壁を乗り越えて

38歳Cさん。結婚7年。自然妊娠を希望し、極力ホルモン剤などには頼りたくなく、ましてや体外受精に対しては拒否反応を占めるほど。

実際に子供を望むようになったのは3年ほど前。それと同時に漢方薬も「婦宝当帰膠」から徐々に始めていました。

周期療法を始めたのは2年前。周期療法を始めてからしばらくして、基礎体温の改善は見られるものの一向に兆しが見えないことに「どうもおかしい」と思ったCさんは、初めて婦人科を受診。その結果、着床を妨げている子宮筋腫が見つかったのです。大きさは3cmほど。しかしちょうど卵が着床するべき位置に存在するために、それが受精卵の着床を妨げている可能性が大きいとの診断でした。

「まだ間に合う!できることはしておこう。」と手術を決意し、腹腔鏡下手術により核摘出手術を行いました。

それから半年の昨年10月、とてもきれいな基礎体温表になったので、「今回は・・・?!」と期待していたけれども結果は残念!しかし安定してきた体調に良い兆しだと思っていた頃でした。

しかし、10月の安定した基礎体温は奇跡のように、11月そして12月と全く排卵する兆しもなく、低温期が延々と続いていました。

「おかしいなぁ」と再度婦人科を受診。血液のホルモン検査により、女性ホルモンであるエストロゲンの数値が低く、排卵期に多くなるはずの脳下垂体前葉から出る卵巣刺激ホルモン(FSH)が高く、黄体化ホルモン(LH)も高い数値であることがわかりました。つまり卵巣がお休みしている状態で、卵胞が育っていないのに排卵させようと刺激ホルモンが無理に働いている状態なのです。要するに、更年期様症状です。

Cさんにとってはかなりショックな結果でした。手術したことが卵巣に負担をかけてしまったのかもしれませんが、これは一概には言えず、手術しなくても子宮筋腫が卵巣に負担をかけ、行く行くはこの様な状態になっていたかもしれません。

「少しピルの力を借りて、卵巣を休めた方が良いかもしれませんね」と婦人科医。

しかしCさんは自分の身体の力を信じたくて、漢方薬にて特に「腎」の「滋陰」をするように「煎じ薬」を、補血・養血・調経のために「婦宝当帰膠」の服用を続けました。

しかし・・・!

1月、2月そして3月が来る頃にも全く身体の反応はなく、低温期は続いていました。もう3周期以上経ってしまったので、Cさんは断念して婦人科へ。

「お薬をお願いします!」とCさん。

「そうですね。このままだと閉経してしまうかもしれませんので、一度お薬で月経を起こしましょう。」

結局Cさんの不本意な道を歩まなければならなくなってしまいました。2週間のホルモン剤の服用です。ノルゲストレル・エチニルエストラジオールが成分である女性ホルモン補充薬です。

Cさんは「こんな感じでホルモン剤の壁を乗り越え、知らぬうちにホルモン漬けになり、体外受精などの道へ進んでしまうことになるのでしょうね・・・。」とポツリと呟かれました。

しかしこれはCさん次第で、今回のことも長い人生の中の1つの選択肢で、決してホルモン剤がいけないことではなく、うまくそれを利用して、自分の力を呼び起こすようにしていけば良いのです。2~3周期間は少しホルモン剤の力を借りて卵巣を休め、新たな身体で再スタートすれば良いことです。

その頃には季節も良くなり、身体への負担も軽くなる頃です。きっと良い方向に進むことでしょう。