不妊治療支援に思うこと

ここ最近「少子化社会対策」としてますます広がる国や自治体、企業や民間の支援制度。

国や自治体は「助成の増額や期間の延長」を行ったり、企業は「低利融資や休業制度」を取り入れたりしているようです。

しかしまだまだ患者の負担は大きいもの。特に特定不妊治療は保険が適用されないためにその負担額はかなりのものになります。

この「特定不妊治療」とは、不妊治療のうち、高度生殖医療の「体外受精」と「顕微授精」を指します。

「体外受精」は一般的に、卵管が詰まっているなどの場合に、卵子と精子を取り出して試験管の中で人為的に受精させ、受精卵を子宮内に戻す方法で、「顕微授精」は精子無力症などの場合に、顕微鏡を使用し、精子を卵子の中に人為的に送り込む方法ですが、果たして、本当に、この方法をすべき人がこの治療を受けているのだろうか、と少し疑問に感じることがあります。

まだ20代であったり、十分に自分の力を引き出すことのできる30代でも、「生理不順」であるために、それを調整するためということで「ホルモン治療」が始まり、「人工授精」「体外受精」へとどんどんステップアップしていくケースが多くあります。

検査で卵管や精子などの異常が見られない場合でも、それが行われていることが多く見受けられます。「早い結果を」ということで、次の治療、次の治療・・・とそうせざるを得ないようになっていくようです。

2003年に生まれた新生児の65人に1人は体外受精児というデータが出ていますが、本当にこんなにも多くの人が、体外受精をするべきだったのでしょうか。かなり疑問が残るような気がします。

国や自治体、民間、企業が行っている支援の中に、できれば「漢方薬」も入れてもらいたいものです。

妊娠するまでの対処療法ではなく、これからの人生を快適に過ごすためにも崩れた体調、弱い体質を改善することが大切です。それには生活習慣や食生活の改善ももちろんのことですが、それに加えて漢方薬の力を借りれば、早期改善につながるものです。

これからも漢方薬がもっと広まり、その効果が認められ、支援の対象となれば良いですよね。

ホルモン治療の思わぬ産物

「更年期障害」の治療として、不足したエストロゲンを補うためにホルモン剤による治療が行われてきました。しかし、ホルモン剤による治療は、乳癌を誘発する確率が高くなる危険性が言われ続けています。

不妊治療でもホルモン治療がよく行われます。何年もホルモン治療を続けていても、何も問題ない場合もあれば、たった1年間の治療のために乳癌や子宮癌を誘発してしまう場合もあるのです。

35歳Kさん。

3年間、ホルモン剤による不妊治療を続けていました。何回も婦人科には足を運び、検査もしていたにも関わらず、先日子宮癌が発覚したのです。早急に手術をするほどのステージではないようですが、もし妊娠すれば、妊娠することによるホルモンの関係により、癌が進行してしまう可能性が大きくなってしまいます。

まずは妊娠することよりも癌細胞を小さくしたり、消滅させることが第一になってきます。

妊娠するためのホルモン治療でしたが、代わりにとんでもないことが起こってしまったものです。

Kさんには「プロポリス」「シベリア霊芝錠」を続けてもらうことにしました。

今後、経過をみながら、不妊治療を進めていく予定です。今は、その検査結果が、間違いであることを願ってしまいますが、まだ手術や妊娠を諦めるようなことが起きたわけではありません。漢方の力で、良い方向に向かうことを信じています。

ホルモン治療をすすめられて

結婚5年目、32歳Hさん。

結婚当初より子供が欲しかったのですが、なかなか恵まれなかったため、2年前に婦人科を訪ねました。

そこで言われたことは、
「少し排卵が12日目と早い時もあるので、排卵時期を調整しましょう。」
そして排卵誘発剤を処方され、それを使用することで排卵を遅らせるように持って行く治療がなされました。

しかしその治療を行っていくうちに、眩暈、吐き気、だるさなど今まで味わったことのないような不調に見舞われ、3周期目でその治療を止めることを決意されました。

その後、お薬を止めたのに、その不調は続き、排卵ももっと早くなり、毎回11日目ほどになり、高温期も短くなってしまいました。

そして約1年後、まだその症状が続いたままでしたので、何とか西洋薬ではなく漢方の力を借りたい、と当店へ問い合わせをされました。

そしてHさんの体質から「気虚」が根底にあると捉え、冷え性もあることから「婦宝当帰膠」と「帰脾錠」をお勧めしました。

ところがHさんの体は西洋薬に限らず漢方薬も含め、全ての薬に拒否反応を示すようになっていたのです。「婦宝当帰膠」を服用すると、手が痺れるような感覚がすると言われました。

今までにこの薬でそのようなことが起こった例がないために、Hさんにとっての「薬」の存在が変わらない限り、全ての薬を続けることは無理だと判断しました。

そこで、Hさんが選択したのは「鍼灸治療」でした。

2週間に1度のゆっくりとしたペースの治療でしたが、徐々にHさんの体は改善してくるのが見て取れました。

そして半年後、目に見えて改善されたことは基礎体温表でした。排卵日が13~14日目になり、高温への立ち上がりが良くなり、高温期もしっかり14日間あるようになりました。だた少し高温の安定が、時々悪くなることがあります。

その頃Hさんは、婦人科の病院へは排卵の時期を確認するために、卵胞のチェックだけに通っていました。
先日病院に行った際に、
「大分と整ってきたので高温期だけお薬を飲んでみられますか?」
といわれました。

それは高温期を安定させるためのホルモン剤に他ありません!

2年前に薬で体調を崩したものをせっかくここまで整えたのに、ここで薬を使うことによってまた体調を崩すことになっては勿体ないことです。

Hさんもそれは感じていて、この調子の良い時期でもう少しタイミング療法で行きたい、と返事をされました。

さぁ、これからがスタートです!

そろそろ漢方薬も大丈夫でしょう。是非、このまま自分の力で自然で行きましょう!この夏から秋にかけて、きっと良いことが起きるでしょう。

アディポネクチン値

最近良く耳にする「メタボリックシンドローム」という言葉。

「肥満」であることが大敵のように言われています。現代は車社会になり、生活水準も上がり、交通機関も発達したために、運動不足傾向になり、気をつけないと「肥満」という道へと導かれることになっています。

その「肥満」のキーワードとなるものの1つに「アディポネクチン値の低下」があります。

「アディポネクチン」とは、「善玉アディポサイトカイン」のことで、動脈硬化を予防してくれるものです。これに対して「悪玉アディポサイトカイン」は、動脈硬化を促進させるものです。

「内臓型肥満」になると、善玉の「アディポネクチン」が減少し、悪玉が増え、インスリン抵抗性が高まります。そして血糖値が上昇し、糖尿病を引き起こしやすくします。その悪玉は、脂肪細胞が脂肪を貯めこんで大きくなればなるほど、多く分泌されるようです。

通常はこのようなメタボリックシンドロームの検査に使用される「インスリン抵抗性」ですが、不妊治療の検査、特にPCOS(多嚢胞性卵巣症候群の検査にも使用されています。

その検査によりPCOSと判断された場合、それを改善するために、インスリン抵抗性改善薬を出されるようです。

インスリン抵抗性を改善させ、内臓脂肪を減らし、アディポネクチンを増やすことにより、PCOSの体質が改善されるとされているためです。

この治療をされている人を多くは聞きませんが、もし有効であるのなら、増加傾向にあるPCOS症状の画期的な改善方法となることでしょう。

漢方では、PCOSの場合、「爽月宝」や「冠元顆粒」などを使用します。排卵を促進させ、自力で排卵するように持って行きます。

PCOSの症状でお悩みで、「クロミッド」などの排卵促進剤への反応が悪い人は、是非漢方薬をお試しください。

複雑な気持ち

33歳Kさん。2人姉妹の妹。

結婚5年目で、始めの3年間は病院での不妊治療を受けていましたが、病院での治療に耐えられず、不安神経症のような症状になったために治療を止め、2年前より漢方による周期療法をされています。

Kさんの3つ上のお姉さんは、2人の子供が居るのですが、2年前に離婚。半年前に今の彼氏との間に、子供ができたことがわかりました。

妊娠がわかってからも、Kさんのお姉さんも彼氏も部屋でモクモクタバコを吸う毎日。

夜は3時、4時と遅くまで起きていて朝方に眠り、昼前に起き出して食べるものはジャンクフード。もちろん2人の子供も同じ食事。

誰が聞いても自分の体にも悪いことばかりで、胎児にも悪いことばかりの生活だと思うでしょう。また2人の子供も手作りの食事は今まで食べたことがないという育て方ですので、子供達にも悪いことばかり。

Kさんも見ててハラハラして、ショックを受け、いつもお姉さんのところに行かれた後は、脈も興奮状態になってしまっています。そんなときは夜も寝られなくなってしまいますので、Kさんの体に悪影響です。こんな状態では良い卵もできないでしょう。

「あまりお姉さんと関わらないように」と言っても、姉妹ですので、何かと電話が掛かってきて用事を頼まれてしまうのです。心優しいKさんは、呼び出されると手伝いに行ってしまいます。

妊娠しても無茶な生活をしているKさんのお姉さん。

5年も治療をしているのに恵まれないKさん。

こんなにも食事や生活スタイルを気にしながら治療に臨んでいるのに、かたや無茶苦茶な生活をしていても妊娠できてしまう人もいるのです。

何が良いのか、悪いのか・・・。

とても複雑な気持ちです。

自然に近いIVF?

体外受精(IVF)の際に受精卵を育てる新装置が東大グループにより開発されました。

IVFの過程で、採卵した後、受精卵を妊娠しやすい「胚盤胞」にまで育てることができる確率は、40~50%。それがこの開発された新装置で行えば、その確率は80%までにも上昇するという結果が得られました。

なぜそのように確率がアップしたのでしょうか・・・?

それはその培養方法が、自然妊娠と近い環境で受精卵を育てられるからのようです。新装置は、母体となる患者の子宮内膜の細胞を培養して、その中で受精卵を育てるために、自然妊娠のような環境が作ることができるといいます。

従来は培養液の中で育てられた受精卵は、その半分強は、胚盤胞にまで育たないために採取できる数が少なかった場合は、胚盤胞ができませんでした。しかし、この新装置を使用すれば、成功率が高いために、排卵誘発剤を使用し、卵巣に無理をかけたくさんの卵子を排卵させなくても良くなるかもしれません。

どんどん進む高度医療技術。

どんどん自然のものから遠ざかり、人工のもののみで作られてしまうことには抵抗を感じますが、人の手が入るけれども自然に近いものになるのであれば、進む技術を応援したいですよね。

65人に1人

「65人に1人」・・・さて何の数字でしょうか?

それは日本での統計で、新生児のうち体外受精で産まれた数です。

少子化対策としてどんどん技術が進んできた不妊治療。恵まれないカップルにとってその進歩は、大いに喜ぶべきことです。しかし、その裏側では、費用の面、倫理問題、安全性などまだまだ問題点は多くあり、結局その治療に踏み切れないカップルが多いのではないでしょうか。

一般的な不妊治療法には、次のようなものがあります。

★「タイミング法」 ・・・ 卵胞のチェックなどにより排卵期を予測し、指導が行われる

★「ホルモン療法」 ・・・ 卵胞の発育促進や排卵誘発の注射や服薬が行われる

★「人工授精(AIH)」 ・・・ 元気な精子を選び、子宮に入れる

★「体外受精(IVF)」 ・・・ 精子と卵子を取り出し、体外で受精させ、受精卵を2~3日培養してから子宮に戻す

★「胚盤胞移植」 ・・・ 体外受精と同じ過程だが、体外で受精卵を5~6日培養してから子宮に戻す

その中でも費用の面でも肉体的・精神的にもリスクを負う体外受精の成功率を上げるために、胚盤胞の技術が日に日に進んでいるようです。

ただ一度にいくつもの胚盤胞を子宮に戻すために、多胎妊娠が頻発してしまうことが難点です。

その辺は、まだまだ進歩が必要な分野でしょう。

また、体外受精をする際に、その取り出した卵子の質をあげることはなかなか出来ないことです。年齢と共にやはり質が少しずつ悪くなってしまう卵子。それを「質の良いもの」にするために、大いに手を貸してくれるのが漢方薬なのです。

西洋医学の高度技術と共に漢方薬の力を借りると、体外受精の成功率20%、胚盤胞の成功率30%のパーセンテージはもっと上がるはずです。せっかく大きな代償を払っての治療なのですから、早くに成功させたいですよね。是非漢方と共にお試しください。

着床前診断

やっと妊娠したのにまた流産・・・。

流産した時一番辛いのは、やはりママとなるはずだった当本人。なのに周りからは「養生が悪かったから」とか「何かしたのではないか」などと攻められることが多いものです。

それが何度も繰り返されると「私には育てる力がない」と自分を責め、落ち込むこともしばしば。

しかし流産する率は結構高いもので、妊娠した人の1割強にそれは起きることなのです。また流産を繰り返すと「習慣性流産」という名が付けられてしまいますが、だからと言って妊娠・出産できないわけではありません。

ただ、何度も流産を繰り返すと、心身ともに負担が大きいために、弱気になり、諦めてしまう人もいるようです。

そこで、今年の春、日本産婦人科学会は、遺伝子に問題があるために流産を繰り返してしまう率を低くするために、「着床前診断」(体外受精時の受精卵の遺伝子を調べる診断)を習慣性流産の患者にも適用されるように認めました。

受精したからと言ってその卵を無条件に戻すのではなく、流産しにくい受精卵を見極め、それを母体に戻すことができれば、流産する可能性は低くなるはずです。

もちろん、流産を繰り返す原因は、その遺伝子の異常ばかりではなく、母体の体質である「抗リン脂質抗体」ができてしまう自己免疫疾患、子宮の奇形、ホルモンの乱れなども関わっています。

何が原因となるのか、を突き止めれば、それに対する西洋医学的アプローチも漢方的アプローチも十分可能です。

今まででも「抗リン脂質抗体」ができる自己免疫疾患の人が、西洋薬と漢方薬を共に服用しながら妊娠約10ヶ月を乗り越え、無事出産された例は多くあります。西洋薬だけではその抗体ができるのを防ぐには少し力不足で、一方漢方薬だけでもその力は少し不足しているのです。この場合は、どちらも併せて治療を行っていくのが一番良い結果に繋がるように思えます。

是非、それぞれに合った治療法で、繰り返す流産を食い止めましょう!

漢方のおかげ

4月に体外受精(IVF)をし、それと同時に漢方を始めた41歳Sさん。

まずは「IVFの受精卵の着床と安胎のための漢方を服用すること」からSさんの漢方療法は始まりました。

その結果、初めての「妊娠陽性反応」、4月末には「心拍確認」と、トントンとステップを踏むことができました。

しかし、このままどんどんステップアップできるように見えたその歩みは、5月初めに止まることになりました。末広がりで縁起の良い数字のはずの「8週目」の出来事でした。

止まってしまった小さな命の成長は、Sさんに悲しみをもたらしましたが、今までここに至ることも経験できなかった初めての「その出来事」は、次の大きな命へと繋がる希望となったことは言うまでもありません。

掻爬手術後、子宮内を綺麗な状態に戻すために、次の月経まで「婦宝当帰膠」「冠元顆粒」「爽月宝」を続けてもらいました。

そして6月初め、生理が来たのです!今までなら毎月生理が来る度に落胆していましたが、今回の生理は待ちに待ったものでした。

産婦人科の医師からは、「今月はまだ生理は来ないでしょう」と言われていただけに、この早い快復にはSさんも心躍る気持ちでした。なぜなら、41歳のSさんにとって、ひと月ひと月が大切で、快復するのに時が掛かりすぎたり、元に戻らず傷ついたままになるなんて想像もしたくないことだからです。

生理が来て、体がリセットされましたが、まだ完全な快復まではあと2ヶ月は必要でしょう。あと2回生理を迎えたら、またステップを踏み出す計画です。

次は、「質の良い卵」のための漢方薬も服用しての「踏み出し」ですので、きっと「大きな命」へと繋がることでしょう。

今月からSさんの「大きな命」へ向けて、本格的な漢方による周期療法が始まります。進むべき道に光が差しているようです。

ドオルトン・プラノバール

「ドオルトン錠」と「プラノバール」は、「卵胞ホルモン」と「黄体ホルモン」の配合薬で、いわゆる「ピル」と呼ばれる薬です。

もともとピルは「錠剤」という意味の英語で、通常は避妊目的で使用されているものです。それが「不妊治療」に使用されているというのが何だか不思議な気がしますが、使用目的が同じであるから異なる治療に使います。

その目的は、月経周期をコントロールすることです。一定期間服用し、子宮内膜を充実・維持させた後、服用を中止し、月経を起こさせるというものです。不妊治療の際には内膜が肥厚しだす高温期の初めから服用を続けることで、高温期を維持させ周期を整えるようにしていきます。

このような目的で使用される「ピル」ですが、問題点は「副作用」です。「吐き気」「嘔吐」「不正出血」などが主な症状ですが、もっと恐い副作用が「血栓症」です。

その発症は、タバコを吸う人に率が高いようですので、「ピル」を使用しているときは、タバコを避けたほうが良さそうですね。もちろん「不妊治療」をされている人には「タバコ」は避けてほしいものですが、どうしても止められない人で、「ピル」による治療をしている人は、危険です。是非止めてください。

一方、「ピル」の服用により、「子宮体がん」「卵巣がん」の発症率は下がるようです。しかしながら「乳がん」「子宮頚がん」は発症率が高まるようです。

どちらにせよ、ホルモン剤の治療をされている人は定期検査を受診するようにしてください。