心と体を全体で捉えて

「特に女性の治療家に多い症状ですね。心包経が虚していますよ。だから腎経が関係している生殖器系に影響して不妊や生理不順の症状になっているのですよ。」

初の「ホロトロピック・センター」を築いたY医師のところを訪れた鍼灸師の35歳Kさん、勉強も兼ねて治療を受け、そのように診断されました。

「ホロトロピック」とは、グロフ博士の造語で、「全体性へ向かう」という意味で、意識の成長・進化を現しているようです。

西洋医学がどんどん高度化していく一方で、その限界が指摘され、最近では東洋医学や民間医療を取り入れた「ホリスティック医療」が盛んになっています。特にその方法を推進しているのが西洋医学を学んできた医師であることが、よりその医療の限界を感じた結果であると言えるでしょう。

漢方や鍼灸を取り入れ、治療を行っている医師の中で、特に外科医が多いように感じるのは、結局悪いところを取り除いてもまた違うところから悪いところが再発し、また取り除く・・・。結局追いかけっこの末に亡くなっていくパターンが多いからだと感じざるを得ません。

「ホリスティック」はギリシャ話のホロスが語源で英語で「全体」を意味するものです。「ホリスティック医療」とは、病気を部分として捉えるのではなく、心と体は一体であるとし、その全体を調整することで病気を根治しようという考え方です。

「ホロトロピック」も「ホリスティック」も「全体」という部分では同じなのですが、「ホリスティック」は医療に関することに限られるのに対し、「ホロトロピック」は意識の成長・進化を中心に考えているのが主な相違点のようです。

Y医師のセンターでは、様々な治療方法を取り入れ、人間の心身がアンバランスになってしまった状態を根本より改善していくように個々人のプログラムがなされているようです。

Kさんの場合、刺絡治療により経絡の調整が行われました。心包経と三焦経、小腸経もアンバランスになっているということで、「内関」「郄門」「外関」「小海」に刺絡が行われました。その後、胸がすっとしたようです。

「治療家が心包経を痛める」という理由は、「治してあげたい」と思う気持ちが強すぎて、自分の「気」を入れ込んでしまうからだとY医師は言います。熟練した治療家であれば、人に自分のものを与えてしまうようなことはないのですが、まだ慣れていない治療家や熟練していても少し弱くなっている場合は、「想い」が同調してしまい、特に心包経を痛めてしまうことが多いのです。

また漢方薬の「桂枝加竜骨牡蛎湯」を処方されました。これは桂枝湯に「竜骨牡蛎」を加味したもので、「竜骨・牡蛎」には鎮静、強壮の効き目があるので、虚弱な人で興奮しやすく疲れやすい人に使うものです。脈は力がなく、臍の部分で動悸がしていることが多いものです。

結論としてKさんの今の体のアンバランスは「心」の乱れから来ているもので、それを調整すれば、頭からの異常命令による月経不順は改善されるといった診断でした。

Kさん自身もわかっていることでしたが、一度はまり込んだポケットからはなかなか抜け出せずにいてずるずると来てしまった現状から早く抜け出さないとならないことを認識されたようです。改めて自分自身の鍼灸治療と当店の漢方薬にてポケットから抜け出せるように計画中です。

Y医師のような心と体のバランスを診て、治療方針を立ててくれる実力のある治療家がもっと日本で育っていって欲しいものです。もしそれが1人でできないのであれば、その道で実績のある漢方医、医師、鍼灸師・・・などが力を併せて予防医学に取り組んでいけるようなセンターを築いていきたいものです。