補中益気湯は医王湯

補中益気湯は、食欲がない方、病後の体力低下や、男性不妊で精子問題がある方、あるいはガンの方もよく使われ、比較的知られた漢方薬です。

この薬、元々は中国の金代に李東垣という人が考えた処方で、それ以来750年間使われてきた<名処方>です。それゆえ、脾胃を補う医の中の王道の妙剤として<医王湯>とも言われます。

ところがこの薬は弱ったところを補う薬で、元気な人が服用してもあまり実感がないものだと思っていたのですが、これが間違いであることに最近気づきました。それはお客様から教えてもらったのです。

不妊症で奥様が漢方相談にこられていた方、<夫婦同治>の意味でご主人の精子も良い状態にしておきたいと奥様が買っていかれたのですが、それを飲んだご主人が疲れなくなってとても調子がよいとのことでした。

50歳代の会計士さん、最初は知人から聞いて漢方薬Hをお使いいただいたのですが、ちょっと疲れている時にこれを飲むとすぐに回復するとのこと。特にこの時期は夏ばてになりがちですが、この薬で毎年元気に過ごせるようです。

つまり、元々元気なタイプ、漢方では実証タイプの方でも、疲れが酷くなると漢方薬Hが適応するのです。人間の元気の源は脾胃(胃腸の働き)にありますので、それを元気にする<漢方薬H>は薬の王様ともいえますね。

西洋薬副作用軽減には漢方薬!

漢方薬で西洋薬の副作用を軽減するという使い方は、あらゆる疾患に適応でき、少し漢方を知る医師なら日常的に使われています。

いつも<小柴胡湯>を指名買いされている女性、何に使われているのか気になっていたのですが、今日お越しになったので尋ねてみました。すると彼女は抗うつ剤のデプロメールを使われていて、その副作用の胃腸障害である 吐き気、悪心、腹部膨満感を改善するためとのこと。

<小柴胡湯>を使うと全く副作用が無くなり、食欲もあり、おいしく食べられるようです。そして、『デプロメールを使っている方があれば、ぜひ教えてあげて下さい』と逆にお客様から教えていただきました。実際にお使いになっている方の言葉は一番確かで、ありがたい情報でした。

この他にも抗精神薬による口渇に<麦門冬湯>や、抗うつ薬の便秘に<大建中湯>を使ったり、様々な使い方があります。漢方と西洋薬をうまく使い分けし、併用することで、患者さんのQOLを高めることができます。うまくご活用ください。

原因不明のこわばり・痛み

23歳の男性Sさん、6年前から膝関節や指関節の痛みが発症し、病院で様々な検査を受けられましたが、リウマチや膠原病ではなく、原因不明で鎮痛剤しか処方されませんでした。

その後も状態は変わりなく、特定部位を酷使したときにその部分の関節が腫れ、痛みが強くなるというので、相談にこられました。

外見上は全く症状がないため、リウマチの前駆症状のようなものと捉え、<桂枝加朮附湯>などをお使いいただきましたが変化はありませんでした。

そこで、免疫に係わる疾患の可能性を考え、シイタケ菌糸体健康食品をお使いいただきました。使い始めてからは強い痛みがなくなりましたが、それほど顕著な改善ではなく、しばらく継続することにしました。痛みをとる漢方薬はたくさんありますが、原因不明の疾患にはこのような健康食品を使うケースもあります。

しばらく後に、その後の経過もアップしたいと思います。

下腹部の張り

病院で検査を受けて特に重篤な疾患がないのに、下腹部が張って酷いときには痛みを伴うという方があります。通常は便秘薬や整腸剤が処方されますが、それでも改善しないため漢方相談にこられます。

34歳のOLのFさんは、下腹部が痛くなり、病院では鎮痛剤を処方されましたが、これでは改善しないので相談にこられました。お腹がゴロゴロしたり、ガスが溜まりやすく、冷えているとのこと。以前に<漢方薬D>を服用したら少しましにはなったが、スッキリ改善しなかったとのことです。

そこで『会社にいるときと家にいるときではどちらが酷いですか』と尋ねますと、『会社にいるときに痛くなり、休日は起こらない』とのこと。これは明らかにストレスによる腹部の緊張が関連していると思われました。

西洋医学ではストレスで下腹部が痛くなるなんて考えられないのですが、漢方では<気滞>がこのような症状を生むことはよくあります。当然冷えもいけませんので、Fさんには<半夏厚朴湯>と<人参湯>を併用いただきました。

比較的若い女性によく見られる症状で、ストレスが無くなるわけではありませんのですぐに治るわけではありませんが、少しづつ楽になるケースがほとんどです。

左下腹部痛の原因は

左の下腹部に痛みがあり、病院で検査を受けても特に異常がないという相談が時々あります。これは漢方では<お血>による圧痛点ととらえ、血流の悪い方の特徴を現しています。このときは便通と血流をよくする漢方薬を用います。

45歳の女性Mさんは、この痛みを感じたため、病院で大腸ファイバーによる検査などを受けられましたが全く異常がありませんでした。ところが、この検査のために下剤で腸内を洗浄された時に痛みが消えたので、原因は便秘と関係があることがわかったと言われます。

そこでご相談の結果、食物繊維健康食品と、便秘薬<ハーベルシー>を併用いただきました。その後毎日便通があり、痛みも全く無くなり、とても順調になったと報告をいただきました。そこでしばらく続けていただき、便秘体質を改善することとしました。

便秘は様々な疾患の元にもなりますので、最初は便秘薬を使ってでも毎日の排便を習慣つけることが大切であると思います。思わぬ結果でしたが、Mさんに喜んでいただきました。

慢性の貧血

貧血は女性によく見られる症状ですが、一過性で無く慢性的な鉄欠乏性貧血もよく見られます。

30歳の女性Kさんは色白で、見るからに貧血という感じを受けます。
今年2月に吹き出物で相談に来られたのでしたが、そのとき<鉄欠乏性貧血>で病院から薬をもらっているとのことでしたので、
吹出物の原因である胃腸機能の低下を改善するべく香砂六君子湯>をお使いいただきました。
また冷え症もあり<婦宝当帰膠>を併用いただきました。

その後しばらく空いて先日来店され、最近は週1回鉄剤の注射を受けておられ、注射を受けなければすぐにヘモグロビンの値が下がってしまうとのことでした。そして、このままいつまでも注射を受け続けることも出来ないので相談に来られました。

そこで今回も同じく、<婦宝当帰膠>と<香砂六君子湯>をお使いいただきました。

漢方薬は鉄成分ではありませんが、身体全体を整えることで鉄欠乏性貧血にも効果を発揮するものと考えます。1ヶ月後の検査結果をお聞きするのが楽しみです。

口中の泡

口に泡状のものが溜まるという症状があります。原因はお腹の冷えやストレスなどが良く見られます。

53歳の女性Sさんは3年ほど前からストレスを受けることがあり、昨年には身内に不幸があり、それ以来口中に異常を感じるようになりました。胃が不調、口渇があり、お腹が冷え、疲れやすいとのこと。舌は厚白苔で、明らかに水分がおなかに滞留しているような状態でした。

そこで 温中散寒・補気作用の<人参湯>や、和胃・消痞の<半夏瀉心湯>を用いて、お腹を温め、水分代謝を改善すると、泡は少なくなり、食欲も出てきてすっかり楽になりました。

口中の泡にはこれ以外に神経性のもの、過敏で緊張しやすい方の場合の泡はなかなか簡単には改善せず、苦労するケースがあります。

耳鳴り、耳閉感、その後

以前40歳の女性のストレスによる耳鳴り・耳閉感の症例を書きましたが
その後、化痰安神作用の<温胆湯>や、補気血・安神作用の<帰脾湯>などもお使いいただき、1ヵ月半経過した頃にすっかり改善し楽になったとのことでした。
さらにこれとともに鼻炎や鼻水、目の下の痙攣や聴力低下も改善し、驚かれました。漢方はひとつの症状だけでなく、関連して発生している様々な症状までが治っていきます。

結局Tさんの場合はストレスが引き金となり、気滞が水分や血流を悪化して生じたものと思われます。このような症状は40代~50代の女性によく見られます。

イチジクを収穫しました

趣味で少しずつ育てている当店の薬草園で、イチジクが収穫できました。今年初物ですが今までになく大きく、中身もしっかり熟していて大変甘かったです。

イチジクが薬草? と思われるでしょうが、イチジクの生薬名は<無花果>といい、漢方では<清熱解毒>や<潤腸>の作用があり、咽の痛みや声がれ、便秘などに用います。乾燥した実を煎じる場合と、実をそのままで食べる場合があります。

イチジクは栽培された果実としては世界で一番古い種目であり、歴史上の果実なのです。また、日本には江戸時代に伝わってきたと言われます。イチジクの葉も神経痛などの入浴剤に用いられます。

もちろん、それを目的に作っているのでなく当然食用です。無精者にとって、手入れなしでも出来るのがうれしいですね。

 

子供の水いぼには

プールが始まるこの時期、子供の水いぼの相談が増えます。水いぼがあるとプールに入れないので早く何とかして欲しいと言われます。

水いぼはウイルス性で次々と増えていきますが、病院で取ってもらってもまた出てきます。それより子供にはピンセットで取られる時の痛さは我慢できるものでないようです。そこで漢方の出番です。

先日も2歳の男の子の相談があり、病院で<ヨクイニン>をもらい2ヶ月飲んだが治らないとのこと。もちろんピンセットで取ってもらったが次々とでるので、プールがはじまるまでに改善できないかとの相談を受けました。

そこでヨクイニンで効かない時に使う漢方薬と、板藍根ハーブティを使っていただいたところ『1ヶ月余りですっかり消えて今年のプールに間に合いました』とお礼のメールをいただきました。子供さんも痛い思いをするより、少し苦い漢方を飲む方が良かったようです。