グレード1 か グレード2か?

45歳のHさん。不妊治療を始めて8年になります。

高度生殖医療(ART)を5年続けましたが、卵の発育が悪く誘発しても育ってこず、医師からは「この先…」といわれ思い切って漢方に救いを求めてこられました。

漢方を始めて3年。周期療法を続け、ようやく卵が出来始めました。20mmの立派な卵です。しかし、ご主人の体調が悪く、自然妊娠が困難な状況下でICSI(顕微授精)をすることになり、気持ちを新たにIVFに挑戦しました。何年か振りです。

Hさんは自然周期の採卵ですので、なかなか採卵のタイミングが取れず、1年に2回ぐらいしかチャンスはありません。でも、その数少ないチャンスが来ました。採卵でき無事授精もし、分割もよく胚盤胞にまで順調に進んでくれました。その胚盤胞と2年かけてストックした受精卵を戻すことになりました。ストックしてきたのは グレード1とグレード2の2個ありました。今回の新鮮胚とどちらかを戻すことになりましたが、さぁ、どちらを移植するのか、Hさんは大変悩みました。

ご主人と相談した結果Hさんが選んだのは「グレード2」の移植でした。「グレード1」を移植して万が一着床しなかったら落胆して立ち直れないかもしれない。もし、「グレード1」が残っているなら「まだグレード1が残っている」と心の支えとなって次に臨めると話してくれました。早く結果を出したいから、良いほうから使うという考えもありますが、グレードの低いほうから使って着床し、グレードの高い受精卵を残してしまい後悔された方もいました。

どっちを選択するか!難しいですね。そのような経験ありませんか?

いまHさんのおなかには着床しようとしている胚がいます。頑張れ「グレード2」ちゃん。そして新鮮胚ちゃん!

子宮内膜症の激痛を乗りこえて 

33歳のOさんは子宮漿膜下筋腫(5cm)、卵巣嚢腫(5cm)があり、子宮内膜症の激しい痛みに苦しんでおられました。

子宮内膜症は本来、子宮内腔にしか存在しないはずの子宮内膜や子宮内膜様の組織が、子宮以外の場所(卵巣、ダグラス窩、S状結腸、直腸、子宮靱帯、膣、膀胱、腹壁など)にできる病気なのです。月経期になると子宮以外にできた子宮内膜も剥離・出血しますが、血液や内膜を体外に排出できず体内に溜ってしまいます。その結果、チョコレートのう胞が出来たり腹腔内での諸臓器との癒着が起きるのです。症状としては激しい月経痛で、だんだん強くなるのが特徴です。

Oさんは月経時の激痛、月経過多、排卵痛、肛門痛などとても辛そうに腰をかがめて来店されました。

漢方では「お血」「腎陽虚」「肝欝気滞」が見られましたので、お血を取り除くお薬と、冷えを改善するお薬、気分をよくする<桂枝茯苓丸> <爽月宝> <補血丸>などを服用していただきました。

1ヵ月後には鎮痛剤の服用量が減り(2時間間隔が5時間持つようになり)、気分も楽になったと喜ばれました。漢方薬を服用して5ヵ月後妊娠が判明しました。月経痛も楽になり、下腹部の気持ち悪さもとれ、やっと気分も落ち着いてきた矢先でした。

子宮内膜症の激しい痛みを改善しようと周期療法で体調を調整した結果、朗報が届きました。良かったです。

今、Oさんは6ヶ月目を迎えようとしています。しっかりお腹の中で育って、無事元気な産声を上げてほしいと願っています。

羊水検査はどうですか?

先日ご予約されて、お母様と一緒に相談にこられたTさん。

「先生おかげさまで!」とお腹をさすってのご挨拶でビックリしました。Tさんのお腹はまさしく妊婦さんのお腹なのです。4ヶ月です。

Tさん(40歳)は6ヶ月間漢方薬を服用してきました。結婚して5年。なかなか授からず不妊クリニックにも行ってました。ホルモン剤にて月経周期をつくり、排卵誘発剤を使い採卵、肧移植をしてきましたが、すべて「卵がよくない」といわれ、漢方で何とかならいかと相談にこられたのが昨年の夏でした。

漢方薬の補腎剤の<杞菊地黄丸> や<補血丸>、 気血双補の<婦宝当帰膠>などを使い周期療法をしてきました。12月にIVFをすることになり、IVFのスケジュールにあわせての漢方薬を服用してもらいました。その後気になっていましたが、その時妊娠されたようです。思いがけずにTさんの朗報に笑みがこぼれてきます。

しかし、Tさんは不安を持っていました。「羊水検査どう思いますか?」突然の難しい質問にたじろいでしまいました。「羊水検査したいのですか?」「はい。受けようか迷っているのです」なぜTさんは羊水検査を受けようと思ったのでしょうか!40歳を越えての妊娠には染色体異常が多く見られること、それを聞いただけで心配で仕方ありません。

羊水検査して異常見つかったらどうしますか?

検査が反対に危険な状態を生むやも知れません。難しい問題ですね!でも、やっと出来た赤ちゃんが不安に感じるのではなく、安心して伸びやかに成長してほしいと願っています。

人生はマラソンです

先日名古屋で女子マラソンがありました。北京五輪の女子マラソン代表がきまるとあって、皆さんの注目を集めていました。

中でもQちゃんこと高橋尚子選手の走りぶりが興味をそそりました。結果は想像だにしなかった「失速」で終わってしまいましたが、色々考えさせられました。

絞り込んだ身体、走りこんだ足腰、精彩が無いような表情、走る前から不安がよぎります。走れるのかな?大丈夫かな?スタートしてから走れない身体でよく頑張っていましたね。途中棄権するかな?とハラハラさせられましたが、最後まで走りとおした強い意思には敬服します。

「マラソンはよく人生にたとえられます」山あり谷あり、レースには「起承転結」があり、自分の一生に重ねてみることも出来ます。

「不妊」で悩まれている方々も今マラソン・ランナーのようです。お2人の人生は起承転結のどの位置でしょうか?スタートから15キロ付近のの起点でしょうか?2人で歩む道のりはまだまだ続きます。辛いこと、うれしいこと、悲しいこと…色々ありますがこれから新しい命を育むための基礎作りを「承」として、辛くて苦しい治療の山場を「転」として乗り越え、願いが叶う「結」に向かって完走してほしいと思うのです。

基点になる関門には漢方薬のスペシャルドリンク用意されています。それぞれのランナーにあった「マイ・漢方薬スペシャルドリンク」を飲んで、皆が完走し、喜びのテープを切ってほしいとマラソンをみながら思うのでした。

ヨモギの話

昨日のヨモギの話を補足しておきます。

ヨモギは野山や土手、道端や空き地など至る所に群生している馴染みの草です。

草全体に独特の香りがあり、春先の若葉は草もちの材料として知られ、若葉や若芽は天ぷらにしても少し苦味があって美味しいものです。

ヨモギの主成分のタンニンには消炎作用や止血の収斂作用があり、切り傷の時には生の葉を揉んで貼っておくと効果があります。これは手負いの熊もヨモギの生葉を使って傷口の手当をしているといわれます!

その他、生葉を浴剤として、神経痛や湿疹・肌荒れ・保温などに用いられます。乾燥したもの<艾葉・ガイヨウ>を煮出して、痒みがある皮膚トラブルに浴剤として使われます。今はヨモギが含まれる入浴剤<ご湯っくり>も出ています。

漢方薬では止血薬として有名、不正出血などに<きゅう帰膠艾湯>を用います。

なにかと利用価値の高い野草ですが、いくら刈り取っても所構わず地下茎でぐんぐん繁殖して行くので、人によっては嫌な野草の一つでもあります。

社内研修会に草もち?

先の日曜日は20回目の社内研修会でした。

テーマは<頭痛>で、元病院長を講師とする直伝の勉強会です。すでに6年目となりました。

知識を詰め込んで賢くなった頭?にちょっと休息。滋賀県から参加されている先生の差し入れ「老舗の草もち」です。がぶっとかじると独特な香りが広がる春の味、この上ない美味しさです。

春の野山や土手、道端や空き地などの「よもぎ・蓬」が浮かんできます。これを乾燥したものが生薬名<艾葉・ガイヨウ>です。

なお、

草もちには若菜を用い

もぐさには乾燥葉を用い

止血薬には生の葉を揉んで用い

入浴剤としては端午の節句に昌蒲と一緒に入れる

温シップには乾燥した葉を用いる

などなど、利用価値の高い「よもぎ」ですが、やっぱりこの時期は草もちが一番!

これでまたカロリーオーバー、メタボが近付いてきました。

習慣性流産を乗り越えて

かわいい訪問者です。お母さんに抱かれ8ヶ月になるH君が来てくれました。

なんとお父さんが運転して2時間かけてきてくれたのです。感激です。春の日差しがまばゆい暖かな午後、店内はとても明るいハッピームードに変わりました。しっかり周りを見ては、ここはどこ?と確認しているようです。

お母さんのYさん、当店ご来店時は何回も繰り返す流産に身体も心も傷つき、漢方薬に救いを求められてこられました。

当店に来てすぐ妊娠され、あっという間に流産されてしまいました。4回目の流産で、いわゆる「不育症」です。その後Yさんは体質改善のため1年間避妊していただきました。その間、周期療法(月経期、卵胞期、排卵期、高温期)で体調を整えていただきました。そしていよいよ挑戦。妊娠はしましたが問題はこれからです。最後まで、挙児をえられるまでは本当に喜べません。

妊娠中も<婦宝当帰膠> <参馬補腎丸> <衛益顆粒>などを服用してきました。毎月毎月祈るような気持ちでした。もう少しで10週目に入ろうとしたときに羊水が減り始め、血圧が上昇したため、緊急の帝王切開、無事H君を出産したのでした。

今腕に抱いている子はまぎれもなくYさんの子。なかば諦めつつもどうしても授かりたい一心で漢方薬を1年半服用しました。その子が今はスイミングに通い、わらべ唄の会にも入って、集団の中順調に育ち皆から可愛がられているようです。

健康で大きくなって、家族揃って幸せになってくださいね。Yさんおめでとう!

H君生きることは大変だけどいろいろなことに挑戦して、わんぱくな男の子育ってくださいね。

相性が支えたもの…

「ご無沙汰しています。実は○月○日に無事元気な男の子を生みました。」道東にすむTさんからのお手紙です。

ビックリしたのと同時にとってもうれしさがこみ上げてきました。「へぇ~、出来たんだ!凄い!」本当に驚きました。

Tさんと初めてお会いしたのは今から6年前でした。大学病院で3年間不妊治療され、結果が出ずに漢方薬を求めてこられました。ご来店当初は多嚢胞卵巣症候群(PCOS)の診断名が付いていました。ホルモン剤の副作用で入院をされたり、AIHを5回しての来店でした。

平成14年~17年までの間にお住いを関西から北陸、道東にと変えられ、メールや電話、手紙でのやり取りをしてきました。周期療法と、なれない土地への不安感などカウンセリングしながらの5年間でした。

平成17年12月、メールで「来年いっぱいで不妊治療をやめようと思います」と伝えてきました。「漢方薬も服用してきたし、今度はもう一度西洋医学に頼ります。」と。その後連絡が無かったのですが、ずーっと気になっていました。そのTさんから、突然のメールで、しかもうれしいことに赤ちゃんが授かっていたのでした。

メールには地方では体外受精が受けられず道央まで出かけ入院しての治療だったようです。それは精神的にも物理的にも大変なものがあっただろうと推測しています。それを頑張り抜いて長年の夢を成就したのでした。本当に良かったです。

Tさんのことを考えて見ますと、粘り強く頑張ったこと、そこには<医師との相性>があったこと。「婦人科の先生はとてもよい方で、私にはピッタリ相性があいました。言たいこと、聞きたいことをなんでも話せる先生だったのです」この相性が彼女を支え、宝物が授かったのだろうと思います。

心優しいTさんは、私を気遣い「漢方との出会いが無かったら、この赤ちゃんは授からなかったと思っています。本当にありがとうございます」と言ってくれました。

本当に良かったです。おめでとうTさん!○○君!

双角子宮

先日ひょっこりKさんが店に来られました。なんとお子さんを連れておられます。

「あれっ? Kさんですよね。」 「そうです」 「いつ生まれたのですか?」 「半年前!」そんな会話が昔を思い起こさせてくれました。

Kさんは子宮の奇形で何回も流産を繰り返していたのです。しかし医師からは妊娠も可能といわれ、漢方薬を求めてこられました。今から3年前でした。

基礎体温は激しく上下し、周期も20日~26日と短く、非常にバラバラの体温でした。お話から「双角子宮」という子宮の奇形でした。

双角子宮の場合、軽い場合はStrassmann 手術、高度の場合はJones&Jonesu手術が行われるのが一般的ですが、Kさんは手術でなく漢方薬を選択し、来店されたのでした。

まずは月経周期を整える処方を半年間服用いただき、その後周期療法に切り替えました。子宮内膜の状況を良くするためのお薬や、35歳の高齢のため生殖能力を高めるお薬など、<婦宝当帰膠>をベースに服用してもらいました。

2年くらい周期療法を行い月経周期も整い、バラバラだった基礎体温表も2相性に整ってきた頃から、相談に来られなくなっていました。しかし、お聞きするとしっかり<婦宝当帰膠>を出産時も産後もずっと続けて服用していたとのことでした。そして、知らない間にしっかり男児を生んでおられたのには驚きました。

自然妊娠、しかも自然分娩で安産。「漢方薬のおかげです」と挨拶され感激しました。

昨年は単角子宮の方が無事出産され、また今双角子宮の方が出産し子供を抱いておられるのです。ほんとうに良かったです。漢方薬を勧めてて良かったとつくづく思うのです。

ヘパリン自主回収!

ヘパリンは血液凝固阻止剤として医療機関には無くてはならない大事なお薬ですが、この度、厚生労働省がヘパリン投与後にアレルギーなどの重い副作用がアメリカで相次いでいることから、ヘパリンを製造・販売している日本国内3社が自主回収を始めたと発表しました。

ヘパリンは豚の小腸からとった成分を精製して作る薬で、人工透析などに使われる重要な治療薬です。

また私たちが相談している不妊治療に、あるいは流産を何回も繰り返す方の原因の一つである<抗リン脂質抗体>にも使われています。「不育症」の治療に服用されている方もたくさんおられます。

自主回収されたら困る方がたくさんいますが、いったいどうなるのでしょうか?

このように副作用が強く重篤な症状が出るようなお薬で、赤ちゃんの身体は大丈夫なのでしょうか?私も心配になってきます。

漢方薬では胎盤の血流をよくして赤ちゃんに充分な血液を供給するため<冠元顆粒>や<田七人参>などを使います。

漢方薬の場合は植物が原材料ですので副作用が少なく安心して使うことが出来ます。ただ実験データーとしてのエビデンスがないのが残念です。臨床的に証明できればもっと普及することが出来るのにと思いつつ、「ヘパリン自主回収」のニュースを聞いていました。