先天の本と後天の本
中医学で<腎>を先天の本といい、生まれながらにして持っている生命力・エネルギーを意味します。
また、<脾胃>を後天の本といい、脾胃すなわち消化器系による消化吸収の働きによって気血が生まれ、生命が支えられているということを意味します。
そこで、心臓も肝臓ももちろん大事ですが、胃腸系はその元として最も大事なのです。
68歳の女性Mさん、風邪を引きやすいといって昨年秋に相談にこられました。話をお聞きすると胃腸が弱いとのことでしたので、風邪の予防薬ではなく、胃腸の働きを高める<香砂六君子湯>をお使いいただきました。その後今年4月までまったく風邪を引かなかったとご報告いただきました。
風邪の予防にお勧めしている健康食品も使われず、また準備されていた風邪のための漢方薬も使うことなく元気に過ごしてこられました。
後天の本、すなわち胃腸を丈夫にすれば風邪をひきにくくなるという、根本治療の大切さを学びました。
中医学研究会で勉強
今日は中医学の研究会に出席し、鬱証(うつ病)や更年期障害に関する勉強をしました。
春先は昔から木の芽時といって、気分が不安定になる時期で、この種の相談も増えます。
鬱証の進行した状態に<肝風内動>という状態があります。この意味は、身体の中の陽気の変動が、身体の動きに影響するというもので、症状としては、めまいや手足の痺れ、締め付け感、震え、ひどい場合は痙攣状態や歩行困難まで起こします。
西洋医学ではすぐに脳のMRIをとって検査する対象です。しかし、検査をしても、何も異常がない場合には漢方の出番で、陽気を鎮めて安定させる漢方薬があるのです。
医学が発達していなかった時代から、こういった症状があり、且つ解決策もあったことに歴史の奥深さを感じます。
肝斑のご相談
肝斑は褐斑とも言われ、顔や目鼻の周囲にできる点状のもので、多くは<気滞=気分の滞り>によって生じるといわれます。
つまり、ストレスによるものや、年齢的な原因などによってホルモンのアンバランスを生み、皮膚への滋養がうまくいかないためで、漢方では<肝の疏泄の失調>とも言います。
このような時に血の道症の薬<加味逍遥散>をよく使います。しかしこれだけで良くなることは少なく、貧血傾向や乾燥肌の方には<婦宝当帰膠>を、血流悪化の方には<冠元顆粒>などを併用し、皮膚の新陳代謝をはかります。
肝斑といえども、その方によって漢方薬の種類は変わります。なお、肝斑はストレスやホルモンだけでなく、様々な原因がありますので相談が必要です。
年に一度のかすれ声
人それぞれ体質的に弱い箇所をもっているため、季節の変化に伴い毎年同じ時期に同じ症状が出る方があります。
その典型が花粉症です。昨年使った漢方薬が良く効いて花粉症の時期が楽に過ごせたので、今年も同じものがほしいといって、年に一度だけ来られるお客様もあります。
昨日お越しの73歳女性Mさんは朗読をしておられるのですが、昨年のこの時期に<息苦しく、声が出にくい>との相談を受けました。声がかすれるのは<肺陰虚>といって気管支系が乾燥しているためで、乾燥を改善する<麦門冬湯>や、補気補陰作用の<麦味参>をお使いいただきました。
その後来られなかったのですが、昨日1年ぶりに来店され、昨年のが良く効いたので今年もほしいと求めてこられました。年に一度のお客様ですが、覚えていただいていることはとても嬉しいものです。
潰瘍性大腸炎
38歳の主婦Wさんは、潰瘍性大腸炎のため20歳代から時々血便や下痢があり、それに伴って貧血もひどく立ちくらみなどがありました。また体重も少なく体力も低下気味でした。
そこでまずは出血を止め、貧血を改善することから考え、<婦宝当帰膠>や<ウコギ含有健康食品D>をお使いいただきました。また、小康状態を保っているときは健脾薬や、補気補血薬などに変更し、2年以上継続されています。
昔からステロイドは使わないと決めておられ、漢方薬だけお使いですが順調に経過しています。クローン病や潰瘍性大腸炎で症状が強く下痢や痛みなどがひどい方の場合も漢方薬が症状改善に有効ですが、Wさんの場合は比較的症状が軽いケースです。
肩のこりと首のつまり
雨の前後に、肩がこる、後頭部が詰まったようになり、息苦しく重くなる方がおられます。特にムチ打ちを経験した方にはよくあることです。
西洋医学では矯正、牽引などが行われますが、漢方薬も軽い症状には良く効きます。
36歳の女性Kさん、雨が降った後はいつも肩や首が詰まってユーウツになるとの訴えでした。肩こりには<葛根湯>とばかり、まずは使っていただいたところ、15分ほどして効果が現れ、首の後ろにあった何かがすっきり消えて楽になったと驚かれました。
漢方薬Kは、『熱や凝りを発散させる』という作用があり、効くときはほぼ即効性で効くものです。昔から<葛根湯医者>という言葉がありますが、馬鹿にはできません。とても優れた漢方薬です。
赤ちゃんには母乳だけでよい?
先日、赤ちゃんの乳児湿疹でご相談にこられた方が、出産時に産婦人科医から『7ヶ月までは母乳だけで育て、お茶やお白湯などは一切あげないほうが良い』といわれて実行しているとのことでした。私も初めて聞いた話で驚いたのですが、反論する根拠もなく、常識では考えられないですねとお答えしておきました。
そして、以前より『ひよこの会=当店で行っている子供の発達相談の集い』でご指導いただいています小児科医に問い合わせたところ、そんな極端なことはおかしいとの判断でした。これから暑くなる時期、水分を充分に補給してあげないといけないのですが、母乳だけで賄うのは無理があります。
医師の言葉は患者にストレートに入っていきますので、注意してほしいものだとつくづく思いました。