乾姜人参半夏丸
病院の治療と漢方の周期療法の末にやっと妊娠し、心拍も確認できたSさん。
今までの辛い治療の末に授かった命。しかし次に待っていたのは辛い「悪阻(つわり)」でした。
それは赤ちゃんが元気に育っているという証なのですが、その背景には実は「貧血症」「胃障害」「子宮後屈」「神経症」などの要因があるのです。
従って、割合として不妊治療をしているなど、赤ちゃんの出来にくい人にはその症状がよく現れるように感じます。
Sさんの場合もその症状は強いものでした。Sさんは通っている病院で「乾姜人参半夏丸」を処方され、服用していました。しかし一向にその症状は治まりません。
確かにこの「乾姜人参半夏丸」は、金匱要略に「妊娠、嘔吐止まざるは乾姜人参半夏丸を主る」とあり、「小半夏湯」や「小半夏加茯苓湯」などを用いても止まない嘔吐にはこれを用いる、とあります。
しかしこれを使うときには、その症状がかなり時期を経過した「重症」の段階で、全身虚弱、腹部は軟弱、脈は細、食事も服用もできないような症状の時なのです。
Sさんの場合は、そこまで長い経過を辿ったわけでもなく、しかもその薬を服用すると、余計にむかむかする、というのですから明らかに異なる証と言えるでしょう。つまりそれを飲むことにより、胃を温め、結果として余計に気持ち悪くなる、ということが起きているのです。
こんな時には、どちらかと言えば熱を冷まし、むかつきを抑えるようにする方が良いでしょう。
その他にも「悪阻」を軽減する漢方薬は様々あります。熱がある、痰を吐く、口渇がある、脈遅、生唾がたまる、下痢、腹痛など、現れている様々な症状により、処方するお薬も異なります。早くに辛い症状から開放されるためには、しっかり合ったものを服用することです。