咳払い

痰が絡んでもいないのに、なんとなく咳払いをする方がよくおられます。

ご本人は無意識のうちにしているのでしょうが、周囲は気になるものです。それが酷くなると「カーッ!」という大きいな音で、痰を取ろうとされるのですが、実際に痰は出てこず、咽にへばりついているようです?   と言うのも、実際に痰があるのかどうかが明らかでないのです。

58歳Nさん、上記のように、いつも咽に痰がたまったようで息苦しく、『ガーッ!』と大きな音で痰を取ろうとされます。しかしなかなか取れず、相談にこられました。

最初は痰がねばってとれにくいのかと考え<麦門冬湯>を中信に、痰の粘りをなくして痰が動きやすいようにと考えました。しかしこれでは改善せず、今度は精神的な要素があるのかと考え、<抑肝散>を使ってもらうも、改善の兆しなく、その他柴胡剤や疏肝剤をつかうも改善せず、その後中断してしまいました。

経過からみるとストレスが原因で始まったものですが、自律神経にかかわるものは簡単には改善しないケースも多々あります。

季節の変わり目の咳

季節の変わり目のトラブルは様々ありますが、そのひとつに喘息や咳があります。

空気が乾燥するためと、陽気が昇って身体にも熱がこもり上衝するために、夜間の咳き込みが生じやすいようです。

20歳の女性Sさん、この2年間、春と秋の季節の変わり目に咳が出て、布団に入ると酷くなり寝られないとの相談でした。

息を吐くのは大丈夫だが、吸い込むのが苦しく咳を伴うとのことです。病院の鎮咳去痰剤を飲むと、朝方に手が痙攣するので使いたくないため、漢方だけで治したいとのこと。
タイプは血虚に腎虚を兼ねる方で、滋陰清熱の<滋陰降火湯>1週間使っていだきました。この薬は身体に潤いを持たせ、のぼせ(上衝)をとり、痰をとり、咳を鎮めるというものです。

結果、1週間ですっかり治ったのですが、その後漢方薬を中止していて再び痰が出てきたので、さらに1週間継続することにしました。咳のトラブルは短期間で改善するものが多いようです。

こじれた咳と痰

風邪のあとに咳や痰が残り、ひどい場合は喘息のようになり、長引くことがあります。

このような症状に、西洋医学では鎮咳剤や去痰剤が使われますが、それ以上に漢方がよく効きます。それも早い時期なら1週間以内に改善しますが、こじれてくると1ヶ月程度かかります。今回、大人と子供で同じような症例がありましたので紹介します。

48歳男性会社員、昨年から咳や痰が続いていましたが、1月から喘息のようにゼイゼイ言い出したので身内の方が相談に来られました。病院ではお決まりの薬が出ていたのですが、一向に改善せず、ひどくなって来ているとのことでした。検査では特に異常がなく、単に気管支炎との診断でした。

そこで、咳をとり痰をとる<麻杏甘石湯>と<蘇子降気湯>を2週間使っていただきましたところ、咳も痰も減少し、以前のように咳き込んで嘔吐することもなく、楽になりました。

また、水分を控えてもらい、痰を減らそうと指示しておいたのですが、効を奏して一時減少していた味覚も回復してきました。痰の多い方は間違いなく水分摂取過多なのです。

そして、あと少し粘る痰をとりたいとのことでしたので<竹葉石膏湯>をお使いいただきました。通して1ヶ月ですっかり改善するものと思われます。

咳の生薬と漢方

お正月明けは咳の相談が増えてきました。少しこじれているようで、なかなか抜けない方や、悪化して痰がひどくなってきた方など様々です。

台湾から来られている留学生の女性、3週間ほど咳が続いてひどくなってきたので漢方を欲しいと来店。台湾ではこんなとき杏仁のおかゆと枇杷膏を使うといわれましたが、杏仁が含まれる漢方薬のほうが早く改善するので、
<麻杏甘石湯>を1週間使っていただくことにしました。

<杏仁>はアンズの種のことで、止咳作用があり、胸中の痰をとりますので咳には良く用います。使い方は煎じても、おかゆにしてもいいのですが、有毒ですので多くは使いません。

また、枇杷の葉も咳や痰をとる作用があり、台湾ではエキスが商品化されていますが、日本では煎じて使います。

台湾や中国では、日常からこれらの生薬が気軽に使われ、悪くならないうちに自宅で対処さているのですが、日本では民間薬・生薬の活用頻度が少なくなってきています。本来は病気が悪化しないように、早く対処することが最も良い治療法なのです。

ながびく咳

風邪の後に咳だけ残ることがあります。4~5日で消えるケースが多いですが、こじらせてながびき、病院に行っても治らないので相談にこられます。

4才の女の子、昨年秋に咳が出始め、どんどん酷くなって咳と共に嘔吐することが多くなってきました。病院では咳止めの薬をもらうが改善の兆しなく、6月に来店されました。子供の舌を見ると、白膩苔で「湿困脾胃」、胃腸に水分が過多状態のように思われました。

そこで上気を抑え、咳を収める【蘇子降気湯】を使っていただきました。3週間ほどで咳はかなり減り、嘔吐は全くなくなり、1ヶ月で咳はほとんど消えました。あわせて、水の取りすぎをしない、冷たいものを控えるように注意していただきました。

咳も風邪とは関係なく、体質から来ているものが結構あります。漢方独特の見方で判断することで、半年以上苦しまれた子供さんが1ヶ月でほとんど改善し、喜んでいただきました。