夏桂成先生の研修のひとコマ

南京中医薬大学附属病院の夏桂成先生の研修のひとコマ。

70歳を超えられた夏桂成先生、まだまだお元気です。「老中医」として、中国全土、さらに日本でも名が知られている方です。

夏先生の、病院での外来診察は、8時から12時まで。診察の値段は、有名になればなるほどどんどん高くなるそうです。患者様は、高いお金をかけてでも、夏先生の診察を受けに来られています。

研修のある日、訪れてきた外来の患者様が、

「月経期のお薬を午前中に飲むように言われていたのに、間違えて夕方に飲んだら、生理の量も痛みも出てしまいました。」と夏先生に報告していました。中国の患者様はそのお薬がいつの時間帯に飲むべきものなのか知っていて、それを守っているのには驚きました。

基本的に、「月経期」のお薬は「午前中」に、「卵胞期」のお薬は「午後」に服用してもらうように指導されていました。

また、それだけではなく、「卵胞期」は大切な時期ですので、「心理状態」「精神状態」の平穏を保ち、焦らずに十分な睡眠が必要で、タバコは必ず止め、夜更かしを避けて、自然のバイオリズムに順応すること、なども指導されていました。

当たり前のことなのですが、もっと患者様に徹底することが大切だと改めて感じました。   (古村 滋子先生 研修記録より)

夏 先生とともに

中国南京中医薬大学附属病院研修にて

今月24日から29日まで、中国・南京中医薬大学附属病院で「不妊症・周期療法」の研修が行われました。今回は、2003年、2004年に続き、3回目の研修参加となります。

この附属病院には、「周期療法の第一人者」と言われる「夏桂成教授」がおられ、多くの患者様から信頼され、遠方から列車や飛行機で通院されています。

夏教授の診療は、「名医堂」という特別診察室の中で行われます。

「周期療法」とは、月経の周期(月経期、卵胞期、排卵期、黄体期)に合わせて異なる漢方薬を服用して、妊娠の確率を高める治療法です。

女性の体は、月経周期によって、女性ホルモンの分泌が異なり、体調も変わってきますので、その周期に合わせて漢方薬を使い分ける方法は、とても理にかなって効果的であると言えるでしょう。

今回の行われた講義のテーマは、「卵胞期の治療」が中心でした。

卵胞期は、月経周期の中でも、とても大事な時期である、ということを強調されていました。この時期は、「卵の成長を助け」「妊娠を促し」「子孫を繁栄させる」期間であるからです。つまり、周期療法のポイントは、「卵胞期」であり、「質の良い卵胞をつくる」ことにあるのです。

夏教授の周期療法では、卵胞期をさらに「初期」「中期」「末期」と3つの期間に分けて、それぞれに治療をしていく方法を取られていました。妊娠しにくい原因として、「なかなか卵胞が育たない」「おりものが少ない」「子宮内膜が厚くならない」など、様々なものがありますが、卵胞期をさらに分けて細かく治療していくことが、全周期の治療に繋がり、大切であることを痛感しました。

人工授精や体外受精、顕微授精を成功させるには、質の良い卵を作らなければならないことは言うまでもありません。卵胞期の治療を細やかに行うことが成功への道なのです。

     (古村 滋子先生 研修記録より)

研修認定書をいただきまいた。

ハメを外しがちな卵胞期

月経周期の「卵胞期」は、まさに「卵胞が発育していく時期」で、妊娠を成立させるために非常に重要な時期です。

タイミングを合わせて受精卵が着床するまでの時期が「重要な時期」と思われがちですが、卵の質が悪ければ受精も何もあったものではありません。

無排卵でなくとも卵胞の発育不全のために、恵まれないケースが多いのです。

結婚4年目の37歳Aさん。

無排卵のために、月経はあるけれども基礎体温表はずっと低温期の状態。

Aさんの場合は排卵がなく、高温期の周期がありませんので、周期療法を行わずまずは排卵を促すように治療を進めます。

婦宝当帰膠」をベースとして、

「生理周期」に、「参茸補血丸」を、

「卵胞期」には「桂枝茯苓丸」を、

服用し周期を整えていき、漢方服用3周期目、排卵が起こるようになりました。

それと同時に周期も整い始めてきたために、処方を周期療法に変更しました。

「卵胞期」は「妊娠にはあまり関係ない時期」と思われがちで、「この時期ならば少しくらいハメを外してもいいかな」と思わず、寝不足、残業、暴飲暴食・・・などなどしてしまうかもしれません。

「卵胞期」こそ卵を育てる大切な時期なのです。質の良い卵をしっかり育て排卵させるためには、「卵胞期」にも無理なくゆったりと過ごすことが大切です。

今までにないくらいの生理痛

32歳のNさん。ご結婚6年目。黄体機能不全で第2子に恵まれず、漢方薬を服用されています。

服用されてから2周期目。今までにない「激しい痛み」に襲われ、1日目のみですが座り込んでしまうほどの痛みで、温めると痛みがまた出てしまうといった具合でした。

生理中の激しい痛みは、通常は「子宮内膜症」を疑うのですが、Nさんのような場合、今までそのような痛みがなかったと言われていますので、その場合は、「初期流産(暗産)」の可能性が考えられます。

まだ卵の質が良くなかったために受精し、着床、安胎まではいかなかったようです。

しかし、「まだ」と言えども少しずつ改善されている結果です。

従って、今までは身体全体の体質改善として全周期通したお薬を処方していましたが、次周期からは周期療法に基づき「周期により異なるお薬」に処方を変えました。

生理のときは「お血」をしっかり排出するお薬のを、卵胞期のときは卵をしっかり育てる合包したお薬を、排卵期のときは卵をしっかり排出するお薬を、高温期のときは子宮内膜をますます厚くし卵を着床しやすいようにするお薬を、処方しました。

次周期より、よりもっとしっかりと体質が改善され、「着床後安胎」となる日も近いことでしょう。

体外受精(IVF)の結果

37歳のYさん。結婚10年目。

結婚5年目に1人目を出産され、その後2人目を希望されていましたが3年間妊娠せず、2年前にやっと妊娠したのですが流産し、それ以来妊娠しなくなりました。

もともと「抗リン脂質抗体」が陽性で、「高プロラクチン血症」であったYさんは、1人目も排卵誘発剤の「クロミッド」、高プロラクチン血症の「アップノール」、抗血栓症の注射による手助けにて出産されました。

2人目も同様の治療にて妊娠を希望されていたのですが、2年前の流産を境にして妊娠すらできなくなってしまいました。

この夏に問い合わせをくださった時のYさんの基礎体温表は、約6年間のホルモン治療により、ホルモンへの効き目が低下したものになっていました。

つまり、「卵胞期の高い体温」、「クロミッドによる早めの排卵」、「波状型の高温期」、というものです。

 ☆「卵胞期の体温が高め」であると、質の良い卵ができにくくなります。

 ☆「早めの排卵」は、しっかりと卵が育っていないかもしれません。

 ☆「高温期が波状型」であるのは、卵が着床し育っていくのにとても不安定です。

それらを改善するために、「卵胞期」と「高温期」に重きを置いたお薬を処方しました。

それらに併せて月経期、排卵期のお薬も処方した結果、1周期を服用後には、低温期、高温期ともに波状型が安定してきました。

このまま3周期ほど続けていけば、質の良い卵ができる可能性があったのですが、2周期目に、体外受精(IVF)の計画をされました。

そして2周期目、漢方薬を服用しつつ採卵し、胚移植となりました。

しかし、胚移植後2週間目に出血!

残念な結果となったのです。

ただ、漢方服用後、生理も今までであればダラダラと長く続いていたのが6日で終了するようになり、体温も安定しだし、生理痛もなくなり、血塊もなかった、などと数多くのことが改善されてきています。

ですので、もう少し焦らずに3周期ほどゆっくり漢方とお付き合いしてもらえていれば、良い結果が得られていたかもしれません。治療を焦ることで、せっかくのチャンスを逃し、体に負担をかけることになってしまいます。決して焦らずに、前向きに治療に取り組んでください。

人工授精(AIH)、体外受精(IVF)をされる人へ

たくさんの不妊相談の中で、病院での治療を長年していたけれどもなかなか恵まれない人が次の手段として漢方薬を望まれる、という割合が大きいです。

やはり、初めは病院へ行き検査を受け、結果として何らかの障害があった場合、薬などによる治療が始まり、そのまま年月が経つ、というパターンが多いものです。

「多嚢胞性卵巣症候群」と診断された32歳のCさん。結婚暦5年。

1年間、排卵誘発剤のクロミッドを飲み続けた結果、クロミッドでは卵が育たなくなりました。数ヶ月も卵巣に刺激を与えすぎたために、過剰卵巣刺激症候群(OHSS)になってしまったのです。

次の手段として、体外受精をしようとしても卵が育たない、または卵の質が悪いために体外受精ができなかったり、行っても無駄になってしまうことになります。

是非、少しホルモン剤による治療を休み、質の良い卵が育つように漢方薬のみを服用する期間を持って欲しいのですが、「病院での治療から離れたくない」と言われる人も多いものです。

そのような場合、病院での治療費もかなりのものになりますので、漢方薬にあまり多くの費用を当てられないということで、卵を育てる時期である「卵胞期」だけでも漢方薬を服用することをおススメしています。

Cさんの場合も、「婦宝当帰膠」をベースとして、卵の育つ「卵胞期」のお薬をしっかり服用していただくことにしました。

ホルモン剤により「腎陰虚(じんいんきょ)」傾向になり、卵の質が悪くなってしまったCさんの卵胞期のお薬は、「杞菊地黄丸」、「瀉火補腎丸」と「シベリア霊芝錠」です。

これらの漢方薬にて、質の良い元気な卵を育て、次の人工授精や体外受精に望んでほしいものです。何回もお金をかけて人工的な授精をしても、質の良い卵でなければその後、育ってくれません。

せめて「卵胞期」だけでも漢方薬をお試しになられませんか?

高温期時の整体

不妊治療をされている33歳Kさんからの問合せです。

「高温期1週間目なのですが、ボキボキ鳴る整体や鍼は受けても良いのでしょうか?整体の先生は続けた方が良いと言われているので行きたいのですが、どうなのでしょうか?」

高温期は基本的にデリケートな時期です。排卵し、もし着床でもしかけているのであれば、そんな時期に骨(腎)を揺るがすようなボキボキ鳴るような整体やマッサージは避けた方が良いです。

また、鍼灸治療もやさしい鍼刺激や温灸などに留めた方が良いです。

ただ鍼灸治療に関しては、本人にとってそれが「強刺激」なのか、「やさしい刺激」なのか、判断できないかもしれません。

そう言った場合は、その鍼灸の先生が周期によって治療方法を変えられているか、によって判断してください。つまり治療する際に「基礎体温表」を確認されているか、否か、ということです。基礎体温表を確認されて、それにより治療をされているのであれば大丈夫でしょう。

特に妊娠しにくい体である(不妊治療をされている)Kさんのような場合は、より一層高温期の時期を大切にしてもらいたいものです。少しの刺激でも経絡のバランスを崩すものです。そうでなくでも不安定であるのに、その刺激により駄目になる可能性は大きいものです。

整体は受けるのであれば、卵胞期にしてください。鍼灸治療は確かな治療所をお探しください。

高温期の出血

高温期の出血には気をつけてください。

「出血」と言っても「鮮血」ではなく「少し茶色い血」の出血です。

高温期で「出血したから生理になったので月経期の薬をください」と言われる人がおられます。もちろん、月経が始まったのであればその薬で良いのですが、「茶色いもの」であれば、それは「着床出血」であるかも知れませんので、月経期のお薬を服用してもらっては大変です。

せっかく着床しかけているのに、それを「きれいに流してしまおう」とする月経期の薬を飲むわけですから、大変です!

お薬を飲まれる際にはその「出血」がどの様なものなのか、しっかり把握してからお飲みください。

今まで流産を3回繰り返されて、今月うっすらと陽性反応が出られたAさんは、高温期後半に少し出血したために確認せずに、月経期のお薬の「冠元顆粒」と「爽月宝」を服用されていました。

そのためだけではありませんが、今まだ高温期は続いているものの胎嚢はあるけれども中身がまだしっかりと見えず心音も聞こえない状態です。残念ながらそのまま育たないかも知れません。

もともと「不育症」でいらっしゃるAさんは、特に着床してからが問題で、充分に気をつけてもらいたいのです。こういった人はしっかりご自身の体調をチェックし、せっかくの着床を無駄にしないように心掛けてください。

高めの低温期

「高温期がない」、「高温期が低い」、「高温期が階段状に上がっていく」といった「高温期」に問題のある人の方が不妊症の症例では多く見られます。

しかし、「低温期が36度6分以上と高め」、「低温期の途中で高温期のような体温になる」といった「低温期」に問題のある人もおられます。

「低温期」とは「月経期」と「卵胞期」からなる期間です。

高すぎる体温では、質の良い「卵胞」は育ちにくいのです。

「低温期」の体温が高めになる原因として、排卵誘発剤である「クロミッド」を長く使用していることもあげられます。この場合、低温期ばかりでなく、全体的な体温が高めとなります。

その他の原因としては、「腎陰虚」で「虚火」によるものがあげられます。それには、「腎陰虚」になるような生活スタイルを改善してもらいつつ、「瀉下補腎丸」などのお薬を服用していただきます。どうしても「排卵し受精し妊娠すると高温期になる」ために「高温期があること」に注目しがちですが、しっかりとした低温期も大切なのです。

今一度、ご自分の基礎体温をチェックしてみてください。

初めて高温期が・・・

漢方を服用されてから3週期目の高温期を迎えたKさん。ちょうど1ヶ月前からは鍼灸治療による改善も併せてされています。

本日、高温期13日目。ちょうどお薬がなくなってしまったので、来店。

もし、今週末にお薬がなくなる予定であり、今週末に高温期が続いているようであれば、もしかして妊娠の可能性があると期待できたのですが、本日は13日目であるため、判断しかねました。

確かに滑脈は出ているのですが、これは妊娠時に限らず、排卵期から生理前まで出る脈ですので、今の時点でははっきりと判断できません。今週いっぱい様子を見ていただくことになりました。

ただ、Kさんは、今まで高温期は10日間しかなかったそうです。それが今周期に入り、13日目まで続いていることは初めてだと言われました。

本来は、高温期は14日程あるべきであり、Kさんが今まで10日間しかなかったということは問題であったのです。漢方治療を始めて3週期目で、高温期の改善が見られました。

また、Kさんは「気持ち」に大きく左右されるタイプ。このような方は、イライラしたり、眠りが浅くなったり、その結果、肩や頚のこりが酷くなりがちです。

その部分は、お薬相談の際の「カウンセリング」と1ヶ月前より始めた「鍼灸治療」により、かなりの改善が見られます。

気持ちがゆったりするようになった結果、高温期も改善し、Kさんの体は「妊娠しやすい母体」へと一歩近づいたと言えます。今周期が駄目でも次周期は「また一歩」近づくことでしょう。