「耳鳴りの症状と漢方薬」
耳鳴りとは、周囲の音とは無関係に耳の中や頭の中で様々な音が聞こえるように感じる状態をいいます。
耳鳴りは難聴を伴うことが多く、耳以外の障害(貧血、高血圧、動脈硬化、頭部のけが)によっても起こり、あるいはストレスなどにも影響を受けます。
耳鳴りの中医学的対処法
漢方では「耳は腎に通ず」といい、腎の働き=内分泌系、免疫系、泌尿器系、生殖系、を含む生命エネルギーを強化することが基本ですが、他にも脳血管、血圧、精神神経疾患などから起きるケースにもそれぞれ対応する漢方薬があります。
まずは耳鳴りの発症経過や体質を捉えて、その原因を推察することや、耳鳴りの音から推察することもあります。
キーンという高い音 | 高齢化による<腎虚>が原因の場合 ストレスなどにより自律神経が 影響を受けて<気滞>となった場合 |
補腎剤で腎の機能を高める ・八味丸など 疎肝剤で気の巡りを改善する ・天王補心丹など |
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ジーという蝉の音 | 高齢者に多く、 夜静かになると気になるのは、 主に老化現象による<腎虚>と 考えます。 |
補腎剤で腎の機能を高める ・耳鳴丸、滋腎通耳湯など |
ゴーとかザーという大きな音 | ストレスなどが強くかかった時に急に発症する | ストレスを緩和する、発散させるもの ・竜胆瀉肝湯など |
ウオーンとかブーンという モーター音 |
ストレスなどで水分代謝が低下した場合や不安感を伴う場合 | 水分代謝や血流を良くするもの ・温胆湯、柴胡加竜骨牡蛎湯など |
のぼせ、めまい、 肩こり、高血圧傾向の方 脳血管障害を起こした方 |
脳血管の緊張や、脳血流の悪化による | 釣藤散 などで脳血管の状態をよくする |
耳鳴りの漢方処方例
八味丸 天王補心丹 耳鳴丸 滋腎通耳湯 竜胆瀉肝湯 温胆湯
※体質により漢方薬は異なりますので、ご相談ください。
耳鳴りのケーススタディ
五臓の働きと五官の繋がり
耳鳴りで困っている人は意外に多いようです。65歳のYさん「毎日ジージーとセミの鳴く声がして風流なことです」と冗談まじりで長年の悩みを訴えていましたが、半年間の鍼灸と漢方薬の併用で不快な音と別れを告げました。
耳鳴りは難聴を伴うことが多く、現代医学では原因と病態が不明で、根本的な治療方法も確立されていません。
漢方医学では五臓の働きと五官(目耳鼻舌口)は一定のつながりがあるとされ、『耳は腎』と関係しています。漢方で『腎』とは、現代医学の腎臓の働き以外に、内分泌(ホルモン)系、免疫系、泌尿生殖器系と、脳の働きをも含めた幅広い生理機能を意味しています。古典に「腎は耳に通じる」「腎が健康なら五音を聞き分けることができる」と記されています。正常な状態では腎の精(エネルギー)が髄を生じ、それが脳に集まって耳を養うと考えられています。しかし病気や老化によって腎精(エネルギー)が不足すると、脳が空虚になり耳鳴りが引き起こされると言います。
治療としては、原因となっている腎精を補うことが基本となります。腎を強める補腎薬(例えば六味丸など)や、場合によっては頭部の興奮を鎮める薬などを用います。
また、鍼灸のツボを利用して、肝腎かなめ(肝と腎の機能)を補い、耳周囲の気と血の流れを良くする治療方法もあります。あきらめずに気長に取り組むことをお勧めします。
耳目聡明
50歳のA子さん、更年期も重なり、気分は落ち込み、絶えずキーンという金属音の耳鳴りに悩まされて来店されました。年令的にもホルモン失調があり、「逍遥丸」を服用されて2ヶ月で耳鳴りから開放されました。
耳鳴りに悩む方は多く、厚生労働省の調査によると百人に2人が耳鳴りに悩み、年々増え続けているといいます。この耳鳴り、西洋医学ではヒポクラテスの時代から研究されていながら、原因も決定的な治療法もありません。
耳鳴りは難聴を伴うことが多く、耳鳴りの特徴によって分類されています。音が大きく、汽笛のような音なら急性、閉塞感を伴う耳鳴りは外耳道疾患、音が小さいなら慢性中耳炎にみられやすいです。メニエール病に伴う耳鳴りは、めまいの発作前に現れやすいです。老化に伴う耳鳴りは一般に遠くで蝉が鳴いているような音で、夜間になると自覚されやすいので不眠の原因になります。いずれにせよ治療法が確立されていないので、漢方薬を試してみようと来店されるのです。
漢方では、耳は頭部にあり全身の陽気が集まるところです。充分に『気血がめぐる』と聴覚はよく機能を果たすとしています。また高齢化に伴う内臓機能の変化、またストレスも大きく影響します。
漢方薬は耳鳴りの状態により様々ですが、「耳鳴丸」や「柴胡剤」などはよく奏効し、鍼灸治療との併用もお勧めです。 昔から耳がよく聞こえ、目がよく見えることを『耳目聡明』」といいますが、老いても『耳目聡明』でいたいものです。
※その他にもたくさんのケーススタディがありますので、ブログ内で検索してみてください。