桂皮と桂枝

お菓子でも馴染みのある「シナモン」。「ニッキ」「ニッケイ」とも言い、ケーキや紅茶、京菓子の八ツ橋にも使用されています。これはクスノキ科の「桂」の木の皮を粉にしたものや皮そのままを使用したりします。生薬では「桂皮(肉桂)」として使用しています。

また「桂」の木の若枝は、「桂枝」といい、その働きは皮とは異なります。従って、その違いにより「桂皮」と「桂枝」は使い分けなければなりません。

中医師のK先生。日本に在住されていますが、本土中国の患者様の処方を時々電話にて指示されています。

昨年の夏のこと。

K先生は月経不順の患者様の処方を依頼され、その処方を中国の薬局に指示しました。その煎じ薬の中に、辛温解表の働きのある「桂枝」を入れ、その温通作用により経を通じさせることで月経不順の改善を計りました。

それから1ヵ月後。再度同じ患者様の処方の依頼を受け、前回の処方内容を確認したところ、「桂枝」のはずが「桂皮」として処方されていたことが判明したのです!

この夏の暑い時期に体内を温める働きのある(温裏薬)の「桂皮」を使用していたというのです!

「桂皮」を使用することで、ますます体内が暑くなり、体液が枯れ、余計に月経不順を招くことになります。

K先生は中国の薬局の誤りに即気づき、薬を修正させ、もう1ヶ月間、正しい処方で服用してもらったとのことでした。

たった1つの生薬でも、その量にも寄りますが、間違うことで全く違う作用をしてしまうことがあります。またその働きが正確でも複数の生薬を併せることで少し働きが異なるようになることもあります。どんなお薬でも自分で判断して服用したりしないように気をつけてください。