原発性無月経

高校生になっても初潮を迎えることがなかった17歳の夏、Nさんは母親に連れられて婦人科に行きました。

診断は原発性無月経。その頃のFSH値は50近く。

カウフマン療法にて月経を起こす日々。薬漬けになるのが嫌で止めた時期もありましたが、止めるとやはり月経が来ず、このまま結婚も出産もしないまま月経がなくなってしまうという恐怖から28歳になる今もカウフマン療法を続けています。

しかし17歳の時にはFSHが50近くもあったのが、今ではその数値も7になり、治療の効果は明らかです。数値から見れば正常になっているはずの体なのですが卵胞は育たず、結婚3年目のNさんにとっては、この腕に我が子を抱きたい思いは日々つのるばかりでした。

このまま今まで通りカウフマン療法のみを続けていても卵胞が育つことは期待できないように思えたNさん。自分でもその他にできることを探しもとめ、漢方の問い合わせをされたのでした。

2年前のこと。Nさんと同じように20歳初めからカウフマン療法にて月経を起こし、35歳を迎えたMさんが漢方薬の煎じ薬などを服用し、初めて妊娠されました。結局その後心拍確認までは至らなかったものの、妊娠できた喜びはMさんも私たちも今でも忘れることがありません。もう一度その感動を!そして次は挙児までいけるように!私達の取り組みは今も続いています。

NさんにもMさんと同じ感動を味わって欲しい!そして挙児まで辿り着けるように、手助けができればと願っています。

そんなNさんに出した漢方薬は「婦宝当帰膠」「冠元顆粒」「参茸補血丸」です。自力で周期が作れないNさんには、これらの漢方薬にて徐々に「腎精不足」を改善していくことが大切です。腎精が補えれば、卵胞が必ず育ちます。卵胞が育てばチャンスが巡ってきます!チャンスを確実なものとするためには、卵胞が育てば西洋医学の力も大いに借り、より成功率が高まるようにしていけば良いのです。

しかし今まで歩んできた道のりが長いため、その改善には3年ほどかかると思って気長に構えることが大切です。のんびり気長に楽しく過ごしていれば、意外と早くにチャンスが訪れるものです。焦れば焦るほどまた道のりが長くなります。

27歳の若さのNさんにとっては、まだまだ自分の体の改善を楽しく見守る余裕はあることでしょう。きっと良い方向に向かうことと信じています。

驚きの中で

まだまだ暑い日が続いていますが、暦のうえでは秋が訪れるという「立秋」の日に、秋風のように爽やかにある便りが届きました。

「おめでたですよ。」

「え?」

映し出されたエコーの映像には子宮内に2cmほどの小さな命が確かに存在することが見えたのです。

「ここが頭でこれが胎盤となるところ、ほらっ、ここに小さく拍動する心臓が見えるでしょう。心拍がちゃんと確認されましたよ。元気に育ってますよ。」

「ほんとですね・・・!赤ちゃんなんですね・・・。」

Tさんは今回もホルモン値がガタガタで、またピルにより生理を起こす治療を始めないとならないと暗い気持ちで受診をしたものですから、意外な結果に驚きが先にたち、まだ信じられない様子。

産婦人科の先生も思わぬ結果にびっくりしているご様子。

「全然実感ないでしょう、こんなもんですよ。ほんとに良かったですね!」

思い起こせば昨年春、同病院にて子宮筋腫の手術を受け、不妊の原因の1つを除去したその後はすぐにでも妊娠するかと期待に胸をふくらませていたものの、昨年秋から過度のストレスによるホルモンの崩れ。その崩れは坂を急速に駆け下りるように滑り落ちていくような状態でした。

婦宝当帰膠」「シベリア霊芝錠」「紅サージ」「冠元顆粒」「煎じ薬」「オリジン」・・・様々な漢方の力を借りてその修復を試みましたが、急降下の勢いを止めることはできず、結局ホルモン剤による治療に頼らざるを得なくなりました。

3周期ホルモン治療を行い、その後はまた漢方による「妊娠しやすい母体づくり」をしようと考えていたTさんでしたが、3周期後の血液検査が予期せぬ悪い値。秋の時点ほどの悪い数値ではありませんでしたが、決して「妊娠」という言葉につながるには良い状態ではありませんでした。

しかし「今周期はホルモン剤なしで少し様子をみたい」とのTさんの意向にて、今周期は漢方のみで調整することにしました。しかし予想通り低温期が続く日々。しかし根気よく「婦宝当帰膠」「杞菊地黄丸」「煎じパック」を飲み続けました。

基礎体温表は何ともいえない状態でしたので、生理がこないまま周期60日目を迎えた今日の日もまさかこんな驚きのことになるとは思っても見なかったことでした。

産婦人科の先生も今回もホルモン値を診るために血液検査をしようとされていた矢先でしたので、驚きと喜びを隠せないお顔で、

「教科書通りには行かないことはたくさんあるんですよ!ほんとに良かったです!」

とTさんと共に心から喜んでくださっているS先生にも感激です!

今どきこんな風に一緒に喜んでくださる医師がどれくらいいるでしょうか・・・?インフォームドコンセントが大切だと言われてから久しいのに、未だに治療内容もほとんど説明なしに質問をすると嫌な顔をし、溜息をつきながら簡単にしか説明しない医師はたくさんいます。忙しいことを理由にして説明を怠るのは賛成できないことです。

TさんはS先生に出会うまで、様々な病院を渡り歩いたと言います。でもここに来て、37歳にして、立派な心優しい先生に出会い、そして漢方でも素敵な先生に出会い、今まで自分を先生を信じ続けてきて良かった・・・!と言える日が来たことを幸せに感じ、感謝の気持ちを忘れずにいることでしょう。

今日でちょうど8週。小さな命の鼓動も確認でき、Tさんは何とも不思議な気持ちで帰路につきました。

まだ安定するまでには日にちがあります。もう少し漢方と共に過ごしていきましょうね。

ほんとに良かった!おめでとうございます!

器質的な問題でも

42歳Nさん。結婚は35歳の時。

その頃は仕事が楽しく、しばらく3年ほどは夫婦2人で楽しみ、その後子供を育てていく計画を立てていました。しかしそろそろと計画してから2年、兆しも見えないために40歳を目の前にして不妊検査に行きました。

検査結果では「高プロラクチン血症」という診断のみで、卵管も通っていることも確認され、その他の数値も正常範囲でした。しかし昨年、子宮腺筋と子宮筋腫が見つかったのです。子宮筋腫は子宮の外側に存在するために、妊娠には支障がないとのことだったので、今年に入り体外受精を行いました。

卵は受精もし分割もしたのですが、着床に至らず、残念な結果となりました。

そんなNさんが次に考えたのは、漢方薬を治療に取り入れる道でした。Nさんの症状よりその選んだ道は正解だと言えることでしょう。

もちろん年齢的なこともあるのですが、子宮腺筋症や子宮筋腫ができる体質やその子宮内環境は、決して着床しやすいものとは言えません。しかしだからと言って、Nさんにとってはそれらに対して西洋医学的には何も処置することがないのです。

それならその体質を改善し、子宮内の環境を良くするように漢方薬の力を借りるのが良い方法だと思えます。そして子宮内環境を整えながら、体外受精などに取り組めば分割した卵が着床しやすくなり、そのまま着床を維持し、妊娠が安定するようになることでしょう。

Nさんのように器質的な問題による不妊症の場合でも、諦めることはありません。「子宮内膜の改善」と「質の良い卵胞をつくること」ができるよう漢方薬の力を借りることで、我が子を手に抱くことに一歩一歩近づくことができるでしょう。

「子宮腺筋症」や「子宮筋腫」が体に存在するような体質は、「お血」「湿濁」が原因にあると捉えられます。またNさんの場合は全体的に体温が低いことより「腎陽虚」であることも伺えます。

そんなNさんに「妊娠しやすい母体づくり」のためにおすすめした漢方薬は、「婦宝当帰膠」「爽月宝」「水快宝」「参茸補血丸」「オリジン」です。

まだNさんは漢方薬を服用されることを検討中ですが、Nさんのように腺筋症を持ちながらこれらの漢方薬を服用して妊娠され、もうすぐ出産の日を迎えられるご夫婦がおられます。

Nさんにも是非同じ感動を味わってもらいたいです。

鬱と不安が

『「温胆湯」と「加味逍遥散」を1ヶ月間服用して、辛かった鬱と不安の症状が軽減しました!』

40歳Mさんからの嬉しいメールが届きました。

問い合わせをされた3ヶ月前、Mさんは半年以上前から生理が不順になると共に、不安・鬱・不眠・ほてり・耳鳴・めまいの症状が出始め、食欲も減退し動悸のような息苦しさを感じるようなこともありました。

しかしその症状が起こったきっかけや期間を考えると、少し漢方薬の力をかりれば早くに体調を取り戻せるような状態でした。ただこのまま何もせずに症状を持ちながら何年も経ったならば、体調はもう元のようには戻らなくなるかもしれません。

Mさんは早めに漢方薬に助けを求められたので、良かったのです!

Mさんの状態は、陰陽のバランスが崩れたために自律神経失調症のような症状が起こったり、脳からの卵巣への命令系が乱れてしまったことにより生理不順を引き起こすことになってしまったようです。

3ヶ月の期間で「温胆湯」「加味逍遥散」だけでなく、そのときの症状に合わせて「天王補心丹」「酸棗仁湯」「婦宝当帰膠」なども取り入れながらMさんの症状改善を計りました。

まずすぐに改善されたことは「生理の状態」です。生理の状態が良くなることにより、ホルモンのアンバランスにより起こっていた症状が改善され、精神的にも安定し自律神経の乱れも整うことが期待できます。2ヶ月の期間ではまだ自律神経の乱れが完全に整うまでには至らず、鬱や不安の症状や不眠などはありました。

そして3ヵ月をちょうど経った頃に、Mさんからの嬉しい便りが届いたのです。

完全に良い状態が安定するまではもう少し期間がかかるでしょうが、しばらく続けられると元気なMさんに戻ることができるでしょう。

40歳という年齢は、決して生理が不順になる年ではありません。ホルモンバランスが少し崩れたことによりまだ崩れてはいけない年齢のために、様々な症状が起きてしまいます。生理が不順になったな、と感じたらすぐに対処することをおすすめします。いつまでも美しく元気な女性であるために。

夏の味方!

「夏の養生と漢方」と題して第5回目のカルチャースクールの講座を行いました。

その中で暑い夏を過ごすために最適な漢方薬を紹介しました。その名は「生脈散(しょうみゃくさん)」です。

生脈散」の名は、「気を回復すれば全身に脈が充実する(生じる)」という働きを現し、心肺の気と津液を補う目的で用いられるものです。

つまり、発汗や肉体・精神的疲労(気陰の消耗)などに伴う倦怠感の改善に使用されますので、汗をかき過ぎたり、体力を消耗することによる夏ばての改善にぴったりです。

また夏に起こりやすい「心筋梗塞」「脳卒中」などの心臓・脳血管障害の予防にも最適です。

その昔、毛沢東主席が3度目の心筋梗塞を起こして危篤に陥ったときに、「生脈散」の静脈注射により甦った話は有名です。

その他、体外受精の際に、この「生脈散」を体外受精培地・体外発生培地に添加すると移植可能胚発生率が向上する可能性がある、という報告もあるとか・・・?その名前からそのことはありえる話のように思えますが、その信憑性は定かではありません。

夏ばてしていては進むべき仕事も計画もなかなか思うように進みません。甘酸っぱい中に苦味を少し含む味の「生脈散」を片手に、まだまだ続く暑い夏を乗り越えてください!