夜行バスに揺られて 

先日来られたAさんご夫妻、はるばる四国から夜行バスで来られました。

とても人の良い純朴なお二人。結婚して10年になりますが、赤ちゃんが授かりません。几帳面な正確の方でしょう。これまでの検査データー、エコーの写真、基礎体温表(BBT)をそろえて持参してくださいました。

本格的な治療を始めて3年、今は不妊クリニックに通われています。クリニックでは一般的な排卵誘発剤と排卵促進剤の注射で様子を見ているようです。家族性の疾患もあり、多嚢胞性卵巣もあります。何とかして家族性の糖尿病を進行させず、早い時期に妊娠に持っていけたらとお2人を見て思っていました。

周期療法に加え、運動、食事、日常的な決まりなどをお話し、少しでも妊娠し易い身体つくりを提案させていただきました。

遠くから来てくださったお二人の思いが叶いますように!

基礎体温表がガタガタ  

最近、基礎体温表(BBT)が犬の歯のような(犬歯状)上下の激しい状態の方が多く見られます。

0さん(39歳)の基礎体温表(BBT)は低温期も高温期もなく激しく上下しています。36度以下から急に36,6度に上がったと思うと、急に36,3度に下降、いったいどうしたの?と聞きたくなる表です。しかもこの波状の激しい中、AIH(人工授精)、IVF(体外受精)を実施してきて、さらに続けようとされているのです。この状況下の中ではいずれも成功しません。ホルモン(E2とP)のバランスが崩れているからです。

このように基礎体温表(BBT)が上下にガタガタの場合は、視床下部からのホルモン分泌がうまく行ってないことがあります。プロラクチン値が高い、あるいはFSHが高いなど検査やホルモン剤が必要な場合があります。

漢方的には感情の起伏をコントロールすることが大切になりますし、<補腎薬>をきちんと処方することが重要になります。0さんはいまホルモン剤をお休みして気分を和らげながら、補腎、活血、養血、疏肝、平肝のお薬を服用して高温期が安定してきました。

もう少し低温期が安定してきたら、自然妊娠も可能でしょう。楽しみです!

基礎体温表が一直線

基礎体温表(BBT)が2相性にならず低い数値で安定している方がいます。いわゆる無排卵の基礎体温です。

若い人で10代、20代の場合は生殖器官の未発達、発育不良に見られます。また、過激なダイエットにより無排卵になることもあります。30代~40代では、不妊治療のホルモン剤の過剰摂取の影響で卵巣が悲鳴を上げて無排卵状態になることがあります。

若い人の無排卵は、視床下部や脳下垂体の働きが悪くて卵巣の機能が働かなくなってしまうケースがあります。元々初潮が無く、ホルモン剤をつかって人工的に月経周期を作って来た人もいます。自力では排卵、月経が来ないのです。

Mさん(28歳)も初潮がなく、高校時代からホルモン剤で生理をおこしていました。28歳で結婚するまで自力の排卵は無く、いつもホルモンで周期を作っていました。結婚して赤ちゃんを望むようになり、ホルモン剤で卵胞を育て排卵させようとしても、卵が見当たりません。卵胞が育たないのです。医師からも「赤ちゃんは望めない」と言われ、悲嘆しお母さんに相談して当店を訪れてくれました。

まだ、20代。諦めるのはまだ早いです。Mさんには「初潮が無いことは、先天的な生殖の能力が不足している」ことをお話し、時間がかかることを了解してもらい、「35歳までには授精可能な卵を作っていきましょう」と話しました。このままでは早発閉経です。

放っておくわけには行きません。漢方薬で補腎、補血、活血しながら、今治療中です。体つくりの期間と位置づけ、ジムに通い、趣味を生かすことを提案して、実行してもらっています。時間がかかりますが、きっと良い道が開けると思います。

基礎体温が全体に低い

基礎体温表が全体に低いケースもよく見られます。低温期が36度以下、高温期が36,5度に到達しない、いわゆる低体温です。基礎体温表(BBT)の35度台を上下し、下段に書ききれない方もいます。

Aさん、34歳は基礎体温表の体温表示欄をご自分で書き換え、34度から36度の範囲に記入してこられました。見ますと低温期は34,7度くらい35度には行きません。高温期は高くて36度まで。随分低いです。

この体温ではあまりにも低すぎて卵もすくすくと育ってくれません。冷たいところで小さくなっているかわいそうな卵をイメージします。凍りついた卵巣・子宮かもしれません。やはりホカホカの温かいところで卵の成長を見守りたいですね。

子供の頃、山の植樹に参加したことがあります。北海道の山奥です。春、雪解けの頃に山焼きをします。枯れ木や草を燃やしますが、土の中はまだ雪が残っています。土の表面が焼かれ、ゆきが解けて程よい加減の時に、唐松の苗木を植林するのです。夏にはしっかり養分を吸って根着くのですが、冷えている方の子宮はいつも雪が残っている冷たい環境で発芽もままならないのではと想像しています。

卵胞期は、やはり36,2~3度の体温が必要で、高温期は36、7度程度は欲しいですね。しっかし成長した卵胞はしっかりした黄体を作ってくれます。充分な女性ホルモンと充分な黄体ホルモンこそ妊娠しやすい身体になるのです。

漢方薬では<補腎陽>のお薬が中心になりますが、エネルギーを与える<補気剤>も当然必要になります。Aさんは漢方薬を服用して6ヶ月。今月の基礎体温表(BBT)は体温が戻り、36度から37度の枠の中に綺麗に納まりました。きっとホルモンバランスもよくなってきたことでしょう。卵の成長が楽しみになりました。

基礎体温が全体に高い 

基礎体温が全般に高いケースは良く見られます。低温期が36,7度近く。高温期は37,2~3度の高さになり、体温表(BBT)を開いて思わず「わぁ~高い!」と声が出てしまいます。

昨日初めて来られたTさん37歳、Sさん43歳も体温が高く、基礎体温表(BBT)の上1/3に綺麗に治まっています。つまり低温期36,7度以上、高温期37、3度と体温表の下部2/3は空欄になっています。「体温が高すぎますね」 「これでは質の良い卵は出来ませんね」とお話しすると 「何故わかるのですか?」と驚かれます。

お2人ともホルモン剤を使って誘発していますし、高温期には黄体ホルモン剤が投与されしっかり服用されています。当店には、「最近、良い卵が出来ないのです」、「卵ができても空砲です」、「授精しても分割が途中で止まってしまうのです」、「質の良い卵がほしいのです」という目的をもってこられます。

一般に基礎体温表(BBT)が全体に高いのはあまり良い体調とはいえません。特に卵胞を育てる時期に体温が高いと卵の質を落とします。卵が成長するのには適温がありますし良い環境が必要です。ホルモン剤を長期に渡り使用していくと高くなる傾向があります。黄体ホルモンを使うと体温が高くなり次周期の月経開始が高いところから始まることになります。漢方薬で体温を下げて、適温の中で卵胞が育つよう体調を整えて行かなければなりません。

T さんもSさんにも、周期療法の処方をしました。きっと6ヵ月頃には綺麗な2相性の基礎体温表(BBT)になり、卵胞の成長も良くなることでしょう。楽しみです。

奇跡を再び!

以前書いた<52歳の胚移植>のTさん、祈るような気持ちでしたが判定結果は陰性でした。でも、Tさんは 「奇跡でした。今まで何回かIVFをしてきましたが一番きれいでした。この年で、自然で採卵でき綺麗な分割ができ、移植できたことは奇跡です」 「これにめげずにまた頑張ります!」と明るく話してくれました。

また質の良い卵を作ろうと周期療法で体質改善を始めました。本当に前向きなTさんには私も励まされます。このブログを読まれた方がどんなにTさんに刺激を受け、励まされ、勇気をもたれたことでしょう!

海外在住の方もこのブログ読まれ、「51歳ですが卵を作りたいのです」 「高齢ですが(49歳)今からでも間に合うでしょうか?」 など多くの方からお問い合わせがありました。皆さん頑張って挑戦されています。

一人でも多くの方に喜んでもらえるよう、妊娠しやすい母体作りを周期療法を用いて実践していこうと思っています。

52歳のTさんばかりではなく、51歳のFさんも、Iさんも、Mさんも、Yさんも体調を整えて漢方周期療法で身体つくりをしていきましょう。きっと、第2、第3の奇跡が起きることを信じて!

52歳の胚移植

Uさんは52歳、漢方薬を服用してから2ヶ月が経過しました。遅い結婚でしたが「出来るものなら赤ちゃんを授かりやい」とクリニックに通い始めたのが3年前。

若い頃卵巣嚢腫をOPE、小児リュウマチを患い、高校の時は無月經を経験してきました。現在は子宮筋腫(3mm)があります。今まで人工授精5回、IVF(体外受精)5回をされていますが妊娠にまで至りません。だんだん良い卵が出来なくなってきたので、「何とか授精できる質の良い卵を作ってください」と相談にこられました。

早速<周期療法>を始めました。IVF-ETをされますので、とにかく質の良い卵ができるよう、<補腎剤>と<補血・養血剤>を中心に漢方薬を組み立て、服用してもらいました。

そしてやっと出来ました。自然周期で排卵誘発剤を使わずに良い卵が出来たのです。採卵も首尾よくでき、授精もでき、分割もスムースに行き、綺麗な4分割の胚を移植する事が出来たのです。胚移植を報告してくれたUさんのお顔が紅潮していました。聞く私もいささか興奮気味に聞いていました。それではなんとしても「着床してほしい!」と、<周期療法>で胚移植による高温期の漢方薬をお勧めしました。着床しやすいようにと4種類の漢方薬を判定まで服用してもらうよう話しました。もう祈るような気持ちです。

「52歳で授精可能な卵ができる」素晴らしい事です。「卵が出来にくい」 「質の良い卵がほしい」 このような方が多いのではないでしょうか? 

同じ悩みを持っている方、高齢で赤ちゃんを望まれている方への福音となるでしょう!!

子宮内膜が厚くならない!

中山先生の講義の続きです。

ARTでどんなに医師の技量がよくても、どんなにエンブリオロジスト(胚培養士)の技量がよくても、個人の妊娠力が無ければ妊娠成立にならないということです。このことは私達も常日頃口をすっぱくして申し上げていることなのです。

つまり、妊娠しやすい母体・父体作りこそがベースになるのです。色々あの手この手を使っても、肝心な卵子の成長が悪かったり、着床しようとした子宮内膜が薄かったり、受け入れる側の体制が出来ないことが多いのです。卵子が授精して胚盤胞にまで分割し、良い条件であるにもかかわらず、着床するためのベットが用意されていないことがよくあります。その時は次周期に着床用のベットが用意されてから胚移植をするケースがよくあります。患者様もその時は「子宮内膜を厚くする漢方薬をください」と所望してきます。

子宮内膜の薄い人にホルモン剤をいくら投与しても子宮内膜は厚くなってくれないのです。薄い人にホルモン剤を投与すればするほど厚くならない現象があるそうです。何故なのでしょうか?たくさんのホルモン剤でお薬のレセプターが減っていくらしいです。

子宮内膜が7mmあれば着床可能と話されました。子宮内膜が6mmの方が運動と漢方薬で10mmになり妊娠したとの報告、さらに内膜6mmの方は漢方薬と鍼灸で8mmに厚くなり妊娠されたことも報告されました。

当店では子宮内膜が4mmから5mmの方が漢方薬を服用して妊娠され、無事出産されています。また子宮内膜が薄く、?移植が出来ず漢方薬を服用して子宮内膜を厚くしてから(6mm→10mm)胚移植をされ妊娠・出産されていることを見ますと、漢方薬の力にゆだねても良いのではと思います。

薄くなった子宮内膜の表面は荒れ果てた荒野のようで(札幌の東口医師のお話)とても移植しても育たない地です。

漢方薬の<冠元顆粒>や<婦宝当帰膠>、<紅サージ>の活躍で子宮内膜をホワホワベットにし着床しやすい表面にすることが大事なことです。

漢方薬で薄い子宮内膜を厚くしていきましょう!

卵子ができない!

「卵子が出来にくい」、「卵子が育たない」、「誘発剤を使っても出来にくい」 「漢方薬で何とかなりませんか?」このようなお話がよく聞かれます。質の良い卵子をと言うのはみんなの願いです。

先日、私達の不妊症を専門に勉強しているグループのスクーリングが東京でありました。講師はいつも大変お世話になっている「足立病院の中山先生」にお願いして、2時間半たっぷりご講演をしていただきました。

(先生の受診を希望された患者さんにはご迷惑をおかけしました。ごめんなさい!)

内容は「生殖補助医療(ART)の有用性と限界」でした。どこまでも発展する生殖医療、テーラーメイドのIVF-ETのお話に感嘆したり、感心したり、先生の人間味溢れるお話に感動したりのご講演でした。

現代生殖医療のICSIのめったに見られない動画に驚嘆。ARTの発展はどこまで行くのか…想像も付きません。そのすばらしい医療の中でどうしても限界はあるようです。

「卵子が出来にくい」誘発剤を使っても卵が育たない、卵子が無ければ始まりません。若い人の卵巣と年齢が高い方の卵巣はやはり違いがあります。若ければたくさんの卵ができ持ち駒もたくさんありますが、年齢を重ねてくると持ち駒も少なくなり卵も元気がなくなります。

たくさんのホルモン剤を浴び、それに応えようとする卵巣。外からの刺激に一生懸命応えようとするが思うように反応できない卵巣。そんな「瀕死の卵巣」にhMGなどの刺激を与えることは「死にかけた老人に鞭打つようなもの」と話され胸打たれました。

また、よい卵子を作るには「ストレスをためない」「運動・リラックス」「生活習慣の改善」そして治療としては「漢方薬」「針灸療法」「ストレスの軽減」「運動」が大切であると話され、感銘をうけました。

「卵子ができない」 方、漢方薬では補腎養血活血が必要なのです。<婦宝当帰膠>をはじめ<杞菊地黄丸>、<参茸補血丸>など、漢方薬にはたくさんのアイテムがありますので、どんどん使って皆さんの希望にお応えしたいと思っています。

基礎体温表・BBTは?

先日不妊で相談に来られた40歳のMさん、結婚されて6年、赤ちゃんがほしいと思って不妊クリニックに通いだして3年が経過していました。

一通り検査の結果は特別な異常も無く、1年はタイミング療法で過ごされましたが、なかなか授かりません。その後ステップアップして人工授精(AIH)を8回、体外受精(IVF)を3回されたのですがうまくいきません。次第に焦る気持ちが募る一方、だんだん体調が崩れていくことに不安を抱き、相談に来られました。

最近の基礎体温表(BBT)を見ますと、この3周期の体温表は2相性にならず、坂道を上がり徐々に下降する形になっていました。3周期とも採卵、胚移植をしていますが、回を重ねるたびに採卵数も減少し、受精卵も減少しています。ランクもあまりよくありません。また、胚移植される高温期は、身体の準備が整わず低温の状況で実施され、なかなか高温になっていませんでした。

当店では、<周期療法による妊娠しやすい母体作り>を目指していますので、基礎体温表(BBT)を重視しています。低温、高温の2相性にすること、それはE2(女性ホルモン)とP(黄体ホルモン)のバランスを見ながら、不足しているところを補い、質の良い卵子とみずみずしく柔らかな子宮内膜のベットを用意し、着床しやすい状況を作っていくことで、その状況は基礎体温表(BBT)に現れてくるのです。

しかし、Mさんの基礎体温表(BBT)はとても受精卵を迎える状況ではないのです。この不妊クリニックでは、せっかくつけている基礎体温表(BBT)を全く見てくれないといわれます。Mさんが本来持っているホルモン分泌の力を見て、胚移植が適切かどうか判断するのに、基礎体温表(BBT)が良い情報源と思うのですが・・・。

Mさんには、『しばらくは体外授精で疲れた卵巣と子宮に、お休みと栄養を与えましょう』と話しました。その間に基礎体温表(BBT)がきれいな2相性を示すことと思います。