65人に1人

「65人に1人」・・・さて何の数字でしょうか?

それは日本での統計で、新生児のうち体外受精で産まれた数です。

少子化対策としてどんどん技術が進んできた不妊治療。恵まれないカップルにとってその進歩は、大いに喜ぶべきことです。しかし、その裏側では、費用の面、倫理問題、安全性などまだまだ問題点は多くあり、結局その治療に踏み切れないカップルが多いのではないでしょうか。

一般的な不妊治療法には、次のようなものがあります。

★「タイミング法」 ・・・ 卵胞のチェックなどにより排卵期を予測し、指導が行われる

★「ホルモン療法」 ・・・ 卵胞の発育促進や排卵誘発の注射や服薬が行われる

★「人工授精(AIH)」 ・・・ 元気な精子を選び、子宮に入れる

★「体外受精(IVF)」 ・・・ 精子と卵子を取り出し、体外で受精させ、受精卵を2~3日培養してから子宮に戻す

★「胚盤胞移植」 ・・・ 体外受精と同じ過程だが、体外で受精卵を5~6日培養してから子宮に戻す

その中でも費用の面でも肉体的・精神的にもリスクを負う体外受精の成功率を上げるために、胚盤胞の技術が日に日に進んでいるようです。

ただ一度にいくつもの胚盤胞を子宮に戻すために、多胎妊娠が頻発してしまうことが難点です。

その辺は、まだまだ進歩が必要な分野でしょう。

また、体外受精をする際に、その取り出した卵子の質をあげることはなかなか出来ないことです。年齢と共にやはり質が少しずつ悪くなってしまう卵子。それを「質の良いもの」にするために、大いに手を貸してくれるのが漢方薬なのです。

西洋医学の高度技術と共に漢方薬の力を借りると、体外受精の成功率20%、胚盤胞の成功率30%のパーセンテージはもっと上がるはずです。せっかく大きな代償を払っての治療なのですから、早くに成功させたいですよね。是非漢方と共にお試しください。

蛍石

6月に入ると、あちらこちらで「蛍」の便りを聞くようになります。

宇治にはまだまだ水の綺麗な場所がたくさん残っていて、少し車を走らせれば、川の涼しそうなせせらぎと美しい河鹿蛙の鳴き声が聞こえる暗闇の中に、たくさんの黄金の小さな光が漂う風景に出会うことができます。

とても幻想的な光景です。その黄金の光は漂いながら光っては消え、また光る・・・を繰り返しています。思わず掴んだ蛍を手のひらの籠に入れてみると、手のひらで光るその姿からは、何とも言えない自然の力を感じるものです。

その蛍にちなんだ名の付く石、「蛍石」。これは漢方薬の「紫石英」の原料です。

漢方では「重鎮安神薬」として「不妊症」「不正出血」の改善のために使用されます。

37歳のMさん。ピックアップ障害と診断され、着床すらもしない状態。AIHをするものの成功せず、体もどちらかと言うと弱いほうだったために、漢方による周期療法の力を借りながら体質改善をしつつ臨もうと、2年前に来店されました。

その頃のMさんは全体的に体温が低く、高温期の伸びが悪いうえに安定しない状態でした。

そこで、「婦宝当帰膠」と「参茸補血丸」を全周期出しつつ、高温期に「蛍石」である「紫石英」などを加えて調整していきました。

少しずつですが、Mさんの体力はついていき、体温も上がり、高温期も安定するようになってきました。

そして2年が過ぎました。

しっかり体調を整えた結果、Mさんは元気になり、以前より生き生きし、何でも前向きに考えられるようになったのです。

その2年間を長いと感じるか、短いと感じるか・・・。Mさんはそれほど長くは感じられていなかったようです。

ゆっくり底上げをした2年の末に、Mさんの体の中に小さな光が灯ったのです。まるで蛍が光るように・・・。

そして今は、その小さな光は静かに少しずつ大きくなり、確固としたものになってきています。Mさんも今はあまりわからないけれども、何か小さいけれども灯っているその光が、だんだんMさんに語りかけるのが感じられてきているようです。

「蛍」が幸せを運んで来てくれたようです。

着床前診断

やっと妊娠したのにまた流産・・・。

流産した時一番辛いのは、やはりママとなるはずだった当本人。なのに周りからは「養生が悪かったから」とか「何かしたのではないか」などと攻められることが多いものです。

それが何度も繰り返されると「私には育てる力がない」と自分を責め、落ち込むこともしばしば。

しかし流産する率は結構高いもので、妊娠した人の1割強にそれは起きることなのです。また流産を繰り返すと「習慣性流産」という名が付けられてしまいますが、だからと言って妊娠・出産できないわけではありません。

ただ、何度も流産を繰り返すと、心身ともに負担が大きいために、弱気になり、諦めてしまう人もいるようです。

そこで、今年の春、日本産婦人科学会は、遺伝子に問題があるために流産を繰り返してしまう率を低くするために、「着床前診断」(体外受精時の受精卵の遺伝子を調べる診断)を習慣性流産の患者にも適用されるように認めました。

受精したからと言ってその卵を無条件に戻すのではなく、流産しにくい受精卵を見極め、それを母体に戻すことができれば、流産する可能性は低くなるはずです。

もちろん、流産を繰り返す原因は、その遺伝子の異常ばかりではなく、母体の体質である「抗リン脂質抗体」ができてしまう自己免疫疾患、子宮の奇形、ホルモンの乱れなども関わっています。

何が原因となるのか、を突き止めれば、それに対する西洋医学的アプローチも漢方的アプローチも十分可能です。

今まででも「抗リン脂質抗体」ができる自己免疫疾患の人が、西洋薬と漢方薬を共に服用しながら妊娠約10ヶ月を乗り越え、無事出産された例は多くあります。西洋薬だけではその抗体ができるのを防ぐには少し力不足で、一方漢方薬だけでもその力は少し不足しているのです。この場合は、どちらも併せて治療を行っていくのが一番良い結果に繋がるように思えます。

是非、それぞれに合った治療法で、繰り返す流産を食い止めましょう!

待ち遠しいもの

4月に子宮筋腫の手術を受けた37歳Yさん。

筋腫は3cmとそれほど大きいものではありませんでしたが、子宮内部に突出しているために、妊娠を希望するのであればそれが存在することにより、着床障害となり、妊娠する確率は極めて低いものだったために手術を決意されたのでした。

また妊娠と言うことばかりでなく、それが存在することで、月経血がかなり多く、定期的なサイクルで鉄欠乏症貧血になることもあり、閉経までの何十年間をも考えての決意でもありました。

手術後は「田七人参」、併せて「婦宝当帰膠」を飲んでもらいました。

そしてYさんの生理周期である28日目に通常の生理が来ました。

手術をしたときの周期がちょうど高温期になった頃だったために、通常のように内膜は肥厚し、手術によりあまり損傷を受けなかったために予定通りの来潮でした。

しかし、次周期の28日目。症状は排卵期にはオリモノもあり、高温期も少し短かったものの期間としては存在し、体温が下がり低温期になったかのように見えましたが来潮せず、そのまま次の周期へと入ってしまったようでした。

本来月経期であるはずの期間に「冠元顆粒」の力を借り、様子を見ましたが、結局生理は来ませんでした。このまま低温期が続くのか・・・?

周期14日目。体温は高温に。そして14日間の高温期を経て、体温は下がりました。

そして待ち遠しかった生理が来ました!

前周期は体温から見ると、ホルモンのバランスは整っているように見えましたが、実際は子宮内の働きは追いついていなかったのか、Yさんの精神的なストレスが原因なのか、生理が飛んでしまいましたが、今週期で快復したことが見て取れました。

その快復まで服用したものは「婦宝当帰膠」のみ。周期に合わせて、その量を増やしたり、減らしたりすることで調整し、周期を整えました。

婦宝当帰膠」に含まれる「当帰」「茯苓」「黄耆」「芍薬」「党参」「地黄」「川きゅう」「阿膠」は、女性の体のバランスを整えるための優れた生薬です。「婦宝当帰膠」に含まれるそれらの生薬の働きをうまく利用すれば、これ1本で体調を整えることが可能です。是非、お試しください。

漢方のおかげ

4月に体外受精(IVF)をし、それと同時に漢方を始めた41歳Sさん。

まずは「IVFの受精卵の着床と安胎のための漢方を服用すること」からSさんの漢方療法は始まりました。

その結果、初めての「妊娠陽性反応」、4月末には「心拍確認」と、トントンとステップを踏むことができました。

しかし、このままどんどんステップアップできるように見えたその歩みは、5月初めに止まることになりました。末広がりで縁起の良い数字のはずの「8週目」の出来事でした。

止まってしまった小さな命の成長は、Sさんに悲しみをもたらしましたが、今までここに至ることも経験できなかった初めての「その出来事」は、次の大きな命へと繋がる希望となったことは言うまでもありません。

掻爬手術後、子宮内を綺麗な状態に戻すために、次の月経まで「婦宝当帰膠」「冠元顆粒」「爽月宝」を続けてもらいました。

そして6月初め、生理が来たのです!今までなら毎月生理が来る度に落胆していましたが、今回の生理は待ちに待ったものでした。

産婦人科の医師からは、「今月はまだ生理は来ないでしょう」と言われていただけに、この早い快復にはSさんも心躍る気持ちでした。なぜなら、41歳のSさんにとって、ひと月ひと月が大切で、快復するのに時が掛かりすぎたり、元に戻らず傷ついたままになるなんて想像もしたくないことだからです。

生理が来て、体がリセットされましたが、まだ完全な快復まではあと2ヶ月は必要でしょう。あと2回生理を迎えたら、またステップを踏み出す計画です。

次は、「質の良い卵」のための漢方薬も服用しての「踏み出し」ですので、きっと「大きな命」へと繋がることでしょう。

今月からSさんの「大きな命」へ向けて、本格的な漢方による周期療法が始まります。進むべき道に光が差しているようです。

あがた祭り

宇治の県(あがた)神社で行われる有名な「くらやみ祭り」。今晩行われます。

明かりを消した真っ暗な夜中に、梵天を乗せた御輿がお旅所から神社までを練り歩くので「くらやみ祭り」と名づけられています。

平等院の北と南に神社が2つあるのですが、北にある橋姫神社は「縁切り神社」、南の県神社は「縁結び」や「安産」にご利益があるようです。

その南の県神社の「くらやみ祭り」は暗闇だからこその無礼講で、男女が盛り上がるようですが、こんな状況設定も「縁結びの神様ならでは!」なのでしょうか???

またその昔は「下の病気を治してくれる神様」としても知られ、多くの人たちが県神社を訪れたとか。

いつもは気づかず通り過ぎてしまうほどの小さな神社ですが、今日のこの日ばかりは注目され、全国各地からこの「奇祭」を見るために多くの観光客が訪れます。

この「縁結び」と「暗産」の神様は、「不妊の病」は治してくれるのでしょうか?一度聞きに行ってみないといけません!

立てば芍薬・・・

「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」と美しい姿を花に例えて言われたこの言葉。その言葉通り、芍薬が咲く姿は可憐で美しいものです。

少し前の時期から芍薬が咲いています。その花は姿だけでなく、姿が見えないところでもそれがあることを気づかせてくれるように、とても甘い良い香りがします。その香りからも花の美しさを感じ取れるものです。

しかし、芍薬はその花ばかりが魅力的なのでなく、その「根」も私達女性の強い味方となってくれる薬を生み出すものなのです。

「芍薬の根」は様々な薬に使われ、「滋養作用」を利用した薬としては、血虚症状の生理不順や虚弱体質などには「当帰」「茯苓」などと配合した「当帰芍薬散」、月経不順に用いられる「阿膠」「人参」などと配合した「温経湯」、血虚改善の基本薬の「物湯」に「当帰」の量を増やし、もっと調経作用と補血・補気作用を持たせた「婦宝当帰膠」、病後の体力改善には「十全大補湯」などがあります。

どれも周期療法でよく使用するお薬です。

見た目も美しい「芍薬」。それは自分自身の美しさを見せるだけでなく、その「根」は私達女性をも健康で美しくしてくれるのです。

素敵な誕生日

昨年の誕生日に180日目で待ちに待った生理が来たYさん。

その180日間はYさんにとって辛い日々でした。

そこに至るまでの数年間も、様々なことがYさんに起こっていました。

もともと生理不順気味だったYさんは、25歳の結婚後3年間、不妊治療を受け、あらゆるホルモン剤を服用したり、投与したりしていました。そのうちにYさんの不妊治療に対する心配が不安へ、そして恐怖へと変わっていき、精神不安定になり、安定剤を服用する毎日となってしまいました。

更なる体調不良に拍車をかけたのは、腹腔鏡による内膜症検査でした。お腹の下に穴を開け、そこから腹腔鏡を入れ、検査が行われました。結果はなにも問題なし。

しかしそれ以降、原因不明の下腹部痛に襲われ、病院に痛みを訴えると「痛み止め」や「安定剤」を処方されました。「卵巣に血が溜まっている」と注射で血を抜かれることも何度かありました。

何のために、何の薬を飲んでいるのかわからない日々が過ぎていきました。

そして気づいたときには以前はニ相性だった体温が、かなり激しい波状型になっていたのです。刺々したその体温表の形を見るたびに、心が痛み、気持ちも刺々しくなり、時には泣いたり、時にはやる気がなく落ち込んだり、夜は興奮して寝られず、この気持ちをどこへ持って行ったら良いのかわからず不安な毎日が過ぎていきました。

そして生理が来なくなりました。

生理が来なくなって3ヵ月後、漢方を飲み始めました。

Yさんの場合は、月経周期を整えることよりもまずは気持ちを落ち着けるような「安神作用」のあるものが必要でした。また卵巣が腫れていることを沈めることも大切でした。使ったのは主に「婦宝当帰膠」「シベリア人参茶」「感のう丸気」「シベリア霊芝」。

そして約3ヶ月目の180日目の誕生日に、体温表はまだ刺々しいけれども生理はやってきました。

あれから1年。

体温表は刺々しいのは治まり、高温期が来ると、必ず生理が来るようになりました。でもまだ周期は65日や70日といったところ。

しかもまだ原因不明の下腹部痛は、周期的にやってきます。まだ気持ちが落ち着かない日があり、そんな時は必ず手のひら足の裏は火照った状態になるのです。そのような状態の時は、Yさんには鍼灸治療が良く効きます。

「来週誕生日ですよね?来週、生理が来ますよ。」

その言葉通り、今年もYさんの誕生日には生理がやってきました。62日目でした。もう一歩ですね。でも焦らずにゆっくりと。

黄体化未破裂卵胞(LUF)克服!

黄体化未破裂卵胞(LUF)は、無排卵症の1つです。この症状は「子宮内膜症」であった場合に、多く見られるものです。その他「骨盤内炎症性癒着」「多嚢胞性卵巣」などでも見られます。

2年前に結婚された41歳のMさんは、黄体化未破裂卵胞(LUF)と診断を受けていました。

この症状は、卵胞の発育は認められるものの、卵胞が破裂して排卵が起こるべきであるのに排卵せず、そのまま卵胞が黄体化します。無排卵であるけれども卵胞が黄体化するために、基礎体温は高温期となり、基礎体温表を見る限りではあたかも正常な2相性に見えるのです。

排卵障害であるために、何回かの治療の末、Mさんが最終的に選んだ治療法は「体外受精(IVF)」でした。しかし、それでも良い結果は得られませんでした。

そして途方にくれた今年の春、漢方で妊娠し、出産したという友人に思い切って相談してみました。そしてその友人が勧めてくれたところが当店だったのです。

Mさんは遠方にお住まいでしたが、新幹線に乗って、遠いところを来店くださいました。

よく話を伺ってみると、IVFの治療に行き着くまでに一度妊娠され、流産されていました。つまり、ご自分の中に妊娠できる力をお持ちなのです。それでは尚更ホルモン漬けの治療ではなく、自分の力を引き出すような治療が一番だと思われました。

まずはしばらくホルモン治療をお休みしてもらい、漢方一本化による治療を始める約束をしてもらいました。

Mさんの周期療法の治療のターゲットは、「卵巣の膜が厚いこと」「子宮内が熱いこと」を改善することでした。

主に使用したのは「冠元顆粒」と「水快宝」。

「活血」「破血作用」のあるそれらの薬を月経周期毎に少しずつ配分を変え、他の薬と併せることでその働きの相乗効果を計りました。

漢方を始めた1周期目から明らかに体温の変化が見られました。今まで波状型だった低温期が安定し、それにつれて、高温期も安定しだしました。ドオルトンを使用していた以前までのものとは、全く異なるものでした。

そして3周期目・・・。

おめでたです!

この言葉は、いつ何度聞いても嬉しい「響き」です。

一度流産された経験がおありですので、これからも念には念を重ねて10月10日を過ごさなければなりません。これからもしばらく漢方と共に、小さな命を育てていきましょう。10月10日後の元気な産声を聞くために。

ドオルトン・プラノバール

「ドオルトン錠」と「プラノバール」は、「卵胞ホルモン」と「黄体ホルモン」の配合薬で、いわゆる「ピル」と呼ばれる薬です。

もともとピルは「錠剤」という意味の英語で、通常は避妊目的で使用されているものです。それが「不妊治療」に使用されているというのが何だか不思議な気がしますが、使用目的が同じであるから異なる治療に使います。

その目的は、月経周期をコントロールすることです。一定期間服用し、子宮内膜を充実・維持させた後、服用を中止し、月経を起こさせるというものです。不妊治療の際には内膜が肥厚しだす高温期の初めから服用を続けることで、高温期を維持させ周期を整えるようにしていきます。

このような目的で使用される「ピル」ですが、問題点は「副作用」です。「吐き気」「嘔吐」「不正出血」などが主な症状ですが、もっと恐い副作用が「血栓症」です。

その発症は、タバコを吸う人に率が高いようですので、「ピル」を使用しているときは、タバコを避けたほうが良さそうですね。もちろん「不妊治療」をされている人には「タバコ」は避けてほしいものですが、どうしても止められない人で、「ピル」による治療をしている人は、危険です。是非止めてください。

一方、「ピル」の服用により、「子宮体がん」「卵巣がん」の発症率は下がるようです。しかしながら「乳がん」「子宮頚がん」は発症率が高まるようです。

どちらにせよ、ホルモン剤の治療をされている人は定期検査を受診するようにしてください。