自宅出産のために

妊娠9ヶ月目のHさん。

昨年漢方の周期療法を3周期続け、めでたく妊娠されたHさんですが、赤ちゃんが確認できた頃から赤ちゃんの方向があっち向いたりこっち向いたりと、ちゃんと下を向いていることがなかったそうです。

「そのうちにちゃんと下を向くようになるので大丈夫ですよ」と医師や助産師より言われていたようですが、9ヶ月経っても上を向いたまま。

Hさんは、助産師による自宅出産を希望していて「もし逆子であれば自宅出産はできない」と言われているらしく、そろそろ治さなければならない時期になってきました。

しかし自分で逆子体操をするけれども一向に治る気配が見えず、困った末に助産師に「逆子の鍼灸治療を受けてみては?」と勧められ、当店の鍼灸治療に来られました。

原因として考えられることは、この暑い夏の冷房により足元が冷えたこと、暑いのであまり動いていないこと、がありますが、妊娠半ばに左の尾てい骨横の仙骨部に圧痛が走るようになり、それ以来、同じ姿勢で居ると腰痛のような痛みに襲われる、ということも気になるところです。

男の子を出産される予定ということですので、尚更その仙骨部の痛みがネックになるような気がします。

逆子を治すことで、その痛みは軽減することが考えられますので、まずは逆子を治すことを中心にお灸を行い、自宅でも自分で毎日行ってもらうように「棒灸」を持って帰ってもらいました。

お灸を自宅で続けてもらうこと、そして運動不足の生活から脱出してもらうために、暑くない時間帯で木陰を最低1時間は歩いてもらうこと、を指導しました。

妊娠して体が重たく、余計に暑く感じますが、体を動かさないとめぐりが悪くなり、赤ちゃんの環境にもよくありません。しっかりそれらを続けることで、赤ちゃんの居心地が良くなり、逆子も治り、念願の自宅出産ができることでしょう。

思わぬトラブル

いつもは起こらない「痔」。妊娠後半になってくると、「痔」が発症することがよくあります。

妊娠後半になると、お腹が張ってくるので「便秘」になることが多いものです。反対に下痢になるのは危険ですので、便秘の方がまだ良いのかもしれませんが、やはり便秘は辛いもの。そして便秘になるだけでなく、それがきっかけとして、肛門や直腸静脈の流れを妨げることになり、うっ血することで「痔」が起こってしまいます。

でもそんなときに西洋薬の「下剤」を飲めば、「下痢」になる可能性があるために危険です。そんな時は、なぜ便秘になったのかの部分を個人に寄って見極め、調整してくれる漢方が安心です。

さて、「便秘」を通り越して「痔」になってしまった時、これも早くに対応しなければなりません。

もし「便秘」もまだあるのであれば、原因となった「便秘」を先に治します。「便秘」を治しつつ、「痔」には外用薬の「紫雲膏」を塗るか、座薬の「紫雲膏座薬」を使うことで、早期に改善します。

妊娠に関わらず、少し頑張り過ぎたときに「痔」が発症する人には、根本治療として「槐角丸」を続けることで再発しないように体質の改善が可能です。

妊娠すると、自分の弱い部分に負担がかかり、常のトラブルが起こりやすくなります。また「飲んで良いお薬」にも制限がかかります。できれば常の体のトラブルは、妊娠前に改善しておきたいものです。

偏頭痛の対策

もともと偏頭痛持ちの32歳Nさん。今までは偏頭痛が起きると気持ちが悪くなり、嘔吐してしまうので、そうなる前に痛み止めのロキソニンを服用していました。

しかし妊娠中のNさんには西洋薬の痛み止めは、服用することができません。だからと言って、偏頭痛はなくならず、定期的にその症状が訪れるのです。その症状が訪れると、会社を休み、家では嘔吐を繰り返す日々でした。

たまたま近くまで仕事に来られていたKさんは、「鍼灸治療」の看板を見て来店されました。しかし求められた治療は、「鍼灸」でも「漢方」でもなく、「指圧」の治療でした。

Kさんの症状を診ると、その偏頭痛は主に左の肩から後頭部にかけてのもので、その部分がかなりの緊張状態になっているために起こるものだと思われました。

通常であれば、Kさんのタイプから「痰湿中阻」と捉えられ、その改善方法としては「燥湿化痰」を行い、ツボとしては「風池」「中脘」「豊隆」などを使用するのですが、Kさんは現在妊娠中ですので、それらのツボは使用できません。

しかし全体の流れをよくし、溜まっている「湿痰」を除かないことには今後おそらく「妊娠中毒症」が出てくることでしょう。

従って、「三陰交」をうまく使い、運化機能を上げることで流れを良くしてその症状を和らげるようにし、上部背部の夾脊穴、安胎のツボの「至陰」を調整していきました。週1回の治療です。

その後、時々「偏頭痛が起きるかな」という感じはあっても、以前ほど嘔吐するような酷い症状は出ていないようです。

先日来店された際には前回の検診で、逆子だったとのことでしたので、逆子の治療を加えました。治療の最中に赤ちゃんがグルッと動き、元に戻ったようです。おそらく職場の冷房で足が冷えたためでしょう。

妊婦さんは、これから暑い夏の冷房には足を冷やさないように気をつけてください。赤ちゃんの環境が悪くなってしまいます。

眩暈や眼瞼痙攣

妊娠中や産後に起こりやすい症状として、「眩暈(めまい)」や「眼瞼痙攣(がんけんけいれん)」などがあります。

どちらも「血虚」という証で、特に産後はケアをしっかりしておかないと「血の道症」として、後々まであらゆる不調を引きずっていくことになります。

その多くは「虚証」のため、治療は「益気養血」を目的として行います。

鍼灸治療では、「三陰交」「足三里」を主として手法を行い、眩暈などの症状がある場合は、「印堂」や「百会」を調整することで急性の症状を落ち着かせます。

漢方治療では、「熟地黄」「白芍」「当帰」「竜眼肉」「阿膠」などの生薬を組み合わせて治療を行います。

補血剤と理気剤の入った「四物湯」、「四物湯」に「阿膠」「党参」「茯苓」「黄耆」「甘草」などにより「補気」の力を加えた「婦宝当帰膠」、補気重視の「帰脾湯」、補血重視の「参茸補血丸」などをその原因や体質に合わせて使い、調整していきます。

妊娠中から眼瞼痙攣や眩暈などの症状で悩まされているというママ達、今のうちに早めに対処される方が良いです。

今後、2人目、3人目のお子様を出産されるときに、違う症状が出たり、今の症状がもっと酷くならないようにするためにも、お早めにお問い合わせください。

妊娠中のトラブル

妊娠中のトラブルで、悪阻の次に多いのは「便秘」です。

赤ちゃんがお腹の中にいることで、通常よりもお腹が張るために便秘でお腹が張るのか、何なのかわからなくなってしまい、気がつくと「そういえば、ここ3日間出てない!」といったことが良く起こります。

市販の便秘薬は、妊娠中はあまり使用しないほうが良いものです。

なぜならば、便秘薬を使ったことで反対に下痢になってしまうと、妊娠中は「下痢」は危険症状となるからです。くれぐれも気をつけてください。

まずは薬に頼る前に、自分の力で解消することが一番です。

中国の医師が推薦していることとして、次の事があります。

 ★ハチミツとごま油を練って、スプーンで食べる
  ・・・ハチミツは自然のものを使用してください。
    ごま油も純度の高いものを使ってください。

また、一般的に言われる解消法としては、

 ★ヨーグルトを空腹時に食べる
 ★朝起き掛けに「さ湯」を1杯飲む
 ★リンゴ果汁をつくって汁だけ飲む(カスは捨てる)

などの方法をオススメしています。

それらのことをやっても便秘がきつい時は、是非安全な漢方薬をお試しください。

下剤ではなく、腸の働きを助け、腸内の水分がうまく調整されるようにする漢方にて、お辛い便秘を解消します。

是非ご一報ください。

むくみ

妊娠9ヶ月33歳のKさん。

ご結婚8年目の一昨年の11月より漢方による周期療法を始められ、半年服用された昨年の5月に妊娠されましたが、その後、小さな命は育つことなく残念な結果となってしまいました。

「お血」の症状が強かったKさんには、月経期に「冠元顆粒」「田七人参茶」「爽月宝」「桂枝茯苓丸」などの薬をそのときの周期で症状に合わせて調整していった結果、その症状が随分と改善された頃のことでした。

しかしその後、ぱったりと来店されなくなり、どうされたのかと心配しているうちに月日が経っていきました。

そして今日、妊娠9ヶ月で「むくみ」が酷くなったとのご相談で来店されたのです。お話を伺うと、昨年5月の初めての妊娠後、またすぐに妊娠され、今日に至ったとのことでした。

妊娠中の「むくみ」は、この梅雨の時期から夏にかけて、臨月を迎える人に多い症状です。外気の「湿気」に釣られて体の中にも「湿気」が溜まり、巡りが悪くなる結果、「むくみ」が生じるのです。

また夏になって、お腹も大きく暑いために冷房の部屋にいることが多くなり、その結果、汗が出にくくなり、足が冷え、結果として「むくみ」が生じることが多くあります。

Kさんはもともと「お血症」のために巡りが悪い体質で、そこに「妊娠」という巡りが悪くなることが起き、結果として足が冷え、季節が伴って、むくみが生じたと思われます。

お薬は「当帰芍薬散」と「猪苓湯」をおすすめしました。

来月予定日のKさんにとって、あと1ヶ月を快適に過ごしてもらうために、「むくみ改善」の漢方を出しました。もちろん妊娠中でも大丈夫なものです。これが漢方の良いところなのです。

味覚の変化

妊娠すると、今まで大好きだったものが嫌になったり、変なものが食べたくなったり、味覚の変化が見られることが多いものです。

その症状の中でも良く耳にするのが、「ご飯の炊く匂いが嫌になる」というもの。みんなが口を揃えてそう言うのは、「自分は悪阻でムカツキがあって辛いのにみんなのご飯を作らないといけない!」という気持ちが、少しでもあるからかもしれませんね。

ではヨーロッパなどあまりご飯を炊く習慣のない国では、「パンを焼く匂い」が嫌になったりするのでしょうか?国それぞれの「妊娠中の味覚の変化」があるのかもしれません。是非皆様のお国事情を教えてください。

漢方を約1年間服用し、やっと妊娠された36歳Sさん。

妊娠したことは嬉しいのだけれども心拍が確認されてから、時々やってくる悪阻の症状に悩まされています。しかし悪阻と言えども全く食べることができないほどではなく、通常の一般的な悪阻程度。

ですので、いつもなら「少し苦手」だったものが、「やっぱり苦手」に昇格したくらい。

妊娠発覚より、Sさんが服用している「婦宝当帰膠」「双料参茸丸」「衛益顆粒」。

その中でも「少し苦手」だった「双料参茸丸」。悪阻の症状が出るようになってからは、その嫌度のランクが格上げし、「やっぱり嫌」に。

いくらこの薬が効き目があるからといっても、一度「嫌だなぁ」と思ったら、もう駄目です。お薬も気持ちよく、楽しく服用してもらった方が良いですので、そのように感じた時は同じような働きをするものにお薬を変更します。

双料参茸丸」は口の中で噛み砕くように服用しますので、口の中にその香りが広がります。それが妊娠中のSさんにはもっと耐えられないものとなっているようですので、同じように「腎」を補う飲みやすい丸剤に変更しました。

そのうちに悪阻もマシになり、味覚が元に戻ったら、元のお薬に変更することになるかもしれませんが、それも体調をみながら調整していきます。

人によって症状は様々ですので、嫌な思いをすることなく安胎のお薬を服用し続け、安全に心配なく出産することができるようにサポートしていきます。

もちろん妊娠中でなくても苦手なお薬があれば、是非お知らせください。変わるものを提案し、体質改善プランが計画通り進むようにしていきます。

切迫流産

最近、妊婦さんで「切迫流産」と診断される人が多いようです。

妊娠22週までに赤ちゃんが母体から外に出てしまうことを流産といいますが、出血や下腹部痛のような症状がありながら、流産にはなっていない状態のことを「切迫流産」といいます。

一般的には胎児が正常に発育しているにもかかわらず出血があるケースを指すことが多く、適切な治療により正常の妊娠経過に戻ることができるようです。投薬治療としては、「止血剤」「子宮収縮抑制剤」「HCG」「黄体ホルモン剤」になります。漢方薬では「衛益顆粒」「帰脾錠」を服用することが多いです。

この「切迫流産」になってしまう妊婦さんが多く、治療方法は「安静にすること」であるために、仕事を突然休職しないといけなくなったり、家事が何もできなくなってしまいます。最近の夫婦は共働きが多く、妊娠してもいつものように仕事を続けて無理をしてしまうから「切迫流産」が多くなっているのでしょうか。

「安静にすること」ができれば問題がないので良いのですが、このような状態になるまでに何とか無理をしないように、冷えないように、気をつけて欲しいものです。

昨年夏から漢方の周期療法をしている33歳Mさん。

「排卵障害」があるとのことでしたので、「排卵期」に「冠元顆粒」「爽月宝」などをしっかり使用し、それに加え、「卵胞期」に質の良い卵ができるように工夫を重ねていました。

そして、自然妊娠で今月に妊娠の報告を受け、順調に順調に時が経ち、やっと先日心拍が確認できた矢先のことです。

「出血したので病院に行ったら、『切迫流産』との診断を受けた」とのこと!

今のところ、心拍も確認できていますので、出血したのは赤ちゃんからのものではなく胎盤からのものですので大丈夫でしょう。安静にしていれば大丈夫なのですが、「安静以外に何かするべきことはないでしょうか」との質問をMさんから受けました。

もちろん、「保胎の漢方薬」はそのまま服用をつづけてもらい、その上で、無理をしないこと、お腹や足を冷やさないこと、に気をつけてもらうようにするとともに、もし余裕があれば、お腹に繋がっている「三陰交」と「至陰」の「お灸」をススメました。

これで無理をしなければ無事出産まで辿り着けるはずです。不安定なこの時期は、まだまだ長い道のりのように思えますが、安胎期に入ればトントンと進んで行くことでしょう。それまではゆっくり安静にしていてください。

不育症って?

「妊娠したのに赤ちゃんが育ってくれない・・・。」

そんな声を最近良く耳にします。

いわゆる「不育症」という症状ですが、その原因は、いくつかあります。

まずは母体のホルモン分泌異常があり、黄体ホルモンの分泌異常(分泌不足)、甲状腺ホルモンの異常、糖尿病などがあげられます。また、子宮そのものの問題もあり、子宮の形が変わっていたり、子宮筋腫などもあげられます。さらに、母体に免疫的な異常があるもので、血流障害、血栓などを引き起こす「抗リン脂質抗体症候群」もあげられます。

いずれの場合も血液検査や検診でその原因を突き止めることができます。3回以上続けて流産をした人は、「不育症」の検査を受けることをおススメします。その原因により、西洋医学的なアプローチも漢方的なアプローチもそれぞれの原因によって、その対処法が変わってきます。

まずは検診を受けてから、次のステップに移りましょう。

もしも、あなたなら・・・

少し寂しい話です。

お2人目をご希望だった28歳のTさん。

3周期漢方薬を服用されて、めでたく妊娠されました。嬉しい便りとともに安胎のお薬をご希望でしたので、まずは2週間分郵送し、その後の様子を見てもらうことにしていました。

それから2週間経って、もうお薬はなくなっているはずなのに、Tさんより連絡がありません。飲み忘れて残っているのか、様子を伺っているのか、と思っていたところに、Tさんより暗い声で電話が入りました。

「その後の経過はいかがですか?順調に育っていますか?」

その問いかけに対する、Tさんのお答えは次のようなものでした。

「それが・・・、3つ子だったんです。」

Tさんは2人目は欲しかったのだけれども、4人も子供は要らないのだと言われました。確かに双子でも大変なのに、3つ子で、結果的に1人お子様がいらっしゃるので、一気に4人も子供ができてしまうのですから、体力的にも経済的にも大変でしょう。

多胎が最近多く見られますが、その原因は、不妊治療により「排卵誘発剤」を使用することにより、排卵卵胞数が増加することや、「体外受精」や「顕微授精」の時に子宮に複数の卵子を戻すこと、によるものです。

しかし最近の婦人科医は、多胎をさけるようにしていると聞きます。

それは、妊娠中毒症や妊娠合併症の起きる率があがること、早産になる率があがること、低体重時になる率があがること、経済的な負担があがること、などの理由によるもののようです。不妊専門の婦人科医は不妊治療にあたり、多胎をいかに防ぐかということに注意しているとも言われています。

それであるのにTさんの場合は、「排卵誘発剤」により、排卵卵胞数が増加し、排卵前の卵胞で同じくらい大きくなっている卵胞が3つ確認されていた、と言われていましたので、明らかにその結果が予測できたことだと思われます。

それであれば、今周期は見合わせて、卵胞が1つしか育っていない時を見計らったり、いつもそのように複数の排卵卵胞が育つのであれば、「排卵誘発剤」の使用を止める、などの処置ができたかと思うのですが、その指導がなかったことに疑問を感じました。

もし双子以上の多胎という結果になった場合には、上記の理由より「減数手術」をすることを勧める婦人科医が多いようです。

今は、「減数手術」という手術も行えてしまうほどの技術がある世の中になってしまったが故の選択です。

先のことを考えると、多胎は母体にも胎児にも負担がかかり、もし無事に出産できても将来経済的に負担のかかることにはなります。

ただ「できない」ために「欲しい」と願ってきて、せっかく宿った命なのに、そのいくつかの命を絶ってしまうのは辛いことです。しかしどの選択を取っても、悔いを残してしまうことにはなるのでしょう。

もしこれが自分だったら・・・。どの選択をするでしょうか。