治りにくい咳

風邪の後に咳だけ残ることはよくありますが、風邪に関係なく咳がいつまでも続いて治らないというケースが最近多く見られます。

59歳の女性Oさん、以前に比べ最近咳が治りにくくなったと相談に来られました。状況をお聞きすると、痰はなく乾燥の咳で、朝方は楽なのに昼から夕方にかけて酷くなり、咽の痛みはないが乾燥感があるとのことでした。年齢的にも身体の<津液>が失われて乾燥しやすい体質<陰虚>になると考え、乾燥咳の代表処方の<麦門冬湯>にあわせて<養陰清肺湯>をお使いいただきました。

その後1週間ほどで咳はほぼ改善しましたが、薬がなくなると再び咳が出るようですので、しばらく継続していただくことにしました。このような咳には漢方薬はほぼ即効性があります。

とまらない咳

風邪のあとに咳が残るケースは多く、それがこじれてくると喘息のような症状になることがあります。このような場合は<蘇子降気湯>や<清肺湯>で短期間で改善します。

しかし風邪でもないのに咳が出て、検査を受けても問題ないという咳には<陰虚>が原因の咳がよくあります。

62歳のFさん、1ヶ月前から時々咳き込み、咽がイガイガで、何をしても改善しないとのこと。そこで乾燥をとり、咽を潤す<麦門冬湯>を使っていただきましたが半月服用しても改善しないので再考し<養陰清肺湯>を併用しました。その後2週間で改善傾向が見られ、現在も続けていただいています。

<養陰清肺湯>は高齢者や、寝る時に咳き込むなどの<陰虚体質=身体の潤いが不足傾向にある方>に用いるととてもよく効くものです。

声が出にくい!

喘息や気管支炎ではないのに声が出にくいという相談は時々あります。当然耳鼻科や内科で診察を受け、ポリープなどの異常がない方です。

その原因のひとつは、気滞(ストレスなどで気分が滞っている)によって、咽の緊張があり、咽に何か異物があるような感じがするという方です。もうひとつは、身体の疲労などで声を出すに必要な(充分な)空気が吸えず、且つ肺の力が弱い場合です。

38歳の男性Kさん、しゃべるときに咽に力を入れないと声が出にくいとの相談を受けました。特に午後からや、疲れたときにひどくなるとのこと。

そこで、肺と腎の力が低下していると考え、<八仙丸>をお使いいただきました。3ヶ月間続けていただき、咳や痰は少なくなり、少し楽にはなりましたが、声の出にくさは改善しませんでした。

再度問診を取り直し、今度は虚弱に使う<双料参茸丸>に変更したところ、3日目から声が楽になり始めました。同じ肺腎を補う薬ですが、この漢方薬には<冬虫夏草>が含まれ、喘息や気管支のトラブルには適しているもので、Kさんもしばらく続けられればすっかり改善すると思われます。

喘息が改善しました

喘息でお悩みの方はたくさんおられます。特に夜間に発作を起こし、病院に走られる場合は大変ですね。

遠方からお問い合わせをいただきました26歳のKさん、子供の時から喘息で良いとき悪いときを繰り返しておられました。最近は季節の変わり目に悪化し、そのたびテオドールなどの気管支拡張剤をつかっておられましたが、その副作用でドキドキするため使いたくないと思い漢方薬を探しておられました。

身体は冷え、乾燥咳の傾向で、夜間の発作が頻繁に生じるとのこと。そこでゴウカイや冬虫夏草の含まれて、虚労に使う<双料参茸丸>と<麦門冬湯>をお使いいただきました。

そして3日間使われた後お電話をいただき、驚くほど効いて発作も収まり、吸入を減らしても大丈夫な状態まで改善、さらに息が吸いにくかったのが楽になったと喜びの報告をいただきました。

体質により喘息の漢方薬も異なりますが、短期間で効果を発揮する<双料参茸丸>に感謝しました。

長引く空咳

風邪の後などの咳は取れにくいもので、長引くとなかなか治癒せず、喘息様になる方もあります。これに対し漢方薬は比較的得意とする分野でもありますが、体質と関連している場合は簡単に改善しないケースもあります。

34歳女性Kさん、会社で暖房機が入った日から咽の痛み、鼻水、発熱などの風邪症状が出始めました。その後5日ほどで熱や鼻水は治まったのですが咳だけが残り、相談に来られました。

咳の特徴は空咳(乾燥咳)でしたので、<養陰清肺湯>をお使いいただいたところ楽になりました。しかし、飲んだ後1時間程度は調子が良いのですが、その後は再び不調で、繰り返し飲んでもらっていても完治する様子が見られませんでした。

2週間経過後、あまりに長引くので、今度は煎じ薬の<杏蘇散>を使っていただきました。すると、2服ですっかり咳がとまり、その夜は咳き込むことなく良く寝られたとのことでした。もう少し早くこの処方を思いつけば、Kさんも咳で苦しむことがなかったことでしょう。

Kさんは陰虚体質で乾燥傾向があるため、肺系に潤いを保ち咳を軽減する<養陰清肺湯>を使ったのですが、秋の冷えと乾燥による肺系への影響を改善する<杏蘇散>のほうが適していたようです。

薬が合うときは1~2服で治ることを実感しました!

咳払い

痰が絡んでもいないのに、なんとなく咳払いをする方がよくおられます。

ご本人は無意識のうちにしているのでしょうが、周囲は気になるものです。それが酷くなると「カーッ!」という大きいな音で、痰を取ろうとされるのですが、実際に痰は出てこず、咽にへばりついているようです?   と言うのも、実際に痰があるのかどうかが明らかでないのです。

58歳Nさん、上記のように、いつも咽に痰がたまったようで息苦しく、『ガーッ!』と大きな音で痰を取ろうとされます。しかしなかなか取れず、相談にこられました。

最初は痰がねばってとれにくいのかと考え<麦門冬湯>を中信に、痰の粘りをなくして痰が動きやすいようにと考えました。しかしこれでは改善せず、今度は精神的な要素があるのかと考え、<抑肝散>を使ってもらうも、改善の兆しなく、その他柴胡剤や疏肝剤をつかうも改善せず、その後中断してしまいました。

経過からみるとストレスが原因で始まったものですが、自律神経にかかわるものは簡単には改善しないケースも多々あります。

季節の変わり目の咳

季節の変わり目のトラブルは様々ありますが、そのひとつに喘息や咳があります。

空気が乾燥するためと、陽気が昇って身体にも熱がこもり上衝するために、夜間の咳き込みが生じやすいようです。

20歳の女性Sさん、この2年間、春と秋の季節の変わり目に咳が出て、布団に入ると酷くなり寝られないとの相談でした。

息を吐くのは大丈夫だが、吸い込むのが苦しく咳を伴うとのことです。病院の鎮咳去痰剤を飲むと、朝方に手が痙攣するので使いたくないため、漢方だけで治したいとのこと。
タイプは血虚に腎虚を兼ねる方で、滋陰清熱の<滋陰降火湯>1週間使っていだきました。この薬は身体に潤いを持たせ、のぼせ(上衝)をとり、痰をとり、咳を鎮めるというものです。

結果、1週間ですっかり治ったのですが、その後漢方薬を中止していて再び痰が出てきたので、さらに1週間継続することにしました。咳のトラブルは短期間で改善するものが多いようです。

こじれた咳と痰

風邪のあとに咳や痰が残り、ひどい場合は喘息のようになり、長引くことがあります。

このような症状に、西洋医学では鎮咳剤や去痰剤が使われますが、それ以上に漢方がよく効きます。それも早い時期なら1週間以内に改善しますが、こじれてくると1ヶ月程度かかります。今回、大人と子供で同じような症例がありましたので紹介します。

48歳男性会社員、昨年から咳や痰が続いていましたが、1月から喘息のようにゼイゼイ言い出したので身内の方が相談に来られました。病院ではお決まりの薬が出ていたのですが、一向に改善せず、ひどくなって来ているとのことでした。検査では特に異常がなく、単に気管支炎との診断でした。

そこで、咳をとり痰をとる<麻杏甘石湯>と<蘇子降気湯>を2週間使っていただきましたところ、咳も痰も減少し、以前のように咳き込んで嘔吐することもなく、楽になりました。

また、水分を控えてもらい、痰を減らそうと指示しておいたのですが、効を奏して一時減少していた味覚も回復してきました。痰の多い方は間違いなく水分摂取過多なのです。

そして、あと少し粘る痰をとりたいとのことでしたので<竹葉石膏湯>をお使いいただきました。通して1ヶ月ですっかり改善するものと思われます。

咳の生薬と漢方

お正月明けは咳の相談が増えてきました。少しこじれているようで、なかなか抜けない方や、悪化して痰がひどくなってきた方など様々です。

台湾から来られている留学生の女性、3週間ほど咳が続いてひどくなってきたので漢方を欲しいと来店。台湾ではこんなとき杏仁のおかゆと枇杷膏を使うといわれましたが、杏仁が含まれる漢方薬のほうが早く改善するので、
<麻杏甘石湯>を1週間使っていただくことにしました。

<杏仁>はアンズの種のことで、止咳作用があり、胸中の痰をとりますので咳には良く用います。使い方は煎じても、おかゆにしてもいいのですが、有毒ですので多くは使いません。

また、枇杷の葉も咳や痰をとる作用があり、台湾ではエキスが商品化されていますが、日本では煎じて使います。

台湾や中国では、日常からこれらの生薬が気軽に使われ、悪くならないうちに自宅で対処さているのですが、日本では民間薬・生薬の活用頻度が少なくなってきています。本来は病気が悪化しないように、早く対処することが最も良い治療法なのです。

ながびく咳

風邪の後に咳だけ残ることがあります。4~5日で消えるケースが多いですが、こじらせてながびき、病院に行っても治らないので相談にこられます。

4才の女の子、昨年秋に咳が出始め、どんどん酷くなって咳と共に嘔吐することが多くなってきました。病院では咳止めの薬をもらうが改善の兆しなく、6月に来店されました。子供の舌を見ると、白膩苔で「湿困脾胃」、胃腸に水分が過多状態のように思われました。

そこで上気を抑え、咳を収める【蘇子降気湯】を使っていただきました。3週間ほどで咳はかなり減り、嘔吐は全くなくなり、1ヶ月で咳はほとんど消えました。あわせて、水の取りすぎをしない、冷たいものを控えるように注意していただきました。

咳も風邪とは関係なく、体質から来ているものが結構あります。漢方独特の見方で判断することで、半年以上苦しまれた子供さんが1ヶ月でほとんど改善し、喜んでいただきました。