「なぜ不妊に漢方?」
女性疾患と代表的な漢方薬
ここでご紹介するのは、女性疾患によく使われる代表的な漢方薬ですが、漢方はひとりひとりの体質や症状に合わせて適切に選ぶ必要があります。
漢方薬が普及し、手軽に入手できるようになってきましたが、あなたの体質に合っていなければ当然効果は期待できません。
まずはご相談ください。
処方 | 症状 | 構成生薬 |
---|---|---|
当帰芍薬散 (とうきしゃくやくさん) |
冷え性、貧血、浮腫、生理痛 | 当帰、芍薬、川芎、白朮、茯苓、沢潟 |
婦宝当帰膠 (ふほうとうきこう) |
冷え性、月経不順、無月経、めまい、貧血 | 当帰、芍薬、川芎、熟地黄、膠、党参、黄耆、茯苓、甘草 |
桂枝茯苓丸 (けいしぶくりょうがん) |
生理不順、子宮筋腫、卵巣嚢腫 | 牡丹皮、桃仁、赤芍、桂枝、茯苓 |
加味逍遥散 (かみしょうようさん) |
憂鬱、イライラ、胸脇脹痛、月経不順 | 柴胡、薄荷、白芍、当帰、牡丹皮、白朮、茯苓、甘草、生姜、山梔子 |
甘麦大棗湯 (かんばくたいそうとう) |
不眠症、うつ病、神経衰弱、不整脈 | 小麦、甘草、大棗 |
女性によく使われる4大生薬
芍薬 しゃくやく
芍薬は中国では「花相」と呼ばれ、日本でも「立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花」と 美しい女性を形容する時にも使われるほど美しい花を咲かせます。生薬としての芍薬は、その根を用い、味は苦く、酸っぱく、少し冷やす性質があります。芍薬は主に肝の「陰」「血」を補います。そのため、「気」の滞りを解消し、痛みを取るとともに「気」の高ぶりを抑えることができます。 当帰とともに女性にはなくてはならない生薬のひとつです。月経不順、月経痛、腹痛、筋肉のけいれん、のぼせ、めまい、耳鳴り、頭痛などに用います。婦宝当帰膠、四物湯、当帰芍薬散、芍薬甘草湯、逍遥散、四逆散など多くの漢方薬に配合されています。
(1) 補血斂陰 (2) 柔肝止痛 (3) 平肝斂陰 (4) 滋陰
味:苦、酸 性:微寒
当帰 とうきく
当帰は昔から婦人病によく使われる生薬のひとつで、中国では「女性の宝」として重宝されてきました。セリ科植物"トウキ"の根で、味は甘く、辛く、身体を温める性質があります。
当帰の名前の由来は諸説ありますが、子供ができなくて実家に帰された嫁が、当帰を服用することで妊娠できるほど元気な身体になり、「当(まさ)に帰る」ことができたという説があります。
当帰は「血(けつ)」を補う作用があるとともに「血」の巡りをよくする作用があります。また、月経を調節する作用があります。女性は毎月の月経があるため特に「血」が不足がちとなりますので、しっかりと補う必要があります。
貧血、経血が少ない、月経不順、月経痛、たちくらみ、手足の冷え、肌あれ、また便を軟らかくし お通じをスムーズに行うために用います。
婦宝当帰膠、四物湯、当帰芍薬散、帰脾湯、逍遥散など多くの漢方薬に配合されています。
(1) 補血 (2) 活血 (3) 調経 (4) 潤腸
味:甘、辛 性:温
川芎 せんきゅう
セリ科植物"センキュウ"の根茎を湯通しして乾燥させたもので、味は辛く、身体を温める性質があります。川芎は血中の気薬と言われ、気を巡らせる力が強い活血薬です。当帰とともに用いることで血を温め、よく気を巡らせることができます。 また、昇散性があるため頭部や皮膚、関節に作用し、経絡の気血を巡らせ痛みをとります。子宮に働き、月経不順、無月経、月経痛などのほか、頭痛や肩こり、関節痛にも用います。婦宝当帰膠、四物湯、芎帰調血飲、血府逐瘀湯、川芎茶調散などの漢方薬に配合されています。
(1) 活血 (2) 行気 (3) 祛風止痛
味:辛 性:温
女貞子 じょていし
女貞子はモクセイ科ネズミモチの成熟果実で、味は甘く、苦く、少し冷やす性質があります。 中国の古典"神農本経"に「果実は中を補し、久しく服すれば、肥健にし、身を軽くし、老いず」とあります。女貞子の"女貞"の名前の由来は、冬の寒さをしのいで、なお青々としているところから、貞守の操があるとして貞女を形容して名づけられました。女貞子は「肝」「腎」を補益し、ものをはっきりと見えるようにし、身体を冷やす作用のある体液不足による熱感を抑えます。白髪、腰や膝のだるさ、頭のふらつき、眩暈、ほてり、視力減退、目のかすみなどに用います。二至丹などの漢方薬に配合されています。
(1) 滋腎養肝 (2) 烏髪明目 (3) 清虚熱
味:甘、苦 性:涼
※参考文献:中医臨床のための中薬学 (医歯薬出版)
※植物写真(芍薬/当帰/女貞子)提供元:ボタニックガーデン http://www.botanic.jp/
※植物写真(川芎)提供元:きぐすり.com http://www.kigusuri.com/