「なぜ不妊に漢方?」

妊娠力を高める生活改善

その1 血流を改善する

血流はすべての方にとって大切なことです。血流が悪くなるとさまざまな病気の原因にもなります。肩こりや頭痛、手足のしびれや痛み、さらに心臓病や腎臓病など、それらはすべて血流が関係しています。

血流が悪くなる原因は、冷え、運動不足、肥満、ストレスなど、生活習慣にかかわるものがほとんどですが、血管が細い、またコレステロールなどによる血液粘度の影響といった西洋医学的な原因もあります。

特に妊娠しやすい身体をつくるためには、卵巣・卵管・子宮の血流をよくすることが重要です。卵子はすべて、血管を通じて栄養を受け取っています。もし卵巣の血流が悪化すると卵子の発育に影響を与えます。
また、卵管は最高の胚培養の道ですから、卵管の血流がよくてきれいな道路であることが必要です。そして住家となる子宮の内膜は、着床しやすい、暖かくて厚さもあるふわふわベッドであることが大切です。

運動をする、ストレスを発散するなどの生活改善はもちろんのこと、あわせて漢方薬による血流の改善をおすすめします。

その2 肥満を予防する

肥満は成人病の大きな原因になり、肥満のパイが崩れるとドミノ倒しのごとくいろいろな病気になっていきます。生活習慣がもたらす肥満が、高血圧、高脂血症、糖尿病、網膜剥離、末梢神経症など多くの病気を招きます。

では、不妊と肥満は関係があるのでしょうか?
『不妊ガイドライン』からの紹介です。
一般に肥満の女性は、原発性・続発性不妊のリスクを増加させると言われています。 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断された女性には肥満が多いとも言われています。

体重と身長の割合を表すBMI(ボディマス指数)から見ますと、

  • BMIが30以上になると、妊娠までの時間がかかり、自然流産のリスクが増加します。
  • BMIが29を越える女性は、体重を減らすと排卵の可能性が高まり、結果として妊娠する可能性が高くなります。
  • BMIが19未満で無月経か月経不順がある場合は、体重を増やすと妊娠の可能性が高まります。
  • BMIが25~27,9でかつPCOSがある場合は、排卵誘発によって自然流産のリスクが増加します。
  • 体重が過少で排卵誘発を必要とする場合は、IUGR(子宮内胎児発育遅延:36週で 2300g以下の胎児)の子供が増えると言います。
    男性の肥満と不妊の間には証明された関係はないようですが、肥満は一般的な健康の悪化の原因となることから、精子運動率の悪化やDNAフラグメントの増加と関係があると言われています。
  • BMIが25以上の男性では、正常運動精子の数が減少すると言われています。
    中医学的に見ても、肥満は「痰濁阻滞」「お血」は万病の元になります。それぞれの体質(気虚タイプ、気滞タイプ、湿熱タイプ、お血タイプ、あるいは混合タイプ)に合わせて未病対策が必要です。

*BMIとは、身長からみた体重の割合を示す体格指数
BMI = 体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
標準BMI=22 25以上=肥満 25未満18.5以上=普通 18.5未満=やせ
体重÷身長の二乗が22の時、病気になる確率がもっとも低いという疫学調査から導き出されました。

その3 ダイエットに注意

若い女性の相談の多くに、生理不順があります。女性のホルモンバランスはとてもデリケートで、ストレスによってホルモンの分泌が影響を受け、生理が乱れることがよくあります。
さらに「より美しく!」の願望をかなえるために急激なダイエットをされて、生理が止まるケースもあります。 その原因のひとつは、体脂肪率が20%を切るとホルモン不足が起こりやすくなるためです。
体脂肪はエストロゲンの代謝に関与しています。体脂肪率は少なくとも20~22%を最低として、これ以上を保つのが理想です。一般的に30歳未満の女性の適正体脂肪率は17~24%、30歳以上では20~27%と言われます。体脂肪を減らしすぎると女性ホルモンの量も減り、月経不順やさらには不妊の原因となります。
ダイエットに限らず、痩せている⇒体脂肪が少ない⇒女性ホルモンの低下となりやすく、日常の食生活もとても大切です。栄養バランス、特に女性は血となるたんぱく質の充分な摂取が必要です。

その4 ストレスを減らす

最近はストレスが不妊に影響を及ぼしていると言われています。「赤ちゃんが欲しい」と願いながらなかなか授からないこと、 基礎体温表をつけて一喜一憂すること、 周りのお友達がどんどん妊娠されていくこと、 お舅お姑さんからプレッシャーをかけられることなど、ストレス源はさまざまですが、 ストレスが原因で月経周期を乱し、より妊娠を遠ざけている場合もあります。
ストレスを受けると、脳の脳幹にある視床下部からCRH(副腎皮質ホルモン放出ホルモン)というホルモンが分泌されます。 また同じく視床下部からはGNRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)が出されます。これが下垂体に作用して、ACTHあるいはFSH・LHの分泌を促します。
ストレスを感じた脳は緊急事態に対処する生体反応を優先し、生殖機能を含む生命活動を犠牲にします。つまりストレスが強くなるとその対応でいっぱいになり、生殖ホルモンのコントロールがうまくいかなくなるのです。卵巣の反応も鈍くなってしまい、排卵障害や無排卵にもなってしまいます。

また、怒り、悲しみ、憂鬱、不安、イライラなどの精神的ストレスは性腺軸の乱れをおこし、基礎体温表(BBT)上に現れてきます。
ストレスを受けると月経周期が不規則になりやすく、BBTも低温期は不安定になり、卵の成長にも影響します。卵巣、卵管もストレスを受けると血流が悪くなります。 高温期も波状になり不安定になります。黄体ホルモンのバランスが悪く、着床しにくく流産しやすくなります。
ストレスは避けられないものの、上手に解消できないと妊娠しにくい身体にしてしまいます。それぞれに合ったストレス解消法を見つけることが大切です。

その5 早寝早起きの習慣を

毎日の生活の中で一番気になるのは睡眠のとり方です。 基礎体温表を測る時間帯を伺っても、早い方で5時、遅くても6時には計測しています。女性の慢性的な睡眠不足も問題です。
では、睡眠不足は不妊にどう影響しているのでしょうか?
1日のリズムを見ますと、お日様が照っている陽の時期(午前中は陽中の陽、午後は陽中の陰)は暖かく明るく活動的ですが、日没になると陰の時期(日没から真夜中までは陰中の陰、真夜中から夜明けまでは陰中の陽)寒くなり、暗く動きが悪く非活動的になります。
つまり昼間は生体も自然界も活動を開始し、活発に動きます。夜になると活動を控え、お休み状態になるのです。真夜中の12時は宇宙の陰気が充分満ちてきます。この時間帯に休むことが陰気の充電、疲労回復には最適なのです。

夜に充分な睡眠時間がとれないというのは、宇宙の陰気(自然界のエネルギー)が充分享受できないということ。肉体と精神疲労が回復されず、宇宙からのエネルギーも蓄えられなくなります。 宇宙の陰気が旺盛な時間(22時から2時頃)に休めば、生きていくエネルギーの腎精・腎気が充足され元気が回復します。この腎精・腎気の蓄えが妊娠するための身体づくりとして必要です。
ことわざにも「寝る子は育つ」とあるように、成長ホルモンやエストロゲンなどが就寝中に分泌されるのです。
妊娠力を高めることは、腎精・腎気を補うことで、早寝早起きをすることです。「質のよい卵ができない」、「原始卵胞が少ない」、「AMHが年齢のわりに低い」といった方は、早く寝ることをおすすめします。
女性ホルモンは夜(寝ている時)に蓄えられます。 静かに安静にしている時に「卵」も安心して成長します。卵が成長するのは卵胞期、つまり陰の時期なのです。 陰を充分補うためにもは早い時間に就寝することが大事になります。
よい卵(精子)を望むなら、早寝を実行しましょう。