民間薬と伝承薬

民間薬は、古くから民間で使われてきた薬草を言い、お茶として手軽に使われつつ、且つ健康維持に大切な役割を果たしてきました。

店頭ではよく 『○○草はある?』 などと聞いてくる方がおられます。昨日も「カラスノマクラ」は扱っている? とのこと。初めて聞く名称ですので調べてみると「カラスウリ」の実で、秋に赤い果実ができ、それのことらしいです。キカラスウリの根や種は漢方でも使うのですがマクラというのは初めて聞きました。

各地に伝わる薬草や植物の名称は地域特有のものが多く、正規の植物名でないとほとんどわからないのです。これらが民間薬といわれるものです。

一方、伝承薬は生薬を組み合わせたいわゆる薬で、江戸時代にはたくさんの種類があり、庶民の健康維持の中心となっていましたが、その殆どが西洋薬に追われ、また製剤許可が厳しくなって製造できなくなったものもあります。現在残っていてよく知られるものは、龍角散や養命酒、六神丸、奇応丸などがあります。

また漢方薬は、いくつかの生薬を組み合わせたものですが、その処方が古典に基づくものやそれを変化させたもので、最も歴史と臨床経験があります。

一般には、これらをすべてを<漢方薬>と言われることが多いのですが、正しくは以上のように異なるものです。

最近ブームのハーブとかサプリメントというと、自然からとれたものというイメージがあるのですが、化学薬品であったり、特定成分を抽出したものであったりして、天然物とはかけ離れたものが多くあり、今後健康トラブルが出現するのではと危惧されます。

そして昔ながらの民間薬や伝承薬が見直される時期がくるのではと思います。

薬の効能書きと実際

新しい医薬品は厚生省の許可が必要で、漢方でもなかなか許可がとれず、過去の処方などを元にして申請し、取得されるようです。

今回、新しい、そしてすばらしい処方の製品が出ましたので紹介します。

構成生薬は

紅参=オタネニンジンを湯通ししたもので、効能は補気、滋陰

鹿茸=マンシュウ鹿の幼角で、補腎、補陽、強筋骨作用

菟糸子=ネナシカズラの種で、補腎、固精、強壮、明目作用

枸杞子=クコの実で、補腎、明目作用

というものです。

この薬の効能書きには<滋養強壮、虚弱体質、病中病後、肉体疲労、冷え症>などとなっています。多くの補腎効果の漢方薬は、同様の効能書きが書かれていて、何でも滋養強壮剤と思われがちですが、実はそれぞれの働きがあり、使い分けが必要です。

例えば、この<活命散>の場合は、生薬の働きから見ると、

補腎・・精力剤に使える

固精・・夜間頻尿や夜尿症など、漏れるのを防ぐ効果にも

明目・・目のトラブルに使う

補腎陽・・・体を芯から温めるので冷え症にも 

などと、生薬から用途がわかります。滋養強壮剤も正しく使うと効果は抜群です!。

地黄の花が咲きました

昨日に続き、店頭に咲いている花を紹介します。

赤くて質素な感じの花をつけたゴマノハグサ科アカヤジオウという植物で、根を生薬<地黄>として使います。加工方法により、生地黄、乾地黄、熟地黄に別れ、それぞれ作用が異なりますが、主には身体に潤いを与え元気をつける<補腎陰>作用や、血糖降下作用などがあり、漢方薬Rや漢方薬H、漢方薬Sなど多くの処方に含まれます。

当店のイチオシ地黄製剤は『瓊玉膏』です。地黄、人参、麦門冬、地骨皮などが配合された【なめ薬】はなめた瞬間、これは効く!という感があります。

女性の冷えや肌の乾燥、疲労倦と、男性を強くする漢方薬として実績がある優れた滋養強壮薬です。

甘茶と花祭り

4月8日は花まつりの日で、正式には潅仏会(かんぶつえ)といって、お釈迦様の生誕を祝う行事です。

生誕の時に甘露の雨が降ったという言い伝えがあることから、花で飾られた簡単なお堂(花御堂)の中におかれたお釈迦様の像に甘茶をかける風習があります。

毎年この時期になると、お寺さんが甘茶を求めて当店に来られますが、今日は施設の方が来られました。施設におられる方々に振舞うらしく、花まつりも日常の中に生きているのだと思いました。

この甘茶とは、ユキノシタ科のアマチャを乾燥したもので、麦茶に似た色をしていてとても甘くておいしい飲み物です。

子供の時代はお寺さんで日曜学校というのがあって、そこで子供たちが集まり、法話を聞き、お菓子を食べて甘茶を飲むというのが、結構楽しみであったことを思い出しました。

宗教的な意味でなく、昨今子供が集まって遊ぶという機会が少なくなり、こういった行事も一般的でなくなるのではと感じています。

生薬を上手に使う

日本では昔から、<どくだみ(ジュウヤク)>や<ゲンノショウコ>、<めぐすりの木>、<ガイヨウ>などは民間薬として使われています。
また漢方薬としては生薬を合わせて処方された<煎じ薬>が使われてきました。

中国では、歴史の違いもあり、医療機関が少なかったため、生薬を自分で選んで煎じて飲むというのが日常的に行われているようです。中国へ行くとあちこちに<生薬市場>があり、また食品市場の中にも生薬を売る店があります。

そして、日本に住んでおられる中国出身の方は、当店のような専門店に生薬を指定して買いに来られます。例えば、冷えや頻尿の時に<補骨脂>を、咳や口の渇きに<麦門冬>、また汗が多く出るときは<五味子>などです。最近は衛星放送で中国の番組が見られますので、それで得た漢方情報を参考にされているようです。

生薬が日常生活にしっかり入りこんでいるのは、医療不足の歴史によるものと思われますが、『人に頼らずわが身を守ること』が大切なことを教えてくれます。

田七の作用

健康食品の田七人参は、中国雲南省で採れるウコギ科の植物で、その根を漢方薬として昔から使われてきました。最近は健康食品で多用され、飲みやすい顆粒や錠剤になっています。

田七の産地として有名な雲南省の文山県は、以前に訪問しましたので、キレイな景色をご覧下さい。

https://www.kanpou.info/travel/002.html

この田七の作用は<活血=血流を良くする> と、<止血=出血時に血を止めること> の、相反するような作用がある、変わった植物です。その他の効果としては、<肝臓の保護作用>があります。

この止血作用を確認できるようなケースがありましたので紹介します。

38歳女性Yさん、生理周期の排卵期前に毎月出血するとのことで、低温期が始まると同時にこの田七人参>を使っていただきました。不妊症の周期療法もしておられるので、その他の漢方薬と合わせて使っていただきました。

使い始めるとすぐに効果あり、その周期は出血が止まりました。そして暫く続けておられたのですが、年明けと共に仕事が忙しくなり、漢方薬も中断されていたところ、再び不正出血がありました。

漢方では、出血の原因を探し、そうならない様にするのが目標でも、出血しているときはまず止血をするのが基本的な考え方なのです。

サプリメントの乱用

最近はサプリメントブームで、「手軽に必要な栄養素がとれる」とか、「食品からではとれない成分が簡単にとれる」とかの文句で、売上げは伸びる一方のようです。

今日来られた女性は20種類以上のサプリメントを摂っているとか! その理由は、ダイエットのために通常食は1食にし、あとは必要なものをサプリメントで補っているという事です。そのため体重は低値で維持できているが、カロリー不足のため冷えがひどく、冷えのためイライラなどの神経症が出ているようです。

当然、食事によてtカロリーを補充し、サプリメントを減らすように話しておきました。

そして漢方薬は、身体を温め、補血する<婦宝当帰膠>と、リラックスティといわれるハーブティーを使いました。

サプリメントだけで必要な栄養を補えるという誤った理解は、その方だけの問題でなく、メーカーや販売店の問題でもあります。将来は、昔と異なった栄養失調や自律神経失調の人が増えるのでは考えると、恐ろしくなります。

漢方・生薬の愛好家

今日あったことですが・・・お客様の中には生薬を求めてこられる方がおられます。

日本漢方では煎じ薬を作るときは原典処方を守り、時にはそれに生薬を加減する方法をとります。中医学では生薬をそれぞれの作用によって新たに組み合わせていく方法もとります。日本の薬事法では、薬局では決まった処方内容しか作ってはいけないということになっています。

お客様はどこかで漢方を勉強されたようで、決まった処方をベースに、季節の変化や体調の変化に基づき生薬の量を増減されているとのこと。それで調子よくなるようです。ここまで詳しい方は少ないし、また話していても面白いです。

漢方薬は、添付文書やパッケージにかかれた効能・効果・病名以外の目的に使うことは<日常的なこと>なのですが、お客様によってはそのような使い方をすると、「ほんと?大丈夫?」と言われ、不信感を招くこともあります。病名で薬を決めるのでなく、症状と体質で決まるという事を説明しても、信じてもらうことは至難の技です。

そんな方が来られた後に前述のように漢方を活用している方が来られたので、ほっとしてうれしくなりました。

南蛮毛のはなし

昨日のテレビ「あるある大辞典Ⅱ」は、世界あるある最新報告SP として、キレイになれる話があったようです。残念ながら見られなかったのですが、放送後すぐに<南蛮毛・ナンバンゲ>のご注文をたくさんいただきました。

南蛮毛>は、ご存知のとおりトウモロコシの毛(雌花の花柱)を乾燥したもので、昔から民間薬として使われてきました。特に、腎炎の浮腫や妊婦の浮腫に用いられてきました。

テレビでは『むくみをとってスッキリする』ということと思いますので、この場合は1日量10~15gを煎じ、お茶として使います。はと麦茶に混ぜるなどすると、より美味しくいただけます。ぜひお試し下さい。

サージの効果

最近、雑誌かチラシで見られたのか、サージ(サジーともいう)の問合せがあります。内容はサージで代謝を上げてダイエット効果があると聞いたのですが、どれくらい減量できますかというもの。

サージは天然のグミ科の植物の実で、ビタミンやミネラル、アミノ酸などが豊富な食品で、当店でも人気の商品なのです。なぜ人気かというと、ビタミンが豊富で肌が美しくなる、またフラボノイドが多く、スポーツや山登りのときにお勧めなのです。

こういった使い方はするのですが、ダイエット効果は疑問に思っていました。そこで詳しく聞いたところ、この商品を買うときに他のダイエット関連商品を一緒に買わされたとか! 占めてウン十万円らしいです。

サジーの目新しさでダイエット食品を売るというやり方はひどいものですね。これからのボーナスの時期、<売ればよいという商売>にくれぐれもご注意ください。