汗による肌トラブル

暑くなったせいか、汗による湿疹や汗疹(あせも)の相談がでてきました。あせもの場合はほとんど<モモノハ>をお勧めしていますが、赤みを帯びた丘疹の場合はモモノハで改善しないため漢方薬をお勧めしています。

28歳の女性Mさんは、以前から生理トラブルでお越しいただいていましたが、7月になってから首の周りや肘に赤い発疹が出始め、痒みも伴ってきたため相談を受けました。そこで<消風散>をお使いいただいたところ1週間で痒みも治まったのですが、薬を止めると再び発症し、再度服用していただきました。汗によるものかは明らかではありませんが、頓服のように使っていただくことで、赤みも痒みも治まるようです。

暑い間は様子を見ながら続けてもらうことになりました。

ダラダラ流れる汗

毎日暑い日が続くため、汗のご相談をたくさん受けています。

その中の一人、昔から漢方を愛用のIさん、更年期の症状やお腹の症状に加え、朝から汗がダラダラ流れるため、何度も着替えが必要で大変との相談を受けました。また、睡眠中も同様、汗によって冷えるため着替えていると睡眠不足になるとのことでした。

そこで、汗を止め、発汗による疲れを軽減するため補気薬で虚労に使う<麦味参>をお使いいただきましたところ、汗は少し減って楽になったとのことでした。体調が悪い方や、高齢の方の脱汗に適する漢方薬で、その他の方にも重宝にしていただいています。

多汗症のご相談

急に熱くなって、多汗症の相談が増えてきました。

多汗症と言っても体質遺伝によるものや、子供の頃からの症状、成人になってから酷くなったなど様々で、また精神性や温熱性、味覚性などにも分類されていますが、それぞれ経過と体質をお聞きし、対応しています。

病院で交感神経遮断術を受けられてよくなる方はよいのですが、代償性発汗で別の部位に出る方などは難しくなります。いずれも長期戦になり、お客様と同様に当店も苦労する疾患のひとつです。

脇の汗

脇の汗もワキガを生み、気になる症状です。

これも原因は様々ですが、よく見られるのが<肝胆湿熱>タイプといい、ストレスが多い、イライラ感、ためいきをつく、湿疹が出やすい、口が苦い、尿が色濃いなどの方に多いようです。この場合は尿の排出を促進して、身体の中にこもった熱を冷ますことで、汗を抑制します。

漢方薬は清熱利湿作用の<竜胆瀉肝湯>や衛気を高める<衛益顆粒>を併用する場合もあります。汗の漢方薬ではないのですが、体質改善を目的として様々な症状に使われます。

虚弱体質と多汗症

抵抗力が弱く、風邪を引きやすい、皮膚が弱いなどの体質を<表虚>と言います。

このような方は<衛気=身体表面を守る力>を強めることで、外部からの刺激に対抗する必要があります。このために使われる生薬が<黄耆>です。黄耆は体表や粘膜の元気つけをしてくれます。

体表が弱ると汗がもれて出るという考え方から、多汗には黄耆を使った漢方薬、例えば<衛益顆粒>などがおすすめです。あるいは、他のタイプの多汗症の場合も、この漢方薬を併用するとよくなる場合があります。幅広くカバーしてくれるスグレモノです。

食生活と多汗症

多汗症は元々の体質に関連しているものが多いのですが、中には食生活によって起こるものもあります。

例えば、油濃いものや辛いものなど熱を産生するような食品を継続してたくさん摂ると体内に熱がこもり、発汗しやすくなります。漢方では<湿熱>体質と言います。

湿熱の多汗に対しては、内熱をさまし、消化を促進し、水分代謝を改善するような漢方薬の、例えば 清熱利湿作用の<茵陳蒿湯>や、和胃消痞の<半夏瀉心湯> などを用いますが、いずれにしても食生活改善が優先します。

水分代謝不良と多汗

比較的肥満で、水太り傾向の方の多汗は、いわば身体の中の水分があふれ出して汗になっていると捉えます。摂取水分量が多すぎるのか、尿がしっかり出ていないのか、いずれにしても水分をしっかり出させることが必要です。

このようなケースでは、<防己黄耆湯>がおすすめです。水肥りの方のダイエット用としてよく知られた漢方薬ですが、多汗症でもよく使います。

のぼせによる多汗症

冷えのぼせがあり、少し神経的に過敏な方では、頭や顔に発汗しやすくなります。

特に女性に多いように思われ、身体の中は冷えているのに汗をかくというのが特徴で、時には気分がイライラしたり、唇が乾燥しやすい方もあります。

このような方の場合は、中を温め、体温のバランスをとるような温裏祛寒・疎肝作用の<柴胡桂枝乾姜湯>を用います。のぼせが改善すれば汗もあわせて改善してきます。

緊張による多汗症

多汗症で多いのは緊張による発汗です。

人と話したり、電話を取ったときや、電車に乗ったときなど、ちょっとしたことでも緊張状態になり、急に発汗するタイプです。そして、その発汗が度重なると、人前で発汗しているということ自体が緊張を生み、さらに発汗を促進します。

このような方には安神作用の<柴胡加竜骨牡蠣湯>などの柴胡剤や、<甘麦大棗湯>などをよく使います。この場合も自律神経との関係がありますので、長期服用が必要になります。

多汗症は体質改善が必要

少し暖かくなって多汗症のご相談も増えてきました。しかし、外気温に関係なく年間を通して多汗でお悩みの方もたくさんおられます。

漢方では多汗の原因をその方の体質から探りだし、たくさんの種類の漢方薬から選択しますが、いずれの場合も長期にわたって体質改善をする必要があります。

また、食生活が原因で多汗の体質になっている場合は、漢方薬だけでなく、毎日の食事を改善する必要があります。多汗症の根治は、漢方でも難しい部類に入ると思います。