高齢者の残尿・頻尿トラブル

以前にも頻尿の話は書いていますが、高齢者には多い疾患で比較的簡単に改善します。

73歳のYさん、頻尿で且つ残尿感があり相談に来られました。夜間もトイレの回数が多いとのことで、まずは<猪苓湯>をお使いいただき、1回の尿をすっきり出すことにしました。

1週間で効果は抜群、すっかり残尿感はなくなったのですが、夜間頻尿は改善せず、今度は<牛車腎気丸>をお使いいただきました。

2週間で夜間の頻尿は改善したのですが、再び残尿感が取れないとのこと。そこで<漢方薬G>をj常用し、漢方薬Tを1日1回頓服のように使っていただきました。

牛車腎気丸は<八味丸>の処方に加えて生薬の<牛膝>と<車前子>が増えたもので、八味丸より排尿トラブルにはすぐれた効果を発揮します。

男性の頻尿

男性では前立腺炎や前立腺肥大が原因で頻尿になる方が多いのですが、冷えやお血が原因で起こるケースがまれにあります。

52歳の男性Tさん、手足や下半身が冷えて、昼間に頻尿になるとの相談を春先に受けました。病院では膀胱炎だろうといわれて、抗生物質をもらい飲んでいましたが全く改善の傾向がなかったとのことでした。

そこで、お風呂に入ったり、動いたりして血流が良くなると少し改善するとのヒントから、活血作用の<冠元顆粒>で血流を良くし、<当帰四逆加呉茱萸生姜湯>で末梢をあたためるような処方にしました。

その後この方は来られなくて、どうだったか気になっていたのですが、3ヶ月ぶりに来店され、『あの薬はよく効いて、調子の悪い時だけ飲んでいたら今になった』と喜んでいただきました。そして最近はクーラーが効いているため再び同じ症状が出るので、来店されたようです。

これからはクーラー冷えによるトラブルの方が増えるものと思います。

高齢者の膀胱炎

高齢化によって、屋外に出ることなく、寝たきりに近い方はたくさんおられます。そしてこれらの方には、頻尿や、尿が出にくい、膀胱炎などの尿トラブルはよくあります。

82歳女性のIさん、寝たきり状態のため、尿が出にくいときは導尿をされているためか膀胱炎をよく起こし、医師からの抗生物質を継続して飲まれていました。そのため胃腸の調子も悪くなり、ご家族の方が相談に来られました。

そこで、普段は尿の出やすいようにと利尿作用の<五苓散>を、膀胱炎のときは<竜胆瀉肝湯>を使っていただきました。その後は調子よくなり、抗生物質も不要になって、おなかの調子もよくなり、継続されています。

竜胆瀉肝湯は<清熱利湿>作用があり、下半身に熱感を伴うようなトラブルに使うものですが、利尿作用だけでなく、消炎作用があり、膀胱炎にはよく効果を現します。

高齢者の頻尿

年をとるにつれ、夜間の頻尿で困る方が増えてきます。

77歳女性Kさん、2年前に膀胱下垂で手術され、それ以降に頻尿の時が多くなりました。残尿感もあり、すっきりしないとのことでしたので、定番の<牛車腎気丸>と、少し尿の出を良くしてすっきりするため<猪苓湯>を半分量で使っていただきました。

1週間で、かなり改善し、2週間目からは1日2回服用でも大丈夫なほど楽になりました。やめると心配なので、1日1回~2回程度で継続されています。

高齢者の場合は、このほか補気升提の<補中益気湯>を使うと早期に改善することもあります。

長期の膀胱炎が改善

膀胱炎は特に女性に多い疾患です。

症状は、頻尿、排尿痛、残尿感など様々で、原因も雑菌によるものや冷えにより発症するものがあります。比較的短期間で治癒しますが、長い間患っている方が漢方で改善したので報告します。

81歳女性Sさん、ほとんど寝たきりで、膀胱炎を患って検査でもいつも菌が検出され、白血球の数値も高く、炎症状態を示していました。そして抗生物質を服用されていたのですが、長期に服用していいものか心配して、ご家族の方が相談に来られました。

早速に、<竜胆瀉肝湯>をお使いいただきました。年齢的なこともあり半分の使用量でしたが、使い始めてから菌は減少していき、2ヵ月後の先日来られたときには、菌は検出されず、多かった白血球も下がり、ほぼ治癒して喜んでいただきました。ました。これで抗生物質は不要となり、胃腸の負担もなくなり、喜んでいただきました。

この漢方薬の主成分である<竜胆>には抗菌、抗炎症作用があり、湿熱タイプ(尿が黄色い、熱感がある下半身の炎症)には即効性があり、性病などにも使われる処方です。

頻尿の悩み

先日の、頻尿の話の続きですが、

https://www.kanpou.info/blog/ichizen/2005/10/post-117.html

頻尿のために睡眠不足を訴えられる方は多いです。一時の冷えによるものはすぐに改善しますが、慢性的な冷えの場合は難しいこともあります。

Wさん46才女性、昼間も尿回数は多いほうですが、夜間も3~4回で眠る間がないようでした。経脈を温め、冷えをとるポピュラーな補血・利水の<当帰芍薬散>を使っていただき、最初は良くなったのですが、しばらくするとまた不調になりました。

今度は腎陽虚とみて補腎・利水の<真武湯>を使っていただき改善しましたので、しばらくはこの2種を交互に使っていたのですが、再び不調に・・・。

そこで同じ腎陽虚を改善する漢方薬で<海馬補腎丸>に変更し、現在は順調にいっています。しかし、この冬は再びお薬を変更することになるのではと今から思案しています。

薬の慣れが出てくるのか、なかなか難しい例です。

冷えと頻尿

朝方の冷え込みが気になる季節になりました。この時期の相談は冷えや頻尿が増えます。特に年齢が高くなるにつれて冷えの影響も出やすくなります。

Kさん66才女性、9月末に来店。「1週間ほど前から頻尿になり、1時間に1回トイレへ行き寝る間もないほどで、さらにすっきり出ないため下腹部に違和感があり困っている」と相談に来られました。

冷えによる膀胱炎の様子でしたので、身体を温め、排尿の力をつける温腎利水の<牛車腎気丸と、尿をすっきり出させる<猪苓湯>を組み合わせてお使いいただきました。

結果、4日後にはすっきり治り、お薬はやめられていたのですが、今週に入って再び同じ症状が出てきました。今回は<牛車腎気丸>だけをお使いいただき、しばらく続けるようにしていただきました。

冷えによる頻尿や膀胱炎はこれから増えてきますが、中から温める漢方薬を基本とし、少し利尿作用を加えるだけで短期間に改善します。

夜間頻尿

「暑さ寒さも彼岸まで」とはよく言ったもので、本当にピッタリ涼しくなりました。

朝夕涼しくなって急に問合せが増えた症状のひとつに、夜間頻尿があります。今まで暑かったので水分をとる量も習慣的に多く、また冷たいものを飲む習慣の方も多いと思いますが、彼岸を境にして生活を変更する必要があります。

70歳女性のTさん、急に頻尿になり、夜間は1時間ごとにトイレへ行くことになったがどうなったのだろう?と心配してのお問合せがありました。少し細く体重は40kgに満たず、外気の変化をすぐに受けてしまうタイプの方です。

まずは体を温めること、冷たい水はやめて温かいお茶にすること、汗もかかなくなった分だけ飲む水分量も減らして良いこと、そして手持ちの牛車腎気丸をしばらく飲むように電話で話をさせていただきました。

この牛車腎気丸は、腹部を温め、排尿をコントロールし、1回の尿量を増やすことで頻尿を改善する作用があり、これからの時期によく使う漢方薬です。Tさんも1週間以内に落着くことと思われます。