漢方は多面的に効きます!

元々神経を使い、緊張しやすく、特に外出しようと思うと胃腸がおかしくなり、トイレに行きたくなる方は多くあります。学生で登校しようとするとトイレに何度もいく方と同じです。

原因は緊張によって、腸が刺激を受けるものと思われますが、こんなときに漢方では<桂枝加芍薬湯>を用います。

30歳のNさん、前述のような症状で相談を受け、冷えもありましたので<婦宝当帰膠>と<桂枝加芍薬湯>をお使いいただきました。そして2ヶ月程度でこれらの症状は改善したのですが、それ以外にも、よく眠れるようになり、美容効果もあるようで、肌の調子もいいし、髪の毛も調子が良くなったと喜んでいただきました。

漢方薬に共通しているのは、単に症状改善だけでなく、体質改善に繋がっていくことが特徴ですので、上手に活用してください。

対人緊張症

毎日たくさんのメール相談をお受けしますが、顔が見えないだけにお薬の処方も難しく、慎重に且つ充分にお聞きして対応します。それだけに、改善したとのメールをいただく時はとても嬉しいものです。

42歳のSさん、少しのことで緊張し、外出することに不安感を伴い、また咽が詰まり、息苦しいという訴えでした。また貧血や冷え症もあったので、<婦宝当帰膠>と <半夏厚朴湯>をお使いいただきました。

その後3ヶ月間の服用で症状はかなり改善され、「神経の過敏さがほとんどなくなり映画なども楽しめるようになりました」とのお礼のメールをいただきました。お礼のメールは次の方の処方を考える励みになり、糧となる嬉しいものです。

花火が怖い!

8月に入ってあちこちで花火大会が行われていますが、当地(京都・宇治)でも宇治川花火大会が昨日行われました。少し高台に登ってゆっくり夏の風物を楽しみました。

少し以前の話になりますが、40代の女性から花火の音が怖いといった相談がありました。もちろん花火だけでなく、大きな物音や電車に乗ることも怖いとのことでした。漢方では<心胆気虚>といい、胆気不足でいわゆる<胆が小さい>状態です。

そこで、<帰脾湯>を使っていただき、時間とともに改善したことがありました。この薬は元気をつけ、気分を安定させる働きがあり、神経過敏な方に使われるものです。

花火をきっかけに思い出した話です。

抗精神薬と漢方薬

抗うつ剤や安定剤を服用している方は、薬の副作用のため口渇が強くなる場合があります。そのため、水分をたくさん摂り、おなかがジャブジャブ、胃腸機能が低下し、下痢気味になり、睡眠も悪くなる、というコースをたどることがあります。

29歳のYさん、複数の安定剤を服用されていて、口渇がはげしく、よく水を飲んでおられました。長期に渡るとおもわれましたので、漢方薬の併用をすすめ、補気補陰の、虚労に使う<麦味参>をお使いいただきました。

その後、口渇が楽になり、水の量が減るとむくみも少なくなり、身体も楽になったとのこと。

漢方薬は西洋薬の副作用軽減に役立ち、時には薬を減量するように使える場合もあります。

なにもないのにイライラ感

ちょっとしたことでもイライラする方はありますが、思い当たる原因が何もないのにイライラするという方があります。

よく見られるのは更年期の症状を伴うケースです。このような場合<加味逍遥散>がよく使われますが、体質や状況によっては様々な漢方薬を使います。

49歳の女性、Iさん、わけもなくイライラし、のぼせがあるため鼻血が出るときもあるとのこと。当然<加味逍遥散>は以前からお使いいただいていましたが、あまり効果がはっきりしないとのことでした。

そこで、いわゆる陰虚による<虚火上炎>ととらえ、<滋陰降火>を基本にした<瀉火補腎丸>を使っていただきました。更年期と捉えるより、年齢とともに身体の水分のめぐりが悪くなり、身体の上と下の間で熱のバランスが崩れて、のぼせやイライラがでるケースと考えています。

幻聴や幻覚の漢方

高齢者や認知症の方に幻聴や幻覚が見られるケースはたくさんありますが、若い方にも見られます。

31歳の男性Mさん、ずいぶん昔から、ストレスがかかったときに幻聴があり、周囲の人の声が気になるという症状がありました。見た目はすごく元気な好青年ですが、ストレスには過敏に反応し、緊張しやすいように見受けられました。

そこで平肝作用の<抑肝散>を中心にいくつかの漢方薬を続けていただきましたが、半年ほど経過した時処方を<甘麦大棗湯>に変更したところ、周囲の声が気にならなくなり、すっかり良くなりました。

個人差や生活環境の変化なども要因にはありますが、<甘麦大棗湯>はとても不思議な薬であることを実感しました。難しい病気だけに喜びも一層増します。

中医学研究会で勉強

今日は中医学の研究会に出席し、鬱証(うつ病)や更年期障害に関する勉強をしました。

春先は昔から木の芽時といって、気分が不安定になる時期で、この種の相談も増えます。

鬱証の進行した状態に<肝風内動>という状態があります。この意味は、身体の中の陽気の変動が、身体の動きに影響するというもので、症状としては、めまいや手足の痺れ、締め付け感、震え、ひどい場合は痙攣状態や歩行困難まで起こします。

西洋医学ではすぐに脳のMRIをとって検査する対象です。しかし、検査をしても、何も異常がない場合には漢方の出番で、陽気を鎮めて安定させる漢方薬があるのです。

医学が発達していなかった時代から、こういった症状があり、且つ解決策もあったことに歴史の奥深さを感じます。

女性の春の病

春の陽気が高まるにつれて現れる症状がいくつかありますが、そのひとつが気分のイライラ感や不安定になる方です。

陰陽論で冬から春に変わる時期は、陰気が少なくなり陽気が増える、その変化に身体がついていかないことで起こります。西洋医学的には季節の変化によるホルモンの変化が原因と考えます。

39歳のAさん、以前よりストレスを受けやすく、頭痛、不眠、蕁麻疹などの症状が時々ありました。そして、先日からはさらに症状がひどくなってきて、寝込んでいるとのことでしたので、昨年の同時期にも使っていただいた血の道症に使う<加味逍遥散>をお送りしました。

このようなケースはホルモンの影響を受けやすい女性に生じるのが特徴です。しばらくしたら落ち着くことと思います。

高齢者の幻覚症状

特に精神疾患でなく、高齢者の認知症などで生じる幻覚症状に対し、漢方薬は以前から使われてきましたが、今回顕著な症状改善が聞かれましたので紹介します。

78歳の女性Mさん、廊下にだれもいないのに『子供がたくさん来ている』という幻覚症状が現れたので娘さんが相談にこられました。その他の幻覚症状もあり、夜に起こされてゆっくり寝ていられないとのこと。

そこで高齢者の鬱症状や幻覚症状、不眠症にも使われる<帰脾湯>を使っていただきました。10日後に連絡をいただき、幻覚がすべて消えたとのことで喜んでいただきました。

しばらくの間は予防的に続けて飲んでいただくことにしましたが、こんなに早く効果が現れるのには驚きでした。

働きすぎを抑える漢方?

以前に日本人は働きすぎとよく言われましたが、今でも団塊の世代はその習慣が直らず、仕事ばかり考えている人が多いようです。

59歳の男性、神経が過敏で、以前にはパニック障害といわれたこともあったようですが、最近特にハイな状態が続き、奥様が心配して相談に来られました。

とはいっても、精神的に異常なわけでなく、休み無く働き、且つ遊ぶと言うことで、身体が持たないのではないかと思われたようです。

そこで、気分が高揚しやすいのを抑制するため<抑肝散>を使っていただきました。1ヵ月後、その様子をお聞きしたところ、おとなしくなり、しゃべるのも少し少なくなり、落ち着きを取り戻してきたとのこと。

抑肝散は小児の疳の虫や神経症によく使われますが、おとなでも同様に効果があるようで、カッカしやすい方にはお勧めの漢方薬です。