寝汗の漢方

寝汗の中医学的な原因もはくつかありますので整理してみました。大きく分けて

・体力がない高齢者や病後の方・・・気虚タイプ

・比較的体力があり、水分をよくとり胃腸が弱い方・・・痰湿タイプ

・そして発熱を伴う病気の初期

などです。長期間続くのはこのうちの1、のタイプです。

心身の疲労がひどい場合、不眠や動悸などとともに現れます。こんなときには滋陰・安神作用のものを使います。

また、体力がなく、身体が乾燥し、手足がほてるなどの方の場合は補気・補陰作用の<麦味参>を使います。これらの処方には気を補う<人参や、無駄な汗をとめる<五味子>などが含まれて、効果を発揮します。

いずれも体質により漢方薬は異なります。

寝汗の改善に漢方

慢性の疾患を患っている方や病院に入院している方で、寝汗がひどく夜中に肌着を着替えないといけないくらい出るという相談があります。

医師に相談し検査を受けても何も問題ないので、少し暑いのでしょうと言われるだけで、点滴を受けるというだけの方があります。

症状は、倦怠感があり、口が渇き、手足のひらがほてりなどを感じることが多く、漢方ではこのような状態を<気陰両虚>といいます。原因は体力の低下で、汗腺がうまくコントロールされないためと考えます。

79歳Yさん男性、現役で会社に勤めておられ、少し血圧が高いとか、皮膚掻痒症があるとかのトラブルはあるものの牛黄製剤の<清心丸>を継続して使っていただき、元気に過ごしておられます。

最近睡眠中に汗をかくことが多く、夜間に2回肌着を代えるので大変とのこと。これは年齢から考えても「気陰両虚」があり、無駄な汗をとめる<五味子>と、潤いを補充する<麦門冬>の含まれる、補気・補陰作用の<麦味参>を使っていただきました。

このような例はたくさんあり、短期間に汗が改善されるケースがあります。西洋医学では考えられない、生薬の作用のすばらしさを改めて感じています。

慢性病による寝汗

大病の後や慢性病の時に生じる寝汗は盗汗ともいいます。

極度に体力を消耗し、痩せてきて、体液が減少し、体内の熱を冷ませないために汗が出る症状で、汗によって再び体液が失われ、体力低下を招くという悪循環におちいります。また微熱が続くのも特徴です。

漢方では、体液が減少している意味の<陰虚>とか、体力・氣力が低下している意味の<気虚>などと表現します。

73歳の男性Sさん、ガンで抗がん剤治療を受け、体調も悪く入院されていました。入院中から寝汗が出始め、医師に相談されたのですが、特に異常はなくガンによるものだから仕方ないとのこと。しかし微熱は続き、身体はだるく、痩せてきて、貧血傾向もあるので、ご家族の方が相談に来られました。

これは明らかに<気陰両虚>の症状ですので、体力を付ける牛黄製剤と、補気・補陰の<麦味参>を合わせて使っていただきました。以前にも同様の相談があり、1週間ですっかり良くなったという経験がありますので、前回と同じ処方を使いました。

西洋医学では寝汗は病気にはならないようですが、漢方では昔から対応する処方があるのです。