卵子提供について

先日第21回の不妊カウンセリング養成講座が東京でありました。

内容は「生殖医療の基礎知識」、「行政の取り組みの状況}、「カウンセリングの分野」、「明日の生殖医療を学ぶ」(胚培養の分野から)と多方面からの講座で充実した時間を過ごしました。

その中で、ロサンゼルスでアメリカの法律によって「卵子提供エージェンシー」を立ち上げている日本人の方が発表されていました。

実は、私のところにもご高齢のカップルが来られ「卵子の提供を受けたいのですが」と悩みを打ち明けられたことがありました。日本では合法化されてなく、どのようなすべがあるのかも知らずに何のお役にも立てず、気になっていました。つい最近も、閉経間近い方が「卵子の提供」を希望されて相談にこられたり、30代後半で両側大部分の卵巣切除で卵巣機能が著しく低下した方が、やはり「卵子提供」を望まれていたこともあり、タイムリーにお話を聞かせてもらいました。

具体的に、渡米する費用や滞在費用、治療費を含めての値段もお聞きしました。いまや、生殖医療は目覚しく進歩し、われわれの時代には考えられないことがたくさん事例としておきています。

生殖は神の手から離れ神秘の世界のベールがはがされつつあります。「自分の子がほしい!」と願う人々の思いはとても大きいものなのです! 倫理の問題、法律の問題を越えてアメリカで卵子提供を受ける日本人は3桁にも昇るそうです。

自然派の漢方をしている私にとっては、高度生殖医療(ART)、卵子提供、AID、代理母など科学の進歩についていけない、そんな気分で患者様の気持ちを汲みながら、複雑な心境で卵子提供エージェンシーの話を聞いていました。

1つの区切り

「AIHを明日するんですよ。」

そう言われた30歳Oさんの脈はアップアップ状態!何かにむりやり身体を動かされているような感じを受けました。

もともとOさんは生理不順で、放っておいたら自力では3ヶ月に1回の割合で生理がくる周期です。病院での診断は多嚢胞性卵巣。いくつもの卵胞がひしめき合い、なかなか1つのものが主席卵胞になってくれず排卵を渋っている状態です。

今までは排卵促進剤により排卵する力を借り、タイミングを合わせて様子をみてきました。それを約1年間続け、3ヶ月前より排卵促進剤に加え、様々なホルモン剤を使用しての療法が加わり、タイミングを取るような治療に変わりました。

その頃からOさんの身体に明らかに変化が現れたのです。もともとぽちゃっとした体系ではあったものの、少し運動すれば戻っていたのがここ3ヶ月で約10Kgほど一気に増量し、ちっとも痩せなくなってしまったのです。

困り果てたOさんは鍼灸の力を借りて新陳代謝をあげることと、不妊の改善をしたいと治療を求めて来られました。

しかし基本的に排卵から高温期の時期は黄体ホルモンが多くなり、どちらかと言えばエネルギーを蓄え代謝が悪くなる時期に入るのです。Oさんが来院されたのはちょうど高温期前です。昨日に排卵誘発剤を投与したといわれましたので、これからはもっと痩せにくい時期に入ってしまいます。しかもその後はAIHが行われ、hcg注射が行われる予定です。

その予定から考えると代謝を上げる治療は、今回AIHがうまくいかなかった時の後に行うことになります。もしうまくいった場合は、妊娠成立し安定期になった後から自己管理により行ってもらうことになります。その時には無理やりのホルモン治療から脱出しているはずですので、以前のようにコントロールしやすい身体に戻っているはずでしょう。

今回はAIHが成功するように、卵胞の育ちを良くすることと、受精そして妊娠継続のための治療を行うことになりました。

しかし身体から発するメッセージは「もう大変!」というもの。要するにあまりにも薬を使いすぎて身体はヘトヘトになってしまっているのです。可愛そうですが、Oさんも今回の初めてのAIHを区切りとして、しばらく治療をお休みしようと考えておられましたので、今周期はもう少しだけ身体にがんばってもらうことにしました。

それから2週間後、「今のところ薬にて高温期が続いているけど、お腹の感じから明日くらいに生理が来そうです」とOさん。

脈は・・・?!

やはり頑張ってます!しかし前回と違って着床を持続しようと頑張っているようでした。もっと頑張って・・・!

Oさんは不妊治療の区切りとしてAHIをとりあえず行ってみたようですが、とりあえずではなくせっかくなので、成功してしっかり育って欲しいものです!しかしのんびり派のOさんは、「いいんですよ、今回は~!」なんて明るく微笑んでおられました。

ただそんなOさんの気持ちとは裏腹に身体は必死になって頑張っていましたので、治療する側としてはそれを応援してあげないとなりません。妊娠継続の治療を行い、明日の運命の日を待ってもらうことにしました。

もし今回駄目であったら病院での治療は全てストップするようですので、その間に今まで薬で崩してしまった身体を取り戻すためにも是非とも漢方薬の力を借りたいとOさんは考えているようでした。駄目にならなくても、今まで崩してしまった身体を労わって欲しいものです。

お腹の赤ちゃんと共に元気になって、出産も子育てもスムーズに行くように応援していきたいです。

もともと弱い卵巣

29歳Eさん。結婚4年。婦人科歴も4年。不妊治療歴は1年。生理不順歴は初潮を迎えたときからなので18年ほど。不順だと意識し始めたのは9年ほど前から。

生理は飛び飛びであったり、だらだら続いたり、1年以上もなかったり・・・。

結婚してから婦人科を受診し、生理不順の治療が始まったのです。黄体ホルモンを補充するルトラールと排卵誘発剤のクロミッドによる治療でした。しかし半年の治療後、それらの薬を止めるとまた生理が来ない日々が続きました。体そのものを改善し、本来のEさんの力を引き出すところまでは至らなかったようです。

そして1年前、意を決して不妊治療を行うために別の婦人科を受診し、そこで片方の卵管が詰まっていること、卵巣機能障害であること、がわかったのです。

もともと卵巣の機能が弱かったのでしょう。しかしEさんは自然妊娠を希望されています。このような状態であるけれども、漢方薬にて体質改善をして自然妊娠が可能になるようにしたい、と強く希望されて来店されました。

病院では人工授精や次のステップの治療などをすすめられてしまうので、Eさんの「自然のままで」という思いより、自然と病院から足が遠ざかっていました。

漢方薬でしばらく体質改善を行い体調を整えると状況も変わってきますので、検査のためにも病院に行く必要性も出てくるでしょうが、今はEさんの気持ちがおもむくままに治療をすすめていくのが良いでしょうね。

Eさんの体質の「吹き出物」「肩こり」「経血に血塊」「経血が粘っこい」「生理痛が酷い」「排卵痛」「不安定な高温期」などや今までの経過から、卵巣機能が弱く卵の成長が悪いこと、卵巣や子宮内に滞っているものがスムーズに排泄できていないことが伺えます。

漢方ではまずは「お血」「痰濁」をターゲットに改善していくようにしていきます。「冠元顆粒」「水快宝」「爽月宝」などを周期や症状に合わせて組み合わせることで改善を計ります。

「排卵痛」や「生理痛」が治まってくると、流れが良くなり、子宮内の状態も良くなってくるはずです。それと同時に卵巣がうまく働くように調整をしていけば、自然妊娠も夢ではありません。

Eさんの漢方による治療は今始まったばかりです。きっと何ヵ月後には毎月訪れていた「痛み」から解放され、ストレスが軽減された生活を送ることができていることでしょう。体調が良くなればいろんな嬉しいことがやってきます。楽しみながら進んでいきましょう。

原因は心?

異変が起きたのは昨年の12月から。今まで順調だった生理周期が乱れ始めたのです。

39歳Iさん。40歳を目の前にした年齢が原因なのか、それとも他の何かが原因なのか・・・?

ちょうど仕事も年齢的に役職者になる試験を受けないとならなくなり、それが重なっていたことも精神的にストレスがかかり、ホルモンバランスを乱してしまったことも原因かもしれません。

その頃から肌にも艶がなくなり、目の下のクマも目立ってきたような気がするし、髪の毛もパサつくし、吹き出物もあごのラインに多く出るようになってきて、今までにないことばかりが続々とIさんの中で起こり始めていました。

Iさんにとっては、これから女性役職者としていつまでも美しく格好良く輝いて仕事をしつつ、子育てと仕事を両立していく理想像へと向かっていくはずだったのが、もう40歳を目の前にまだ子供に恵まれず、それどころか生理が来なくなってしまったのですから、そのショックは大きいものでした。

慌てて婦人科を受診したIさん。結果は卵巣が働いていないというホルモン数値が目の前に出されていました。早発閉経・・・。その言葉が脳裏をかすめました。

「このままではその年齢で閉経してしまいます。少し卵巣を休めましょう。」

婦人科医のその言葉にIさんの頭は真っ白に・・・!しかし医師の言うように、卵巣を休めればまたホルモン数値が正常に戻るかもしれない、まだまだ理想像に向かうことは諦めない!・・・とIさんはその治療をまずは2周期間続ける決意をしました。

そして2周期・・・。

通常の10倍ほどだったホルモン数値は、通常の倍ほどの数値まで下がっていました。しかしまだ正常ではありません。医師の判断によりもう1周期続けることになりました。

そして3周期・・・。

理想像に近づける判定のとき・・・!残念ながら数値は下がらず、通常の3倍の数値まで戻っていました。

薬による治療を3周期続けたので、薬漬けになることを避けたいIさんはその治療は一休みし、自分の力がどこまで快復しているか様子をみることにしました。

しかし何もせずにそのまま放置していれば、Iさんにとってのタイムリミットの年齢になってしまいます。何かしなければ!・・・と思いついたのが漢方薬でした。

Iさんには、良い卵胞を作ること、心にかかるストレスを軽減すること、補気・補血・調経をすることなどを目的とし、「杞菊地黄丸」「星火逍遥丸」「婦宝当帰膠」「冠元顆粒」などを使用し、卵胞期がいかに変化するかをみながらお薬を調整していきます。

良い卵胞ができれば、排卵もするはずで、排卵すれば高温期にもなるはずです。良い卵胞のためには安定した卵胞期が必要です。卵胞期、つまり「陰」を養う時期がとても大切なのです。

この時期に多くのストレスをかかえてしまったり、寝不足続きなどの過酷な生活をしていたり、足腰を冷やしていたりしていると、質の良い「陰」を養うことができません。つまり質の良い卵胞も育たないということなのです。

Iさんもあまりストレスをためないように、気持ちを入れ替えて、プラス思考で進んでいけばもっと良いでしょう。

しかし理想像が完全となることが厳しくなってきた今、Iさんは一方の理想像のために一方を諦めることも考えています。働くことはいつでも可能です。しかし女性として子供を産み、育てることはだんだんと厳しくなってくることです。その目標のために、Iさんは大きな決断を迫られているのです。

しかし決して片方を諦めなければならないことはないのです。全ては「心のあり方」により選択すべき道も変わってきます。ストレスもマイナス思考も全ては「心」に原因があるのです。それは「心」さえ変わることができれば、即プラスの物事へと変わってしまうのです。人生の壁にぶつかったとき、何とか諦めることをせずに「心」を変えて理想像へと向かって欲しいものです。

大切な時間

生まれつき備わっている能力、人とは異なる身体、難なくできてしまうこと、どうしてもできないこと・・・。

生まれたときから両手と両足がなかった乙武洋匡さん。しかしいつも笑顔で語り生きるその姿には、感動させられ学べることが多くあります。

「障害は僕の誇りです」と語り、その言葉は無理せず心の中からそのまま口に出てきたものであることが私たちを感動させるのです。

こんな風に生きられれば、素敵だなぁ・・・。

一般的に「マイナス」であると思われることに対して、私たちはそれが自分の中に存在すると、「これがなかったらよかったのに」「あのようになったらいいのに」と願ってしまい、それを「願い」として唱えてしまいます。

しかしどうしようもないことを願っても、神様は困るばかり。そんな願いは聞き入れることはできないでしょう。せっかく「それ」を与えてあげたのに、それをマイナスと捉え、要らないとしてしまっている人たち・・・。「それ」を受け入れることで、大きく成長し今以上に幸せな心を得ることができるはずなのに・・・。

「それ」を受け入れる勇気、そして諦める勇気を持つことは、なかなか難しいもの。しかしその勇気を手に入れれば、解決の出口のないことで思い悩まず、くよくよせずに生きていくことができ、今しかないこの大切な時間を素敵に過ごすことができるでしょう。

様々なことが原因で「不妊」という道を歩んでしまった人たち。しかし我が子に会うまで長くかかった分、もっと我が子のこと、夫婦のこと、家族のことを考える機会を持つことができ、「大切なこと」をより心で感じることができているのではないでしょうか。

長い期間待った分、その感動は大きいことでしょう。例え、結局授からなかったとしてもそれまで自分の身体と家族と向き合った時間は決して無駄ではなく、大切な時間だったはずです。

これからまだまだ治療を続けていく人たち、もうそろそろ止めようと思っている人たち・・・、それぞれ今の時に必要な勇気をつけ、前向きにくよくよすることなく進んでいってください。生き生きと前向きに進んでいける道は、1つだけではないはずです。

焦るけど・・・

「早くに子供が欲しい!」と焦れば焦るほど精神的に追い込まれ、ますますホルモンバランスが崩れてしまいます。見事にそれは基礎体温表に現れ、実際にホルモン数値も異常値を示します。

37歳Yさん。仕事は忙しくなり今まで以上にストレスがかかる上に、親からは顔を会わせる度に「まだ?」の声。Yさん本人も望んでいるのに可愛い我が子に会える日は遠く遠く感じられた今年2月。3ヵ月月経が来潮しないことをきっかけに、婦人科を受診。

そのホルモン検査でますます我が子が遠くなったことを知らされたのです。

昨年秋から「そろそろ」と漢方薬も本格的に周期療法を始め、毎日、陰を補う「煎じ薬」、腎陰や腎陽を補い、血を補い、血流を良くし、脾経を補い高温期を保つために「杞菊地黄丸」「紅サージ」「参馬補腎丸」「参茸補血丸」「帰脾錠」などをせっせと飲み続け、毎朝、基礎体温表と睨めっこをしていました。

ところが、12月頃から異変が起きたのです。異変を感じとったYさんは婦人科でホルモン検査を行いました。まさしく卵巣がアップアップしている状態が数値に出ていたのです。通常は10未満であるはずの、卵胞刺激ホルモンが75以上、15未満であるはずのプロラクチンが22以上でした。

しかしYさんは「自分の力を信じたい・・・!」その思いで、早くに良い卵胞が育つように亀板やべっ甲の入った陰を補う煎じ薬、プロラクチンのために「炒麦芽」・「晶三仙」、ストレス解消に「シベリア人参茶」などを3ヶ月続けてみました。

しかし基礎体温表は低温期のまま。変化することなく3ヶ月が経ちました。

そして再受診。ホルモン数値は今までになく最も悪い結果となっていました。卵巣が働かないために、卵胞刺激ホルモン(FSH)数値が90を示していました。

これは早くに卵巣を休ませる必要があります。Yさんの脳からの命令系のスイッチが誤作動してしまったようですので、早くに正しく作動するようにしないとこのまま閉経してしまうことになりかねません。

どうしてこんなことになってしまったのでしょう?!あまりにも焦る気持ちにストレスが重なったためでしょうか?!それもあるかもしれません。しかしそれだけではないでしょう。何が起こったのか、それはYさんの脳が知るのみで、婦人科医も、誰にも、Yさんですらわかりません。

まずは3周期、ピルを服用して卵巣を休ませることにしました。

Yさんはそれと同時に今まで頑張って服用していた漢方薬も、毎朝チェックしすぎるほどチェックしていた基礎体温も、全て休むことにしました。あまりにも全てのことがストレスになり過ぎていたようです。

そして身も心も休ませて3周期、再びホルモン検査を行いました。

結果、うなぎのぼりになっていた卵胞刺激ホルモン数値が14になっていました。10以上であれば、卵巣に負担がかかっている、という意味ですので、もう少し休める必要があるようですが、3ヶ月前と比べてかなりの改善です。

焦る気持ちはあるけれども、決して焦ってはいけない!焦れば焦るほど、また迷宮の不具合に身を投じることになってしまうのです。

今のYさんにとっては、もう1周期ピルを服用し、全てを休んで、頭も休めて、リ・スタートできるように心身ともに整えることが、一番の近道でしょう。

迷宮に入ってしまったかな、と感じた人は、是非そこから脱出する近道を見つけてください。もし見失ってしまった場合は、私達が近道を探すお手伝いをします!

力のある証拠

30歳Nさん。不妊治療は1年ほど。ホルモン検査ではプロラクチンが少し高めで多嚢胞卵巣気味と診断されていました。治療は排卵促進剤とhcgの注射によるものです。漢方薬は、「養命酒」を飲んだくらいで、しっかりと処方されたものを服用したことはありません。

33歳Cさん。子宮内膜症の症状が酷く、急激な下腹部痛により緊急手術を行い癒着を剥したようですが、全ては剥しきれず、その改善かつ妊娠希望で漢方薬を半年ほど服用されています。

43歳Oさん。そろそろ自力での初妊娠はタイムリミットかと考え、体外受精を行いました。今までOさんは病院での不妊治療を受けたことも漢方薬も服用したこともありません。

NさんもCさんもOさんも、その後妊娠発覚し、心拍まで確認されました。

初めて感じる何とも表現しがたい大きな喜び。「母になる」という夢の実現。急にお腹が愛しく感じられるその瞬間・・・!

しかし、それぞれ8週ほど経ったとき、心拍が停止してしまっていたというのです。ついこの間まで動いていた小さな心、宿っていた小さな命、はどこか静かに消え去ってしまったのです。出血など何もなく、とても静かに居なくなってしまいました。

束の間の喜び。しかし忘れられない母となった瞬間。あの感動をもう一度!

半年かけて漢方薬にて体を調整し、初めての妊娠となった今回、Cさんはまた新たなスタートを切ることを決意されました。

流産後初めて相談されたNさんは、今回の妊娠が発覚する前に既に漢方による体の調整を考え、問合せをしようとしていたところだったのです。今回は残念ながら流産をしてしまいましたが、妊娠できるという自信がつき、今度は小さな命が安心できるように、もっと元気な身体になって迎えたい!という思いがより強くなったようです。

体外受精が残念な結果となったOさん。しかし受精卵が着床し、心拍まで確認することができたのですから、まだまだ妊娠できる可能性があります。年齢的にも1周期1周期を大切にしていきたい!そのためにもより一層元気な母体つくりが大切です。

NさんもCさんもOさんも、今回は残念な結果となりましたが、「妊娠できる力がある」ということがこれで証明されたのです!これからも自信を持って、共に進んでいきましょう!

まだ早い

今年36歳になるAさん。結婚歴10年。もう8年近くも不妊治療を続けています。

生理は自力では来朝せず、カウフマン療法にて起こさないとなりません。先周期、排卵誘発剤を使ったにも関わらず排卵しなかったこと、とそれに対する婦人科医の言葉より、「もう諦めなさいということかな」とAさんは感じたと言われました。

そのような話は良く耳にします。

43歳のSさんも、医師より「もう卵ができないから諦めなさい」と言われたこと、45歳Tさんも、「両側の卵管がもう閉塞しているから無理です」と言われたこと、など。その後、漢方薬を飲み体質改善をされたSさんもTさんも卵が出来、体外受精をすることができました。Sさんの医師もTさんの医師もかなりびっくりしていたようです。

そんな例もたくさんあるように、まだ30代のAさんは尚更のこと、諦めるなんて早すぎることです!

確かに35歳を過ぎると高齢出産になり、東洋医学的にも身体は衰えてくる年齢となります。

しかし、人に寄って実際の年齢よりも若く見える人、年を取っているように見える人、が様々いるように、卵巣の年齢も実年齢とは異なるものです。元気な卵を作ることのできる若い卵巣があれば、妊娠・出産は可能なのです!

Aさんにも決して諦めずに前に向かって進んで欲しいものです。

自力で来潮しないために10年間ホルモン療法にて生理を起こしていた34歳Oさんも、2年前に漢方薬のみに切り替え、3周期後に自力で生理が来るようになりました。今は西洋医学的不妊治療は全て止め、自然周期での妊娠を希望し、漢方とともに挑戦されています。

まずは自分の身体の持つ力を信じて、漢方薬にて体調を整えることをおすすめしたいです。

8年近くもお薬に頼り不妊治療を続けてきたので、なかなかそれから離れられず、離れるにはかなりの勇気が必要かもしれません。しかしこのまま8年も続けた今の治療を続けても、同じことを繰り返すだけでしょう。路線を変更する最後のチャンスかもしれません!是非、ここで立ち止まって今一度考えてみてください。

兆しをどう変える?

穀物の成長を助ける雨の「穀雨」。この時期の天候は不安定で移り変わりやすく、頻繁に雨をもたらします。しかしこの温かい雨が新芽を育て成長させるので、木々にとっては大切な雨なのです。

自然と共に生かされている人間の体の中も同じように温かい雨と共に新芽が成長し、今まで眠っていた機能が蘇ってくる時期でもあります。

今年38歳を迎えるOさん。

自分は健康そのものだと信じていたOさんは、2年前に自分が鉄欠乏症貧血に陥っていること、そしてそれが着床障害となる子宮筋腫が存在していたこと、早発月経と思っていたのが実は不正出血だったこと、ホルモンバランスも乱れていること・・・などの現実を知らされ、即妊娠を望んでいた計画が崩れ去ってしまったのでした。

まずは第一歩を、と1年前子宮筋腫核摘出手術を行い、「筋腫を取った後は半年以内に妊娠する可能性が大きい」との一般論に希望を抱き、3ヶ月の療養後、期待をしていたのも束の間。

昨年末より仕事のストレスなのか、手術の影響なのか、ホルモンバランスが乱れ、FSH値が70を越えるほど高くなり、無月経になってしまったのです。

「何とか漢方薬で!」とのOさんの希望により3ヶ月間、「陰を補う煎じ薬」「冠元顆粒」「紅サージ」「炒麦芽」「晶三仙」「オリジン」などを組み合わせて調整していきましたが変化がなく、結局ピルにより卵巣を休める治療を行うことに決めたのでした。

Oさんの体は漢方薬の作用では追いつかないくらい、何か強い力で押しつぶされるかのようなアンバランスな状態になっていました。

こんなときは少しホルモン剤の力を借りる方が良いでしょう。しかし3ヶ月間服用した漢方薬が決して無駄だったとは言えず、本来であればこれだけアンバランスな状態になっていれば、様々な自覚症状が出ているはずであるのに、Oさん自身は以前と変わらず元気に過ごせていたというのですから、漢方の力も優れたものと言えるでしょう。

実際に漢方を休み、ピルを飲み始めてから今まで感じなかった「胸の張り感」が異様に感じられるようになったようです。

婦人科医より「3周期間、卵巣を休めましょう」と言われました。Oさんの夢見る計画は、また遠ざかってしまったように感じられました。しかし反対にそのまま放って置いたら、もっと遠ざかり、結局夢は夢で終わってしまったかもしれないことが、着々と治療が進み夢へと近づいているという解釈もできるでしょう。

今「3周期間」の3周期目です。

あるコラムに書いてあったことを思い出しました。

「兆し(きざし)」に「しんにょう」を付けて「逃げる」か、「てへん」を付けて「挑む(いどむ)」のか、それは心の持ちようで180度変わるのだ、と。

治療を行っていく中で立ちはだかる苦難や壁を前に、「もう止めよう」と逃げるよりも「よし!チャンスだ!できる限りやってみよう!」と挑めば、きっと道は開けてくるはずです。例え結果が追っていた夢に辿りつけなくても挑んだ思いは決して無駄になることなく違う夢を見つけることができるでしょう。

Oさんも次から次へと立ちはだかることにまだまだ挑んでいけるはず。3周期後に何が待っていようと強い意思を持ち続けて欲しいです。

穀雨のこの時期、着実に体調が良くなっていることを実感しているOさんの体の中でも新しい芽が育ち始めています。立夏が訪れる時期には、その芽がどう育っていくかがわかることでしょう。

卒業のとき

今日は月1回行っている不妊相談会の日。今日はいつもより人数が少なめでした。

いつもは溢れている待合室もそれほど混雑せず、待ち時間も少なく、じっくりと相談を進めることができました。

相談会としては人数が減ることは良くないことですが、人数が減ったのは妊娠された方が何人かおられたからなのです!嬉しい現象なのです!

妊娠して「不妊の相談会」を卒業したからではなく、妊娠発覚し悪阻などで気分が優れないから予約がキャンセルとなったのです。

これも嬉しいことで、「悪阻がある」ということは「赤ちゃんが元気に育っているという証」なので、悪阻はあっても良いのです。

反対に悪阻がないと赤ちゃんが育っていないのか、というと、そういうことではありませんが、もともと不妊症となるような体のバランスの少し崩れた人は悪阻の症状が重く出るのでしょうか、相談会に来られ妊娠された人達は、そのほとんどが悪阻の症状で妊娠初期は辛い思いをされてしまいます。

悪阻には「生姜汁」や「黄ごん」の煎じ液、場合によっては「衛益顆粒」、「健脾散」、「双料参茸丸」などをその症状に合わせておすすめします。

子宮腺筋症で手術をされ漢方薬を1年半以上服用された34歳Tさん、生理不順でクロミッド・ルトラールを服用しないと周期が整わなかったけれども1年3ヶ月ほどの漢方薬服用にて克服された32歳Aさん、多嚢胞性卵巣のホルモン治療をきっぱり止めて漢方薬だけで1年ほど服用された35歳Kさん、病院でもう諦めなさいと言われたけれども漢方薬を1年4ヶ月服用され体外受精を成功させた44歳Sさん・・・、みんなめでたく妊娠され、順調に小さな命が育っています。

今回来店できなかった人達も症状や経過を伺い、それに合わせて漢方薬をお送りしました。

早くに卒業したいけれども「卒業のとき」はもう少し先ですね。無事に出産まで赤ちゃん共々元気に過ごせるように願いをこめて、これからも応援していきます。