水毒とめまい

遠方よりお越しの57才男性Tさん、7年前に回転性のめまいを起こしメニエールと診断されて以来、時折フラッとするめまいが続いていました。めまいの時は少し休むと治まりますが、長期間にわたるので相談に来られました。

体格は立派な方で、首が凝り、後頭部痛があり、めまいの時は吐き気や下痢があるとのこと。そこで水毒と考え、水分をさばく利水作用の<沢瀉湯>と後頭部の緊張をとる平肝作用の<釣藤散>を使っていただきました。

1ヵ月後、めまいは軽くなり、また頻度も少なくなりました。その後少し薬を変えながらも3ヶ月、現在順調に経過しています。水分をたくさん摂られているわけではないのですが、長い間にたまった水分が災いしているように思われます。

肩こりとめまい

肩こりの話やめまいの話は何度も書いていますが、この2つの症状ともある方は、ほとんどが血流の悪化が原因となっているようです。

54歳の女性Tさん、血圧が高く、肩こりがひどく、時々めまいがする、睡眠時にザーという耳鳴りがするなどで相談に来られました。体格は少し小太りで、この10年間に7Kgも増えて血圧も上がってきたようです。また、めまいの状態は『フーッと気が遠くなるような感じ』とのこと。

そこでめまいの原因と思われる脳血流の悪化を改善するよう、活血作用の<冠元顆粒>と、肥満の改善をはかるため<防風通聖散>を使っていただきました。

その後1週間程度で症状は改善し、2ヶ月経過した現在は全く症状が出ないとのことでした。肩こりの方のめまいは、この方のようなケースが多いようです。

水分過多によるめまい

またまた水分過多の関連ですが・・・

めまいの原因にはいくつかありますが、一番多くみられるのが頭部の水分異常によるものです。いわば頭の上に少量の水が入ったバケツをのせて頭を動かすと、水が左右に揺れるようにフラフラするのです。あるいは回転性のめまいはほとんどが水分の過多によるものです。

このとき使われる漢方薬は<苓桂朮甘湯>や<沢瀉湯>です。いずれも水分をさばく=余分な水分を減らす作用があり、これで改善するケースが多いのです。

めまいが短期に改善!

めまいの話は何度か書いていますが、先週も短期間で改善した例がありましたので紹介します。

45歳の男性Hさん、急な動き方をするとめまいを起こしそうで、ゆっくり歩いて相談に入って来られました。体格は肥満気味、水肥りで、6月頃~めまいがひどくなり、横揺れ氏、ムカムカし、耳閉感があり、頭重感があるとのことでした。

詳しく聞くと1日に3,5リットルほどの水分をとっておられ、明らかに水毒(湿困脾胃)状態でした。親が脳梗塞であったので、血液が粘るのを防ぐため多めに摂ってたとのことでした。

そこでまずは口渇をとめるために<五苓散>を使い、身体に溜まった<湿>をとるため清熱化痰作用の<温胆湯>を併用していただきました。あわせて水分摂取を極力減らすようにしていただきました。

1週間後に来店され、あれほど口が乾いていたのがなくなり、自然と水分が減り、めまいがほとんどなくなりました。すごい早い改善でしたがまだ完全ではないので暫く続けていただいています。

水毒によるめまいは、いつも早い改善が見られます。

特徴的なめまい

めまいの話は以前にも書きましたが、漢方薬はめまいに対してとても効果があります。
但しめまいのタイプや、その方の体質によって漢方薬は異なりますので、上手に使い分けることがポイントです。

65歳の男性Oさん、耳の奥に腫れ物があり、以前から中耳炎をよく起こしていました。昨年12月に回転性のめまいを発症し、病院に行って薬をもらわれましたが、10日後に再びめまいを起こし、漢方薬を求めて来られました。

発症したときの状態を聞くと、ムカムカ吐き気がし、実際に吐いたらめまいは急に治ったとのこと。これは明らかに<水滞>で、頭部の水分が多く、あふれているいる状態で、<半夏白朮天麻湯>をベースにお薬を調合し、使っていただきました。

それ以来継続されて6ヶ月経過しましたが、一度もめまいや中耳炎は起こっていません。あとは耳の奥の腫れ物がどうなっているか、近日中に頭部CT検査を受けられる予定で、小さくなっていることを期待しています。

男性のめまい

めまいの話は何度か書いていますが、女性の症例ばかりでした。

しかし、女性に限ったことでなく男性でもめまいは時々みられます。

64歳男性Oさん、以前から尿路結石で痛みが出たときに煎じ薬をお使いになっていたのですが、11月に突然回転性のめまいが起こり、耳も聞こえにくい状態になりました。

心配で病院で検査を受けたところ耳の奥に20mm以下の腫れ物があると言われました。これが原因ではないかとの診断がおりたようですが、切り取るわけにも行かず、漢方で対応をすることになりました。

この方は以前に中耳炎になったこともあり、元々「痰湿」体質であるとともに、前回めまいが起こった時に嘔吐したらすぐ治った、という特徴がありましたので、対応方法は簡単でした。

漢方薬は<半夏白朮天麻湯>をお使いいただきました。その後全くめまいは無くなり、ふらつくことも無くなって安心されました。来月に病院で再検査しCTをとることになっていますが、腫れ物も小さくなっているのではと期待しています。

高齢者のめまい

めまいの話は何度も書きましたが

その原因として圧倒的に多いのが水毒、水分代謝に係わるものです。

しかし高齢者の場合はどちらかというと痩せていて、たくさんの水分が停滞しているという事はあまりありません。このような方のめまいは血流と関係するものが多いようです。

80歳の女性Nさん、以前にめまいで通院したことがあり、以降時々フラッとする時があります。血圧も少し高いので<冠元顆粒>を飲んでおられますが、めまいを感じたときはこの漢方薬をを少し多めに飲むと落ち着くとの事。

冠元顆粒は血流をよくする薬で、これによって改善するようです。血流を良くする薬は他にもたくさんありますが、めまいで<冠元顆粒>や<桂枝茯苓丸>で良くなる例はたくさん経験しています。

ストレスとめまい

ストレスはどこにでもあるものですが、夫婦間の場合は一生持ちになります。

男性は年々細かく、うるさくなり(私もそうですが!)定年退職しようものなら、家の中にいてちょっとした事でも目に付いてしまうのです。そのため奥様は神経が疲れ、外に出ようとされます。

しかし! 外に出るとき「どこに行く?何時に帰ってくる?」など聞かれると、出るのも億劫になるようです。結局ストレスはたまる一方なのです。ご主人がゴルフにでも出てくれればラッキーなのですが、身体がしんどくなるとゴルフの回数が減るというもの。こんな悩みはよく聞かされます。

Mさん73歳女性、ご主人が会社の会長さん。といっても、ほとんど仕事は社長に任せて、本人は自宅におられることが多いため、奥様は出られず。お花の先生をされているので、その指導や展示会の時は出かけられるのですが、家にいる時間の方が長く神経疲れのためかめまい、不眠、動悸など様々な症状が現われます。

そこで精神神経症状を緩和する安神作用の<桂枝加竜骨牡蠣湯>や疎肝薬の<加味逍遥散>を使っていただき、症状は改善しますが、根本治療にはストレスがかからなくすることで、時間がかかりそうです。

めまいと水分の関係

めまいにもいろいろなタイプがあります。前にもブログで書きましたのであわせてご覧下さい。  https://www.kanpou.info/blog/ichizen/2005/07/post-52.html

その中で、水分のとりすぎが原因になっているケースもよくあります。TVや新聞で、充分水分をとりましょうと聞いて、1日3リットルも飲んでいる方がありますが、人により必要な量は異なりますので、必要に応じて飲むというのが正しい飲み方と考えます。

漢方の先生方はほとんど <水を控えなさい> と指導しておられることと思います。誤った知識が病気を生んでいると思うからです。

70歳女性、朝方にめまいがする、頭が重いことが多い、首の後ろがつまる、まぶたが腫れる、脚がむくむ、などの症状を訴えられました。聞いてみると、寝る前に血が固まらないように水をしっかり飲むとのことでした。そして夜間尿はないので、水は体にたまって、様々な症状の原因になっていると思われます。

とりあえず夜間は水を控え、寝る前はコップ1杯だけにしてもらうことにしました。1週間で良い結果が聞けるものと期待しています。また報告します。

めまい 2

めまいは比較的中高年の女性に多くみられ、当店に相談に来られる方の9割が女性です。

73歳女性、忙しかったり、疲れたときにめまいが起こり、漢方薬を飲むと1日でほぼ治まる状況でした。真武湯や半夏白朮天麻湯などを使ってきましたが、どうもスッキリ、スカッときかないということで、薬を <加味逍遥散> に変更したところ、治りが今までになく早くなったとの事。

そういえばこの方は、ご主人に係わるストレスが多く、イライラを伴なっていたので、疏肝剤が適しているのは当然のことでした。

ついつい過去に実績のある漢方処方を使いがちですが、その方の状況にあわせて処方するという漢方の基本に立ち返ることの大切さを教えられました。なお、めまいに使う処方は20処方以上ありますので、よ~く相談されることが必要です。