蛍石
6月に入ると、あちらこちらで「蛍」の便りを聞くようになります。
宇治にはまだまだ水の綺麗な場所がたくさん残っていて、少し車を走らせれば、川の涼しそうなせせらぎと美しい河鹿蛙の鳴き声が聞こえる暗闇の中に、たくさんの黄金の小さな光が漂う風景に出会うことができます。
とても幻想的な光景です。その黄金の光は漂いながら光っては消え、また光る・・・を繰り返しています。思わず掴んだ蛍を手のひらの籠に入れてみると、手のひらで光るその姿からは、何とも言えない自然の力を感じるものです。
その蛍にちなんだ名の付く石、「蛍石」。これは漢方薬の「紫石英」の原料です。
漢方では「重鎮安神薬」として「不妊症」「不正出血」の改善のために使用されます。
37歳のMさん。ピックアップ障害と診断され、着床すらもしない状態。AIHをするものの成功せず、体もどちらかと言うと弱いほうだったために、漢方による周期療法の力を借りながら体質改善をしつつ臨もうと、2年前に来店されました。
その頃のMさんは全体的に体温が低く、高温期の伸びが悪いうえに安定しない状態でした。
そこで、「婦宝当帰膠」と「参茸補血丸」を全周期出しつつ、高温期に「蛍石」である「紫石英」などを加えて調整していきました。
少しずつですが、Mさんの体力はついていき、体温も上がり、高温期も安定するようになってきました。
そして2年が過ぎました。
しっかり体調を整えた結果、Mさんは元気になり、以前より生き生きし、何でも前向きに考えられるようになったのです。
その2年間を長いと感じるか、短いと感じるか・・・。Mさんはそれほど長くは感じられていなかったようです。
ゆっくり底上げをした2年の末に、Mさんの体の中に小さな光が灯ったのです。まるで蛍が光るように・・・。
そして今は、その小さな光は静かに少しずつ大きくなり、確固としたものになってきています。Mさんも今はあまりわからないけれども、何か小さいけれども灯っているその光が、だんだんMさんに語りかけるのが感じられてきているようです。
「蛍」が幸せを運んで来てくれたようです。