腎陰虚

腎陰虚に対する治療法則は「滋補腎陰」「滋陰降火」です。漢方薬は「六味地黄丸」。症状は「腎虚」の症状に加えて「手足がほてる」「頬が紅い」「口渇」「不眠」「潮熱」「便秘」などです。

それよりももっと熱象が強い「陰虚火旺」の場合は、それに「知母」と「黄柏」を加えた滋陰清熱作用のある「瀉火補腎丸」を使います。症状は「六味地黄丸」の症状の「手足のほてり」「口渇」「潮熱」などの熱象がより強く現れます。

これらの漢方薬は、補腎陰が必要である卵胞期によく使用します。特にホルモン療法により基礎体温が高くなってしまった場合、また更年期様症状により卵胞期の体温が高めの場合、に使用します。

39歳Iさん。漢方のことを勉強され、ご自身が医師であるために自分で自分の漢方処方を行い、周期療法を試みられていました。

ホルモン療法を行っているわけではありませんが、卵胞期の体温が高めであることから「六味地黄丸」を、また「お血」症状があることから「冠元顆粒」を服用されていました。

何となく改善されてきたように思えましたが、改善のスピードが今ひとつだったために、また自分なりに処方を変えていきました。しかしだんだん卵胞期が乱れ、それに連れて黄体期も乱れてきてしまいました。結局自分でどうしたらよいかわからなくなり、一度診て欲しいと問合せをされました。

まずは崩れてしまった体調の立て直しが必要です。決して処方が間違っていたわけではありませんが、もう少しそれに加えたら良いものやこの時期には飲まない方が良かったものなどがあったようです。

道に迷ってしまったときは、そのまま先に進まずに、正しい道を確かめることをおすすめします。

桃にちなんで

「桃の節供」については昨年その歴史や慣わしについて書きました。

 ★「桃の節供」 http://www.tsudo-pre2mama.com/2006/03/post_1823.html

今年は「桃」について記します。

さて「桃の節供」ですが、なぜ「桃」だったのでしょうか?「桃」については、旧暦の3月に咲く花で、3月を代表する花だったことからのようです。また「桃」は女性を思い子とさせる花であることから、女の子の節供には「桃の花」ということになったようです。

それなら「桃」から産まれた「桃太郎」はなぜ男の子だったのか?これにはたくさんの説がありますが、実は香川県では女の子だったという話もあるようです。あまりにも可愛かったために鬼にさらわれないように「桃太郎」と名づけたとか。

この「桃太郎」の話ですが、上流から流れてきた桃を食べた老夫婦が若返った結果、桃太郎を授かったというものが明治初期まで主流でした。これは神話の中に、桃には邪気を祓い、不老不死の力を与える霊力のある果実とされていたり、仙人には桃は欠かせない果実とされていることから、霊力のある桃から産まれる「桃太郎」の話が生まれたようです。

さてこの「桃」ですが、漢方では「花」「葉」「種」をそれぞれその薬効に応じて使用しています。

「花」は、「白桃花」と称し、利尿・緩下薬として浮腫、便秘の治療に使われます。

「葉」は「桃葉」と称し、皮膚病の浴剤として使用されています。特に赤ちゃんの「あせも」には安全で効果的であるために、よく利用されています。

「種」は「桃仁」と称し、活血・排膿・潤腸の効能があり、月経障害、腹部腫瘤、下腹部痛、神経痛、打撲傷、化膿症、便秘などに使用されています。それを含んだもので、「お血」による月経障害や生理痛などに使用する「桂枝茯苓丸」はとても有名で多く使用されています。

生活に馴染み使用されてきた「桃」、それには神秘的な力も備わっていることは昔から感じられていたようです。そんなことを考えながら桃を見ると、何だか違って見え、その神秘的な力を受けることができるのではないか、と思ってしまったりします。

壁を乗り越えて

38歳Cさん。結婚7年。自然妊娠を希望し、極力ホルモン剤などには頼りたくなく、ましてや体外受精に対しては拒否反応を占めるほど。

実際に子供を望むようになったのは3年ほど前。それと同時に漢方薬も「婦宝当帰膠」から徐々に始めていました。

周期療法を始めたのは2年前。周期療法を始めてからしばらくして、基礎体温の改善は見られるものの一向に兆しが見えないことに「どうもおかしい」と思ったCさんは、初めて婦人科を受診。その結果、着床を妨げている子宮筋腫が見つかったのです。大きさは3cmほど。しかしちょうど卵が着床するべき位置に存在するために、それが受精卵の着床を妨げている可能性が大きいとの診断でした。

「まだ間に合う!できることはしておこう。」と手術を決意し、腹腔鏡下手術により核摘出手術を行いました。

それから半年の昨年10月、とてもきれいな基礎体温表になったので、「今回は・・・?!」と期待していたけれども結果は残念!しかし安定してきた体調に良い兆しだと思っていた頃でした。

しかし、10月の安定した基礎体温は奇跡のように、11月そして12月と全く排卵する兆しもなく、低温期が延々と続いていました。

「おかしいなぁ」と再度婦人科を受診。血液のホルモン検査により、女性ホルモンであるエストロゲンの数値が低く、排卵期に多くなるはずの脳下垂体前葉から出る卵巣刺激ホルモン(FSH)が高く、黄体化ホルモン(LH)も高い数値であることがわかりました。つまり卵巣がお休みしている状態で、卵胞が育っていないのに排卵させようと刺激ホルモンが無理に働いている状態なのです。要するに、更年期様症状です。

Cさんにとってはかなりショックな結果でした。手術したことが卵巣に負担をかけてしまったのかもしれませんが、これは一概には言えず、手術しなくても子宮筋腫が卵巣に負担をかけ、行く行くはこの様な状態になっていたかもしれません。

「少しピルの力を借りて、卵巣を休めた方が良いかもしれませんね」と婦人科医。

しかしCさんは自分の身体の力を信じたくて、漢方薬にて特に「腎」の「滋陰」をするように「煎じ薬」を、補血・養血・調経のために「婦宝当帰膠」の服用を続けました。

しかし・・・!

1月、2月そして3月が来る頃にも全く身体の反応はなく、低温期は続いていました。もう3周期以上経ってしまったので、Cさんは断念して婦人科へ。

「お薬をお願いします!」とCさん。

「そうですね。このままだと閉経してしまうかもしれませんので、一度お薬で月経を起こしましょう。」

結局Cさんの不本意な道を歩まなければならなくなってしまいました。2週間のホルモン剤の服用です。ノルゲストレル・エチニルエストラジオールが成分である女性ホルモン補充薬です。

Cさんは「こんな感じでホルモン剤の壁を乗り越え、知らぬうちにホルモン漬けになり、体外受精などの道へ進んでしまうことになるのでしょうね・・・。」とポツリと呟かれました。

しかしこれはCさん次第で、今回のことも長い人生の中の1つの選択肢で、決してホルモン剤がいけないことではなく、うまくそれを利用して、自分の力を呼び起こすようにしていけば良いのです。2~3周期間は少しホルモン剤の力を借りて卵巣を休め、新たな身体で再スタートすれば良いことです。

その頃には季節も良くなり、身体への負担も軽くなる頃です。きっと良い方向に進むことでしょう。

医療費控除の対象

3月15日まで確定申告の受付が行われています。

その中でも昨年1月から12月までの10万円を越える医療費を支払った場合、10万円を越えた分を対象に、医療費の控除が受けられます。

漢方薬の中でも医薬品は、その医療費控除の対象となります。例えば「婦宝当帰膠」や「冠元顆粒」など。これらの漢方薬は、周期療法の処方で良く使用されるものですので、是非申告されることをおすすめいたします。

ただ周期療法の処方の中でも医薬品とされていないもの、例えば「水快宝」「爽月宝」「シベリア霊芝錠」などは対象となりません。

しかし積み重なったものは多いはずです。年間で支払った医療費に加算すると、控除額が多くなるでしょう。

先日妊娠されたTさん、旦那様に「漢方薬は医療費控除の対象にならない」と言われたので、領収書を捨ててしまったと言われました。捨ててしまったのは昨年の3月までの分でしたので、それ以降のものを購入時の領収書と引き換えに医療費控除の対象となる分の領収書を発行しました。

このように当店でも対象となる医薬品の領収書を発行しています。もし申告される場合は、是非ご一報ください。

驚きです!

「見てください!驚きです!」

今年、年女のYさんは、基礎体温表を見せながら蔓延の笑みを浮かべていました。その手の中には31日周期で生理が来た基礎体温表がありました。

「え!ずごいっ!やっと戻ってきましたね!」

ここ6年間、不妊治療を進めていく中で、精神的にダメージを受け、その後遺症とYさんを取り巻く環境により、月経周期が定まらず、150日、80日、70日・・・と長い長い卵胞期を経て、少し短めの高温期の末に、生理が来る、という周期が続いていました。

初めの頃は無月経状態が続いていたのが、1年半ほど漢方と鍼灸の治療を続けていくうちにここ最近は70日ほどの周期に落ち着いていました。

「もう少し卵胞期が安定して期間が短くなれば良いですね。」

と話をしていた矢先のことでした。

「ここ6年間で31日周期で生理が来たのは初めてなんです!主人も一緒に喜んでくれてほんとに嬉しかったんです!」

赤ちゃんを望む身でありながら、生理が来るのを喜ぶのは相反することかもしれませんが、まずは月経周期が整わなければなかなか赤ちゃんも宿ってはくれません。稀に年に3回ほどしか生理が来ない方が妊娠されることはありますが、それは稀なことで、やはり周期は整っていた方が妊娠率は上がるものです。

Yさんはようやくスタートラインに立てたのです。今周期を含めて3周期、30日ほどの月経周期に落ち着けば、きっともっと嬉しいことが起こるでしょう。

もう後はこの調子で真っ直ぐ進むのみ!です!猪突猛進!自分の年に良いことも真っ直ぐYさんに向かってくること間違いなしです!楽しみです。

子供の便秘

2歳になる男の子のママからの相談です。

便通が4~5日に1回で、出すときはとても辛そうでかわいそうなので、早くに便秘体質を改善したい、とのことでした。日々「こより」の力を借りようとしてみたり、お腹のマッサージをしてみたりするのだけれども、毎日出ないようなのです。

男の子は、どちらかというと下痢になりやすいもので、便秘になるというのは珍しいものです。

この様な場合、まだ発育が不十分で便を出す力が弱いためであると捉え、虚弱体質であることを改善する「小建中湯」を処方しました。まだ小さなお子様ですので、処方したのは飲みにくい錠剤ではなくエキス剤です。

そのお薬で2週間、様子を見てもらいました。

そして2週間後の今日、再び、来店されました。お薬を飲み始めてから毎日便が出るようになり、出るときは1日2回も出るようになったとのことでした。そしてお薬が切れた一昨日からまた出にくくなってきたようです。

体質改善には2週間は短すぎます。ただ経過を見るために、あまり多くの期間の処方を出さずに様子をみていきます。もう少し期間をかけて、体質改善をすれば、自分の力で便を出すことができるようになることでしょう。

また、ママに伺ったところ、あまり水分を与えていないようです。ママ自身があまり水分を取るほうではないために、子供にも水分を与えていないようでしたので、子供にはもう少し水分を与えるように心がけてもらうことにしました。

子供は良く動くために、知らず知らずのうちに汗をかき、水分補給が必要であるものです。大人よりも明らかに皮膚から蒸発する水分は多いはずです。しっかり水分補給をしてもらえれば、お薬の力を借りなくても自分の力で毎日出るようになることでしょう。

また2週間後の経過が楽しみです。きっともう苦しがらずにおトイレに行くことができているはずです。

あれから3年

36歳Nさん。2000年のミレニアムに結婚し、7年が経ちます。

3年前に1人子供を出産してから体調が思わしくなく、最近は眠りが浅く、すぐに眼も疲れるようになり、左の肩こりも酷く、体が重たく感じる毎日を過ごしていました。

計画では、2歳離れてもう1人子供を望むつもりでしたが、人生計画通りには行かず、だんだんと年齢と共に、体力も衰えてきたように感じていました。月経に関して言えば、月経血量が少なくなってきて、排卵期のおりものも少なくなってきたように感じられました。

現在はイギリスに在住しているNさんですが、「体質改善」で思いつくのは「漢方」でしたので、日本の信用できそうな漢方の先生をネットで検索し、当店に辿りつかれたのです。

Nさんの改善には、まず体調不良の部分から調整することが大切です。「眠りが浅い」「眼の疲れ」「左肩こり」などの症状は、「腎虚」「お血」がある証拠です。それらを改善するために「血府逐お丸」「水快宝」「杞菊地黄丸」「参馬補腎丸」などを組み合わせて、周期ごとに調整していきました。

漢方を始めたのは昨年の11月。Nさんの自覚としては、あまり劇的に変化することはなかったようですが、徐々に身体の内部は漢方により改善がなされていたのでしょう。今年に入って、遠いイギリスにコウノトリが舞い降りたと言う知らせが届きました。

春の風に乗って、幸せが運ばれてきたようです。私達もその幸せを感じながら、ご出産までもう少し手助けを続けていきます。今のところ、何も問題なく小さな命は鼓動を続けているようですので、このまま何もなく出産されることでしょう。

お兄ちゃんになる予定のお子様には、もうその鼓動が聞こえているのでしょうか。ママのお腹に耳を当て、「お兄ちゃんだよ!」って話をしているようです。妹か弟になる小さな命には、お兄ちゃんの声は聞こえているはずです。とても微笑ましい光景に私達も心あたたまりとても嬉しく感じています。

乳腺炎の外用薬

授乳中の乳腺炎は、お乳を詰まらせないようにすることや、乳腺をマッサージするなどして炎症まで至らないようにしますが、授乳中でもなく、出産もしていないのに乳腺に炎症が起きている場合、つまり乳腺が感染症を起こした場合は、早期に抗生物質により治療を行った方が良いです。乳腺炎を治療せずに放置しておくと、乳腺膿瘍になることがありますので、要注意です。

42歳、Sさん。体外受精に望んでいる最中に乳腺炎様症状が出てしまいました。なるべく今は抗生物質は飲まないでおきたい、というSさんの意向に沿うためと、症状がまだ炎症まで至っていないようですので、当面は漢方薬と外用薬により、症状の悪化を防ぐようにすることにしました。

お薬は「天津感冒片」を中心としたものを使用し、体外受精に影響なく、しかも効果的になるように「シベリア霊芝錠」を加えつつ様子を見ていきます。

また外用薬として、たんぽぽの全草を、干して乾燥させたものを煎じ、その液を塗布することで乳腺炎を治します。これから季節も春になり、たんぽぽが咲くようになってきますので、ちょうど良い時期です。

Sさんにはこれらの内服薬と外用薬で乳腺炎が起こらないようにし、今度こそ体外受精を成功させて欲しいものです。

今度こそは

今日は月1回の不妊相談会の日。多くの不妊で悩む人、高度生殖医療に頚を傾げる人、高度生殖医療と漢方を併用しての治療を望む人、が相談に来られました。

今日相談に来られた人達の傾向としては、「流産が多いこと」でした。1度もしくは何度も妊娠はしているけれども挙児まで至らない、いわゆる不育症や抗リン脂質抗体が陽性である人が多いように見受けられました。

しかしこれらの人達は、自然で妊娠できる力、もしくは体外受精でも陽性反応となり着床できる力、を持っているのです。なぜ流産してしまうのか、は人それぞれ異なりますが、遺伝子の問題、つまり卵の質の問題や黄体ホルモン不足が原因であることが多いように思えます。

その改善として、妊娠できるその力を引き伸ばすように、卵胞期には育つ卵の質を上げ、黄体(高温)期には黄体ホルモンを十分に保てるように漢方薬を調整していくことになります。

今回は高温期に不正出血が起こる人達が多かったために、「田七人参」の処方が多く出ました。どうしても黄体ホルモンの分泌が不安定な場合は、高温期に低温期のような体温が混じり、不正出血を起こしたりします。それを食い止めるために、また妊娠しそうな人でも大丈夫なように「双料参茸丸」「衛益顆粒」「帰脾錠」などを併せて処方されました。

今度こそは挙児まで行けるよう、高温期の様子を見守りつつ応援しています。

春野菜でデトックス

冬の間は体が固まり、あまり気を外に発散させないために、老廃物が溜まっています。春になって、体内の老廃物を出すために、これからは肝臓の機能を高め、胃腸を整えることが大切です。

「春」は「肝」の季節ですので、他の季節よりも「肝」が高ぶり、自律神経が乱れることで情緒が不安定になったりします。また生理不順の人であれば、いつもより不順が激しくなってしまうこともあります。

そこで、これから迎える「春」と仲良く付き合っていくために、春野菜をたくさん摂って、調整していきましょう!

自律神経の乱れには、「セリ」や「三つ葉」。さっぱりした口当たりや味が気持ちを安定させ、血の流れを良くし、肝臓に働きかけ、解毒もしてくれます。同じ「セリ科」の「当帰」は調経作用、「川きゅう」は活血作用により月経不順を改善しれくれます。漢方薬ではそれらを含んだ「逍遥散」「加味逍遥散」「婦宝当帰膠」などが良いでしょう。

解毒、デトックスには、「キャベツ」。古代ギリシャ・ローマ時代から薬効のある野菜として知られているこの野菜は、成分の「ビタミンU(キャベジン)」が胃の粘膜を再生し保護する働きをするために、胃潰瘍のお薬に使用されています。ビタミンCも淡色野菜の中ではトップクラス!免疫力が高まります。また消化吸収が良くなることで、体内の老廃物を排出し、新陳代謝を高めてくれますので、デトックスに良いものです。

漢方薬では、胃腸の機能を高めるようにしたり(六君子湯・平胃散など)、血流を良くしたり(冠元顆粒など)、腸内のお掃除を手伝ったり(ラクシュミ・ハーベルシーなど)することで、デトックスのお手伝いができます。

「医食同源」!まずは日常の「食」を整えることが健康の第一歩です!春から始めてみましょう!