慢性腰痛の原因は?

先日の新聞記事で慢性腰痛の話が書いてありました。

福島県立医科大学の紺野先生によると、従来腰痛の原因は腰椎の変形や異常によるものと考えられてましたが、異常がなくても腰痛がある人が7割、MRIで異常が認められたのが3割とのことです。そして異常のない腰痛の原因は、不安やストレスなど、心理的、社会的要因が関連しています。また、椎間板ヘルニアの人でも、手術をしなくて治る人が約半数あるようです。こういった整形外科の疾患でも、ストレスが大いに関連していることを再確認できました。

実は、漢方では以前から腰痛やギックリ腰はストレスに関わるとしてよく知られていて、漢方医の故・相見三郎先生は気分の病(現代の言葉では、自律神経失調症に相当する病)による腰痛には<桂姜棗草黄辛附湯>という漢方薬が即効性があるといわれ、以来漢方界ではよく使われて実績があります。

昔から行われていた漢方の智恵が、西洋医学でますます明らかになっていくことは喜ばしいことです。

そういえば先日から当店のスタッフも腰痛を発症していましたので、このブログを読むように言わなければ!

乾燥による咽痛が増加!

先日から咽痛の相談がふえています。

いずれも、最初は風邪と思い市販の風邪薬を飲んでいたが、治る様子もなく、ますます痛くなるので漢方薬を求めて来られています。詳しくお聞きすると、乾燥によるものとわかり、<麦門冬湯>や<養陰清肺湯>を使っていただき、すぐに改善します。

原因は暖房機にあります。快適生活を求め、最近は石油ストーブから電気暖房に変わった家庭や事業所が増え、加湿器を置いていないところは肌も咽も乾燥します。

さらに当店では、乾燥のため静電気が起こり、錠剤分包機でお薬を作った時、静電気によって薬がくっつき、錠剤の入り数が狂ってしまうというトラブルも発生し、早速加湿器を入れました。

インフルエンザの予防のためにも<乾燥を避ける>ことが大切です。咽痛の方、再度家庭環境を見直してみてください。

お血による腹痛

先日書きました、便秘と腹痛の話の続きです。

便秘と腹痛でお困りのKさんに<桃核承気湯>をお使いいただいた後、便通は2日目から調子よくなり、また腹痛は4日目からなくなりました。そしてその後はすっかり快調を維持しています。

Kさんは20年前からご家族の問題があり、大変苦労されていて、長い間抗精神薬を服用され、そのため便秘になり、また漢方で言うところの<気滞血お=気の滞りが血の流れを妨げ、血流を悪くする意味>があり、左下腹部のお血点に血液が鬱滞して痛みを生じていたのです。この場合は単に便秘薬では改善せず、血流を良くする漢方薬を用いると改善します。

検査を受けて原因不明と言われた<下腹の痛み>の場合は、これに該当することが多いようです。

おなかが張る!

おなかが張るケースは、以前のブログで整理して書いていますが、食べすぎとか、便秘などによるものでなく、食べていないのにおなかが張るというケースもよく見られます。

37歳の女性Mさん、長い間おなかが不快で、意識がいつもおなかに行くとのこと。胃がポチャポチャして、空腹感もなく、すっきりしないようです。整体では胃が固い言われたそうです。

そこで、まずは胃の水分をさばき、もたれ感をとるため<半夏瀉心湯>をお使いいただきました。1ヶ月して、胃のポチャポチャは少なくなりましたが、おなかはスッキリしませんでした。次に<気滞>すなわちストレスが影響していると考え<半夏厚朴湯>をお使いいただきましたが、やはり変化がありません。

そこで再考し、ストレスだけでもなく、水分による機能低下だけでもないので、両方を考え合わせ、<半夏瀉心湯>と<柴胡疎肝湯>を使っていただいたところ、しばらくして胃の張りが改善し始めました。

この処方は漢方で<気滞湿阻>に対応するもので、気のめぐりが悪く胃の機能低下を起こし、水分が溜っているのを改善するもので、ようやく先が見えてきました。まだ少し時間がかかりそうですが、徐々に改善するものと思われます。

疲れると頭痛

ストレスによる緊張性頭痛の話は以前にも書きましたが、今回は疲れとともに出てくる頭痛の話です。

28歳の女性Tさん、神経を使う仕事をされていて、疲れてくると肩がこり、首から後頭部にかけて頭痛がするとのことでした。めまいも月に2~3回はあり、座っていてもクラッとするので相談にこられました。

血圧は低く血流が良くないタイプで、漢方では<気滞血お>と捉え活血作用の<冠元顆粒>を少しと、緊張を緩和する平肝作用の<釣藤散>を使っていただきましたところ、2週間余りで頭痛はすっかり消え、めまいも今まで全く起こらず、喜んでいただきました。

肩こりからくる頭痛には、通常<葛根湯>を用いますが、血流が悪いとか緊張が連続する方には、異なった対応で改善することもよくあります。漢方は体質によって決めるものなのです。

大根の効能

最近は年中同じ野菜が店頭に並び、食物の旬がわからなくなりました。私もこの数年間は、毎朝食に大根と宮崎ちりめん(じゃこおろし)を食べていて、その恩恵をこうむっています。しかし、よくよく考えれば、大根は寒くなる季節の野菜で、掘り出した大根を軒下に干し、柿の皮と一緒に沢庵漬をしたものです。

大根には炭水化物の消化を助けるジアスターゼ、澱粉分解酵素のアミラーゼ、蛋白分解のステアーゼなどの酵素類を含み、おなかにはとても良い食材です。また、ビタミンCが豊富なことや、成分のオキシターゼが発ガン性物質を解毒し予防してくれる働きもあります。
秋刀魚に大根おろしを添えることが理にかなっているようです。

また民間療法としては、咳や痰を鎮めたり、歯茎の炎症に用いられてきました。身近な食材ですが様々な効果があるものです。

今日はおでんの大根をいただきながら、ふと思ったことを書いてみました。

寒さによる鼻水

朝夕寒くなり、冷たい風が当たると、ついつい鼻水が出るものです。

こんなとき日本では一般的に<小青竜湯>がよく使われますが、中国の先生によると子供や高齢者には小青竜湯のような<麻黄>が含まれる漢方薬は多く使用するのは望ましくないとの指摘を受けました。

<麻黄>の成分に交感神経の興奮作用があり、大量に摂取すると麻痺や血圧上昇作用があるためです。そのため、高齢者や子供には他の処方を考えることがよくあります。

76歳の男性Sさん、脳梗塞の後遺症でリハビリ中、血圧が高く嚥下困難もあり、体力も低下して、冷えもあり、風にあたると鼻水がよく出るとのことでした。そこで以前からお使いの<清心丸>や<補陽還五湯>に加え、血圧や心臓などに影響なく鼻水を改善するため、<苓甘姜味辛夏仁湯>をお使いいただきました。

結果、1週間もしない間に鼻水は治まり、楽になったとのことです。

最近は漢方薬も安価で自分で選んで買えるようになりましたが、体質や状態に合わせて選択しないと副作用も出る場合があります。特に体力のない高齢者や子供には充分気をつける必要があります。必ず専門家に相談ください。

女性の気力・体力低下の症状

気力体力低下というのは日常的にありますが、女性と男性ではその対応が異なります。

38歳の女性Sさん、仕事が忙しく、とてもハードな生活を送られていた結果、体力・気力が低下し、耳が聞こえにくく、耳閉感があり、視力の低下、胃痛、立ちくらみ、など様々な症状を訴えられて来られました。

以前も仕事が忙しかったときに生理がとまったり、不安感がでたりしたこともあったようです。

そこで、補気血作用の<婦宝当帰膠>や、肝腎を補い、眼の症状にも良い<杞菊地黄丸>などをお使いいただきましたところ1ヶ月でかなり改善し、2ヶ月目には耳の症状や疲れ目、たちくらみなどもすっかり改善し、表情も明るくなってきました。

女性の疲れにはやはり<補血> <補気>の薬が必要で、男性の気力と体力の低下には<補気>と<補腎>の薬、例えば<参馬補腎丸>などが適するようです。

甘草による偽アルドステロン症

漢方薬に含まれる<甘草>によって、まれに高血圧や浮腫を生じることがあります。

今年初めてのこの症例を紹介します。

43歳の女性Yさん、冷え症や疲れで相談を受け、<婦宝当帰膠>と、<加味逍遥散>をお使いいただきました。10日ほどして、急に体重が5Kgほど増え、おかしいと思って病院で検査を受けられましたが原因不明で、当店にこられました。

詳しくお聞きすると、明らかに<偽アルドステロン症>で、すでに漢方薬は中止しておられましたので、代わって浮腫をとるため<漢方薬T>をお使いいただきました。

Sさんは中医学にも明るい方ですぐに中止されていましたが、やはり驚かれたことと思います。

この漢方薬に含まれる甘草成分は1日量1,6gで少ないのですが、それでも発症する場合もあり、特に腎機能低下の方や疲れが酷い方のばあい注意が必要です。また、漢方薬以外にも健康食品、市販胃腸薬、醤油、のど飴、など食品の甘味料として使われているため、その分と重なると1日の摂取量が増えますので、それが原因となる場合もあります。

回を重ねるたびに慎重になります。

便秘と腹痛

70歳の女性Kさん、以前にも不眠でお越しいただいていたのですが、今回は便秘と腹痛が強く、病院でも改善しないと相談に来られました。

元々安定剤や眠剤を使っておられて、便秘になりやすい状況があり、病院でカマグをもらったがすごい下痢になりすぐに止められました。そして次に<麻子仁丸>出されたが、便秘も腹痛も良くならないとのことでした。そしてCTなどで精密検査を受けたが、何も異常がないとの結論でした。

そこで詳しくお聞きすると、原因はストレスによる<お血>によって、左腹部の痛みが生じるという、漢方で<小腹急結>状態でした。西洋医学では便秘薬か、鎮痛剤しかありませんが、漢方ではこのような症状には血流を良くしつつ、便通も良くする<桃核承気湯>や<通導散>があり、早速使っていただきました。

このようなケースは中年の女性に時々みられ、漢方が得意とする症状です。1週間以内に改善が見られることとと思われます。