舌の状態

東洋医学では舌の状態をみて、その人の健康状態を判断する「舌診」というのがあります。

5つの診断方法の「望診」「問診」「聞診」「脈診」「舌診」の中の1つです。それだけで全てを判断することはできませんが、とても参考になる診断方法です。

東洋医学だけでなく、一般的にも舌は健康状態を現すバロメーターとも言われています。

体調が悪いと舌の表面に白い苔のようなものが付着し、時にはそれが黄色くなったり黒くなったりし、口臭の原因となったりします。よくそれを気にして歯ブラシなどで擦る人がいるのですが、あまり強くしたり使い方を誤ると、反って舌に刺激を与えすぎて傷つけてしまいますので、要注意です。

もともと舌の苔は、舌に存在する糸状乳頭という組織に口腔内で繁殖した細菌が付着し、白くなるのです。健康状態の場合は、食事をすれば擦れて適度に剥れるのですが、体調が不良だったり、年を取るにつれ唾液の分泌量が減ってくると、白苔ができやすくなります。

白苔もうっすらとあるのは健康です。反対に全く存在しないのも体調不良の証です。

糸状乳頭が伸びると表面に細菌が付きやすくなります。そしてそれは栄養供給のバランスが崩れると伸びてくるようですので、胃腸の健康状態と密接に繋がっていることは西洋医学的にも立証されていることなのです。

東洋医学的には、舌を様々な角度から観察します。不妊相談の中で良く見られる舌を紹介しましょう。

まずは「質」をみます。「淡白」であれば、「陽気虚弱」「気血不足」であり「虚寒証」「血虚」などが疑われます。「紫」であれば、「陰液損傷」「陰寒内盛」「血脈お滞」などが疑われます。

次に舌の形です。「胖(はん)」と言って膨れてぼってりとした感じの舌であれば、「脾虚」「痰湿」などが疑われます。「痩せていて薄い」舌であれば、陰血が虚していることを現し「気血両虚」などに良く見られます。「歯型がついている」舌であれば、「脾気虚」「湿盛」に見られます。

そして舌の苔をみます。主として「白」「黄」「灰」「黒」の4色があります。その中でも、色味がなく白っぽい」舌は「寒証」に見られます。「黄色い」場合は「熱証」「裏証」に見られます。

また苔の質もみます。「薄いか厚いか」は、「表から裏へ」「軽症から重症へ」の状態を意味します。「潤っているか乾燥しているか」は、津液の状況を現します。「ねっとりしているか(膩)、おからのように剥離しやすいものか(腐)」は、「痰飲・湿温」「食積・痰濁」を判断します。「苔があるか、ないか」は、正邪の闘いの状態を現します。

東洋医学ではそれらと「望診」」「問診」「聞診」「脈診」の情報を併せて、体質を把握し、よりその状態に合った治療法を決めていきます。

あまり舌の状態を気にしすぎるのもよくありませんが、朝一番と夕方にでも舌のチェックをしてみてください。自分でも気づいていない自分の健康状態を垣間見ることができるでしょう。