耳鳴り、耳閉感、その後

以前40歳の女性のストレスによる耳鳴り・耳閉感の症例を書きましたが
その後、化痰安神作用の<温胆湯>や、補気血・安神作用の<帰脾湯>などもお使いいただき、1ヵ月半経過した頃にすっかり改善し楽になったとのことでした。
さらにこれとともに鼻炎や鼻水、目の下の痙攣や聴力低下も改善し、驚かれました。漢方はひとつの症状だけでなく、関連して発生している様々な症状までが治っていきます。

結局Tさんの場合はストレスが引き金となり、気滞が水分や血流を悪化して生じたものと思われます。このような症状は40代~50代の女性によく見られます。

イチジクを収穫しました

趣味で少しずつ育てている当店の薬草園で、イチジクが収穫できました。今年初物ですが今までになく大きく、中身もしっかり熟していて大変甘かったです。

イチジクが薬草? と思われるでしょうが、イチジクの生薬名は<無花果>といい、漢方では<清熱解毒>や<潤腸>の作用があり、咽の痛みや声がれ、便秘などに用います。乾燥した実を煎じる場合と、実をそのままで食べる場合があります。

イチジクは栽培された果実としては世界で一番古い種目であり、歴史上の果実なのです。また、日本には江戸時代に伝わってきたと言われます。イチジクの葉も神経痛などの入浴剤に用いられます。

もちろん、それを目的に作っているのでなく当然食用です。無精者にとって、手入れなしでも出来るのがうれしいですね。

 

子供の水いぼには

プールが始まるこの時期、子供の水いぼの相談が増えます。水いぼがあるとプールに入れないので早く何とかして欲しいと言われます。

水いぼはウイルス性で次々と増えていきますが、病院で取ってもらってもまた出てきます。それより子供にはピンセットで取られる時の痛さは我慢できるものでないようです。そこで漢方の出番です。

先日も2歳の男の子の相談があり、病院で<ヨクイニン>をもらい2ヶ月飲んだが治らないとのこと。もちろんピンセットで取ってもらったが次々とでるので、プールがはじまるまでに改善できないかとの相談を受けました。

そこでヨクイニンで効かない時に使う漢方薬と、板藍根ハーブティを使っていただいたところ『1ヶ月余りですっかり消えて今年のプールに間に合いました』とお礼のメールをいただきました。子供さんも痛い思いをするより、少し苦い漢方を飲む方が良かったようです。

まもなく祇園祭です

7月に入ると京都市内では<祇園祭>の様々な行事が始まります。

当店のある四条烏丸界隈では<コンチキチン>の音色に代表される、お囃子を練習する音も聞こえて、雰囲気を盛り上げてくれます。最近は動画サイトが使いやすくなり、お囃子練習風景もアップされていましたので紹介します。

http://jp.youtube.com/watch?v=-dZKaje69P0

この祭りは<鉾町>や多くの市民、企業の寄付によって成り立っています。そして寄付のお礼にと毎年、八坂神社や祇園祭協賛会から色紙をいただきます。今年は<鶏鉾>の絵で、京都精華大学の渡辺信喜先生の献筆です。当店でもこの時期、何枚かを店内に飾り雰囲気を楽しんでします。

民間薬・メグスリノキ

日本の民間薬はたくさんありますが、その中でもよく問合せを受けるのが<メグスリノキ>です。かすみ目や疲れ目などにお茶として使っていただいていますが、最近は白内障や網膜症などの予防効果も言われています。

この植物はカエデ属カエデ科の落葉広葉樹で、東北地方に多いと聞きます。この樹皮に含まれる成分のロドデンドロールが、肝機能を高め、解毒作用があると言われいます。漢方では肝臓と目は強く関係していると捉えますので、メグスリノキも肝臓に働いて目に作用するということがわかります。

当店で一番長くお使いになっている58歳の男性Kさんは、今から13年前に野球をしていてボールが目に当たり、病院では網膜剥離寸前の状態との診断を受けました。その後<メグスリノキ>と<杞菊地黄丸>を13年間根気よく続けられ、現在も全く異常なく過ごされています。

メグスリノキが効いたのか、漢方薬Kが効いたのか、あるいはKさん自身の治癒力によるものなのかはわかりませんが、結果として失明することなく元気に過ごされていることは本当にうれしいものです。民間薬は作用は穏やかでお茶として使われますが、長期に続けることによって効果を発揮するものもたくさんあります。先人の知恵を活用したいものです。

不定愁訴と漢方薬

様々な症状が次々と現れる不定愁訴は更年期の症状として知られますが、必ずしも更年期だけでなくストレスを受けやすい女性にもよく見られます。

以前からお越しの32歳のAさん、最初は全身倦怠感で相談に来られ、貧血傾向もあったので、補気補血の<婦宝当帰膠>をお使いいただきました。その後、頭痛、肩こり、背中の痛み、などを訴えられ、<桂枝茯苓丸>などをお使いいただきました。

そして今回は、クーラーで冷え、夕方になると脇痛が出るとのことで、肩こりにも使う、疎肝作用の<逍遥丸>をお使いいただきました。1週間もしないうちに楽になり、飲んでいると痛みは取れるとのことでした。ストレスを受けやすい方に良く見られ、柴胡剤が適応する症状です。

病院へ行くほどの状態でもないこのような変化する症状は漢方が得意とする分野で、Aさんにはうまく活用していただいています。

梅雨時期のめまい

お腹がゴロゴロ鳴る、微熱が取れないなどで以前から漢方薬をお使いいただいていた69歳のKさん、7月になって急にめまいが発症、外に出られないので電話で相談をいただきました。

症状は、下向いたり横になるなど、姿勢を変えるとめまいがするとのこと。Kさんは昨年5月~6月にも同様のめまいがあり、その時は<沢瀉湯>や<苓桂朮甘湯>などをお使いいただきました。いわゆる水毒が原因のめまいです。梅雨時期は湿度が高く、体内でも水分が滞ってむくみやめまいを生じやすいものです。

Kさんは幸いにも昨年の薬が手元に少し残っているようでしたので、早速服用していただきました。めまいを起こす方は、自分に合った薬を持っておかれると早く対処でき、改善も早くなりますので、常備薬を持たれることをお勧めしています。

ヤマモモが実りました

当店の小庭には、目を楽しませるだけでなく、味わうことが出来る木々を植えています。

そしてこの時期、ヤマモモがたくさん実りました。真っ赤な美しい実で、ほのかに松脂の香りがするという不思議な味、でも甘酸っぱくてとてもおいしいものです。スタッフだけでなくお客様にも召し上がっていただきました。

ヤマモモの名前の由来にはいくつかの説がありますが、漢方の揚梅から変化した説が有力なようです。ヤマモモの樹皮を乾燥したものを揚梅皮(ようばいひ)といい、収斂(しゅうれん)、利尿、止瀉作用があり、下痢や胃薬の民間薬として用いられてきました。また打撲や腫れ物にも使い、商品としては打ち身や神経痛などのシップ薬として当店も取り扱っている<糾励根>に使われています。

のぼせ症状と体質

以前より慢性鼻炎でお越しいただいているMさん、最近のぼせの症状が気になるとのことで相談を受けました。

体格は細身で、比較的寒がり、舌診ではやや紅舌で薄い苔があり、疲れやすいとのことでしたので<陰虚>によるほてりと捉え、気軽に<瀉火補腎丸>をお勧めしました。

そして1ヵ月後来店され、結果をお聞きしたところ、全く変化はないとのことでした。これは間違ったかと思い今度は詳しくお聞きしたところ、会社でのストレスがあり、また以前から慢性前立腺炎が時々発症し、尿が出にくくなるときがあると初めて聞きました。そこで体質判断が間違っていることに気づき、舌診から判断して、今回は<肝胆湿熱>による赤ら顔と前立腺炎とわかり<竜胆瀉肝湯>をお勧めしました。

初めての方の場合は、詳しくお聞きして体質判断をするのですが、いつも来られている方の場合は先入観があり、状況が変わっていることを聞かずに対応してしまったようです。環境や時間とともに体質が変わるので、その都度確認する必要があるということを忘れていました。反省する機会をくれたMさん、ありがとうございます。

突発性難聴の改善

難病と言われるこの疾患は、漢方ではその多くがストレスに関連していると考えます。西洋医学ではまずはステロイド治療がなされますが、これでうまく改善しないケースもあります。

28歳の女性Sさんは仕事がハードで睡眠時間も少なく、心身疲労が原因と思われる突発性難聴を発症しました。早速に病院でステロイド治療を受けられるとともに、以前から漢方に興味があったので、早期に相談に来られました。

詳しくお聞きすると、最初に回転性めまいが起き、それが治まった時には難聴になっていて、ボーという耳鳴りや耳閉感もあるとのこと。体質は、冷え症で、少し水太り傾向があり、神経も過敏なタイプの方でしたので<当帰芍薬散>と<温胆湯>をお使いいただきました。

1週間後、耳閉感は消え、身体は温かくなり調子よくなったのですが、難聴は変わらずでした。そこで今回は<柴胡剤>を加えて服用いただきました。そして2週間経過後、聴力は改善しはじめ、耳鳴りも耳閉感もなくなりました。

短期間でこれだけ改善し、私もSさんもとても嬉しい思いでした。今回早期に改善したのは、発症から1週間後に来られたことがよかったのかと思われます。とにかく早く対応すること、これがポイントです!