晩秋の始まり

今年は閏(うるう)年のために、中秋の名月の十五夜がずれて、いつもなら9月半ばだったのが、10月6日でした。「十五夜」は「芋名月」とも呼ばれ、供え物に「里芋」が欠かせないものとなっています。

またその2日前の月の十三夜は「栗名月」ともいい、「十五夜」も含めて芋や栗など丸いものを食べることにより、丸い月にあやかり、幸せと健康が得られると考えられています。

本来は、「十三夜」と「十五夜」の両方の月を見ることを「お月見」とし、片方だけ鑑賞する「片見月」は忌む習慣もあるようです。

さてその十五夜が過ぎ、10月7日からは「晩秋」に入ります。中秋の名月までの時期に食べたら良い食べ物は、「スッポン」だと記しましたが、これからの時期に食べたら良い食べ物は、「豚」になります。

「秋」は五臓では「肺」に当ります。その「肺」を強めるものとして「豚」がよいのです。特に、秋の季節の変わり目に「喘息」がでるような肺気の弱い人は、質の良い豚肉を食べることをおすすめします。漢方では断然「冬虫夏草」がおすすめです。

またこれからの時期に「風邪を引きやすい人」は、「陽虚」であると捉えられ、それを補うためには「鶏」を食べて養生するのが良いです。

反対に、「陰虚」になっている人には「馬」が良いです。ホルモン治療を何回も何年も続けている人は、必然的に「陰虚」になり、基礎体温が上がってきてしまいます。そんな状態になった「腎陰虚」の人には「馬」がおすすめ。しかしあまり「馬」は食べる機会がありませんので、そんな場合は「なまこ」でも良いでしょう。

ただ、だからと言って、あまり食べ過ぎると逆効果ですので、気をつけてください。何でもバランス良く、食べることが大切です。

お薬では「瀉火補腎丸」、「杞菊地黄丸」などが使用されます。

ただお薬も食材と同じく、勝手に判断し服用し続けると、逆効果になることもありますので、その時の自分の状態にあったものが何なのかは必ず確認してください。

それは季節でも異なってきます。体は年中同じ状態ではありません。季節が変われば体の中もそれに合わせて変わります。

これから訪れる晩秋は、どんどん涼しくなり、徐々に乾燥してくる時期です。季節に合わせた養生法で、丈夫な体になり「妊娠しやすい母体づくり」を目指しましょう。

妊娠中のアトピー

もともとアトピー体質の人は、妊娠前には治まっていたアトピーが妊娠すると再発し、酷くなってしまうことが多くあります。

それは「妊娠」ということが、通常よりも血流を悪くしてしまうからなのです。「熱」もこもりやすくなるために、アトピーにより生じた熱が、外に出にくく、結果として症状を悪化させてしまうことになってしまうのです。

しかし、西洋薬はそう容易く妊娠中には飲めるものではありません。そこで強い見方が漢方薬なのです。

漢方薬の量を加減し、安全に使用することで、安胎や丈夫な赤ちゃんが育つことにもつながり、アトピーをはじめとする妊娠中の症状を改善することにもうまく働いてくれます。

今回お問い合わせの妊娠4ヶ月のYさんにおすすめしたのは、安胎にもアトピーにも良い組み合わせの「衛益顆粒」「天津感冒片」「涼血清営顆粒」です。

妊娠されているYさんの症状だけでなく、お腹の中の赤ちゃんの将来のお肌のためにも早めにそれらの漢方にて改善されるのが望ましいです。赤ちゃんが大きくなり、お肌のことで悩むことのないように。

月経期に排卵?

生理が始まったので、採卵のためにクリニックに行ったIさん。

まだ月経周期4日目にも関わらず、エストロゲンの数値が排卵期の400pg/ml近くで、排卵前だと診断されました。

それから3日後にはIさんの体温は、36度7分をすっかり超える高温となり、排卵後の高温期に突入していました。

このように低温期に入るまでに既に卵胞が大きくなり、周期1週間も経たないうちに排卵することはよくあることです。しかし今回のIさんの採卵予定は、次回に見送られることになりました。

なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

それは排卵促進剤などを使用したり、多嚢胞卵巣などの場合は、卵胞が多くでき、前周期で排卵しきれなかったものが残り、今周期の月経期に排卵された結果なのです。

今回のような場合は、卵胞は前周期のものではありましたが、しっかり排卵し高温期になりましたので、漢方の周期療法のお薬は「高温期」のものを服用することになります。

39歳のIさんは、今までに5回の人工授精、5回の体外受精をされ、たくさんのホルモン剤を使用してこられました。卵管に少しの癒着が見られるようですが、それほどこれといった問題もないのですが、人工授精や体外受精に数多く取り組んでこられました。

年齢的にも徐々に自分持つ卵巣の力が弱ってくる頃でもあるのですが、その際のお薬によりそれを更に弱めてしまっているように思えて仕方がありません。

ご本人も今回のような症状は今までにはなかったことから、だんだんと不安が募り、このまま何をどのように続けて行ったらよいのか、わからなくなってこられたようです。しかし年齢のこともあり、焦るばかり・・・。

同じように焦ってしまって、高度医療を進めていくうちに、そこまでバランスが崩れていなかったはずの身体のバランスを取り返しがつかないくらいまでも大きく崩すことになった人は多くおられることでしょう。

決して高度医療を止めるのを推奨するのではありません。

例えば、ホルモン治療などを3周期進めて、その後は、漢方などで身体の調整を3周期行い、また西洋医学の治療を進める、という形を取っていく方が良い結果に繋がっていますので、その方法を推奨したいのです。

治療の迷路に入ってしまった人は、今一度、一番良い方法は何なのか、立ち止まってお考えください。焦れば焦るほど夢は遠くなってしまいます。早くに夢を掴むためにも、早めの決断をしてください。

秋の便り

春にも多かった「便り」が今年は秋にも多くあるようです。秋が近づいてきたここ最近、「おめでたかな?」という微妙な便りと「おめでたです!」という便りが多く寄せられています。

この「おめでたかな?」と「おめでたです!」の違いは、「妊娠陽性反応がでた」と「心拍が確認された」の違いです。やはり「妊娠陽性反応」だけでは安心できず、胎嚢が見えて、心拍が確認されて始めて、ホッとします。

「陽性反応が出た」時に、今後の生活で何に気をつけたら良いのか、という質問を良く受けます。不妊治療や周期療法をしているから高温期が少し長めになった時にそのことに早くに気がつくのですが、通常は何も気がつかずに自然に生活している時期のはずです。

ですので、自然体で生活されるので良いのです。ただなかなか妊娠に至らなかった体のバランスが少し崩れている人は、保胎力が少し弱いものですので、なるべく飛んだり跳ねたり、振動のあるものに長時間乗っていたり、冷えるようなことをしたりすることには気をつけて欲しいものです。

また気持ちの安心とそれが確固とした結果になるために、心拍が確認されるまでは続けて高温期の漢方薬か保胎薬の漢方薬を続けてもらうのが一番です。病院ではほとんどすることがないのですから。もちろん抗リン脂質抗体を持っている人などは病院の治療も必要ですが、基本的には病院での受診が可能になるまでの期間はハラハラドキドキするだけです。

是非「婦宝当帰膠」「補血丸」「帰脾錠」「参茸丸」「衛益顆粒」などを組み合わせたお薬をお守りとして飲み続けてください。妊娠中も安心して飲めるばかりか、赤ちゃんを賢く丈夫にするためのお手伝いをしてくれます。

周期療法による体の調整の末に妊娠し、漢方を飲み続けていると「母親に『薬なんて飲んだら胎児に悪い影響を与えるから止めなさい』と言われた」と心配されて、お問い合わせがありました。

漢方薬は自然のものからできているもので、昔から保胎薬として飲み続けられ、何千年も問題なく現代まで受け継がれたものです。心配なく安心して飲み続けてください。元気な赤ちゃんと出会うためにも。

腰痛の原因

37歳Tさん。以前から腰痛持ち。

軽い腰痛は今まであったものの、この夏、仕事中に激痛が走り、その痛みは今までのものとは全く違うもので、そのまま動くこともできないほどで救急車で病院に運ばれました。

病院でレントゲンにて腰椎の検査が行われましたが、結局原因不明で退院。そしてそのまま日常生活を送っていました。

ところが、それからまた1週間後に同じような痛みが走ったので、今度は違う病院へ。

そして検査の結果、「おそらく卵巣が腫れていることが原因でしょう」との診断でした。

Tさんは3人の子供を出産しているのですが、その頃から卵巣が腫れていることは言われていたようですが、経過観察で今まで来ていたのです。今まではそれが何も問題なく存在していたために、何の処置も行っていませんでしたが、今回のような激痛が走るようになると、生活上支障を来たします。

ちょうど夏休み期間だったこともあり、Tさんはその手術をすることを決意されました。

そして開腹手術。

開腹してわかったことは、卵巣が腫れていたのではなく、卵巣の横が腫れる「卵巣傍嚢腫」が存在し、それが8cmにもなっていたこと、それに卵管が巻きつき引っ張っていたこと、そして子宮をかなり圧迫していたこと、などから激痛が起こっていたのでした。

腰痛と言ってもその原因は様々です。腰痛に限らず痛みの原因は、どこかにあるはずです。放置していたことにより、リスクが高まることは多くあることです。

Tさんの場合ももっと早くに原因がわかっていれば、経過観察の期間中、漢方薬にてその進行を防ぐことができたかもしれません。早めの原因究明は大切です。

体に良い海藻類

日本は海に囲まれた島だからか、昔から食卓には「わかめ」「こんぶ」「のり」「もずく」「ひじき」「てんぐさ」などが良く並び親しまれています。

海藻には食物繊維やミネラルを豊富に含んでいることから、健康食の1つとしてイメージされるものです。

少し前に「痩せる」としてブームになった「寒天」。これも海藻の仲間で、不溶性の食物繊維を含む「寒天」は、腸の働きを良くして便の量を増やし、水溶性の食物繊維を含む「わかめ」や「こんぶ」は、血液中の血糖値のコントロールをしたり、コレステロールの上昇を抑える働きがあるそうです。

「もずく」などのネバネバ部分には「フコイダン」が含まれ、これが胃腸粘膜の潰瘍の修正に役立ったり、抗酸化作用、抗癌作用もあるようです。

またこれらの海藻にはカリウムがたくさん含まれ、ナトリウムと拮抗関係にあるカリウムは、味の濃い外食や添加物のたくさん含まれた食品を食する機会の多くなった現代の日本人には、必要不可欠なものだとも言え、それをたくさん含む海藻はまた必要不可欠なものと言えるでしょう。

ただ何でも「やり過ぎ」「取り過ぎ」は禁物。「ひじき」に微量だけれども含まれる「ヒ素」。妊娠中にはその摂取量に気をつけないとならない「ヨード」を含む「こんぶ」。妊娠中に「ヨード」を摂取しすぎると、赤ちゃんの甲状腺機能低下につながるというので、注意が必要です。

何でも「バランスよく」摂取することが大切。何か良いのか、どんな働きをするのか、その食物の性質を知った上で口にすることで、体のバランスは取れるものです。健康な体作りの基本は、「食事」です。漢方も同じ考え方です。そのお薬の性質を知った上で、口にすることで、体のバランスを取り戻すのです。

食事のコントロールでも追いつかないくらい体のバランスが崩れてしまったときは、漢方薬や鍼灸の力を借りると早くに治ります。乱れた食生活は、胎児や赤ちゃん、子供にも影響します。今一度本当に体に良いものを見極め、今の体に必要なもの(こと)が何なのかを見つけてください。

漢方と共に

1年以上前に、ネットにて不妊の漢方相談をされた34歳Tさん。

ご結婚3年でなかなか恵まれないために、ご自分でネット漢方の処方を調べ、半年ほど「婦宝当帰膠」を飲まれ、生理に血塊があることから「月経期」には「冠元顆粒」、体温が低いことから「補血丸」、胸が張るので「炒麦芽」を服用されていました。

しかし良い結果に繋がらないために、自分には何がまだ足りないのかを教えて欲しい、とのご相談でした。

確かにTさんの体温は高温期でも36度5分、低温期になると36度前後ととても低い体温で、腎の陽虚不足であることが見て取れました。それを補うものを加えられたら良いでしょう、との返事をしました。

それから約1年半後、Tさんから授乳中で「乳腺炎」予防の漢方についてのご相談がありました。乳腺が細いのか、すぐに詰まってしまうようで、困っておられました。

1年半前にいろいろとご自分で漢方にて体質改善をされ、妊娠し、ご出産されたようです!良かったですよね!Tさんの傍にはいつも漢方があるようです。今回も私達のことを思い出して、お問い合わせをくださいました。

今回のご相談でおすすめしたのは「婦宝当帰膠」と「牛蒡子」です。ただ「牛蒡子」は苦くて、Tさんにとっては飲みにくいと感じられるようでしたので、それに「大棗」を少し混ぜて煮出すと苦味が少しまろやかになるために、それも併せておすすめしました。

いつもどんなときも力になってくれる漢方薬。時も場所も離れていても、いつでも、ご相談ください。お待ちしています。

スッポン

質の良い卵を作る大切な時期の卵胞期。これは「陰」と「陽」のうち「陰」の時期になります。

この「陰」の力がしっかりしていれば、良い卵ができ、排卵も自然とスムーズになり高温期もうまく保つことが可能です。

卵胞期の体温が波状型であったり、36度5分より高かったりすると、「陰の気」が乱れていると捉えることができます。その場合、漢方では様々なお薬を調整し、「陰の気」が安定するように持って行きます。

その中でも「陰」を補う薬として「補陰湯」の煎じ薬を当店では使用しています。この煎じ薬には「亀板」が含まれています。「亀板」の作用は、「補陰」「精虚熱」「補肝腎」で陰の気が足りない人にはとても良いものです。

通常使用される亀は、イシガメ科のクサガメの甲板を使用します。

同じ亀の仲間でも「スッポン」は、食すると「滋陰」「補陰」作用に優れているためにこれからの時期にとてもよいものです。特に、秋になる前の今の時期(中秋の名月の10月6日まで)に一度でも食べておくと、ここ1年間を元気に過ごせると言います。

来週の金曜日までに是非「スッポン鍋」を食べて、「陰の気」を養っておきましょう!卵胞期の安定のために、またこの冬を元気に過ごすためにも。

お腹の診断

江戸時代の古方派によって発展させられた「腹診」は、湯液治療や鍼灸治療では、診断の1つとして使用します。

ただ現代の湯液治療の場合は、店頭でお腹を見せていただくわけにはいきませんので、実際にはあまり診断方法としては使われていないのかもしれません。鍼灸治療では、お腹を拝見することが容易ですので、その診断も重要視します。

その中でも「小腹不仁(しょうふくふじん)」や「少腹急結(しょうふくきゅうけつ)」は婦人科疾患と深くつながりがありますので、不妊治療や生理不順などの治療診断では重要視する症状です。

「小腹」は下腹部のことで、おへその下の部分です。その下腹部に力がなく、フワフワとしているものを「小腹不仁」といい、漢方では「八味丸」が用いられ、鍼灸では「腎」の病と捉え治療することが多いのです。「腎」の力が弱るということは、「先天の気」が弱っているということで、生殖機能つまり「子供を産み育てる力」が衰えていることを現します。

また「少腹」は下腹部でも少し横側の下腹部のことで、「少腹急結」は主に左側に現れる抵抗や硬結のことです。これは「お血」があることを現しています。漢方では「桃核承気湯」が用いられ、鍼灸では「腎・肝・脾」のバランスが崩れていると捉え、治療します。

「お血」の腹証は、他にもあり、小腹(おへその下)に抵抗があったり膨満感がある場合もその証として捉えられます。漢方では「桂枝茯苓丸」が用いられ、この証は現代の女性で多く見られるような気がします。

「お血」が存在すると、キリキリとした痛みを伴います。生理痛や排卵痛などといった痛みは、これが原因です。生理の際の血塊も「お血」です。

「お血」を治療することで、痛みや冷えが解消し、結果として子宮環境が整い、妊娠しやすい母体となるのです。「腎」が弱るとそれを改善するにはある程度の期間を要しますが、「お血」は早期に改善されるものです。漢方治療や鍼灸治療をされ、2周期目で妊娠されたというスピード改善は、軽い「お血」が原因であったことが多いように感じます。「お血」は「ストレス」「体外受精の採卵」「手術」「流産」などで容易に出来てしまうものです。それが固定化してしまい、スピード改善がしにくくなる前に、早期に改善してください。

下腹を触って、「力がない」「コリッとしたものがある」など感じた人は、早くにお問い合わせください

ふあまり溜め込まないで

この現代社会で生きている私達にはストレスはつきものです。しかし反対に全くストレスがない状態も刺激がなく、おもしろくないものです。少しのストレスは、生活のスパイスになり、良いものなのです。

ただ、ストレスがあり過ぎて、発散せずに溜め込んでしまうと、体に様々な症状が起こってしまいます。

最近多く耳にするのが20代の「自律神経失調症」。そしてそれに伴う「生理不順」。

働き始めたばかりの新人で、社会の職場環境に慣れず、気がつかないうちに無理をしてしまった結果です。責任感が強く、完璧主義者である人がその状態に陥ることが多いように感じます。

また30代から多くなる「子宮筋腫」や「卵巣嚢腫」。

これが生じる原因としては、「お血」「痰湿」が根底にあることが考えられます。そしてその「お血」や「痰湿」はまさにストレスが積み重なることで生じるものなのです。もちろん全てがそれが原因であるとは限りませんが、それが多くある人に多く存在していることは確かです。

夫への不満、子供への苛立ちが激しかった数年間で卵巣嚢腫が出来てしまった、という例や、同居するようになってから子宮筋腫が大きくなってしまった、という例もあるほどです。

ストレスを溜め込むのはよくありません。それを発散させる方法を身につけておくことが、今の世の中で逞しく健康に生きていくためにはとても必要なことでしょう。

もし発散させる方法がなかなか身につけられない人、発散しきれない人、は少し漢方の力を借りてみるのも良いでしょう。

生理前に良く使われるお薬は、「逍遥丸」「血府逐お丸」「きゅう帰調血飲」「爽月宝」「水快宝」などがあります。

それらの漢方の力を借りることで、ストレスが引き起こす不調を体から追い出したり、寄せ付けないようにできるのです。

ストレス発散が苦手な人、発散が不十分な人は、体の中に溜め込まないで是非早めにご相談ください。後で、辛い思いをしないためにも。