芍薬甘草湯

月経周期を整える「周期療法」で、排卵期に使用する「芍薬甘草湯」。

このお薬の効能・適応症を調べると、「傷寒論」では、風邪の引き始め(太陽病)の症状で「脚攣急(脚がひきつれる)」を治す、また「拘攣し、急迫する者を治す」とあります。

これを応用し、「子宮の痙攣」、「痛み」などにはこのお薬を使用します。

また、「肝」がうまく働いていないために、筋肉が引き攣れ、排卵がうまくいかないような症状のときにも、「疏肝理気剤」であるこの薬を使用したりします。

お薬もそのものの本来の働きに注目し、それが体に及ぼす結果を応用して使用します。一般的なお薬の効能や適応から判断すると、疑問を持ってしまうかもしれません。しかし、その処方にはしっかりとした目的があるものです。

疑問を持ったときは、その処方をされた専門の先生に聞くようにしてください。お薬も自分で理解して納得した上で、服用してもらった方が効き目も倍増するものです。

命の大切さ

結婚5年33歳のYさんは、今まで考えたことのないことに直面していました。

「子供ができないかもしれない」

その現実に、今までは「子供を産むこと」など考えたこともなかったことを改めて考えたときに、「子供が欲しい」と感じている自分に出会ったのです。

それは乳癌が発見され、その手術後の抗癌剤による治療をしているときのことでした。抗癌剤を使用している間は「子供は作らないように」と忠告されたことが、自分の奥底にあった願望と対面することになったのです。

もし、乳癌の抗癌剤治療が続けば、このまま子供を産むことなく時が過ぎ、もう産めない年齢になってしまうかもしれない。

そう思うとなお一層その願望は膨らむばかり。

今までであれば、「いつでも産めるからまだまだ」と思っていたことが、「できないかもしれない」という言葉により、Yさんの考えは変わっていったのです。

そして改めて「命が生まれる大切さ」について考え、それと同時に「命がなくなる辛さ」も感じるようになりました。

幸いYさんの抗癌剤治療は続くことなく、その後の経過も良好で、「自分が作り出す大切な命」について前向きに進んで行き、その1年後、「命」を宿すことができました。

人間は人生の中で、「なくなって初めて大切だとわかること」を多く経験します。「大切なこと」がなくなってしまう前に、大切だと気づけるような人間でありたいですね。

冬虫夏草

昨日の「チャングムの誓い」の最後で紹介されていた「冬虫夏草」。

これは、中国の四川、貴州、雲南、チベットなどに産する蛾の幼虫に生えたキノコの一種です。コルジセピン、コルジセプス酸、ビタミンB12などが成分として含まれております。

また病後の体力低下や、虚弱体質の改善に「冬虫夏草」に「人参」「鹿茸」などを配合したものが「双料参茸丸」。

日本ではこの「冬虫夏草」は高級品としてあまり日常では目にすることはありませんが、中国圏では「不老不死」や「滋養強壮」のお薬として、食卓でも馴染みのあるものです。

以前中国に行ったときのことです。

中国の職場では常にお茶のポットが置かれていて、それを自由に飲んだり、掃除などをしてくれるおばさんがコップに入れてくれたりします。

そのお茶ポットを開けてみると、そこには・・・

お茶の葉に紛れた「冬虫夏草」がいくつか入れられていたのです!!!

中国ではお茶の葉に虫が沸いていることは良くあることですので、「ぎょっ!」と初めは思ったものです。

この様に、中国では日常的に健康のために一つ加えることをしているようです。それだから中国の人はお肌が綺麗なのでしょうか?

食が溢れている日本人の私達は、「毎日食べるその一口が、体を作っている」ということをもっと認識し、食生活の見直しをしないといけないようです。

桃の節供

今日3月3日「雛祭」は五節供の一つで、上巳(じょうし)の節供、桃の節供と呼ばれています。上巳は当初3月の最初の巳の日とされていたのですが、後に3月3日に定まったと言われています。

中国では、この日は忌日で邪気に見舞われやすいとされ、この日に災厄を祓う行事があったようです。

日本でも「巳の日の祓え」として、人形(形代:かたしろ)に心身の穢れを移して、海や川に流していました。その名残が「流し雛」。

この「祓えの行事」と「宮中の女の子が雛遊び」とが結びつき、「雛祭」として現在のような「女の子の成長と幸せを願う行事」となったようです。

雛祭に欠かせないもの、というのはいくつかあります。

「雛人形」「ひなあられ」「菱餅」「引千切」「貝合わせ」「ばら寿司」「蛤」「笹鰈」などなど・・・。

それぞれに意味があるのですが、その中でも「引千切」について少しご紹介しましょう。

「引千切」は「ひちぎり」「ひっちぎり」「ひきちぎり」と読み、雛祭の菓子として出されるものです。

これは、宮中での祝儀に用いられた「戴餅(いただきもち)」や参内者に手でちぎって分け与えた餅の形に由来すると言います。

京都ではその昔、女の子を出産する際に、これを婿方の家に贈る風習があり、現在ではその風習にちなんで「雛祭」にはこの菓子が出されるようになったようです。

子供が流行病などで亡くなることが多かったその昔には、年に何回か行われる「祓えの行事」が大切でした。今はあまり「祓えの行事」としては見られていない「雛祭」ですが、今一度この日の意味を見直してみると、我が子がすくすく成長している当たり前の姿が、もっと有難く思えてくるに違いありません。

昨年漢方服用にて妊娠された人の多くが、女の子を出産されました。今日始めての「雛祭」を迎えている赤ちゃんが多くいます。きっと可愛い雛人形が飾られたことでしょう。「祓え」も忘れずにされたでしょうか。

お血・痰湿の体質改善の末に

昨年夏から周期療法による漢方の不妊治療をされている27歳Sさん。

「子宮内膜症」があり、一昨年「子宮筋腫」と「チョコレート嚢腫」の開腹手術をされました。漢方的にはSさんのタイプは「お血」「痰湿」タイプ。少しぽっちゃりされていることも特徴的です。

生活面でも「痰湿」になるような食事を避け、適度な運動を心がけるように指導するとともに、その症状を改善するような漢方を処方し、自他共に体質改善に努めてきました。

昨年末、随分と基礎体温表も整ってきたことより、漢方を始めるまで休んでいた西洋医学のホルモン療法を再開されました。

ホルモン療法を始めるに当たって、内膜症や卵巣の検査を行いましたが、全く問題なし。

Sさん本人はもしかしてまた内膜症が再発しているのではないか、と不安でしたが、その点は漢方にて進行を防ぐことができていたのでしょう。どこにも再発も新たな症状も発見されることはありませんでした。

そして1月、1回目の挑戦!

良い感じで治療が進みましたが、結果は残念!

そして2月、再挑戦!

2月半ば、生理予定日が過ぎましたが、まだ高温期。

もう少し待ってみよう・・・。

5日が過ぎましたが、まだ高温期。

おそるおそる検査薬にてチェック。

待ちに待った「陽性反応」!!!

この「プラス」の表示を何度と夢見たことでしょう。

すぐに病院に行き、念のために「プロゲステロンの膣座薬」を受けました。

このまま高温期が続いて欲しい・・・。

こんな時には「神様」が居ると信じて「神頼み」をしてしまうのは都合がいいことだと思いながら、思わずやってしまっている自分に出会うものですよね。

漢方薬は、「田七人参」と「衛益顆粒」にて様子を見ました。

そして今日、病院にて胎嚢が確認され順調に育っている、との報告がありました。

しかし流産しやすい9週、11週とまだまだ危険がたくさんです。

これからもまだ「神様」には頑張ってもらわないといけませんね。

子宮筋腫と不妊

子宮筋腫とは、子宮筋層にある平滑筋に出来た良性の腫瘍のこと。この腫瘍は女性ホルモンのエストロゲンにより大きくなります。

子宮筋腫はできる部位によって「粘膜下筋腫」「筋層内筋腫」「漿膜下筋腫」の3つに分類されます。もっとも発生頻度の多いものは「筋層内筋腫」です。それぞれ経血が多くなったり、不正出血が起こったりと、何らかの症状があるものですが、「漿膜下筋腫」は比較的自覚症状が起こりにくいものになります。

さてその筋腫ですが、子宮筋腫が必ずしも不妊の原因となるわけではありません。しかし、受精や受精卵が着床しにくくなることはあります。

それは、卵管近くに筋腫ができることで、卵管を圧迫し精子や受精卵の通りを防いでしまったり、受精卵が着床する際の子宮くうの収縮の邪魔をしてしまったり、筋腫により子宮内膜の血流が悪くなり内膜が十分に育たないこと、などが原因となるからです。

妊娠を希望するか否かによって、筋腫の治療方法も異なってきます。

妊娠を希望しなくても月経過多や不正出血、生理痛など生活上支障をきたす症状がある場合は、何らかの治療をした方が良いでしょう。

将来設計に合わせて、婦人科医と相談されることをおススメします。

もし、大きさが3cm未満、妊娠に支障のない位置、などであれば、是非安全な漢方治療をお試しください。漢方治療は、体質を改善しながら筋腫の治療をしていくために、筋腫の一部分だけでなく、体全体からきれいになっていきます。

筋腫がなくなる頃には、「何だかきれになったね」と言われることになるでしょう。

1歩1歩

結婚5年目、29歳Aさん。昔から生理不順。

2年前より病院にて不妊治療をしているのですが、毎周期同じ事の繰り返し。人工授精も3回行いましたが、良い結果とはならず。体質も改善された感じもなく、遅々として進まないステップに頭を悩ませていました。

やはりこれには「体質改善が必要」と、漢方による治療を試みようと今年に入り、問い合わせをされました。

今まで病院の治療では、なかなか排卵しないために排卵誘発剤を処方され、排卵を促すことで、高温期そして生理を起こすようなものでした。

Aさんは「にきびが出やすい」「やや毛深い」などの症状より、「多嚢胞卵巣症候群」であることが把握できました。

Aさんは2年間も排卵誘発剤などによる治療により、月経周期を整えていたために、それを止めると生理が来なくなるのではないか、と心配されていました。確かに止めてすぐの次の周期は、少し卵胞期が長くなるでしょうが、徐々に改善していくのが通常です。

そこで、Aさんには卵胞期に「シベリア霊芝錠」と「杞菊地黄丸」を処方しました。

卵胞期は通常であれば9日間。

予想通り、Aさんの卵胞期は14日たっても高温期にはなりませんでした。

Aさんから「ちゃんと排卵するのでしょうか。高温期になるのでしょうか。」と心配の声が届きましたが、「心配しないで。」とそのまま卵胞期の薬を続けて処方しました。

そして20日目、「高温期になりました」との連絡がAさんより入りました。

Aさんは、自力で排卵できた感動とともに、やっと1歩ステップを踏み出すことができたことに喜びを隠せない様子でした。

これからどんどん1歩1歩ステップを踏んで行きましょう。

貧血改善の次に

30歳Kさん。28歳を過ぎてから疲れやすくなり、顔色も悪いと言われることが多く、爪も伸ばそうとしてもすぐにどこかでひっかけて折れてしまい、結局伸ばせずにいました。

「28歳を過ぎると体がこんなにも変わるものなんだなぁ。もうそんな年なのか・・・。」

と年のせいだと思っていました。

28歳を過ぎてから結婚したKさんは、生活が変わったこともあり、あまりそれらの症状に対して気にしていませんでした。

昨年より「そろそろ子供を」とチャレンジしていましたが、すぐに出来ると思っていたのになかなか出来ないので、婦人科へ。

ここ2年ほど健康診断も受け損ねていたKさんは、そこで久々に血液検査を受けたのです。

そしてわかったことは、「貧血症」。

正常成人の鉄所要量は、非妊娠時の女性だと12mg/日であるのに対し、Kさんのヘモグロビン値は8mg。

産婦人科医が一言、

「そりゃあ、しんどいでしょう!」

そして「貧血を治すことで体の状態が良くなるので、生殖器能力も良くなるでしょう。」ということで鉄剤投与の治療が始まりました。

Kさんは西洋薬の鉄剤に加えて、漢方薬も服用したいとのことでしたので、まずは「貧血」を治すことを重点として「四物湯」や「当帰芍薬散」「補中益気湯」などの働きを取り入れた「婦宝当帰膠」と高温期には「十全大補丸」を服用してもらうことになりました。

今月で服用3ヶ月目。

血液検査の結果はヘモグロビン「11mg」まで改善、卵巣の働きも正常であることが確認されました。

それとともに自覚症状としては排卵前後のオリモノが増え始め、卵胞チェックでは卵胞も育っている、とのこと。

今まで潤滑油となる「血」が不足していたために、全ての機能の働きが弱くなっていたのです。その潤滑油を補うことで、徐々に動き出したKさんの体の機能。

これからはギクシャクせずにもっとスムーズに働いて、きっとKさんに「よろこび」を運んでくれることでしょう。

潤滑油が改善されたこれからは、漢方薬では月経周期によって服用するお薬を変えていくという「周期療法」にて体質改善を計っていく予定です。

付け足しとして、「貧血改善」でもたらされた「よろこび」はこれだけではなかったことを記しておきましょう。

ここ最近痩せにくくなってきていたKさんの体に変化があったのです。以前は食べれば太り、食べなければ痩せる、といったコントロールしやすいKさんの体だったのですが、最近はちっとも痩せなくなり、少しずつ太ってきていたことも悩みの一つでした。

それが「貧血改善」とともに以前のコントロールしやすい体に戻ったのです。

これは貧血による代謝低下によるものだったと思われます。

この様に、「貧血」を治すことで、内面からきれいになり、外側もすっきりし、一石二鳥ということもあるのです。

次はもっと「うれしいこと」がやってくることが期待できそうです。

出荷の時期

今、高野山では「大和当帰」の出荷が行われています。

通常は、「当帰」の生薬を単味で使用することよりも、他の生薬を加味して使用します。

例えば、「当帰」に「川きゅう」「芍薬」「地黄」を加えた「四物湯」。これの「当帰」の配合を多くして「党参」「阿膠」などを加味したものが「婦宝当帰膠」。

月経不順などには「香附子」「益母草」などを加えた「きゅう帰調血飲」。

「更年期障害」などの症状には「柴胡」「牡丹皮」などを加えた「加味逍遙散」。

病後の体力低下には「人参」「黄耆」を加えた「十全大補湯」。

便秘には「大黄」「麻子仁」などを加えた「潤腸湯」。

この様に、まだまだたくさんの症状に使用される「当帰」は、日本で自給可能な数少ない生薬のひとつです。

毎年同じ場所では育てられないために、育てるためには広大な場所が必要となってきます。高野山に広がる赤土の土地ですくすく育つ「当帰」。その青々としたセリに似た当帰畑は、女性がいつまでも健康で美しくあるために応援してくれているようです。

敬遠される産婦人科

日本では、少子化が進むとともに、「産婦人科医の不足」も進んでいるようです。小児科医も不足しているようですが、やはりその背景には少子化が潜んでいることが原因の1つとも言えるでしょう。

しかしそれ以上にその原因となることは、産婦人科は「不規則で厳しい労働環境」「他の診療科と比べて訴訟のリスクも高い」ことが、医師が専門を選択する際に、敬遠されることの大きな要素のようです。

ただ専門を産婦人科として選択しない若い医師が増えると、ますます現在産婦人科医として働いている医師の負担が大きくなり、「不規則で厳しい労働条件」というイメージが色濃く植えつけられることになり、悪循環です。

また産婦人科医だけでなく、産婦人科に通おうとしている妊産婦や不妊、更年期などの症状を持つ人にもますます負担がかかってくることは避けられないことです。

現に今、産婦人科の待ち時間は最低でも1時間以上。大きな病院や人気の病院になればなるほどその待ち時間は長くなるばかり。

働きながら婦人科に通おうとする女性は特に、通院することがかなりの負担になり、結果として不妊治療や更年期の治療を諦めざるをえない人も多くなっていることでしょう。

何とか女性が社会で生き生き働きながら、安心してケアや出産ができるような体制にならないものでしょうか。