芍薬甘草湯

月経周期を整える「周期療法」で、排卵期に使用する「芍薬甘草湯」。

このお薬の効能・適応症を調べると、「傷寒論」では、風邪の引き始め(太陽病)の症状で「脚攣急(脚がひきつれる)」を治す、また「拘攣し、急迫する者を治す」とあります。

これを応用し、「子宮の痙攣」、「痛み」などにはこのお薬を使用します。

また、「肝」がうまく働いていないために、筋肉が引き攣れ、排卵がうまくいかないような症状のときにも、「疏肝理気剤」であるこの薬を使用したりします。

お薬もそのものの本来の働きに注目し、それが体に及ぼす結果を応用して使用します。一般的なお薬の効能や適応から判断すると、疑問を持ってしまうかもしれません。しかし、その処方にはしっかりとした目的があるものです。

疑問を持ったときは、その処方をされた専門の先生に聞くようにしてください。お薬も自分で理解して納得した上で、服用してもらった方が効き目も倍増するものです。

冬虫夏草

昨日の「チャングムの誓い」の最後で紹介されていた「冬虫夏草」。

これは、中国の四川、貴州、雲南、チベットなどに産する蛾の幼虫に生えたキノコの一種です。コルジセピン、コルジセプス酸、ビタミンB12などが成分として含まれております。

また病後の体力低下や、虚弱体質の改善に「冬虫夏草」に「人参」「鹿茸」などを配合したものが「双料参茸丸」。

日本ではこの「冬虫夏草」は高級品としてあまり日常では目にすることはありませんが、中国圏では「不老不死」や「滋養強壮」のお薬として、食卓でも馴染みのあるものです。

以前中国に行ったときのことです。

中国の職場では常にお茶のポットが置かれていて、それを自由に飲んだり、掃除などをしてくれるおばさんがコップに入れてくれたりします。

そのお茶ポットを開けてみると、そこには・・・

お茶の葉に紛れた「冬虫夏草」がいくつか入れられていたのです!!!

中国ではお茶の葉に虫が沸いていることは良くあることですので、「ぎょっ!」と初めは思ったものです。

この様に、中国では日常的に健康のために一つ加えることをしているようです。それだから中国の人はお肌が綺麗なのでしょうか?

食が溢れている日本人の私達は、「毎日食べるその一口が、体を作っている」ということをもっと認識し、食生活の見直しをしないといけないようです。

1歩1歩

結婚5年目、29歳Aさん。昔から生理不順。

2年前より病院にて不妊治療をしているのですが、毎周期同じ事の繰り返し。人工授精も3回行いましたが、良い結果とはならず。体質も改善された感じもなく、遅々として進まないステップに頭を悩ませていました。

やはりこれには「体質改善が必要」と、漢方による治療を試みようと今年に入り、問い合わせをされました。

今まで病院の治療では、なかなか排卵しないために排卵誘発剤を処方され、排卵を促すことで、高温期そして生理を起こすようなものでした。

Aさんは「にきびが出やすい」「やや毛深い」などの症状より、「多嚢胞卵巣症候群」であることが把握できました。

Aさんは2年間も排卵誘発剤などによる治療により、月経周期を整えていたために、それを止めると生理が来なくなるのではないか、と心配されていました。確かに止めてすぐの次の周期は、少し卵胞期が長くなるでしょうが、徐々に改善していくのが通常です。

そこで、Aさんには卵胞期に「シベリア霊芝錠」と「杞菊地黄丸」を処方しました。

卵胞期は通常であれば9日間。

予想通り、Aさんの卵胞期は14日たっても高温期にはなりませんでした。

Aさんから「ちゃんと排卵するのでしょうか。高温期になるのでしょうか。」と心配の声が届きましたが、「心配しないで。」とそのまま卵胞期の薬を続けて処方しました。

そして20日目、「高温期になりました」との連絡がAさんより入りました。

Aさんは、自力で排卵できた感動とともに、やっと1歩ステップを踏み出すことができたことに喜びを隠せない様子でした。

これからどんどん1歩1歩ステップを踏んで行きましょう。

出荷の時期

今、高野山では「大和当帰」の出荷が行われています。

通常は、「当帰」の生薬を単味で使用することよりも、他の生薬を加味して使用します。

例えば、「当帰」に「川きゅう」「芍薬」「地黄」を加えた「四物湯」。これの「当帰」の配合を多くして「党参」「阿膠」などを加味したものが「婦宝当帰膠」。

月経不順などには「香附子」「益母草」などを加えた「きゅう帰調血飲」。

「更年期障害」などの症状には「柴胡」「牡丹皮」などを加えた「加味逍遙散」。

病後の体力低下には「人参」「黄耆」を加えた「十全大補湯」。

便秘には「大黄」「麻子仁」などを加えた「潤腸湯」。

この様に、まだまだたくさんの症状に使用される「当帰」は、日本で自給可能な数少ない生薬のひとつです。

毎年同じ場所では育てられないために、育てるためには広大な場所が必要となってきます。高野山に広がる赤土の土地ですくすく育つ「当帰」。その青々としたセリに似た当帰畑は、女性がいつまでも健康で美しくあるために応援してくれているようです。

漢方の力

31歳Kさん。結婚5年目。結婚当初は夫婦2人で楽しもうと避妊をしていましたが、3年目よりそろそろ子供のことを考え始めました。

年齢も20代で、すぐにでも授かるだろうと思っていたのですが、全く兆しも見えず、そして婦人科へ。

その結果は、高プロラクチン血症、排卵障害でした。その後通院されたのは1年間。行った治療は「『カバサール』を週1回服用すること」でした。『カバサール』はもともとパーキンソン病の治療薬としてのみ承認されていましたが、2003年4月に高プロラクチンの治療に対しても承認され、使われるようになっているものです。

Kさんは、タイミングを合わせては、毎回期待に胸を膨らませていましたが、やはり全く兆しも見えないまま時が過ぎていきました。

30歳を過ぎ、悶々としていた頃、ネットにて検索中『漢方による不妊治療』の文字が目に飛び込んできたのです。これだ!!!

早速メールにて問い合わせされたのが、昨年の7月。それ以降、周期療法による漢方治療を始められました。

当初のKさんの状態は、排卵がスムーズに行っていないために、高温期の立ち上がりが悪く、高温期の前半は体温が上がりきらず波状型の基礎体温表でしたので、黄体ホルモンの不足が考えられました。

そのため、排卵期に「五霊脂」や「冠元顆粒」「爽月宝」などの薬の調整を1周期ごとに行いました。

そんな中、10月、高温期初めに出血があり、婦人科では「排卵がうまく行ってないための出血」と診断されましたので、漢方薬は「田七人参」にて経過をみることにしました。

そして翌月、10月の出血は「子宮外妊娠」であったとの報告を受けました。

「子宮外」であったけれども始めての「妊娠」。今まで全く兆しすらなかった「可能性の芽」が吹き始めたことに、Kさんは長い冬を越えた後の「春の暖かみ」を感じられた様子でした。

この芽吹きの時を逃さぬように、また11月より体調を整え次回に望めるよう漢方治療は続きました。

そして、年が明け、旧正月を迎えた2月。Kさんよりメール。

「妊娠5週目です」と。

10月の「初めての可能性」はもう可能性ではなく、確実としたものに変わりつつあることが感じ取れた瞬間でした。

確実に「よろこび」を感じられる漢方薬。

もっと多くの人に、この「よろこび」を感じて欲しいと願っています。

目標までもう少し

今日は月1回の不妊の相談日。

今日来られた人は、

★とてもデリケートで、いろんな出来事により気持ちが乱れてしまう「気虚」のタイプ、

★細身で胃の弱いタイプ、

が多かったようで、いつもに比べて「帰脾錠」(「脾気虚」の人に)と「香砂立君子錠」(胃の弱い人に)の処方が多く出ました。

その他には、いつものように、

★「血虚」の人に「参茸補血丸」、

★「腎陰虚」の人に「瀉火補腎丸」、「杞菊地黄丸

が多く出ました。

「卵管が詰まっているし、もう卵なんてできないので、諦めなさい」と婦人科で言われた40歳のHさんは、卵ができるようになり、

漢方で妊娠できたけど、少し卵の力が弱くて流産された36歳のOさんが、次のチャンスへの体調調整をされていたり、

10年以上自力で生理が来なかった33歳のOさんが、4周期目の生理を迎えられ、そろそろ西洋医学との併用を考えておられたり、

月経周期が整ってきて、そろそろタイミングを考え出したり、

・・・と様々な人がおられます。

みんなぐんぐんと改善され、目標までにはもう少し力が足りないだけ。

早く良い知らせが聞ける様に、私達は知恵を振り絞っています。

これからなのに・・・

40歳のKさん。結婚5年目。

今までに人工授精を5回、体外受精を2回、顕微授精を1回。

いずれも良い結果には至らず、「漢方を試してみよう」と当店に問い合わせをされました。

Kさんは「冷え性」「便秘」「疲れやすい」などの症状をお持ちで、基礎体温は全体的に高めでした。排卵はあまりスムーズに行われていないようで、高温期への移行も階段状で、高温期も短め、全体的に周期も25日を切るくらいの短いものでした。

「高めの体温を下げること」「排卵をスムーズに行くようにすること」「高温期を長く保てるようにすること」が大切になってきます。まずは、「杞菊地黄丸」「爽月宝」「十全大補丸」などを中心に漢方を処方しました。

1周期が終わるたびに症状の変化と基礎体温票を連絡いただき、それに合わせて少しずつ処方を変更して体調が整うように調整していきました。

そして3周期服用されて、効果が出てきました。

高めだった基礎体温がちょうどよい体温に整い、短めだった低温期と高温期が長くなり、今までオリモノがあまりなかったのが、あるようになってきました。

ところが、Kさんより「今周期で漢方を止める」との意思を伝えられたのです。

せっかく体調が整ってきたのに、ここで止めると今まで調整してきたものが台無しになってしまいます。もう少し続けられたら、人工授精や体外受精をされても良い結果が得られるようになったかもしれません。

Kさんにしてみれば「早く早く」と思っている中の「3ヶ月も費やしたのに」というお気持ちが強かったのかもしれませんが、とても残念な気持ちでいっぱいです。

よく患者様より「どれくらい服用を続ければよいか」と聞かれますが、その時は「まずは最低でも3周期お試しください」と答えています。3周期服用されれば何らかの改善が見られるはずだからです。

しかし、「3周期で妊娠というよい結果が即出る」とは限りません。今までのホルモン治療が長ければ長いほど改善にかかる期間は長くなります。ただ漢方での改善は、長いようで結果的には近道の改善となるのです。

決して焦らずにじっくりと、ご自分の体の改善を見守ってもらいたいです。

風邪予防に!

「風邪の予防」に「手洗い」「うがい」は欠かせないもの。今まで「手洗い」「うがい」はあまり効果がないと思われていたようですが、最近、これらの行動により風邪を防ぐことが出来るということが改めて言われるようになりました。

また、近年流行っている「ノロウィルス」による「下痢」や「嘔吐」の症状も、しっかりとした「手洗い」により防ぐことができます。

もちろん予防接種も予防の1つの方法ですが、接種後の予防で日常使えて安全なものをおススメします。

板藍茶(ばんらんちゃ)」です。

「板藍茶」には、「板藍根(ばんらんこん)」という生薬が含まれています。

漢方では、「清熱涼血」「解毒」の効能があります。

近年、中国では、「日本脳炎」「インフルエンザ」「ウィルス性肝炎」などへの効能も研究され、「板藍根」の注射液なども開発されているようです。

この「板藍根」の入った「板藍茶」で、うがいをするようにして服用したり、お茶に溶かしてお茶として服用したりすることをお勧めします。

この「板藍茶」は、お子様でも妊娠中でも安心して飲むことができるものです。是非、風邪の流行るこの時期に、お守り代わりとしてお持ちください。

キバナオウギ

先週土曜日の「チャングムの誓い」で、万能薬として紹介されていた生薬の「キバナオウギ」。そのドラマの中では、なかなか栽培するのが難しく、明の国より高い値で買っているとされていました。

この「黄耆(オウギ)」は、その昔の薬の本である「神農本草経」の中でも「上品(良い薬という意味)」として扱われ、「表虚」の症状のときに「体表の気」を補う薬として記されています。

「裏虚」の症状のときに「五臓の気」を補う薬である「人参」とともに、「黄耆」を使うことで「補益作用」が増強され、元気をつける代表的な補気薬のひとつとして重宝されていました。

不妊治療の中でも、「低温期が安定しない」、「高温期が続かない」、「高温期が安定していない」などの少々身体の力不足の人には、この「黄耆」の入った漢方薬が使われます。

また、産後の「疲れ」による「貧血」や「腰痛」などにもこの「黄耆」の入ったお薬が使用されます。

昔も今も人間の生活スタイルは変わっても、人間にとって大切な「薬」は変わっていないのですね。

パキシルで先天異常増加?

先日は男性が「パキシル」を服用している時の副作用について記しましたが、今回は女性で特に「妊婦」が服用したときの影響について記します。

2000年11月より日本で販売されている「パキシル(塩酸パロキセチン水和物」。昨年の売り上げは420億円で、「抗うつ剤」として幅広く使用されるようになっています。

この「パキシル」を妊婦が服用した場合、他の抗うつ剤に比べ、「胎児の先天異常の発生率が高い」という調査結果がこの秋に発表されました。

現時点では因果関係ははっきりとはしない、と言われていますが、実際、調査では、妊娠3ヶ月までに「抗うつ剤」を服用した妊婦から産まれた子供の中で、先天異常発生率が約4%のうち「パキシル」服用での発生率は約3%であるというデータが取られています。

妊娠が確認されてからは通常一般の西洋薬は服用しないように言われますが、上記のデータからでは、妊娠が確認されるまでに服用していた場合にもその結果に繋がることを意味します。

妊娠の可能性のある女性は、なるべくこの様に作用の強いお薬は服用しないように気をつけてください。この世に生まれてからも元気に育つことができるように。