香りの陳列棚によく見かける「ムスク」の文字。
もともとこのムスクは、ジャコウジカの雄が発情期に雌を誘うために少量ずつ分泌する分泌物から取ったものです。そのムスクそのままの臭いを直接嗅いだら、鼻が大変なことになるくらい臭い代物です。
ところがこれを何千倍にも薄めると、芳香を放ち、ヨーロッパや中近東では香料として使用されてきました。それが陳列棚に並ぶ「ムスク」の由来です。有名どころでは「シャネルの5番」の原料になっているとか。
中国では貴重な薬用として使用されてきました。高価なことで有名な「麝香(じゃこう)」です。
漢方では「開竅」「活血」「催産」の効能があり、意識障害や脳卒中、狭心痛、分娩促進、小児の発熱や痙攣などに使用されます。難産や後産が遅れたときには肉桂と併せて「香桂散」として使用したりします。
つまり「開竅」「活血」作用がありますので、緊張して締まっているものを開き、巡らす働きをするのです。
先日問い合わせいただいた妊娠中のOさん。
妊娠してから気が巡らず咽喉がつまる感じが続くために、ある漢方薬局にて相談したところ「麝香」を処方されたと言われました。
ご自分で調べたところ、「妊婦は禁止」の文字が目に入り、本当のところはどうなのか、という相談を受けました。
お薬によっては、大丈夫であるけれども安全のために「妊婦は禁止」と記されているものもありますが、「麝香」は違います!まさに「催産作用」があるわけですから、分娩を促進し、流産の可能性を大きくしてしまいます。危険です。すぐに服用をストップしていただきました。
Oさんの探究心と早急な問い合わせにより、危険を去ることができましたが、そのまま飲み続けていたらどうなっていたのでしょう。怖いことです。
どんなことでも不審に感じたり、疑問を持ったら、すぐに問い合わせをしてください。