赤い豆の力

土用の入りには「あずき」を食べると良い、とされています。なぜ「あずき」なのでしょうか?

その歴史は徳川時代にさかのぼります。

もともとは公家の間では芋の葉を煮出した味噌汁に餅だんごを入れ、土用の入りの日に食べると暑気あたりをしないという風習がありました。それが徳川時代の中頃から餅をあずきの餡にて包んだものを食べることにより、夏季の悪病災難を退けていたようです。

そして今では「あんころ餅を食べて暑さに負けないように祈願する」という風習になったのです。

土用の丑の日に鰻を食べるという風習ができたのは、その後の江戸時代のこと。それも平賀源内の提案によるもので、「鰻を売れるように」との販売戦略だったのです。よくその働きを考えてみると、暑気払いに最適なのは、「鰻」より「あずき」なのかもしれません。

よく外国の人が日本人が土用の丑の日のこの上なく暑い日に脂ギッシュな鰻を頬張っている姿を見て「暑さで胃腸が弱っている時になぜこんなものを食べられるのか?!」と言ってギョッとしているという話をよく耳にします。その光景が奇怪なものと映るようです。確かに言われてみればそうです。食欲のないときにこんな脂ギッシュなものが食べられるのか・・・?

それを考えると「あずき」はこの時期に食べるものとしては理にかなっているのです。

季節の変わり目の土用のときには胃腸がバテてしまっています。その胃腸を強めてくれるのが「あずき」なのです。

その効能である「清熱燥湿」「利水消腫」作用により、暑く火照った体を冷まし、夏の湿気でむくんでだるくなった体を元気付けてくれます。また色が「赤」であることもこの時期に良いことで、東洋医学の五行説では夏は「赤」に当てはまり、その赤に相当しその時期に弱る「心」と「小腸」を強めてくれるのです。

漢方でも「浮腫」には「赤小豆(あずき)」を使用し鯉と一緒に煮込んだ「赤小豆鯉魚湯」としても使用されています。

またその働きを知っている人達は、民間療法として「浮腫」や「母乳の出が悪いとき」「便秘」「二日酔い」には、茹でた「あずき」を使用しています。この民間療法は私達も良く利用し、湿気による「便秘」を解消するのによく指導しています。

小さな赤い豆ですが、偉大な力を持っていて昔から意味あって季節に合わせて食べられていたのです。是非暑気払いにお試しください。