漢方治療の良いところ
不妊や生理不順、更年期障害などの治療のために、婦人科で使用されるホルモン剤はたくさんあります。
大きく分けた分類でも「性ステロイドホルモン剤」「排卵誘発剤」「GnRHアゴニスト」「ドーパミン製剤」「甲状腺ホルモン剤」があります。こんなにも多くの種類があるかと思うほどのホルモン剤が用意されています。
そしてそれぞれを月経周期に合わせて「何を」「どのくらい」使用するか、は医師の「匙加減」に寄り異なり、「それが技術なのだ」とある婦人科医は言っています。この医師は、あらゆるホルモン剤を細かく使用していくことで、妊娠へと導いていくようです。
41歳Sさん。新しく掛かった婦人科医より「脳下垂体機能不全」であることが不妊の原因だ、と言われました。
今まではそのようなことを言われたことがなく、原因不明の不妊症だと思っていたのが、この病院で初めて病名がついたのです。
そこでSさんから「この病名がついたのですが、漢方薬は変わるのでしょうか?」との問い合わせ。
西洋医学では「脳下垂体機能不全」であれば、「FSH(卵胞刺激ホルモン)」や「PRL(乳汁分泌ホルモン)」「LH(黄体刺激ホルモン)」のどれのバランスが悪いかを血液検査でチェックし、それに対して「HMG剤:ヒュメゴン・パーゴナルなど」「抗PRL剤:テルロン・パーロデルなど」「HCG剤:ゴナトロピンなど」を投与することになります。
しかし漢方では、Sさんの不妊の原因はあらゆる症状や望診、舌診などより「腎虚」として捉えているために、その病名がついたからといって、漢方の処方を変えることはありません。
「腎」がしっかりすれば、先天の気が強くなると共に、体の生殖機能が回復し、結果として衰えてきた下垂体の機能も回復するのです。
どんな場合でもこれは言えることで、体のバランスが崩れたことで、機能が衰え、何かの症状が起きるわけですが、その「崩れたバランス」を整えるようにしていくことで全ての機能が回復していくものです。
「病気」を追うのではなく、「体全体のバランスの崩れ」を見つけ、それを改善していくように持って行くのが東洋医学であり、漢方治療です。従って、「病名」がつかなくても治療ができ、体を元気にすることができるのです。これからの予防医学には見逃せない治療法です。