虚弱体質と多汗症

抵抗力が弱く、風邪を引きやすい、皮膚が弱いなどの体質を<表虚>と言います。

このような方は<衛気=身体表面を守る力>を強めることで、外部からの刺激に対抗する必要があります。このために使われる生薬が<黄耆>です。黄耆は体表や粘膜の元気つけをしてくれます。

体表が弱ると汗がもれて出るという考え方から、多汗には黄耆を使った漢方薬、例えば<衛益顆粒>などがおすすめです。あるいは、他のタイプの多汗症の場合も、この漢方薬を併用するとよくなる場合があります。幅広くカバーしてくれるスグレモノです。

食生活と多汗症

多汗症は元々の体質に関連しているものが多いのですが、中には食生活によって起こるものもあります。

例えば、油濃いものや辛いものなど熱を産生するような食品を継続してたくさん摂ると体内に熱がこもり、発汗しやすくなります。漢方では<湿熱>体質と言います。

湿熱の多汗に対しては、内熱をさまし、消化を促進し、水分代謝を改善するような漢方薬の、例えば 清熱利湿作用の<茵陳蒿湯>や、和胃消痞の<半夏瀉心湯> などを用いますが、いずれにしても食生活改善が優先します。

水分代謝不良と多汗

比較的肥満で、水太り傾向の方の多汗は、いわば身体の中の水分があふれ出して汗になっていると捉えます。摂取水分量が多すぎるのか、尿がしっかり出ていないのか、いずれにしても水分をしっかり出させることが必要です。

このようなケースでは、<防己黄耆湯>がおすすめです。水肥りの方のダイエット用としてよく知られた漢方薬ですが、多汗症でもよく使います。

のぼせによる多汗症

冷えのぼせがあり、少し神経的に過敏な方では、頭や顔に発汗しやすくなります。

特に女性に多いように思われ、身体の中は冷えているのに汗をかくというのが特徴で、時には気分がイライラしたり、唇が乾燥しやすい方もあります。

このような方の場合は、中を温め、体温のバランスをとるような温裏祛寒・疎肝作用の<柴胡桂枝乾姜湯>を用います。のぼせが改善すれば汗もあわせて改善してきます。

緊張による多汗症

多汗症で多いのは緊張による発汗です。

人と話したり、電話を取ったときや、電車に乗ったときなど、ちょっとしたことでも緊張状態になり、急に発汗するタイプです。そして、その発汗が度重なると、人前で発汗しているということ自体が緊張を生み、さらに発汗を促進します。

このような方には安神作用の<柴胡加竜骨牡蠣湯>などの柴胡剤や、<甘麦大棗湯>などをよく使います。この場合も自律神経との関係がありますので、長期服用が必要になります。

多汗症は体質改善が必要

少し暖かくなって多汗症のご相談も増えてきました。しかし、外気温に関係なく年間を通して多汗でお悩みの方もたくさんおられます。

漢方では多汗の原因をその方の体質から探りだし、たくさんの種類の漢方薬から選択しますが、いずれの場合も長期にわたって体質改善をする必要があります。

また、食生活が原因で多汗の体質になっている場合は、漢方薬だけでなく、毎日の食事を改善する必要があります。多汗症の根治は、漢方でも難しい部類に入ると思います。

汗をかいて疲れる!

まだまだ暑い日が続いていますが、夏バテが始まるのは実は今頃からですね。

とにかくだるい! 食欲が出ない、なんとなくムカムカする、汗が異常にでる、発熱するなどです。疲れのために汗腺がコントロールできず、汗とともにエネルギーも抜ける状態で『気陰両虚』といいます。

55歳 女性 自営業の方、汗がダラダラでて止まらない、とにかくしんどくて・・・という相談でした。以前から漢方薬を飲まれていましたが、今回は気虚と陰虚がみられたので『麦味参』をお使いいただきました。あくる日、すごく楽になったと喜んでいただき、更に1週間分を買っていかれました。

麦味参は<麦門冬> <人参> <五味子> で構成された、夏にピッタリのお薬です。試してみては!