漢方の周期療法

漢方の「周期療法」とは、西洋医学のメカニズムと東洋医学の考え方をドッキングさせた「月経調整法」です。

「月経期」・「卵胞期(低温期)」・「排卵期」・「黄体期(高温期)」の月経周期により体内のホルモン分泌が異なりますので、それに合わせて漢方薬の処方を変えていきます。

先天の気が宿り、生殖能力の源となる「腎(経絡の一つ)」の機能を高め、精神状態や月経に関係が深い「気」と女性ホルモンに深く関わる「血」の機能や巡りを正常にすることで、自分の体にある力を呼び起こし、月経周期が整い、妊娠できるようにするものです。

これは、妊娠を望む人のみのものではなく、女性の体の不調を整える療法なのです。

「月経周期が乱れている」「生理痛が酷い」「月経が来ない」「月経の量が少ない」「月経時に頭痛が起こる」などの症状でも、気・血の巡りを整え、腎の機能を高めることで、それらが改善していくものです。

妊娠を希望していない人でも、何らかの症状がある場合は、その原因である体質を漢方で改善されてはいかがでしょうか?

意外と早くに結果が出るものです。

婦人科医の独り言

婦人科医が不妊治療にやってきた37歳のAさんに、診察室で懇々と話をしていました。

「旦那さんと将来のことを良く考えて、どう生きていくかの将来設計をしてください。」

なぜ、そのようなことを婦人科医がAさんに言ったのか・・・。

それはその婦人科医の経験上、37歳くらいの年齢になって一生懸命に不妊の治療を行い、やっと妊娠できた40歳。その不妊治療を受けていたご夫婦が2人の考えを語ったとき、

「子供なんて要らなかった」

という結論に達したことが多いからなのです。

つまり、せっかく「子供ができること」の目標に向かって婦人科医も自分なりに最高の治療を施した結果がこういうことであれば、患者さんが負担する治療費も掛かる上に、今までやってきたことが、無駄になってしまうことがありうるからなのです。

不妊治療を受ける前に、自分達の様々な将来像を描いてください。

 ☆不妊治療を受け、子供が出来た自分達の将来

 ☆不妊治療を受けたけれども、授からなかった将来

 ☆不妊治療を受けずに、授からなかった将来

それぞれ自分達の年齢別にその将来像を描き、「本当に自分達の目指している『よろこび』とは一体何なのか」、を今一度自分に問いかけることも大切ではないでしょうか。

不妊治療の続け方

病院での不妊治療は様々な治療方法があります。

ただ病院での不妊治療を受けて、どこまですべきなのか、いつまで続けるべきなのか、わからいまま10年、20年と続け、止めた途端に閉経し、更年期の症状が現れたのでまたホルモン治療を続けている、という話を聞きます。

初めに病院へ行くのは、不妊の原因を調べてもらうためでしょう。その結果、その原因を治すために「排卵誘発」「卵管手術・通水」「人工受精」などの治療法を選択していくわけですが、その治療をしたからといってなかなか成功しないのが現実です。

それらの一般不妊治療を「2年間」続けても成功しない場合、「体外受精」や「顕微授精」などの「生殖補助技術」の治療に移るのが良い、とされているようです。

しかし、もし年齢が40歳までであり時間的に余裕があれば「生殖補助技術」の治療に移る前に、体質改善の漢方薬をおススメします。体質改善をある程度されてからだと良い卵ができますので、そこで「生殖補助技術」に頼れば成功率が高くなります。

できれば2年間も一般の不妊治療を続ける前に、または続けながらでも漢方薬と出会って欲しいと思います。

2年間も「排卵誘発剤」のクロミッドなどに頼っていると、様々な弊害が出てきているはずです。是非、「少し立ち止まる期間」をお持ちください。

人間が人間らしくあるために

本日、5人の方に文化勲章が贈られました。

その中に94歳になる医師の日野原重明先生がおられました。日本で一番忙しい90歳代、と言われるほど朝から晩までの過密なスケジュールを毎日こなされています。昼食もおやつと言ってもよいくらいとても簡単なもの。

それでも元気に仕事をこなされています。

こんな元気なお姿を見ていると、いつまでも元気で居られるようにするためには「夜は早く寝ること」「バランスの取れた食事をすること」・・・などといったアドバイスをしていることに少し躊躇いを感じたりします。

しかし、「日野原先生は特別」ということで、皆様は決して真似をしないようにお気をつけください。やっぱり元気でいるためには、生活習慣を正すことが一番です!

そんな多忙な日野原先生がずっと訴え続けておられること。

「患者自身が自分の健康を守る患者参加型医療の重要性」です。

近代医学が日々進んでいく科学の力を過信し過ぎて、人間の体の構造や仕組み、遺伝子などばかりを見て、人間の生命全体を見ることを忘れてしまっている医療に疑問を抱き続けて来られました。

近代医療の意のままになってしまい受身の姿勢になっている患者を、医療の場へ参加させ、最後まで人間らしく生きるために生命の質の向上を目指すために共に実践と啓発を重ねても来られました。

だんだん「患者が医師や受ける医療を選ぶ時代がやってきた」といえども、まだまだ現実は「受身の医療」と感じることが多いものです。

今進化しつつある高度医療の中でも「不妊治療」の分野は、特にその進化は目まぐるしいものです。だからこそ、患者側が本当に自分達が望んでいる医療をしっかりと選んでほしいものです。

東洋医学から見た不妊症

東洋医学の古典では、妊娠経験のない人を「全不産」または「無子」といい、一度妊娠経験があるけれどもそれ以後妊娠しない人を「断緒」といいます。

その原因は、先天的な染色体異常などを除くと、「腎気不足」と「衝任脈の気血不足」がほとんどです。

もう少し詳しく原因を見てみると、以下の4タイプに分けられます。

☆腎虚による不妊:

先天的に虚弱で腎気が不足している。または不摂生により精血を消耗し、衝任脈が栄養されずに腎精を失ってしまった。

つまり、虚弱体質の人や、夜な夜な遊びまわっているなどの不摂生が長年続いた人は、腎精を失ったことで不妊になってしまったのです。

☆血虚による不妊:

体質が虚弱で陰血が不足していたり、脾胃が虚弱で気血を生化できない。または、過度の血や津液を消耗してしまった。

つまり、虚弱体質の人や、胃腸が丈夫でない人、過度のダイエットをしたことがある人は、血虚が体の中で起こっているために不妊になってしまったのです。

☆胞寒による不妊:

月経期間中は胞宮が開いていて、この時期に房事を行うと、気血を損傷して風寒を受けやすくなる。外寒、内寒により寒邪が胞宮を凝滞させてしまった。

つまり、月経中に子宮を痛めることをし過ぎた人、月経中にも関わらず過度の運動などをしてきた人、は気血を損傷してしまったために不妊症になってしまったのです。

☆痰お互結による不妊:

肥満体質の人、または油物や味の濃い食べ物を好む人は、痰湿が内生して気機の運行が悪くなりやすい。また、イライラしたり、憂鬱になったりすることが多くて肝気欝結となり、疏泄が失調すると気血不和になる。このような人は、痰湿と血おが交互に阻滞して、胞宮を閉塞してしまった。

つまり、太っている人、油物・味の濃い物を食べ続けた人、いつもイライラしている人、憂鬱になることが多い人は、痰湿と血おが体の中に生じ、それにより不妊症になってしまったのです。

ご自分のタイプはどれでしょうか?

東洋医学は、個人個人の原因を究明し、それに対して治療を行っていきます。個人の原因を取り除くように持って行くことで、体本来の機能を目覚めさせ、今まで乱れていたホルモンを自力で整えようとしていくのです。

中医学でもっと綺麗に

本日、大阪「朝日生命ホール」にて日本中医薬研究会主催の「中医学でもっとキレイにすこやかに」と題して「女性のための漢方レッスン」のセミナーが開かれました。

「漢方レッスン」は3つのレッスンに分かれていて、それぞれのレッスンで「中医学とは」「なぜ中医学なのか」「周期療法とは」などがわかりやすく説明されました。

その中でも医師である別府正志先生が、お話された内容がとても印象的でした。

西洋医学は病名治療であるのに対し、2千年も前から中医学はオーダーメイド医療を行っているということ、

西洋医学は最近になってそのオーダーメイド医療を始めたが、それは特定の遺伝子に病原がある場合にのみなされている医療であること、

中国では、中医薬大学にて専門の漢方医を育てているが、専門を選ぶのに「婦人科」がとても人気があり、その理由は、「婦人科」が確実に漢方で良くなり、「良くなる」=「名医」になれる、ということにより人気があるということ、

などがとても興味深い話でした。

専門を選ぶ時の中国の例からも言えるように、中医学に基づく「漢方治療」が「婦人科」の症例に非常に効果的である、ということは言うまでもありません。

「個人」をしっかり診て、その「個人」にあったオーダーメイドの治療が「婦人科」にはとても必要なことです。それが可能な中医学の治療は、ますますこれから求められるようになることでしょう。

漢方薬の値段

漢方による不妊治療を1年間、続けて来られた35歳のBさん。

何とか早く子供が欲しいために、高くても続けようと無理をしてお薬を購入されていました。

「どれくらいお薬に費用が掛かるのか」はその方個人個人に寄って異なりますし、「その費用が負担になるか否か」の基準もその方個人個人に寄って異なります。

ただ、言えることは、「妊娠しやすい母体」へ近づくように、無理なく「体質改善」に至るまで治療を続けられることが大切です。続かない治療は、もしかしたらあと少しで「改善」に至ったかもしれない今までの「積み重ね」を放棄してしまうことになりかねません。

「続かないから止めよう」と決断される前に、費用の相談をしてください。「積み重ね」が無駄にならない様に費用を調整し、処方することが可能です。もちろん、初めから「予算」をお知らせいただければ、できるだけそれに合った体質改善のプランを立てます。

是非、「漢方薬は高いから」と敬遠せずに相談してください。

クロミッドとhcgの副作用

不妊暦3年。33歳Nさん。

無排卵のためにクロミッド1錠とhcgのホルモン剤にてタイミング療法の治療を続けておられ、その結果、最近、生理の量が減り、粘液も少なくなってきた様子。クロミッドの反応も悪くなってきたとのことで、hmgの注射も検討されています。

クロミッドの排卵誘発剤を使用すると、子宮内膜が薄くなり、頚管粘液がすくなるという副作用があります。それに加え、生理の量も減少してきます。

また、hmgのホルモン剤をされると、卵巣に対して過剰刺激になってしまいます。卵巣が腫れてきたり、酷くなると、腹水が溜まってきたりします。

現代医学では、無排卵にはホルモン治療が主体になり、その方個人の体質が無視されており、副作用が出てきます。

漢方では、その方の体質に合わせて、月経周期を整えることを第一に考え、お薬を決めていきます。神経質すぎたり、胃腸が虚弱であったり、冷え性がきつかったりと、その方の体調を整えつつ、月経のリズムを整えていくと、ホルモン治療を併用しても、漢方による治療をされる前にホルモン治療を受けられた時よりも良い反応を得ることができます。

是非、何度もホルモン治療をされても良い結果が得られない方は、漢方治療による改善をされてから、また治療を併用されてはいかがでしょうか。

男性が7割

「不妊」というと、原因は女性にあるものと思われがちです。確かに「子宮後屈」「子宮後傾」「子宮内膜症」「卵管閉塞」などは、女性に原因があります。

しかし実際には、女性には西洋医学的には何も問題ない場合、男性の方に問題があることが、現代の「不妊」の原因の7割を占めていると言われています。

男性の場合は、現代人の多くは「腎陽虚(じんようきょ)」が強く出ています。「腰痛持ち」、「色白」、「冷え性」で、「精子の数が足りない」タイプです。

そういった「数には問題がない」場合は、「肝陽虚(かんようきょ)」であることが多くあります。これは、「ビールをよく飲む」、「油っこいものをよく食べる」、「野菜不足」であるタイプです。

どちらにせよ、隠れた「冷え」を取り、血の循環を良くするように、「漢方」や「鍼灸」では治療をします。

決して女性ばかりに原因があるわけではないことを、理解してください。その上で、夫婦揃って「不妊治療」に取り組み、協力しあうことが大切です。

不妊治療の治療費

高度医療の「不妊治療」は、健康保険が適用されない自由診療のため、治療費の負担は重いものです。

今までなす術もなく、子供が授からなかった夫婦にとっては、希望の医療と言えますが、やはり、治療費の負担が気になるところでもあり、本当に自分にとってこの医療が必要なのか、不安な面もあるでしょう。

そんな方に嬉しい情報をお知らせします。

最近は、ホームページを通して、治療費の明細や治療実績を公開する不妊医療専門の医療機関が増えています。また昨年には、全国の14施設が「治療の質の確保」や「患者の満足度の向上」を目指して、「日本生殖補助医療標準化機関(JISART)」を結成したように、どんどん「不妊治療」を支援する質の良いシステムが作られつつあります。

これらの情報を元に、早くに「自分に合った医療」と「クリニック」に巡り合ってください。クリニックによって、治療内容や受診期間にかなりの差があり、必然的にそれにかかる費用もjかなりの差が生じてきます。

現在「不妊治療」を受けられている方も、今一度、「治療について」見直されてはいかがでしょうか。

もちろん、高度医療の「不妊治療」だけでなく、漢方による「不妊治療」にもかなりの差があります。

漢方に関しては、しっかり夫婦の体質を中医弁証論に基づいて把握し、処方してくれるところをオススメします。体の変化を聞かずに何周期も同じ処方をするようなところはオススメできません。体はどんどん変化していくものです。その変化に合わせて処方を変えてくれるようなところを見つけてください。

どちらにせよ、「体の変化をしっかり確かめてくれる」クリニックや漢方薬店に巡り合ってください。