がんばらないで

2年ぶりに鍼灸治療に来られた29歳Yさん。

「また体調を崩してしまって…」と言われたYさんの姿は、以前よりひとまわり大きくなっていました。2年ぶりでしたので、初めパッと見たときYさんだということがわからないくらいでした。それもそのはず、ここ3ヶ月で10Kgも体重が増えてしまったというのです。

ここ3ヶ月でYさんの身に何が起こったのか・・・?

2年前も同じようなことがありました。そのときは反対にどんどんやつれて痩せていったパターンでした。心の優しいYさんには、人間関係のトラブルの矢が向けられることが多く、外にそれをうまく吐き出せないYさんは、いつも自分の中に閉じこもり心の病に陥ってしまうのです。

今回もそうでした。職場の上司の理解できない行動、言動、責任転嫁・・・。

Yさん以外にはもう1人とその上司しか居ない人数の少ない部署のために、上司の言動は心優しいYさんに全て向かっているようです。

「自分が悪いんだ。もうちょっと我慢しよう。」

そう自分に言い聞かせながらYさんは仕事を続けていました。

しかしその結果、4ヶ月生理が来ず、体重も10Kg 増えてしまいました。やっと今月生理は来たものの、身も心もボロボロ。自分の力ではどうしようもないので、2年前のことを思い出し、鍼灸の力を借りようと来院されたのです。

Yさんの状態は、あまりにも思い悩んだ結果、気血を生み出しスムーズに流してくれる「脾経」の働きが損傷されたために「月経不順」となり、心もうまく静養できなくなったために「不眠」となってしまいました。

その空虚な心を埋めようと、無意識のうちに夜中にお菓子を食べてしまい、それが消化しきれないうちに寝てしまうため、消化不良が常に生じ、それが「痰熱」を生み出しますます「不眠」を増強していました。

寝られない上に、体重も増加したために、身体はますます重く、だるく、気持ちも憂鬱になり、あらゆることによる悪循環を引き起こしていました。

Yさんの治療は、補気養血を行い、心が落ち着くようにするために「脾兪」「心兪」「神門」「三陰交」、化痰和胃の目的で「豊隆」「中脘」「内関」「天枢」を使い調整をしました。

2年前も「婦宝当帰膠」にて元気が出たというYさん。今回も漢方薬を飲んだ方がいいか訊ねられましたが、もう少し気持ちが落ち着き、夜食も止められるように心の整理がついてからの方がいいと判断し、そのように伝えました。

治療後のYさんの目には、少し光が見え始め、自分である程度立ち直れる力が出てきているように感じられました。だからこそ、まずは自分の力で立ち直り整理できるところまでは自分の力で行い、その時点で少し足りない部分を漢方薬で補った方がYさんにとっては良いでしょう。

すぐに「自分のせい」「もっと自分が頑張ればいいんだ」と思ってしまうYさん。2年前も頑張りすぎて、精神科のお薬から抜け出せなくなってしまいました。もうそれを繰り返さないで欲しい・・・!もう頑張らずに嫌なことから逃げたらいいのです。頑張ってしまうYさんには、逃げるくらいでちょうどいいはずなのです。

今回来院されたYさんの傍には、心配して彼氏がついてきてくれていました。将来一緒になるかもしれないことを考えると、早くにこの状態から脱出し、月経周期も整い、以前のように明るい笑いの耐えない元気なYさんに戻って欲しいと強く感じました。

少しずつ、決してがんばらないで、一緒に出口を探していきましょうね。