お腹の診断

江戸時代の古方派によって発展させられた「腹診」は、湯液治療や鍼灸治療では、診断の1つとして使用します。

ただ現代の湯液治療の場合は、店頭でお腹を見せていただくわけにはいきませんので、実際にはあまり診断方法としては使われていないのかもしれません。鍼灸治療では、お腹を拝見することが容易ですので、その診断も重要視します。

その中でも「小腹不仁(しょうふくふじん)」や「少腹急結(しょうふくきゅうけつ)」は婦人科疾患と深くつながりがありますので、不妊治療や生理不順などの治療診断では重要視する症状です。

「小腹」は下腹部のことで、おへその下の部分です。その下腹部に力がなく、フワフワとしているものを「小腹不仁」といい、漢方では「八味丸」が用いられ、鍼灸では「腎」の病と捉え治療することが多いのです。「腎」の力が弱るということは、「先天の気」が弱っているということで、生殖機能つまり「子供を産み育てる力」が衰えていることを現します。

また「少腹」は下腹部でも少し横側の下腹部のことで、「少腹急結」は主に左側に現れる抵抗や硬結のことです。これは「お血」があることを現しています。漢方では「桃核承気湯」が用いられ、鍼灸では「腎・肝・脾」のバランスが崩れていると捉え、治療します。

「お血」の腹証は、他にもあり、小腹(おへその下)に抵抗があったり膨満感がある場合もその証として捉えられます。漢方では「桂枝茯苓丸」が用いられ、この証は現代の女性で多く見られるような気がします。

「お血」が存在すると、キリキリとした痛みを伴います。生理痛や排卵痛などといった痛みは、これが原因です。生理の際の血塊も「お血」です。

「お血」を治療することで、痛みや冷えが解消し、結果として子宮環境が整い、妊娠しやすい母体となるのです。「腎」が弱るとそれを改善するにはある程度の期間を要しますが、「お血」は早期に改善されるものです。漢方治療や鍼灸治療をされ、2周期目で妊娠されたというスピード改善は、軽い「お血」が原因であったことが多いように感じます。「お血」は「ストレス」「体外受精の採卵」「手術」「流産」などで容易に出来てしまうものです。それが固定化してしまい、スピード改善がしにくくなる前に、早期に改善してください。

下腹を触って、「力がない」「コリッとしたものがある」など感じた人は、早くにお問い合わせください