患者側にも負担が少ないものとなっています。

この成果は、今月16日に開催された日本不妊学会にて発表されたようですが、これによりもっと研究が進み、「副作用のない」「安全」で「安価」な不妊治療法が、多くのクリニックで行われるように期待したいものです。

キバナオウギ

先週土曜日の「チャングムの誓い」で、万能薬として紹介されていた生薬の「キバナオウギ」。そのドラマの中では、なかなか栽培するのが難しく、明の国より高い値で買っているとされていました。

この「黄耆(オウギ)」は、その昔の薬の本である「神農本草経」の中でも「上品(良い薬という意味)」として扱われ、「表虚」の症状のときに「体表の気」を補う薬として記されています。

「裏虚」の症状のときに「五臓の気」を補う薬である「人参」とともに、「黄耆」を使うことで「補益作用」が増強され、元気をつける代表的な補気薬のひとつとして重宝されていました。

不妊治療の中でも、「低温期が安定しない」、「高温期が続かない」、「高温期が安定していない」などの少々身体の力不足の人には、この「黄耆」の入った漢方薬が使われます。

また、産後の「疲れ」による「貧血」や「腰痛」などにもこの「黄耆」の入ったお薬が使用されます。

昔も今も人間の生活スタイルは変わっても、人間にとって大切な「薬」は変わっていないのですね。

流産3ヵ月後

41歳のKさん。漢方服用3週期目、鍼灸治療2週期目の7月初めに妊娠がわかり、安胎のお薬を服用されていました。妊娠されてからは、鍼灸治療には来られませんでしたので、自宅でできる安胎のお灸をしてもらうように、指導していました。

ただKさんは、妊娠された時もどちらかと言うと、「弱い脈」をしていて気になっていましたので、本当は鍼灸治療も続けてもらいたかったのですが、なかなか都合がつかなかったようです。

本来は、妊娠の時にでる「滑脈」は、ザワザワとしていて、大きくはないのですが、しっかりと手に触れる脈なのです。それがKさんの場合は、ザワザワしているのですが、力のない弱い脈でした。

Kさんは、その後も週に3~4日のパートを続けておられました。

8月に入ったある日のこと。

仕事中に突然出血!

すぐに病院へ行かれましたが、結局流産という結果となりました。

それからKさんは、ショックから立ち直れずに、毎日涙して過ごしておられたようです。

8月初めにお薬を購入されてから、パタッとKさんからの連絡が途絶えていましたので、その経過を伺ったのは、3ヶ月経った今日でした。

「便りのないのは良い知らせ」とばかり思っていた私達にとっても、その報告はかなりショックでした。

しかし、3ヶ月経ち、まだ少し心の傷は癒えていないけれども「また頑張ります!」とおっしゃったKさんのお顔を見て、また私達も共に頑張ろう、と思いました。

ただKさんは、「気持ち」や「出来事」に一喜一憂して、それが身体に負担を与えてしまうタイプですので、「頑張る」というプレッシャーはまた危険です。

そんなKさんに掛けた言葉・・・。

「頑張らなくて良いのですよ。自然体でゆったりとした気持ちで。」

「あはっ。そーでしたね。」とKさん。

今回の残念な結果も、ご自身の「自分へのプレッシャーによるもの」も一理ある、ということを認識されているのでしょう。その教訓は次に必ず繋がるものです。

今日のその笑顔の中に、次に待つ「喜び」を見たような気がしました。また気持ちを一新して、今度は頑張らないように、待っている「喜び」に向かって進めるはずです。

ボージョレ・ヌーボー解禁!

昨日解禁となった「ボージョレ・ヌーボー」。

なぜ昨日が解禁日かと言うと・・・、

フランスのワイン法で、ボージョレ・ヌーヴォーは11月の第3木曜日が解禁と決められているためだそうです。

この解禁日には、全世界のワイン愛飲家達の『今年の良いぶどうに乾杯!』という声が響き渡っていることでしょう。

「ヌーヴォー」は「新酒」という意味で、ボージョレ地区以外でもフランスでは「ヌーヴォー」として、何種類か決まったワインを販売することができるようです。

今年はフランスでは、暴動が起き、ボージョレ地区も「ヌーヴォー」どころではないのではと心配していましたが、そんな心配なんて何のその!昨日の解禁日には多くのヌーヴォーが出回り、お祝いの食卓に華を咲かせていたようです。

さて、この「赤ワイン」。

体を冷やしてしまう「ビール」とは異なり、「赤ワイン」は体を温める飲み物の仲間です。

ヨーロッパでは、風邪の予防や風邪のひきはじめに、「赤ワイン」に「はちみつ」を入れて、レンジでほどよく温め、飲むそうです。ホットワインです。ワインがホットなだけでなく、体の中までもホットにしてくれる飲み物になるのです。

日本で言えば、「卵酒」に値するものでしょうね。

是非「赤ワインのホットワイン」もお試しください。

お酒に弱い人は、「ジンジャーティー」で「オレンジピールの入ったパウンドケーキ」など食べても良いですね。

これは日本で言えば、「生姜湯」と「みかんの皮(チンピ)を入れたお風呂」に値するのでしょうか。

晩婚化の日本

本日午前、東京・内幸町の帝国ホテルで、黒田慶樹(よしき)さん(40)と紀宮清子(さやこ)さま(36)は、結婚式を挙げられました。

午後からの記者会見で紀宮さまは「様々なことを学び、黒田家の一人として、新しい生活に臨んでまいりたいと思います」と新生活への決意を語られ、黒田さんも「互いの考えを尊重しつつ、心安らぐ、静かな家庭を築いていきたい」と家庭像を語られました。

お二人のお姿を拝見していると、「晩婚化」が進む日本の時世を改めて感じました。

ここ最近私達は、40歳を越える方の「不妊」の相談を多く受けるようになりました。以前よりもその割合が確実に増えました。

それは、「ある程度の年齢までは二人で楽しもう」と仕事や遊びを優先するために「晩産化」が進んでいることもありますが、35歳を超えてから結婚する人が増えているということも原因であると言えるでしょう。

「晩産ほどかしこい子供になる」とは言われますが、もしできることならば、後に望むのであれば「早め」にした方が良いこともあります。

東洋医学では、女性は7の倍数で体の「変化」が訪れると言われます。28歳が心も体もエネルギーが漲っている年齢で、35歳はそのエネルギーが衰えてくる曲がり角。せめて次の曲がり角の42歳までには何とか初産は済ませておきたいものです。

しかし、これは単なる目安でしかありません。重要なのは、生きてきた年月の年齢ではなく、卵胞の年齢なのです。40歳を過ぎても卵胞が28歳や35歳であれば、問題ありません。卵胞が「年齢よりも若く」、「質の良いもの」になるように手助けをしてくれるのが「漢方」です。是非諦めずに「漢方」のドアをノックしてください。