民間薬・メグスリノキ

日本の民間薬はたくさんありますが、その中でもよく問合せを受けるのが<メグスリノキ>です。かすみ目や疲れ目などにお茶として使っていただいていますが、最近は白内障や網膜症などの予防効果も言われています。

この植物はカエデ属カエデ科の落葉広葉樹で、東北地方に多いと聞きます。この樹皮に含まれる成分のロドデンドロールが、肝機能を高め、解毒作用があると言われいます。漢方では肝臓と目は強く関係していると捉えますので、メグスリノキも肝臓に働いて目に作用するということがわかります。

当店で一番長くお使いになっている58歳の男性Kさんは、今から13年前に野球をしていてボールが目に当たり、病院では網膜剥離寸前の状態との診断を受けました。その後<メグスリノキ>と<杞菊地黄丸>を13年間根気よく続けられ、現在も全く異常なく過ごされています。

メグスリノキが効いたのか、漢方薬Kが効いたのか、あるいはKさん自身の治癒力によるものなのかはわかりませんが、結果として失明することなく元気に過ごされていることは本当にうれしいものです。民間薬は作用は穏やかでお茶として使われますが、長期に続けることによって効果を発揮するものもたくさんあります。先人の知恵を活用したいものです。

不定愁訴と漢方薬

様々な症状が次々と現れる不定愁訴は更年期の症状として知られますが、必ずしも更年期だけでなくストレスを受けやすい女性にもよく見られます。

以前からお越しの32歳のAさん、最初は全身倦怠感で相談に来られ、貧血傾向もあったので、補気補血の<婦宝当帰膠>をお使いいただきました。その後、頭痛、肩こり、背中の痛み、などを訴えられ、<桂枝茯苓丸>などをお使いいただきました。

そして今回は、クーラーで冷え、夕方になると脇痛が出るとのことで、肩こりにも使う、疎肝作用の<逍遥丸>をお使いいただきました。1週間もしないうちに楽になり、飲んでいると痛みは取れるとのことでした。ストレスを受けやすい方に良く見られ、柴胡剤が適応する症状です。

病院へ行くほどの状態でもないこのような変化する症状は漢方が得意とする分野で、Aさんにはうまく活用していただいています。

梅雨時期のめまい

お腹がゴロゴロ鳴る、微熱が取れないなどで以前から漢方薬をお使いいただいていた69歳のKさん、7月になって急にめまいが発症、外に出られないので電話で相談をいただきました。

症状は、下向いたり横になるなど、姿勢を変えるとめまいがするとのこと。Kさんは昨年5月~6月にも同様のめまいがあり、その時は<沢瀉湯>や<苓桂朮甘湯>などをお使いいただきました。いわゆる水毒が原因のめまいです。梅雨時期は湿度が高く、体内でも水分が滞ってむくみやめまいを生じやすいものです。

Kさんは幸いにも昨年の薬が手元に少し残っているようでしたので、早速服用していただきました。めまいを起こす方は、自分に合った薬を持っておかれると早く対処でき、改善も早くなりますので、常備薬を持たれることをお勧めしています。

ヤマモモが実りました

当店の小庭には、目を楽しませるだけでなく、味わうことが出来る木々を植えています。

そしてこの時期、ヤマモモがたくさん実りました。真っ赤な美しい実で、ほのかに松脂の香りがするという不思議な味、でも甘酸っぱくてとてもおいしいものです。スタッフだけでなくお客様にも召し上がっていただきました。

ヤマモモの名前の由来にはいくつかの説がありますが、漢方の揚梅から変化した説が有力なようです。ヤマモモの樹皮を乾燥したものを揚梅皮(ようばいひ)といい、収斂(しゅうれん)、利尿、止瀉作用があり、下痢や胃薬の民間薬として用いられてきました。また打撲や腫れ物にも使い、商品としては打ち身や神経痛などのシップ薬として当店も取り扱っている<糾励根>に使われています。

のぼせ症状と体質

以前より慢性鼻炎でお越しいただいているMさん、最近のぼせの症状が気になるとのことで相談を受けました。

体格は細身で、比較的寒がり、舌診ではやや紅舌で薄い苔があり、疲れやすいとのことでしたので<陰虚>によるほてりと捉え、気軽に<瀉火補腎丸>をお勧めしました。

そして1ヵ月後来店され、結果をお聞きしたところ、全く変化はないとのことでした。これは間違ったかと思い今度は詳しくお聞きしたところ、会社でのストレスがあり、また以前から慢性前立腺炎が時々発症し、尿が出にくくなるときがあると初めて聞きました。そこで体質判断が間違っていることに気づき、舌診から判断して、今回は<肝胆湿熱>による赤ら顔と前立腺炎とわかり<竜胆瀉肝湯>をお勧めしました。

初めての方の場合は、詳しくお聞きして体質判断をするのですが、いつも来られている方の場合は先入観があり、状況が変わっていることを聞かずに対応してしまったようです。環境や時間とともに体質が変わるので、その都度確認する必要があるということを忘れていました。反省する機会をくれたMさん、ありがとうございます。

突発性難聴の改善

難病と言われるこの疾患は、漢方ではその多くがストレスに関連していると考えます。西洋医学ではまずはステロイド治療がなされますが、これでうまく改善しないケースもあります。

28歳の女性Sさんは仕事がハードで睡眠時間も少なく、心身疲労が原因と思われる突発性難聴を発症しました。早速に病院でステロイド治療を受けられるとともに、以前から漢方に興味があったので、早期に相談に来られました。

詳しくお聞きすると、最初に回転性めまいが起き、それが治まった時には難聴になっていて、ボーという耳鳴りや耳閉感もあるとのこと。体質は、冷え症で、少し水太り傾向があり、神経も過敏なタイプの方でしたので<当帰芍薬散>と<温胆湯>をお使いいただきました。

1週間後、耳閉感は消え、身体は温かくなり調子よくなったのですが、難聴は変わらずでした。そこで今回は<柴胡剤>を加えて服用いただきました。そして2週間経過後、聴力は改善しはじめ、耳鳴りも耳閉感もなくなりました。

短期間でこれだけ改善し、私もSさんもとても嬉しい思いでした。今回早期に改善したのは、発症から1週間後に来られたことがよかったのかと思われます。とにかく早く対応すること、これがポイントです!

光がまぶしい!

特に病気でもないのに光がまぶしいと言う方の相談が時々あります。

西洋医学では屈折異常や神経過敏などと考えられるようですが、決め手になる治療法はないようです。

52歳の男性、Fさんは8年前から光をまぶしく感じるときがあり、最近は続けてまぶしいため相談にこられました。詳しくお聞きすると、ストレスを受けやすいタイプで、イライラがあり、寝つきが悪く、中途覚醒し、熟睡できない、明るいと頭痛がするといってサングラスを常時かけておられました。また、『音に対しても過敏で驚きやすいですか?』とお尋ねすると、そのとおりですとのこと。

そこで、過去にも事例のあることで、中医学での<調和胆胃・安神>の<温胆湯>をお使いいただきました。その後1ヶ月余りで光による頭痛がしなくなり、まぶしさも少しだけ改善しました。8年間の症状だけに時間はかかると思いますが、ひとまずは安心していただきました。

不安症や神経症状が強いときは<柴胡加竜骨牡蠣湯>などを使うこともありますが、今回は<温胆湯>だけで改善傾向がみられました。このような原因不明の症状にも漢方が適することを知っていただいて良かったと思います。

性機能障害

昨日の続きですが、男性の性機能障害には、<性欲減退>、<性交障害>、<性嫌悪症>などがあり、これらは単に身体の問題でなく、心理面や社会性に係わることが多いようです。いわゆる環境ホルモンによって男性が女性化したり、テストステロンが減少傾向にあるとか、仕事のストレスが多いなど様々な要因があります。

その中でも特に多いのが<メンタルな原因>によるものとのことです。つまり、ちょっとしたきっかけや言葉によってそれがトラウマになってEDになるというものです。

先月の中国研修の時に曹開鏞先生は、新婚時の夫婦生活が原因となって、その後性交障害が続いていた患者に対し、カウンセリングによって原因を聞きだし、夫婦仲を改善させるとともに漢方薬を使って解決した事例を紹介されました。

日本ではそのようなカウンセリングを出来る場所は少ないと思われますので、さらに研鑽を積み対応していきたいと考えています。

男性不妊の研修会

先の日曜日は<男科:だんか>の研修会に行ってきました。

中国で<男科>とは男性不妊や前立腺疾患など、男性特有の疾患分野をいいます。このうち前立腺肥大や排尿障害の相談はよく受けますし、適応する漢方薬もいくつもあります。一方、男性不妊の原因である性機能障害や精子機能障害などは、困っている方がたくさんあるのですが、薬局で相談しようと思わず、あきらめている方も多いのではと思われます。

日本性機能学会の1987年のデータでED(勃起不全)の患者は980万人となっていますが、その後増え続けていると思われます。男性は酒席の場では性に関する話をよくしますが、まじめな場ではなかなか話せないものです。

でも先月の中国での男科研修では、70歳代の男性がEDの治療でタイから来ていたり、若い男性が奥様に連れられて性機能に関する診察に来ていました。

日本もこれから男性の意識が変わるものと思います。

原因不明の痛みが改善!

病院の確定診断がつかない疾患でも、漢方では症状や体質によって判断し、改善する例もあります。

60歳のSさん、2年前からあちこちが痛み、こわばりが生じるので病院で検査を受けられましたが、<線維筋痛症>の疑いがあると言われたものの、鎮痛剤しか治療方法がなく、相談にこられました。

詳しくお聞きすると、湿気が多い日や暖かい日に痛みが強くなるとのこと。また、熱がこもる感じがするが汗は出ないようです。そこで漢方薬は発汗して体内の水毒を改善する<麻杏苡甘湯>をお使いいただきました。その後2週間して再来され、痛みが半減し、またのぼせは全くなくなったとの報告を受けました。こんなに早い効き目が出るとは思われなかったので私たちも驚きでした。

このような原因不明の痛みや発熱などに対しては、症状と体質から決めていく漢方の考え方が適応するケースが多々あります。