「自律神経失調症の症状と漢方薬」
自律神経失調症とは、交感神経と副交感神経のバランスが崩れたために、全身倦怠感、めまい、動悸、頭痛、頭重、情緒不安定、イライラ、抑うつ気分などの不定愁訴がでてきた状態です。西洋医学では、原因として自律神経の興奮、脳の疲労、ストレス、更年期などのホルモンバランスの乱れ等があげられています。治療薬としては抗不安薬やホルモン剤等が使われるとのこと。
自律神経失調症の中医学的対処法
漢方では、現れている症状を手がかりとして改善していくとともに、全人的な、心身はひとつとして治療します。主に「気」の流れを改善する、柴胡が含まれた処方を用います。
自律神経失調症の漢方処方例
柴胡加竜骨牡蠣湯 加味逍遙散 抑肝散加陳皮半夏 帰脾湯
※体質により漢方薬は異なりますので、ご相談ください。
自律神経失調症のケーススタディ
心身のバランス調整
ゴールデンウィークが近づいてきました。4月から大学生や社会人になり緊張状態が続いていたのが、連休になっていっぺんに緩んでしまい、連休明けの登校や出社がスムーズにいかなくなる、いわゆる「五月病」があります。新しい環境に順応できず、心身の疲労と軽い鬱状態を訴えるのです。最近では大学生ばかりでなく、四十代や六十代の男性にも多く見られるようになりました。
五月病は心身症領域の疾患ですが、漢方では陰陽のバランスのくずれと捉えます。陰(副交感神経)と陽(交感神経)がバランスを失った状態です。気(機能)と血(物資)の失調状態を改善することで、人間の本来備わっている心身のバランス調整機能を取り戻すことが大切です。
また春は肝の機能が亢進しやすく、そこにストレスが加わるとイライラしたり、気がふさぎ、胸や脇腹が張って苦しいと訴えます。これを「肝鬱気滞」と呼び、気が滞っている状態と捉えます。肝機能を整え、気の巡りを良くする事が大切です。
昨年春のこと、大学を卒業して一流企業に入社したY君。緊張しながらも一ヶ月経ち無事研修期間も終え、これからという連休明けのことです。体がだるくてやる気が起きず、気分が憂鬱と来店されました。「肝気鬱滞」の状態でした。「竜胆瀉肝湯」という薬を飲んでもらうと気分も良くなり、出社しようという気が起こってきました。あれから一年、すっかり企業マンになっています。
更年期の自律神経失調
自律神経失調症の方は様々な症状を訴えられますが、大変わかりにくいときがあります。このような時は舌の状態や目の色など、外見からわかることを参考に判断します。
64歳女性Ⅰさん、5年まえから家庭環境に変化があり、忙しくて精神的な疲れがひどくなり、そのころから調子が悪くなり始めました。
少し考え事をすると頭に血が昇り、それに伴いめまいがして、なんとなくフラフラするし、酷いとムカムカしたり、動悸が起きたりします。見た目は元気なので、周囲の方は『お元気でよろしいいですね』と言われるのがとても辛いとのこと。確かに、最初来店された時も、舌や外見は全く異常ないので私も気が付かなかったことを思い出しました。人は見た目だけではわからない悩みを持っておられるものなのです。
そこで、中医学で言う肝気の上衝とみて、疏肝剤や安神剤をお使いいただきましたが改善せず、動悸だけは<救心感應丸気>で楽になったとのことでした。元々が更年期症状と係わる事でもありましたので<女神散>を加え、様子を見ています。
何年来のトラブルで、短期に改善するとは思われませんが、ひとつの症状でも良くなると、他の症状も一気に良くなるもので、はやく改善することを願っています。
梅雨時期の不快症状
自律神経失調症の方は様々な症状を訴えられますが、大変わかりにくいときがあります。このような時梅雨のジメジメで不快指数も上がり体がだるい、気分が沈む、節々が痛むといった声もよく聞かれるようになりました。
梅雨の時期は日照時間が少ないために気分が落ち込みがちになりますが、雨ややる気が出ないことも重なり、体を動かす機会が減ってしまいます。そのために体がだるくなりやすいですね。日照時間の少ない北欧の地域では、鬱人口がとても多いそうです。日光のありがたさを痛感します。中国医学では、梅雨時期を「長夏」と呼び、脾(消化器)を病むといわれています。
また、湿度が高いと自律神経のバランスが乱れ、食欲不振、むくみや下痢、痛みを感じやすくなります。
晶三仙漢方ではこの時期、胃腸機能を助ける麦芽・山査子が入った「晶三仙」を、下痢には清涼感のあるカッコウが入った「勝湿顆粒」、むくみには沢瀉や茯苓の入った「当帰芍薬散」、痛みにはハトムギの入った「麻杏ヨク甘湯」などがオススメです。
※その他にもたくさんのケーススタディがありますので、ブログ内で検索してみてください。