もしも、あなたなら・・・

少し寂しい話です。

お2人目をご希望だった28歳のTさん。

3周期漢方薬を服用されて、めでたく妊娠されました。嬉しい便りとともに安胎のお薬をご希望でしたので、まずは2週間分郵送し、その後の様子を見てもらうことにしていました。

それから2週間経って、もうお薬はなくなっているはずなのに、Tさんより連絡がありません。飲み忘れて残っているのか、様子を伺っているのか、と思っていたところに、Tさんより暗い声で電話が入りました。

「その後の経過はいかがですか?順調に育っていますか?」

その問いかけに対する、Tさんのお答えは次のようなものでした。

「それが・・・、3つ子だったんです。」

Tさんは2人目は欲しかったのだけれども、4人も子供は要らないのだと言われました。確かに双子でも大変なのに、3つ子で、結果的に1人お子様がいらっしゃるので、一気に4人も子供ができてしまうのですから、体力的にも経済的にも大変でしょう。

多胎が最近多く見られますが、その原因は、不妊治療により「排卵誘発剤」を使用することにより、排卵卵胞数が増加することや、「体外受精」や「顕微授精」の時に子宮に複数の卵子を戻すこと、によるものです。

しかし最近の婦人科医は、多胎をさけるようにしていると聞きます。

それは、妊娠中毒症や妊娠合併症の起きる率があがること、早産になる率があがること、低体重時になる率があがること、経済的な負担があがること、などの理由によるもののようです。不妊専門の婦人科医は不妊治療にあたり、多胎をいかに防ぐかということに注意しているとも言われています。

それであるのにTさんの場合は、「排卵誘発剤」により、排卵卵胞数が増加し、排卵前の卵胞で同じくらい大きくなっている卵胞が3つ確認されていた、と言われていましたので、明らかにその結果が予測できたことだと思われます。

それであれば、今周期は見合わせて、卵胞が1つしか育っていない時を見計らったり、いつもそのように複数の排卵卵胞が育つのであれば、「排卵誘発剤」の使用を止める、などの処置ができたかと思うのですが、その指導がなかったことに疑問を感じました。

もし双子以上の多胎という結果になった場合には、上記の理由より「減数手術」をすることを勧める婦人科医が多いようです。

今は、「減数手術」という手術も行えてしまうほどの技術がある世の中になってしまったが故の選択です。

先のことを考えると、多胎は母体にも胎児にも負担がかかり、もし無事に出産できても将来経済的に負担のかかることにはなります。

ただ「できない」ために「欲しい」と願ってきて、せっかく宿った命なのに、そのいくつかの命を絶ってしまうのは辛いことです。しかしどの選択を取っても、悔いを残してしまうことにはなるのでしょう。

もしこれが自分だったら・・・。どの選択をするでしょうか。