贈り物

2年ほど前から漢方による体質改善を始め、真面目に毎日漢方を飲み続けていた33歳Hさん。それまでは30歳を越えた頃より、病院での不妊治療に通っていました。

病院での診断は、子宮腺筋症。子宮の内側にしかないはずの子宮内膜組織が、なんらかの原因で子宮筋層内にもぐりこみ、増殖する病気です。病院のすすめで子宮腺筋症の部位の核を取り除く手術を行いました。

その手術後、月経痛や月経過多から開放され、待望の我が子に巡り会うことができるものだと期待に胸を膨らませていたHさんでしたが、現実はそう簡単なものではありませんでした。月経過多の症状からは少しは解放されたものの、代わりに下痢をしやすくなり体に力が入らなくなってしまいました。

そんな状況下で人工授精を行いましたが、やはり結果は無駄となり、兆しすらも見えないことにHさんは不安を抱かずにはいられませんでした。そして、「妊娠しやすい体づくり」を掲げている漢方薬の扉を叩くことになったのです。

初めは弱弱しいHさんの体を立て直すために、「補中益気丸」「杞菊地黄丸」から初め、徐々に体質の改善を計っていきました。

あれから2年、途中何度も何度もくじけそうになりながら、いくつもの山を乗り越えてきました。

今、Hさんのお腹の中には先日体外受精をした受精卵が宿っています。先日陽性反応が出たばかりのホヤホヤの妊娠です!Hさんにとっては初めての妊娠です!

今日、仕事帰りの旦那様がHさんの安胎薬を取りに来られました。

何とかこのまま妊娠が続いて欲しい!

その強い強い思いが旦那様の目や声から感じ取ることができました。今日は日本では女性から男性にチョコを送る日となっているバレンタインの日。Hさんのご家庭では旦那様がHさんにチョコよりももっと大切な贈り物が手渡されました。

この強い「思い」は、家庭と結婚の神の「ユノ」そして「バレンタイン」に届き、きっとこの日にちなんで叶えてくれることでしょう。

妊娠中の出血

妊娠中に出血すると、危険事態です!妊娠初期、後期を問わず、出血したら早めに産科を受診してください。

問題なければ漢方の「田七人参」「衛益顆粒」などをお勧めしますが、時として重篤な疾患である場合がありますので、注意が必要です。

妊娠初期の出血は、着床出血や不要な内膜が剥がれ落ちた出血や流産の可能性など、割合としては高いものですが、妊娠後期の出血は今まで順調だったところに突然「出血」と「下腹部痛」が起こり、そう頻繁に起こるものではありませんので、注意が必要です。

妊娠後期の出血の原因として多いものは、「子宮頚管ポリープ」、「腟炎」などですが、重篤なものとしては、「早産」、「前置胎盤」、「常位胎盤早期剥離」などの疾患がありますので、早くに診てもらう必要があります。

早産は37週未満で分娩が始まることですが、その後の新生児のケアは新生児集中治療室(NICU)にて行われることになります。

通常は2,500g未満を低出生体重児と言いますが、その出生体重が300gを超えた場合は、NICUにて蘇生を行いケアしていく必要があります。300gと言えば、小さすぎる大きさです。その手の大きさは10円玉ほど。それでも命があるのです。母親にとってはかけがえのない命なのです。

晩婚・晩産化で35歳を過ぎて出産する女性、また不妊治療による多胎出産が多くなっているために、超未熟児での出産、疾病をかかえての命、など多くのリスクが付きまとってきます。しかし以前なら救えなかったその命も、NICUの進歩により助かる割合が9割になったと言われています。

いろんなリスクを乗り越えてこの世に産まれようとしている命。その命を無駄にしないように、妊娠中のあらゆる変化には耳を傾けて、問題なくこの世に出てこられるようにしてあげてください。

危険だった出産

「出産」とは新しい命がこの世に産まれるとても感動的な瞬間です。しかし本来は危険を伴うもので、とても慎重にすべきことなのです。

昔は「出産」そして「産後」は血の道症にならないように気を使ったものです。ところが現代では産後すぐに動き回ったり、仕事を始めたりと無理をする人が多いように感じます。その時の「無理」が何年後かの体調不良や極度の冷え性などに繋がったりするのです。

そのようなことにならないように、産前そして産後も「婦宝当帰膠」をすすめています。

最終回が近づく「チャングムの誓い」。前回ではスゴン様の感動の出産場面がありました。「風熱」に罹っているために出産が危険だったスゴン様。

妊娠後期の6~7ヶ月もしくは分娩時に、突然四肢(全身)の痙攣、人事不省が起こる「妊娠癇証」または「子癇」と言われる症状です。

多くの場合、発病前に頭痛、眩暈、目のかすみ、全身倦怠、腹部脹満、下肢や両目の浮腫などの症状が現れます。スゴン様も眩暈があったり、分娩時に下肢の浮腫症状がかなり出ていました。

「風熱のため」となっていましたので、おそらく舌は「黄膩苔」だったのでしょう。

スゴン様が分娩時に失神した際、鍼治療では、気付けに「水溝(すいこう)」、高ぶっている熱を冷ますために「右行間」、分娩促進のために「合谷」への刺鍼を行っていました。

今の現代医学ではこのように難産になって母子共に危険な状態になった場合は、帝王切開をするためでしょうか、こんな生死を彷徨うような危険な出産は数少なくなりました。しかし、出産は出産。危険を伴い、気血を失うものです。

産後は気血が元に戻るまでは療養し、元気に育児ができるように気をつけて欲しいものです。

ムスク

香りの陳列棚によく見かける「ムスク」の文字。

もともとこのムスクは、ジャコウジカの雄が発情期に雌を誘うために少量ずつ分泌する分泌物から取ったものです。そのムスクそのままの臭いを直接嗅いだら、鼻が大変なことになるくらい臭い代物です。

ところがこれを何千倍にも薄めると、芳香を放ち、ヨーロッパや中近東では香料として使用されてきました。それが陳列棚に並ぶ「ムスク」の由来です。有名どころでは「シャネルの5番」の原料になっているとか。

中国では貴重な薬用として使用されてきました。高価なことで有名な「麝香(じゃこう)」です。

漢方では「開竅」「活血」「催産」の効能があり、意識障害や脳卒中、狭心痛、分娩促進、小児の発熱や痙攣などに使用されます。難産や後産が遅れたときには肉桂と併せて「香桂散」として使用したりします。

つまり「開竅」「活血」作用がありますので、緊張して締まっているものを開き、巡らす働きをするのです。

先日問い合わせいただいた妊娠中のOさん。

妊娠してから気が巡らず咽喉がつまる感じが続くために、ある漢方薬局にて相談したところ「麝香」を処方されたと言われました。

ご自分で調べたところ、「妊婦は禁止」の文字が目に入り、本当のところはどうなのか、という相談を受けました。

お薬によっては、大丈夫であるけれども安全のために「妊婦は禁止」と記されているものもありますが、「麝香」は違います!まさに「催産作用」があるわけですから、分娩を促進し、流産の可能性を大きくしてしまいます。危険です。すぐに服用をストップしていただきました。

Oさんの探究心と早急な問い合わせにより、危険を去ることができましたが、そのまま飲み続けていたらどうなっていたのでしょう。怖いことです。

どんなことでも不審に感じたり、疑問を持ったら、すぐに問い合わせをしてください

出生前診断

出生前診断には、「母体血清マーカー試験」、「羊水診断」、「絨毛診断」、「超音波診断」などがあります。

出生前に胎児がどの様な状態にあるのかを診断するのはとても大切なことですが、中でも医療関係者の中でも意見がわかれているのが「トリプルマーカー検査」です。その検査により、障害の可能性があると判断された場合、中絶するか否かを迫られることになります。

その検査を行う前の医師のインフォームド・コンセントが十分に行われる必要がある検査だと言えるでしょう。しかし実際はそれが不十分であることが多いようです。

妊娠後間もなく肺炎に罹り、仕方なく抗生剤を使用した40歳Tさんは、医師の言葉にもめげずその検査は行わず、無事に出産、元気な赤ちゃんを出産されました。

もしかしたらこれが初めで最後になるかもしれない妊娠・出産を大切にしたかった、というTさんの思いからの判断でした。その後、どのように子供が育っていくのかは、まだわかりませんが、Tさんは家族に囲まれ過ごすことの出来る幸せな時を楽しんでおられます。

37歳Kさん。出生前診断にて溶連菌に感染していることがわかり、出産時に赤ちゃんに感染しないよう点滴による薬投与による出産となりました。

妊娠中は胎児には影響もなく、感染もしないのですが、出産時に感染してしまう可能性があり、もし感染すると子供が「敗血症」になる可能性が出てくると言われていますので、要注意です。

Kさんは無事に出産されましたが、子供への影響は今のところまだわかっていません。

妊娠・出産は母子共に危険を伴う一大事なのです。決して35歳以上の高齢妊娠・出産に限らず上記のようなことは起こるものです。しかし35歳以上、40歳以上になっても、何もなく母子共に元気に過ごすこともできるのです。

元気に妊娠・出産できるように、妊娠する前から健康に気をつけ、無理なく体を動かし、頭をつかい、早寝早起きして、丈夫な体作りをすることが大切ですよね。

乾姜人参半夏丸

病院の治療と漢方の周期療法の末にやっと妊娠し、心拍も確認できたSさん。

今までの辛い治療の末に授かった命。しかし次に待っていたのは辛い「悪阻(つわり)」でした。

それは赤ちゃんが元気に育っているという証なのですが、その背景には実は「貧血症」「胃障害」「子宮後屈」「神経症」などの要因があるのです。

従って、割合として不妊治療をしているなど、赤ちゃんの出来にくい人にはその症状がよく現れるように感じます。

Sさんの場合もその症状は強いものでした。Sさんは通っている病院で「乾姜人参半夏丸」を処方され、服用していました。しかし一向にその症状は治まりません。

確かにこの「乾姜人参半夏丸」は、金匱要略に「妊娠、嘔吐止まざるは乾姜人参半夏丸を主る」とあり、「小半夏湯」や「小半夏加茯苓湯」などを用いても止まない嘔吐にはこれを用いる、とあります。

しかしこれを使うときには、その症状がかなり時期を経過した「重症」の段階で、全身虚弱、腹部は軟弱、脈は細、食事も服用もできないような症状の時なのです。

Sさんの場合は、そこまで長い経過を辿ったわけでもなく、しかもその薬を服用すると、余計にむかむかする、というのですから明らかに異なる証と言えるでしょう。つまりそれを飲むことにより、胃を温め、結果として余計に気持ち悪くなる、ということが起きているのです。

こんな時には、どちらかと言えば熱を冷まし、むかつきを抑えるようにする方が良いでしょう。

その他にも「悪阻」を軽減する漢方薬は様々あります。熱がある、痰を吐く、口渇がある、脈遅、生唾がたまる、下痢、腹痛など、現れている様々な症状により、処方するお薬も異なります。早くに辛い症状から開放されるためには、しっかり合ったものを服用することです。

妊娠中のアトピー

もともとアトピー体質の人は、妊娠前には治まっていたアトピーが妊娠すると再発し、酷くなってしまうことが多くあります。

それは「妊娠」ということが、通常よりも血流を悪くしてしまうからなのです。「熱」もこもりやすくなるために、アトピーにより生じた熱が、外に出にくく、結果として症状を悪化させてしまうことになってしまうのです。

しかし、西洋薬はそう容易く妊娠中には飲めるものではありません。そこで強い見方が漢方薬なのです。

漢方薬の量を加減し、安全に使用することで、安胎や丈夫な赤ちゃんが育つことにもつながり、アトピーをはじめとする妊娠中の症状を改善することにもうまく働いてくれます。

今回お問い合わせの妊娠4ヶ月のYさんにおすすめしたのは、安胎にもアトピーにも良い組み合わせの「衛益顆粒」「天津感冒片」「涼血清営顆粒」です。

妊娠されているYさんの症状だけでなく、お腹の中の赤ちゃんの将来のお肌のためにも早めにそれらの漢方にて改善されるのが望ましいです。赤ちゃんが大きくなり、お肌のことで悩むことのないように。

赤ちゃんの姿

胎児の姿を見る方法はいろいろとあります。

2次元の「エコー」、それに奥行きをつけ、胎児の立体画像がみられる「3D超音波」。さらに胎児の3Dの立体画像を短時間で連続的に見せることで、リアルタイムの胎児の動きがみられる「4D超音波」です。

「3D超音波」では胎児の顔、手足が立体的に見られ、胎児の体表や骨の異常も診断することも可能となっています。

それに動きの加わった「4D超音波」では、胎児が指しゃぶり、背伸び、あくびなどをする様子が見られ、より動きの異常や心臓の動き、内部構造までも解析可能で、より詳細な診断が可能となっています。

「4D超音波」で動く姿を見ていると、もう赤ちゃんらしい顔をして、しっかり生きているのが見て取れますので、よりお腹の中で赤ちゃんが育っていることの実感が得られます。

今朝、秋篠宮妃紀子さまが男の子を出産されました。待ちに待った男の子。これで雅子さまの心が落ち着かれると良いですね。

「3D」「4D」などの今の超音波の技術では、かなり早い時期から性別がわかるようです。本人が希望しない限り、病院側としては性別を知らせないようですが、紀子さまの場合もきっと早くからわかっていたのではないでしょうか。

もちろん、跡継ぎ問題など抱えている家柄の人にとっては、性別は大変なことなのでしょうが、母親になる身としては、どちらでも子供は子供。可愛いものです。

早くから自分の赤ちゃんの動きを見ることのできる超音波。その姿を見ながらその子がこの世に産まれる前に、ぷれママ達は、しっかりと親となる心構えをするのでしょうね。

血栓も恐くない!

抗リン脂質抗体を持っている33歳Mさん。妊娠はするのだけれども抗リン脂質抗体があるために、流産を繰り返してしまいます。

この抗体を持っていると、血液凝固が亢進され、血栓形成が起こりやすくなります。仮に妊娠した場合、妊娠週数が進むつれて、胎盤内の絨毛間膣やその周辺の小さな血管には、血液の凝固因子が増加しているのですが、そこに抗リン脂質抗体が反応すると、子宮胎盤循環不全を起こして、流産や死産という結果になってしまうのです。

従ってこの抗体を持っている人が妊娠すると、血栓をできにくいようにするために、低用量のアスピリン、副腎皮質ステロイドホルモン、ヘパリンを使用しながら妊娠が継続されるように持って行きます。また、それらの西洋薬に加えて使用され、有効なのが「漢方薬」です。

Mさんの場合も、繰り返す流産を何とかしたい、と問い合わせをされました。もちろん病院でも保険適用の漢方薬が出ていたのですが、何回も繰り返す悲しい結果に耐えられず、保険は適用しないけれどもしっかりと保胎できる漢方薬を望んでのことでした。

まずは「妊娠しても大丈夫な母体づくりをすること」から始めました。保胎できない原因には、抗体を持つことが大部分を占めていますが、それだけでなく、Mさん自身の保胎能力も少し足りないことも原因であるために、その部分も強めるように調整していきました。

そして5ヵ月後、妊娠陽性反応です!

しかしMさんの場合は、これからも大変です。今までのことを繰り返さないように、病院でのお薬に併せて、漢方薬を加えることで血栓予防に努めました。

通常はこのような場合には「冠元顆粒」を使用しますが、あまり強く作用すると返って流産を招きかねませんので、使用したのは「心サージ」です。

それに含まれるグミ科の「サージ(沙棘)」は、貧弱な土壌や厳しい環境の中でも生育できることから「生命の実」「砂漠の人参」とも呼ばれているものです。その実と果実から抽出したフラボノイド成分が、血液のトラブルを解消してくれます。

「生命の実」と言われるだけあって、その実から抽出した「心サージ」を口にすることで、Mさんの体内に宿った小さな「生命」も生き続けることができています。この世の生命となるのも、もう少し。「生命の実」は次の生命のために、今も働き続けています。

自宅出産のために

妊娠9ヶ月目のHさん。

昨年漢方の周期療法を3周期続け、めでたく妊娠されたHさんですが、赤ちゃんが確認できた頃から赤ちゃんの方向があっち向いたりこっち向いたりと、ちゃんと下を向いていることがなかったそうです。

「そのうちにちゃんと下を向くようになるので大丈夫ですよ」と医師や助産師より言われていたようですが、9ヶ月経っても上を向いたまま。

Hさんは、助産師による自宅出産を希望していて「もし逆子であれば自宅出産はできない」と言われているらしく、そろそろ治さなければならない時期になってきました。

しかし自分で逆子体操をするけれども一向に治る気配が見えず、困った末に助産師に「逆子の鍼灸治療を受けてみては?」と勧められ、当店の鍼灸治療に来られました。

原因として考えられることは、この暑い夏の冷房により足元が冷えたこと、暑いのであまり動いていないこと、がありますが、妊娠半ばに左の尾てい骨横の仙骨部に圧痛が走るようになり、それ以来、同じ姿勢で居ると腰痛のような痛みに襲われる、ということも気になるところです。

男の子を出産される予定ということですので、尚更その仙骨部の痛みがネックになるような気がします。

逆子を治すことで、その痛みは軽減することが考えられますので、まずは逆子を治すことを中心にお灸を行い、自宅でも自分で毎日行ってもらうように「棒灸」を持って帰ってもらいました。

お灸を自宅で続けてもらうこと、そして運動不足の生活から脱出してもらうために、暑くない時間帯で木陰を最低1時間は歩いてもらうこと、を指導しました。

妊娠して体が重たく、余計に暑く感じますが、体を動かさないとめぐりが悪くなり、赤ちゃんの環境にもよくありません。しっかりそれらを続けることで、赤ちゃんの居心地が良くなり、逆子も治り、念願の自宅出産ができることでしょう。