桃の節供

今日3月3日「雛祭」は五節供の一つで、上巳(じょうし)の節供、桃の節供と呼ばれています。上巳は当初3月の最初の巳の日とされていたのですが、後に3月3日に定まったと言われています。

中国では、この日は忌日で邪気に見舞われやすいとされ、この日に災厄を祓う行事があったようです。

日本でも「巳の日の祓え」として、人形(形代:かたしろ)に心身の穢れを移して、海や川に流していました。その名残が「流し雛」。

この「祓えの行事」と「宮中の女の子が雛遊び」とが結びつき、「雛祭」として現在のような「女の子の成長と幸せを願う行事」となったようです。

雛祭に欠かせないもの、というのはいくつかあります。

「雛人形」「ひなあられ」「菱餅」「引千切」「貝合わせ」「ばら寿司」「蛤」「笹鰈」などなど・・・。

それぞれに意味があるのですが、その中でも「引千切」について少しご紹介しましょう。

「引千切」は「ひちぎり」「ひっちぎり」「ひきちぎり」と読み、雛祭の菓子として出されるものです。

これは、宮中での祝儀に用いられた「戴餅(いただきもち)」や参内者に手でちぎって分け与えた餅の形に由来すると言います。

京都ではその昔、女の子を出産する際に、これを婿方の家に贈る風習があり、現在ではその風習にちなんで「雛祭」にはこの菓子が出されるようになったようです。

子供が流行病などで亡くなることが多かったその昔には、年に何回か行われる「祓えの行事」が大切でした。今はあまり「祓えの行事」としては見られていない「雛祭」ですが、今一度この日の意味を見直してみると、我が子がすくすく成長している当たり前の姿が、もっと有難く思えてくるに違いありません。

昨年漢方服用にて妊娠された人の多くが、女の子を出産されました。今日始めての「雛祭」を迎えている赤ちゃんが多くいます。きっと可愛い雛人形が飾られたことでしょう。「祓え」も忘れずにされたでしょうか。

お血・痰湿の体質改善の末に

昨年夏から周期療法による漢方の不妊治療をされている27歳Sさん。

「子宮内膜症」があり、一昨年「子宮筋腫」と「チョコレート嚢腫」の開腹手術をされました。漢方的にはSさんのタイプは「お血」「痰湿」タイプ。少しぽっちゃりされていることも特徴的です。

生活面でも「痰湿」になるような食事を避け、適度な運動を心がけるように指導するとともに、その症状を改善するような漢方を処方し、自他共に体質改善に努めてきました。

昨年末、随分と基礎体温表も整ってきたことより、漢方を始めるまで休んでいた西洋医学のホルモン療法を再開されました。

ホルモン療法を始めるに当たって、内膜症や卵巣の検査を行いましたが、全く問題なし。

Sさん本人はもしかしてまた内膜症が再発しているのではないか、と不安でしたが、その点は漢方にて進行を防ぐことができていたのでしょう。どこにも再発も新たな症状も発見されることはありませんでした。

そして1月、1回目の挑戦!

良い感じで治療が進みましたが、結果は残念!

そして2月、再挑戦!

2月半ば、生理予定日が過ぎましたが、まだ高温期。

もう少し待ってみよう・・・。

5日が過ぎましたが、まだ高温期。

おそるおそる検査薬にてチェック。

待ちに待った「陽性反応」!!!

この「プラス」の表示を何度と夢見たことでしょう。

すぐに病院に行き、念のために「プロゲステロンの膣座薬」を受けました。

このまま高温期が続いて欲しい・・・。

こんな時には「神様」が居ると信じて「神頼み」をしてしまうのは都合がいいことだと思いながら、思わずやってしまっている自分に出会うものですよね。

漢方薬は、「田七人参」と「衛益顆粒」にて様子を見ました。

そして今日、病院にて胎嚢が確認され順調に育っている、との報告がありました。

しかし流産しやすい9週、11週とまだまだ危険がたくさんです。

これからもまだ「神様」には頑張ってもらわないといけませんね。

子宮筋腫と不妊

子宮筋腫とは、子宮筋層にある平滑筋に出来た良性の腫瘍のこと。この腫瘍は女性ホルモンのエストロゲンにより大きくなります。

子宮筋腫はできる部位によって「粘膜下筋腫」「筋層内筋腫」「漿膜下筋腫」の3つに分類されます。もっとも発生頻度の多いものは「筋層内筋腫」です。それぞれ経血が多くなったり、不正出血が起こったりと、何らかの症状があるものですが、「漿膜下筋腫」は比較的自覚症状が起こりにくいものになります。

さてその筋腫ですが、子宮筋腫が必ずしも不妊の原因となるわけではありません。しかし、受精や受精卵が着床しにくくなることはあります。

それは、卵管近くに筋腫ができることで、卵管を圧迫し精子や受精卵の通りを防いでしまったり、受精卵が着床する際の子宮くうの収縮の邪魔をしてしまったり、筋腫により子宮内膜の血流が悪くなり内膜が十分に育たないこと、などが原因となるからです。

妊娠を希望するか否かによって、筋腫の治療方法も異なってきます。

妊娠を希望しなくても月経過多や不正出血、生理痛など生活上支障をきたす症状がある場合は、何らかの治療をした方が良いでしょう。

将来設計に合わせて、婦人科医と相談されることをおススメします。

もし、大きさが3cm未満、妊娠に支障のない位置、などであれば、是非安全な漢方治療をお試しください。漢方治療は、体質を改善しながら筋腫の治療をしていくために、筋腫の一部分だけでなく、体全体からきれいになっていきます。

筋腫がなくなる頃には、「何だかきれになったね」と言われることになるでしょう。

1歩1歩

結婚5年目、29歳Aさん。昔から生理不順。

2年前より病院にて不妊治療をしているのですが、毎周期同じ事の繰り返し。人工授精も3回行いましたが、良い結果とはならず。体質も改善された感じもなく、遅々として進まないステップに頭を悩ませていました。

やはりこれには「体質改善が必要」と、漢方による治療を試みようと今年に入り、問い合わせをされました。

今まで病院の治療では、なかなか排卵しないために排卵誘発剤を処方され、排卵を促すことで、高温期そして生理を起こすようなものでした。

Aさんは「にきびが出やすい」「やや毛深い」などの症状より、「多嚢胞卵巣症候群」であることが把握できました。

Aさんは2年間も排卵誘発剤などによる治療により、月経周期を整えていたために、それを止めると生理が来なくなるのではないか、と心配されていました。確かに止めてすぐの次の周期は、少し卵胞期が長くなるでしょうが、徐々に改善していくのが通常です。

そこで、Aさんには卵胞期に「シベリア霊芝錠」と「杞菊地黄丸」を処方しました。

卵胞期は通常であれば9日間。

予想通り、Aさんの卵胞期は14日たっても高温期にはなりませんでした。

Aさんから「ちゃんと排卵するのでしょうか。高温期になるのでしょうか。」と心配の声が届きましたが、「心配しないで。」とそのまま卵胞期の薬を続けて処方しました。

そして20日目、「高温期になりました」との連絡がAさんより入りました。

Aさんは、自力で排卵できた感動とともに、やっと1歩ステップを踏み出すことができたことに喜びを隠せない様子でした。

これからどんどん1歩1歩ステップを踏んで行きましょう。

貧血改善の次に

30歳Kさん。28歳を過ぎてから疲れやすくなり、顔色も悪いと言われることが多く、爪も伸ばそうとしてもすぐにどこかでひっかけて折れてしまい、結局伸ばせずにいました。

「28歳を過ぎると体がこんなにも変わるものなんだなぁ。もうそんな年なのか・・・。」

と年のせいだと思っていました。

28歳を過ぎてから結婚したKさんは、生活が変わったこともあり、あまりそれらの症状に対して気にしていませんでした。

昨年より「そろそろ子供を」とチャレンジしていましたが、すぐに出来ると思っていたのになかなか出来ないので、婦人科へ。

ここ2年ほど健康診断も受け損ねていたKさんは、そこで久々に血液検査を受けたのです。

そしてわかったことは、「貧血症」。

正常成人の鉄所要量は、非妊娠時の女性だと12mg/日であるのに対し、Kさんのヘモグロビン値は8mg。

産婦人科医が一言、

「そりゃあ、しんどいでしょう!」

そして「貧血を治すことで体の状態が良くなるので、生殖器能力も良くなるでしょう。」ということで鉄剤投与の治療が始まりました。

Kさんは西洋薬の鉄剤に加えて、漢方薬も服用したいとのことでしたので、まずは「貧血」を治すことを重点として「四物湯」や「当帰芍薬散」「補中益気湯」などの働きを取り入れた「婦宝当帰膠」と高温期には「十全大補丸」を服用してもらうことになりました。

今月で服用3ヶ月目。

血液検査の結果はヘモグロビン「11mg」まで改善、卵巣の働きも正常であることが確認されました。

それとともに自覚症状としては排卵前後のオリモノが増え始め、卵胞チェックでは卵胞も育っている、とのこと。

今まで潤滑油となる「血」が不足していたために、全ての機能の働きが弱くなっていたのです。その潤滑油を補うことで、徐々に動き出したKさんの体の機能。

これからはギクシャクせずにもっとスムーズに働いて、きっとKさんに「よろこび」を運んでくれることでしょう。

潤滑油が改善されたこれからは、漢方薬では月経周期によって服用するお薬を変えていくという「周期療法」にて体質改善を計っていく予定です。

付け足しとして、「貧血改善」でもたらされた「よろこび」はこれだけではなかったことを記しておきましょう。

ここ最近痩せにくくなってきていたKさんの体に変化があったのです。以前は食べれば太り、食べなければ痩せる、といったコントロールしやすいKさんの体だったのですが、最近はちっとも痩せなくなり、少しずつ太ってきていたことも悩みの一つでした。

それが「貧血改善」とともに以前のコントロールしやすい体に戻ったのです。

これは貧血による代謝低下によるものだったと思われます。

この様に、「貧血」を治すことで、内面からきれいになり、外側もすっきりし、一石二鳥ということもあるのです。

次はもっと「うれしいこと」がやってくることが期待できそうです。

出荷の時期

今、高野山では「大和当帰」の出荷が行われています。

通常は、「当帰」の生薬を単味で使用することよりも、他の生薬を加味して使用します。

例えば、「当帰」に「川きゅう」「芍薬」「地黄」を加えた「四物湯」。これの「当帰」の配合を多くして「党参」「阿膠」などを加味したものが「婦宝当帰膠」。

月経不順などには「香附子」「益母草」などを加えた「きゅう帰調血飲」。

「更年期障害」などの症状には「柴胡」「牡丹皮」などを加えた「加味逍遙散」。

病後の体力低下には「人参」「黄耆」を加えた「十全大補湯」。

便秘には「大黄」「麻子仁」などを加えた「潤腸湯」。

この様に、まだまだたくさんの症状に使用される「当帰」は、日本で自給可能な数少ない生薬のひとつです。

毎年同じ場所では育てられないために、育てるためには広大な場所が必要となってきます。高野山に広がる赤土の土地ですくすく育つ「当帰」。その青々としたセリに似た当帰畑は、女性がいつまでも健康で美しくあるために応援してくれているようです。

敬遠される産婦人科

日本では、少子化が進むとともに、「産婦人科医の不足」も進んでいるようです。小児科医も不足しているようですが、やはりその背景には少子化が潜んでいることが原因の1つとも言えるでしょう。

しかしそれ以上にその原因となることは、産婦人科は「不規則で厳しい労働環境」「他の診療科と比べて訴訟のリスクも高い」ことが、医師が専門を選択する際に、敬遠されることの大きな要素のようです。

ただ専門を産婦人科として選択しない若い医師が増えると、ますます現在産婦人科医として働いている医師の負担が大きくなり、「不規則で厳しい労働条件」というイメージが色濃く植えつけられることになり、悪循環です。

また産婦人科医だけでなく、産婦人科に通おうとしている妊産婦や不妊、更年期などの症状を持つ人にもますます負担がかかってくることは避けられないことです。

現に今、産婦人科の待ち時間は最低でも1時間以上。大きな病院や人気の病院になればなるほどその待ち時間は長くなるばかり。

働きながら婦人科に通おうとする女性は特に、通院することがかなりの負担になり、結果として不妊治療や更年期の治療を諦めざるをえない人も多くなっていることでしょう。

何とか女性が社会で生き生き働きながら、安心してケアや出産ができるような体制にならないものでしょうか。

子育ては本能?

人間が「育児をする」というのは遺伝子で組み込まれたものではないようです。人間に一番近い知能とされる「オランウータン」も同じだそうです。

つまり、何の知識もなく、誰もいない孤島で子供を産み落としたならば、どのように子供を育てて行けば良いのか、人間はわかないようなのです。

小さい頃より、母親のすることや他の人がすることを見たり、様々な映像や本を見ているために私達は見よう見まねで育児をすることができるのですが、全くそのような情報がなかったり、教えてくれる人がいなかった場合、私達は本能では子供をどう育てて良いのか、わからないのです。

知識をたくさん入れることができる私達人間やオランウータンは、仲間よりその情報をもらい、より良くそのことを行えるように努めるようになっているのでしょうか。

反対に、「人の間」に居て人から情報を得ないといけない「人間」が、人の間に入り込むことができない、または入ろうとしない、ことは、生きていくための情報を得ることができず、取り残されてしまうことになるということなのでしょう。

「わからないこと」は「恥ずかしいこと」ではありません。「わからない」のは教わっていないので、当たり前なのです。

孤立してしまったがために、誤った理解をし、人を理解できず、殺めてしまう・・・。そんな悲しい結果にならないように、「人の間」に入ってわからないことを教わってください。そして教える側も決して壁を作らずに迎えてあげてほしいものです。もうこれ以上悲しい事件にならないように。

お血・痰湿症

28歳Oさん。156cmの58Kgとちょっとぽっちゃり気味の体質。むくみがちで、ここ数年はどんどん冷え症になってきたと言われていました。

2年前に子宮内膜症と子宮筋腫、チョコレート嚢腫の開腹手術を行い、その半年後より、妊娠に向けて人生設計を立てようとされていました。

手術後は、卵管造影も、精液検査も、フューナーテストも、排卵の検査も何も問題なかったのですが、妊娠の兆しも見えず何周期も時だけが過ぎていきました。

内膜症が再発しない前に早くに妊娠したい、と思う気持ちが先走るだけ。半年間も排卵誘発剤とタイミングにより様子を見続けてきましたが、結果として得られたものは、月経血が減少したこと。これは明らかに、誘発剤により子宮内膜が薄くなったという副作用です。

悲しくなったOさんは、この治療を休み、「妊娠しやすい母体作り」を手伝ってくれる漢方薬を試してみようと問い合わせをされました。

Oさんは、「内膜症」「筋腫」「嚢腫」などがあることから「お血」「痰湿」タイプであると捉えられ、漢方では、まずはそれを改善するように処方をしました。

それと同時にOさんにも生活面で、ある程度努力をしてもらうようにしました。

★食べ物は、「油っこいもの」や「甘いもの」を控えること。これが「痰湿」の誘因となります。

★食事は、野菜中心ににて、キャベツ、ほうれん草、小松菜などの野菜を1食に100g程度とるようにすること。野菜ジュースで代用してもO.K!これにより内臓脂肪が減り、滞っている痰や湿、血の流れがよくなります。

徐々に上記の生活面を改善しつつ漢方薬を服用されたOさんは、2ヵ月後には体重は変わらないけれども腰周りがすっきりとし、ベルトも緩くなったようです。それとともに低温期が安定しだし、徐々に高温期の安定も見られるようになりました。

「お血」と「痰湿」の体質が徐々に改善されたために、卵の育ちもよくなり、体調が整ってきたのです。

4ヶ月漢方薬と生活改善をされたOさんは、次周期より、ホルモン療法をされる予定です。これだけ整ったOさんの体調は、すっかり「妊娠しやすい母体」に生まれ変わっていることでしょう。

次周期の療法の結果が楽しみですね。

虚弱体質のお子様に

5歳のお子様をお持ちのMさんよりお問い合わせ。

「年中風邪を引いてばかり。引くと長引き治ってしばらくするとまた風邪を引くので困っています。体質改善に何か良い漢方薬はありますか?」

Mさんはお問い合わせと同時に、お子様に「板藍茶」をご注文されていました。

「風邪をひきやすい」という体質改善のためには「板藍茶」だけでは力不足です。

そのような症状には「小建中湯」を服用されるのが良いです。

「桂枝加芍薬湯」に「膠飴(こうい、かたあめ)」を加えたものが「小建中湯」です。

このお薬は、「虚弱体質」「夜尿症」「夜泣き」「慢性胃腸炎」などの体質改善の基本的な処方として小児用ばかりでなく、成人にも使用されているものです。

Mさんの5歳のお子様の場合は、「板藍茶」と「小建中湯」を成人よりも量を1/3に減らして併用し、服用を続けていただくことにしました。

それらを3ヶ月も服用されていれば、体質の改善が見られることでしょう。今年の夏、来年の冬には風邪の引きにくい元気なお子様に育っていること間違いなしです!