極度のイライラで血が昇る

イライラ感は誰にでも生じるものですが、それが極度になると様々な症状を生みます。

30歳の男性Hさんは、イライラが強く血が頭に昇って顔が赤くなったり、逆にうつ傾向になるなど、気分が不安定で集中力も低下し、睡眠も不調と相談に来られました。この症状はかなり以前からあったようで、抗うつ剤を服用されていたのですがあまり改善していませんでした。

そこで漢方では<肝火上炎>と捉え、薬は肝火を抑える<竜胆瀉肝湯>や、化痰・安神作用で睡眠を改善する<温胆湯>などをお使いいただきました。そして1ヶ月後、イライラ感はかなり改善され、睡眠はよく眠れるようになって身体も楽になったとのことでした。また西洋薬は減量したが、問題ないとのことでした。

赤ら顔の改善はまだまだ時間がかかりそうですが、徐々に改善するものと思われます。

お客様に教わること

以前からお越しの女性Mさんは本が好きで、特に健康に関する本をよく読んでおられるのですが、今日は降圧剤の副作用について相談を受けました。

Mさんの話では、カルシウム拮抗薬でよく知られた降圧剤Nを長期に常用すると重篤な疾患を生むと本に書いてあったがどう思うかとのこと。そして作用が穏やかで安全なチアジド系利尿降圧剤に変えてもらおうかと考えておられるようでした。当然調剤薬局などでも相談されているようでしたので、それなら医師に遠慮なく聞かれることをお勧めし、降圧剤に関するコメントは避けました。

このような西洋薬に関する相談は、本来処方した医師に聞かれるのが確実なのですが、話しやすいと言うことでよくあるケースです。併用薬や過去の疾患履歴なども関連しますので、当然安易な回答はしませんが、その度に治療薬マニュアルなどを持ち出し調べてみるので大変勉強にはなります。お客さまから教わるのは漢方薬の効果だけでなく、その他の健康情報もあり、その真偽を調べるのも楽しいものです。

長年の肩こり

肩こりは多くの方にみられますが、症状が酷くなると他人にはわかってもらえない辛さがあります。

25歳の女性Kさん、子供の頃から肩こりがあったのですが、最近は酷くなったため相談に来られました。お聞きすると、気分的に落ち込みやすく、ストレスをためやすい性質で、身体は痩せ気味、色白、冷え症タイプでしたので、<婦宝当帰膠> と 疎肝作用の<逍遥丸>をお使いいただきました。

1ヶ月ほど経過して、肩こりは楽になり、体調も良くなったと喜んでいただきました。Kさんは以前にも<婦宝当帰膠>は使われたのですが、その時は良くならず、今回<逍遥丸>と併用したことで効果が現れたようです。

一般的に肩こりの原因は<気の滞り> <血の滞り> <水の滞り>がありますが、どれが一番の原因かを知り、処方を決めることが大切なのです。

胆嚢腺筋症

あまり聞くことのない疾患ですが、胆嚢壁の肥厚を特徴とする良性の病変で、悪性の場合は胆嚢ガンと診断されます。自覚症状は少なく、エコーやMRI検査で見つかるようです。

48歳の男性Fさんは精密検査で胆嚢腺筋症と診断され相談に来られました。自覚的には食後に右腹部の違和感があり、時に下痢になるとのこと。これらは胆汁の流れが悪いためと思われ、<茵陳蒿湯>や<柴胡剤>を使っていただきました。

そして1ヵ月後、食後の痛みや違和感もなく、お腹の調子はとても良好とのこと。これで治ったわけではありませんが、胆嚢に負担がかからなくなることで、長期的には効果が見られるものと思われます。

6ヶ月後の再検査の結果が楽しみですが、それ以上に、体調が良くなりQOLが高まることは大切なことと思います。

背骨の骨折による痺れ

73歳の女性Tさんは4年前に背骨を骨折して以来右手右足の痺れがあり、朝方は比較的調子が良いのですが、夕方になると痺れや痛みが強くなり、また慢性腰痛もあって当店に相談に来られました。

この痛みは中医学で<不通即痛>といい、気血の流れが通じないために痛みが出ていると考えます。そこで体質をお聞きした上で、補肝腎作用の<独活寄生湯>と、活血作用の<疎経活血湯>をお使いいただきました。

1ヵ月後、脚の痺れはかなり改善し、足指先付近の痺れが残る程度にまで回復しました。長期間の疾患ですのでかなり時間がかかると思われたのですが、薬が適合して予想外の短期間で改善した例となりました。

<独活寄生湯>は比較的高齢の方の足腰の痛みによく使いますが、いつも期待に応えてくれる優れた漢方薬です。

汗による肌トラブル

暑くなったせいか、汗による湿疹や汗疹(あせも)の相談がでてきました。あせもの場合はほとんど<モモノハ>をお勧めしていますが、赤みを帯びた丘疹の場合はモモノハで改善しないため漢方薬をお勧めしています。

28歳の女性Mさんは、以前から生理トラブルでお越しいただいていましたが、7月になってから首の周りや肘に赤い発疹が出始め、痒みも伴ってきたため相談を受けました。そこで<消風散>をお使いいただいたところ1週間で痒みも治まったのですが、薬を止めると再び発症し、再度服用していただきました。汗によるものかは明らかではありませんが、頓服のように使っていただくことで、赤みも痒みも治まるようです。

暑い間は様子を見ながら続けてもらうことになりました。

補中益気湯は医王湯

補中益気湯は、食欲がない方、病後の体力低下や、男性不妊で精子問題がある方、あるいはガンの方もよく使われ、比較的知られた漢方薬です。

この薬、元々は中国の金代に李東垣という人が考えた処方で、それ以来750年間使われてきた<名処方>です。それゆえ、脾胃を補う医の中の王道の妙剤として<医王湯>とも言われます。

ところがこの薬は弱ったところを補う薬で、元気な人が服用してもあまり実感がないものだと思っていたのですが、これが間違いであることに最近気づきました。それはお客様から教えてもらったのです。

不妊症で奥様が漢方相談にこられていた方、<夫婦同治>の意味でご主人の精子も良い状態にしておきたいと奥様が買っていかれたのですが、それを飲んだご主人が疲れなくなってとても調子がよいとのことでした。

50歳代の会計士さん、最初は知人から聞いて漢方薬Hをお使いいただいたのですが、ちょっと疲れている時にこれを飲むとすぐに回復するとのこと。特にこの時期は夏ばてになりがちですが、この薬で毎年元気に過ごせるようです。

つまり、元々元気なタイプ、漢方では実証タイプの方でも、疲れが酷くなると漢方薬Hが適応するのです。人間の元気の源は脾胃(胃腸の働き)にありますので、それを元気にする<漢方薬H>は薬の王様ともいえますね。

西洋薬副作用軽減には漢方薬!

漢方薬で西洋薬の副作用を軽減するという使い方は、あらゆる疾患に適応でき、少し漢方を知る医師なら日常的に使われています。

いつも<小柴胡湯>を指名買いされている女性、何に使われているのか気になっていたのですが、今日お越しになったので尋ねてみました。すると彼女は抗うつ剤のデプロメールを使われていて、その副作用の胃腸障害である 吐き気、悪心、腹部膨満感を改善するためとのこと。

<小柴胡湯>を使うと全く副作用が無くなり、食欲もあり、おいしく食べられるようです。そして、『デプロメールを使っている方があれば、ぜひ教えてあげて下さい』と逆にお客様から教えていただきました。実際にお使いになっている方の言葉は一番確かで、ありがたい情報でした。

この他にも抗精神薬による口渇に<麦門冬湯>や、抗うつ薬の便秘に<大建中湯>を使ったり、様々な使い方があります。漢方と西洋薬をうまく使い分けし、併用することで、患者さんのQOLを高めることができます。うまくご活用ください。

原因不明のこわばり・痛み

23歳の男性Sさん、6年前から膝関節や指関節の痛みが発症し、病院で様々な検査を受けられましたが、リウマチや膠原病ではなく、原因不明で鎮痛剤しか処方されませんでした。

その後も状態は変わりなく、特定部位を酷使したときにその部分の関節が腫れ、痛みが強くなるというので、相談にこられました。

外見上は全く症状がないため、リウマチの前駆症状のようなものと捉え、<桂枝加朮附湯>などをお使いいただきましたが変化はありませんでした。

そこで、免疫に係わる疾患の可能性を考え、シイタケ菌糸体健康食品をお使いいただきました。使い始めてからは強い痛みがなくなりましたが、それほど顕著な改善ではなく、しばらく継続することにしました。痛みをとる漢方薬はたくさんありますが、原因不明の疾患にはこのような健康食品を使うケースもあります。

しばらく後に、その後の経過もアップしたいと思います。

下腹部の張り

病院で検査を受けて特に重篤な疾患がないのに、下腹部が張って酷いときには痛みを伴うという方があります。通常は便秘薬や整腸剤が処方されますが、それでも改善しないため漢方相談にこられます。

34歳のOLのFさんは、下腹部が痛くなり、病院では鎮痛剤を処方されましたが、これでは改善しないので相談にこられました。お腹がゴロゴロしたり、ガスが溜まりやすく、冷えているとのこと。以前に<漢方薬D>を服用したら少しましにはなったが、スッキリ改善しなかったとのことです。

そこで『会社にいるときと家にいるときではどちらが酷いですか』と尋ねますと、『会社にいるときに痛くなり、休日は起こらない』とのこと。これは明らかにストレスによる腹部の緊張が関連していると思われました。

西洋医学ではストレスで下腹部が痛くなるなんて考えられないのですが、漢方では<気滞>がこのような症状を生むことはよくあります。当然冷えもいけませんので、Fさんには<半夏厚朴湯>と<人参湯>を併用いただきました。

比較的若い女性によく見られる症状で、ストレスが無くなるわけではありませんのですぐに治るわけではありませんが、少しづつ楽になるケースがほとんどです。