飲食不可能な方に
胃のポリープやガンによって幽門付近が狭くなり、飲食物の通りが悪くなることがあります。ひどいときには流動食や水分しか受け付けないという状態になります。
私も10年前はポリープ体質であったため、ポリープが大きくなるといつまでも胃もたれし、腸に降りていかない感じを受けることがありました。胃カメラを受けると、ポリープが大きくなっているとのこと。原因は飲食にあるのは明らかで、要は飲みすぎ!だったのです。
3年間同じことを繰り返したので、そろそろ気をつけようと思い、消化を助ける健康食品を飲み、酒類を控えるとポリープは出なくなりました。
しかし、ガンの方の場合はそう簡単ではないのです。固形物が食べられないので水分や流動物が中心になりますと、水が胃に溜まった状態になり、少し食べただけで嘔吐するようになります。できれば嘔吐を止めたいとの相談を受け、<五苓散>を使うことにしました。
嘔吐を繰り返す方に、薬を飲めないので、おも湯などと一緒に薬を少量をまぜ、何回にも分けて服用することで、胃中の水がはけて、嘔吐が楽になるという例があります。同様にガンの方でも使えるものと思い、試していただきました。
少しでも飲食ができて、体力回復ができますように!
薬の効能書きと実際
新しい医薬品は厚生省の許可が必要で、漢方でもなかなか許可がとれず、過去の処方などを元にして申請し、取得されるようです。
今回、新しい、そしてすばらしい処方の製品が出ましたので紹介します。
構成生薬は
紅参=オタネニンジンを湯通ししたもので、効能は補気、滋陰
鹿茸=マンシュウ鹿の幼角で、補腎、補陽、強筋骨作用
菟糸子=ネナシカズラの種で、補腎、固精、強壮、明目作用
枸杞子=クコの実で、補腎、明目作用
というものです。
この薬の効能書きには<滋養強壮、虚弱体質、病中病後、肉体疲労、冷え症>などとなっています。多くの補腎効果の漢方薬は、同様の効能書きが書かれていて、何でも滋養強壮剤と思われがちですが、実はそれぞれの働きがあり、使い分けが必要です。
例えば、この<活命散>の場合は、生薬の働きから見ると、
補腎・・精力剤に使える
固精・・夜間頻尿や夜尿症など、漏れるのを防ぐ効果にも
明目・・目のトラブルに使う
補腎陽・・・体を芯から温めるので冷え症にも
などと、生薬から用途がわかります。滋養強壮剤も正しく使うと効果は抜群です!。
続・子供の花粉症
花粉症の子供が年々増えているように思われます。
子供の場合は西洋薬は使いたくないし、かといって目の痒みやイライラのままではかわいそうだし・・・ということで漢方を求めてこられます。漢方薬は量を調整することで幼児でも安心して使えますので、喜んでもらっています。
5歳のTくん、今年から花粉症になり、鼻がつまり、目が痒く、顔もかゆくなり、イライラとしている様子でした。一般的に子供は漢方をいやがるように言われますが、Tくんは粉薬も錠剤も平気で、衛気を高める漢方薬と、鼻や咽の炎症を軽減する漢方薬を使ってみました。1週間後こられて、楽になっている様子で、そのまま継続していただきました。
花粉症も今年はそう酷くなく、終えそうですが、来年に向けて発症しないよう生活に気をつける必要があります。一番大事なのは《冷たいものをたくさん飲むこと》をやめさせることですよ、お母さん!
イライラ病
イライラ病という病名はありませんが、とにかくイライラする、暴力的になるなどの神経疾患があります。特に春は自律神経が乱れやすく、うつ病のようになったり、なんでもないのイライラとする方が増えます。
32歳男性Hさん、専門的なお仕事をされていて、まじめな方なのですが、仕事でストレスを受けやすく、イライラが強い、酷いときは物を投げつける、暴力的になる、でも落ち着くと反省していて自分でもわかっている、とのことで、昨年にご家族が相談に来られました。
そこで<抑肝散>などを使っていただいたところ、2週間過ぎた頃から落ち着きが見え始め、その後も激しい状態は生じなくなり、安定していました。
ところが4月に入り、少し焦りやイライラが再び強くなり、病院の安定剤が増えたようです。その後、脈拍が増え、高血圧が高くなり、むくみがでるなど、副作用が出現しまし、すぐに薬は変えられたようですが、脈拍はすぐに落ち着かないようです。
調子良く経過しているときは、「もっと早く良くならないか」とあせりが出てくるのが普通ですが、焦ると薬が増え、その結果悪化するケースを見受けます。
自律神経疾患の方には、《この時期悪くなるのだ》と開き直ることも必要なようです。
漢方軟膏は安心です
店頭やネットショップに漢方軟膏を求めてこられる方は増えています。
今日お越しいただいた方は、子供のおむつカブレとお母さんの授乳時の乳首の傷などに使っていただき、ほぼ即効性で治るとおっしゃっていました。特に子供に使う場合は、知らない間に口に入れるなどの心配がありますが、漢方系の軟膏は安全で安心です。
様々な使い方があります
<紫雲膏>・・・ あかぎれ、ひびわれなどの乾燥が酷いものとやけどに適します
<タイツ膏>・・・切り傷、とこずれ、かぶれ、痒みや炎症があるもの
<ベルクミン(昔は中黄膏)>・・・おでき、ひょう疽、腫れ物、化膿性のもの
上手に使い分けて下さい。なお、いずれも多めに塗ることで効き目が良いようです。
微熱が続く
風邪をひいているわけでもないのに微熱が続くという相談が時々あります。
中医学では体質を「実証」と「虚証」に分けて考えますが、店頭ではほとんど虚証の方がこられます。
微熱の原因のうち多いのが、<脾胃気虚>と<陰虚>です。脾胃気虚とは、高齢者や病後などで、胃腸の機能低下や体力低下した場合に生じる微熱で、午前や午後に発熱し、倦怠感や息切れなどの症状を伴います。また、陰虚とは、身体の水分不足状態で、慢性的な病気の方などに多く、午後や夕方から発熱し、手足のほてり、寝汗、のぼせなどを伴います。
70歳女性Mさん、風邪をひきやすく、一度ひくと治りにくい、風邪に関係なく微熱が続くとのことでした。最初は風邪予防の健康食品や、オウギ製剤を使っていただきました。
その後も風邪症状やめまいが続き、まずは体力を回復することが先決と思い、牛黄と人参が成分の<霊鹿参>をお使いいただきました。身体は楽になったものの微熱がとれません。
その後、<脾胃気虚>が原因と考え、補気健脾の<補中益気湯>をお使いいただき、改善しました。
寝汗の漢方
寝汗の中医学的な原因もはくつかありますので整理してみました。大きく分けて
・体力がない高齢者や病後の方・・・気虚タイプ
・比較的体力があり、水分をよくとり胃腸が弱い方・・・痰湿タイプ
・そして発熱を伴う病気の初期
などです。長期間続くのはこのうちの1、のタイプです。
心身の疲労がひどい場合、不眠や動悸などとともに現れます。こんなときには滋陰・安神作用のものを使います。
また、体力がなく、身体が乾燥し、手足がほてるなどの方の場合は補気・補陰作用の<麦味参>を使います。これらの処方には気を補う<人参や、無駄な汗をとめる<五味子>などが含まれて、効果を発揮します。
いずれも体質により漢方薬は異なります。