不妊治療の漢方と鍼灸

現代の日本では、10組に1組が不妊症であると言われるようになりました。現代社会は「空気」も「水」も「食べ物」も「生活スタイル」も何もかもが不自然で質の悪いものになってしまっています。そのことが男女問わず「不妊」に繋がっているような気がしてなりません。

では失ったものを取り戻すにはどうしたら良いのでしょう?一度感じた「快適さ」をきっと人間は捨てることはできず、濁った水はなかなか透き通るところまではいかないでしょう。

しかし、人間の持つ生命力を蘇らすことは可能です。現代社会のストレスにもまれ、気も体も心もバランスを崩してしまい、「子孫を残す」という生命力をどこかへ置き忘れてしまっただけですから、取り戻すことは可能です。

しかも置き忘れてしまった年月が短ければ短いほど、取り戻すことのできる可能性は大きいものです。

器質的疾患を持つ人であれば、ある程度の西洋医学的治療も併せて行う必要がありますが、なんら問題のない人は、排卵誘発剤などの治療を何度も繰り返し行う前に、漢方や鍼灸の治療を受けられることをオススメしたいところです。

古典の中で「諸病源候論」などにも多くが記載されています。東洋医学では、妊娠に係わる経絡の「肝」「腎」「脾」「任」「衝」が乱れることに問題があると捉え、それらのバランスを整えるように治療を行います。

鍼灸治療では、その中でも骨盤内の臓器の調子を整える目的で「八髎穴」が使われる場合があります。そのツボを排卵前に使用していると、卵巣の機能を高め、卵の育ちが良くなったという症例が多く聞かれます。

実際に、「八髎穴に」限らず「鍼灸治療」がサイトカインや一酸化窒素酵素の上昇など骨盤内の血流増加に作用し、その結果、卵巣機能や子宮内環境の改善に寄与したというデータも出ています。

また、鍼灸治療は併せて心のケアもでき、肩こりや頭痛、腰痛などといったストレスの解消もしてくれます。

一方、漢方治療も「方」が異なるだけで目的は同じです。お薬を決める際にその人により合ったものを探すために、じっくりと話をします。服用中も何か疑問があれば、すぐに電話でもメールでも相談に乗ります。そこで心のケアができるのです。

しかも毎日服用しますので、薬の中に秘められた力を見つめながら服用することで、毎日が安心感で満たされます。

このように、心身ともにゆったりできれば、体の血流が良くなり、機能も回復し、もともとあるべきはずの「生命力」が蘇ること間違いなしです。

是非、自分に合った治療法を見つけて、「生命力」の漲った元気な体になりましょう!

次のステップのために

20歳初めから生理不順の治療で、あらゆる薬という薬を飲んだり注射したりしてきた33歳Uさん。28歳で結婚後は不妊治療で、またあらゆる治療法を経験されてきました。人工授精はもちろんのこと、体外受精は10回。

しかしこれと言った原因がないのに受精した卵が着床すらもしない状態。

これは体質改善をするべきだと今までの治療をストップし、漢方薬に切り替えてから半年、今まで自分の力では来たことがなかった生理が毎月来るようになりました。

そして1年経った頃、そろそろ「体外受精を考えてみては?」と言われたけれども、また薬漬けになる恐怖と採卵時の痛みなどのことを考えると、あまり乗り気にならず、とりあえず人工授精を行いました。

しかし結果は予想通り。

「何が原因なの?」

「主人との相性の問題???それなら諦めるしかないの?」

Uさんが行った検査の中で、唯一行っていないのが「腹腔鏡下検査」。内膜の癒着などをはじめ、お腹の中を覗くと、原因が不明だと言われた人でもほぼその原因が判明すると腹腔鏡の名医が言っています。

通常は、腹腔鏡下にて原因を追求する前に、結果が早くに出やすい「体外受精」を行うために、その原因を追求するために腹腔鏡下手術を行う人は稀のようです。

ただUさんの場合は反対で、体外受精を行っても結果がでない、のですから早くに本当の原因を追究しないとなりません。

Uさんは「次のステップ」として、腹腔鏡下手術にて原因を追求することに決めました。

今までどうしようか迷っていても行わなかったこの検査。今回それを決めた最大の理由は、その名医が行う腹腔鏡下手術は「お腹に新たな穴を開けないこと」、でした。多くの医師は、その手術の際にはお臍の下2cmほどのところを切開し、穴を開けますが、そこではお臍の奥の薄い膜を切開し、そこから腹腔鏡を入れるために、お腹に新たな穴が開かず、傷痕がつかないのです。

その医師は、日本で最初に腹腔鏡下手術の本を作成したメンバーで、その本を作った際に、お臍の下を切開するマニュアルを作成してしまったためにその方法が広がってしまい、申し訳ないことをした、と話していました。

もしUさんの腹腔に存在する子宮や卵巣に癒着などの問題があった場合は、他の器具も入れてその手術を行わないとなりませんが、何もする術のない結果となるのであれば、傷痕が残らないほうが断然良いわけです。

Uさんは今まで様々な病院を巡り、多くの医師と出会って来ましたが、良い医師に巡りあう運命のようで、今回もたまたま迷い込んできた情報により良い医師と巡りあい、なかなか決断に至らなかった検査の決意が出来たのです。

この決断がきっと良い結果へと結びつくことでしょう。原因がわかれば、また次のステップに進むことができます。その結果により、また漢方薬の処方も変わります。ゴールまであと、何段のステップでしょうか。何だかこれからトントンと上がっていけそうですよね。

漢方治療の良いところ

不妊や生理不順、更年期障害などの治療のために、婦人科で使用されるホルモン剤はたくさんあります。

大きく分けた分類でも「性ステロイドホルモン剤」「排卵誘発剤」「GnRHアゴニスト」「ドーパミン製剤」「甲状腺ホルモン剤」があります。こんなにも多くの種類があるかと思うほどのホルモン剤が用意されています。

そしてそれぞれを月経周期に合わせて「何を」「どのくらい」使用するか、は医師の「匙加減」に寄り異なり、「それが技術なのだ」とある婦人科医は言っています。この医師は、あらゆるホルモン剤を細かく使用していくことで、妊娠へと導いていくようです。

41歳Sさん。新しく掛かった婦人科医より「脳下垂体機能不全」であることが不妊の原因だ、と言われました。

今まではそのようなことを言われたことがなく、原因不明の不妊症だと思っていたのが、この病院で初めて病名がついたのです。

そこでSさんから「この病名がついたのですが、漢方薬は変わるのでしょうか?」との問い合わせ。

西洋医学では「脳下垂体機能不全」であれば、「FSH(卵胞刺激ホルモン)」や「PRL(乳汁分泌ホルモン)」「LH(黄体刺激ホルモン)」のどれのバランスが悪いかを血液検査でチェックし、それに対して「HMG剤:ヒュメゴン・パーゴナルなど」「抗PRL剤:テルロン・パーロデルなど」「HCG剤:ゴナトロピンなど」を投与することになります。

しかし漢方では、Sさんの不妊の原因はあらゆる症状や望診、舌診などより「腎虚」として捉えているために、その病名がついたからといって、漢方の処方を変えることはありません。

「腎」がしっかりすれば、先天の気が強くなると共に、体の生殖機能が回復し、結果として衰えてきた下垂体の機能も回復するのです。

どんな場合でもこれは言えることで、体のバランスが崩れたことで、機能が衰え、何かの症状が起きるわけですが、その「崩れたバランス」を整えるようにしていくことで全ての機能が回復していくものです。

「病気」を追うのではなく、「体全体のバランスの崩れ」を見つけ、それを改善していくように持って行くのが東洋医学であり、漢方治療です。従って、「病名」がつかなくても治療ができ、体を元気にすることができるのです。これからの予防医学には見逃せない治療法です。

焦らずに

34歳Nさん。

前周期の2月初めに初めての体外受精(IVF-ET)を行われました。今周期も行われる予定です。

ご結婚3年、卵管やその他の検査の問題なく、子宮筋腫はあるものの、豆粒大のものが2~3個あるのみで妊娠には問題ない、との診断を受けているのですが、妊娠までは至らず。西洋医学的治療にも限界を感じ、漢方薬をご希望で昨年4月に当店に問合せをされました。

Nさんのご友人が当店の漢方薬を服用され、体調が良くなったとのことを聞き、来店しにくい遠いところにお住まいですが、お問合せをくださいました。

「まずは3周期やってみよう」と体質改善の漢方薬を服用されていましたが、3周期目も何の変化もなく、いつも通り月経が訪れてしまったことに気落ちし、しばらく漢方薬をお休みされていました。

ご本人は「何の変化もない」と感じられてしまったかもしれませんが、徐々にですが、改善の変化は見られていたのです。しかし、それ以上にNさんの気落ちは大きかったのでしょう。こんなとき、もしNさんが近くにお住まいで会ってお話をすることができれば、体質改善のお薬の服用に間を空けてしまうことの「もったいなさ」を把握してもらうことができたのに、と思ってしまいます。

そして12月、再度Nさんよりまた漢方薬を服用したい、との連絡がありました。

しかし、その時は以前と違い、Nさんは体外受精を決意されていました。

体外受精を成功させるために、補助的に漢方薬を服用したい、とのことでした。

西洋医学的な治療のみで体外受精をされるよりも、漢方薬を服用されつつ行う方が、その成功率が高いことは確かなことです。当店でも体外受精のみをされていた人がそれだけでは成功せず、漢方薬を服用されて結果、成功された人が多くおられます。

従ってその見解から言えば、Nさんの判断は正しいことなのですが、Nさんの基礎体温表を見てみると、かなり波状がきつく、あまり良い状況ではなく、今この状態で体外受精をされるのはあまりおススメできないことだと思わるものでした。

しかしご本人の希望が強いため、前回、そして今回、体外受精に向けて、「シベリア霊芝錠」を中心とした「胚移植までの薬」「胚移植後の薬」をお勧めしました。

あと、1回チャレンジされてダメであれば、できることならば少し西洋医学的治療を休み、体調が整ってから再チャレンジしてほしいと思っています。まだそれほど焦る年齢でもありませんので、是非ゆったりと治療をしてほしいです。

もちろん、今回で成功されれば嬉しいことなのですが。

心落ち着くところ

41歳Yさん。

ご主人も子供が大好きで、早く子供が欲しいな、と思いながら、自然に時が流れるまま過ごされ、気がつくと、40歳が目の前に迫った歳になってしまっていました。

それを機会に、病院での検査をされたのですが、これといった問題点もなく、強いて言えば少しエストロゲンの値が低いことと、ヒューナーテストが少し良い結果でなかったことくらいでした。

人工受精を何回も試したけれども成功せず。いつも医師からは「卵の状態も良いですから、良い結果となるでしょう」と言われるために、いつも妊娠した気になり、しかしいつも生理が来て、がっくりする・・・、の繰り返し。

「やはり体質改善をしなければ」と思った2年前、ネットで検索した東京の漢方薬局へ問い合わせをされ、1年間、そこで処方された煎じ薬を服用していました。

京都にお住まいのYさんでしたが、わざわざ東京まで足を運び、体質の改善を望まれたのです。

そこでは、「お腹が硬いことが不妊の原因だ」と言われ、それを改善するためのお薬を処方されていたそうです。おそらく「お腹」というよりも、「子宮内膜がふかふかとした柔らかいものになる」ような処方だったのでしょう。

しかし、低温期の乱れは改善せず、嬉しい結果も得られないまま1年が経ってしまいました。

だんだんと焦りが出てきた1年前、新たにネットにて不妊治療を行っている漢方薬局を検索し、当店に辿りつかれたのです。

そしてまた新たな周期療法による漢方薬の治療が始まりました。

ただ「早く早く」と思うYさんの気持ちと、漢方薬による「長年に出来上がった体質の改善」が緩やかなスピードであるために、約1年間服用された昨年末にまた焦りが出てきました。

そして有名な婦人科医院の扉を叩かれたのです。

そこでYさんは「卵巣機能不全による不妊症」であると診断されたのでしょうか、「卵巣をしばらく休め、次の周期に良い卵が作れるようにしましょう」と言われ、「ノアルテン」の服用を指示されました。

「ノアルテン」は女性ホルモン薬です。

これは、女性ホルモンの不足やバランスのくずれで起こるいろいろな症状を改善するものですが、Yさんの場合は、少し月経周期は短いものの排卵は行われていて、周期の乱れもないにも関わらず、排卵を止め、いつもの周期では生理を来ないように調整されました。

いつも「自然にしたい」と願っていたYさんにとって、その治療は意に反するものでした。

一度はその治療にかけてみようかとも考えましたが、やはり意に反することはやりたくない、と迷いつつもまた別の婦人科医院の扉を叩きました。

そして、そこでは、Yさんの「なるべく自然のままでやりたい」という意向に沿った治療法で行ってくれること、を説明されました。やっと自分の留まる場所を見つけることができたのです。

これからは漢方薬にて体質改善をしつつ、誘発剤などを使用せずに自力で作った卵胞を採卵し、体外受精を計画されています。

Yさんは自分に合うものに辿りつくまでいろんな扉を叩き、途中で諦めることなく探し続けてこられました。その甲斐あって、ようやく心が落ち着く場所に辿りつき、不安が取り除かれ、新たな気持ちで治療に望むことができるようになったのです。

きっと近いうちにYさんは喜びを手にすることができるでしょう。

もし、今の治療に何か不安や疑問を持っている人は、Yさんのように諦めずに、是非「自分が信用でき安心できるところ」を見つけてください。心が落ち着かなければ良い結果は生まれないものです。

漢方の周期療法

漢方の「周期療法」とは、西洋医学のメカニズムと東洋医学の考え方をドッキングさせた「月経調整法」です。

「月経期」・「卵胞期(低温期)」・「排卵期」・「黄体期(高温期)」の月経周期により体内のホルモン分泌が異なりますので、それに合わせて漢方薬の処方を変えていきます。

先天の気が宿り、生殖能力の源となる「腎(経絡の一つ)」の機能を高め、精神状態や月経に関係が深い「気」と女性ホルモンに深く関わる「血」の機能や巡りを正常にすることで、自分の体にある力を呼び起こし、月経周期が整い、妊娠できるようにするものです。

これは、妊娠を望む人のみのものではなく、女性の体の不調を整える療法なのです。

「月経周期が乱れている」「生理痛が酷い」「月経が来ない」「月経の量が少ない」「月経時に頭痛が起こる」などの症状でも、気・血の巡りを整え、腎の機能を高めることで、それらが改善していくものです。

妊娠を希望していない人でも、何らかの症状がある場合は、その原因である体質を漢方で改善されてはいかがでしょうか?

意外と早くに結果が出るものです。

婦人科医の独り言

婦人科医が不妊治療にやってきた37歳のAさんに、診察室で懇々と話をしていました。

「旦那さんと将来のことを良く考えて、どう生きていくかの将来設計をしてください。」

なぜ、そのようなことを婦人科医がAさんに言ったのか・・・。

それはその婦人科医の経験上、37歳くらいの年齢になって一生懸命に不妊の治療を行い、やっと妊娠できた40歳。その不妊治療を受けていたご夫婦が2人の考えを語ったとき、

「子供なんて要らなかった」

という結論に達したことが多いからなのです。

つまり、せっかく「子供ができること」の目標に向かって婦人科医も自分なりに最高の治療を施した結果がこういうことであれば、患者さんが負担する治療費も掛かる上に、今までやってきたことが、無駄になってしまうことがありうるからなのです。

不妊治療を受ける前に、自分達の様々な将来像を描いてください。

 ☆不妊治療を受け、子供が出来た自分達の将来

 ☆不妊治療を受けたけれども、授からなかった将来

 ☆不妊治療を受けずに、授からなかった将来

それぞれ自分達の年齢別にその将来像を描き、「本当に自分達の目指している『よろこび』とは一体何なのか」、を今一度自分に問いかけることも大切ではないでしょうか。

不妊治療の続け方

病院での不妊治療は様々な治療方法があります。

ただ病院での不妊治療を受けて、どこまですべきなのか、いつまで続けるべきなのか、わからいまま10年、20年と続け、止めた途端に閉経し、更年期の症状が現れたのでまたホルモン治療を続けている、という話を聞きます。

初めに病院へ行くのは、不妊の原因を調べてもらうためでしょう。その結果、その原因を治すために「排卵誘発」「卵管手術・通水」「人工受精」などの治療法を選択していくわけですが、その治療をしたからといってなかなか成功しないのが現実です。

それらの一般不妊治療を「2年間」続けても成功しない場合、「体外受精」や「顕微授精」などの「生殖補助技術」の治療に移るのが良い、とされているようです。

しかし、もし年齢が40歳までであり時間的に余裕があれば「生殖補助技術」の治療に移る前に、体質改善の漢方薬をおススメします。体質改善をある程度されてからだと良い卵ができますので、そこで「生殖補助技術」に頼れば成功率が高くなります。

できれば2年間も一般の不妊治療を続ける前に、または続けながらでも漢方薬と出会って欲しいと思います。

2年間も「排卵誘発剤」のクロミッドなどに頼っていると、様々な弊害が出てきているはずです。是非、「少し立ち止まる期間」をお持ちください。

人間が人間らしくあるために

本日、5人の方に文化勲章が贈られました。

その中に94歳になる医師の日野原重明先生がおられました。日本で一番忙しい90歳代、と言われるほど朝から晩までの過密なスケジュールを毎日こなされています。昼食もおやつと言ってもよいくらいとても簡単なもの。

それでも元気に仕事をこなされています。

こんな元気なお姿を見ていると、いつまでも元気で居られるようにするためには「夜は早く寝ること」「バランスの取れた食事をすること」・・・などといったアドバイスをしていることに少し躊躇いを感じたりします。

しかし、「日野原先生は特別」ということで、皆様は決して真似をしないようにお気をつけください。やっぱり元気でいるためには、生活習慣を正すことが一番です!

そんな多忙な日野原先生がずっと訴え続けておられること。

「患者自身が自分の健康を守る患者参加型医療の重要性」です。

近代医学が日々進んでいく科学の力を過信し過ぎて、人間の体の構造や仕組み、遺伝子などばかりを見て、人間の生命全体を見ることを忘れてしまっている医療に疑問を抱き続けて来られました。

近代医療の意のままになってしまい受身の姿勢になっている患者を、医療の場へ参加させ、最後まで人間らしく生きるために生命の質の向上を目指すために共に実践と啓発を重ねても来られました。

だんだん「患者が医師や受ける医療を選ぶ時代がやってきた」といえども、まだまだ現実は「受身の医療」と感じることが多いものです。

今進化しつつある高度医療の中でも「不妊治療」の分野は、特にその進化は目まぐるしいものです。だからこそ、患者側が本当に自分達が望んでいる医療をしっかりと選んでほしいものです。

東洋医学から見た不妊症

東洋医学の古典では、妊娠経験のない人を「全不産」または「無子」といい、一度妊娠経験があるけれどもそれ以後妊娠しない人を「断緒」といいます。

その原因は、先天的な染色体異常などを除くと、「腎気不足」と「衝任脈の気血不足」がほとんどです。

もう少し詳しく原因を見てみると、以下の4タイプに分けられます。

☆腎虚による不妊:

先天的に虚弱で腎気が不足している。または不摂生により精血を消耗し、衝任脈が栄養されずに腎精を失ってしまった。

つまり、虚弱体質の人や、夜な夜な遊びまわっているなどの不摂生が長年続いた人は、腎精を失ったことで不妊になってしまったのです。

☆血虚による不妊:

体質が虚弱で陰血が不足していたり、脾胃が虚弱で気血を生化できない。または、過度の血や津液を消耗してしまった。

つまり、虚弱体質の人や、胃腸が丈夫でない人、過度のダイエットをしたことがある人は、血虚が体の中で起こっているために不妊になってしまったのです。

☆胞寒による不妊:

月経期間中は胞宮が開いていて、この時期に房事を行うと、気血を損傷して風寒を受けやすくなる。外寒、内寒により寒邪が胞宮を凝滞させてしまった。

つまり、月経中に子宮を痛めることをし過ぎた人、月経中にも関わらず過度の運動などをしてきた人、は気血を損傷してしまったために不妊症になってしまったのです。

☆痰お互結による不妊:

肥満体質の人、または油物や味の濃い食べ物を好む人は、痰湿が内生して気機の運行が悪くなりやすい。また、イライラしたり、憂鬱になったりすることが多くて肝気欝結となり、疏泄が失調すると気血不和になる。このような人は、痰湿と血おが交互に阻滞して、胞宮を閉塞してしまった。

つまり、太っている人、油物・味の濃い物を食べ続けた人、いつもイライラしている人、憂鬱になることが多い人は、痰湿と血おが体の中に生じ、それにより不妊症になってしまったのです。

ご自分のタイプはどれでしょうか?

東洋医学は、個人個人の原因を究明し、それに対して治療を行っていきます。個人の原因を取り除くように持って行くことで、体本来の機能を目覚めさせ、今まで乱れていたホルモンを自力で整えようとしていくのです。