「うつ病の症状と漢方薬」
うつ病は、抑うつ状態が続き、精神的な症状と、身体的な症状を現すものです。気がふさぐ、イライラするなどのほか、倦怠感、胃腸症状など、不定愁訴を訴えます。現代医学では、脳内伝達物質、特にセロトニンに注目し、治療薬も開発されています。しかし、うつ病治療薬の中には思うように効果が実感できなかったり、逆に副作用に悩まされたりと、課題も多いようです。
うつ病の中医学的対処法
漢方では体質を虚実に分け、主に気滞と気虚で捉えます。気分がふさぐタイプは気のめぐりを良くしてイライラをとるような漢方薬を用います。体力がなく、気力が低下する気虚タイプでは気のめぐりを整えつつ元気を増す漢方薬を用います。
うつ病の漢方処方例
半夏厚朴湯 甘麦大棗湯 加味逍遙散 帰脾錠 参馬補腎丸
※体質により漢方薬は異なりますので、ご相談ください。
うつ病のケーススタディ
不安定な若者が増えています
同じ時期に、同じような疾患で相談を受けることがよくあります。
先日、店頭とメールでお受けしたご相談は、息子さんの生活と精神的な不安定に冠するものでした。一人は専門学校に通う息子が、家にいて学校も行かないし、昼夜逆転の生活で、イライラしたり、うつ気味だとのこと。もう一人は高校二年の息子さん、元々が神経質な性格なのですが、今では気に入らないことがあるとヒステリーみたいに頭を壁にぶつけたり、一日中寝ていたりするとのこと。
友達関係がうまくいかないとか、人とのコミニュケーションもうまくとれない、目標がさだまらないとか・・・。しかし年齢的にはじっくり考える年代ですし、あせることもないと思うのですが、競争社会という現実があり、親は不安がいっぱいなのです。
こんなとき漢方でできることは、イライラが強くて攻撃的な場合は<抑肝散>や、ヒステリックな状態には<甘麦大棗湯>などを使います。また不安感があるときにはハーブティの<シベリア人参茶>も人気があります。いずれにしても本人の成長や夢を育てられるか等の問題で、時間をかけて解決されるものと思います。
躁病とうつ病
躁うつ病は双極性障害といわれ、うつの状態と躁の状態が入れ替わりで出現するようです。そして春先は躁病がでやすく、秋や冬はうつ病になりやすいとも言われ、中医学でいう「陰と陽」の関係がここにも現れるのです。春夏は陽で、秋冬は陰が満ちる、この変化を表したのが「太極図」です。
さて、躁病になると、休みなく話す、大きな声、怒りっぽい、気が短くなる、異常に買い物をする、ギャンブルに走る、などですが、通常の行動とも見分けがつきにくいようです。病的な場合は精神科医の判断が必要です。
48歳女性、通常はしっかりした仕事をされる事務員さんですが、時々躁病になり、前述のような、大声、長電話、異常な買い物などが起こります。周囲の方が見ておられてすぐに気づくようで、早速漢方薬を使っていただいています。
交感神経の興奮を抑制する<抑肝散>や 鎮静作用のある<牛黄製剤> などを基本にし状況によって調整し治まっていきます。しかしうつ病の方は、薬自体が躁病の原因になることもあり、薬が症状を生み、その症状改善のために薬を飲むという悪循環に陥り、難しいものです。
五月病
春は入学・入社・転勤等、移動の多い時期ですので新しい環境に馴染めず、不安感や焦燥感、イライラが増したりするいわゆる「五月病」が流行りますね。上手く乗り切れないと鬱などの病的な症状に悪化することもありますので早めの対策が必要です。
ストレスは肉体にまで大きなダメージを与えることがあり、特に胃腸は影響を受けやすく、食欲不振、胃もたれ、胃痛、便秘・下痢などの症状を起こしがちです。ストレスを受けると脳が酷使され、多くの血液を消費することになります。そうすると他の器官をまかなう分が不足し多くの不調が発生するのです。
星火逍遥丸そこでストレス性の胃腸障害には直接消化吸収を助けたり痛みを和らげる漢方薬を用います。胃腸の不調には「開気丸」「逍遥散」「四逆散」がおすすめです。逍遥散は精神の安定に、ストレス性の胃痛には四逆散を、胃腸の膨満感には開気丸がよく使われます。また、春は肝の機能が亢進しやすくそこにストレスが加わるとイライラや不眠を助長したりしますが、そんな時は手軽に飲みやすい「シベリア人参茶」をおすすめしています。
※その他にもたくさんのケーススタディがありますので、ブログ内で検索してみてください。