「慢性鼻炎の症状と漢方薬」
慢性鼻炎は、鼻粘膜が炎症を起こし、長い経過を経て腫れた状態が続いているもので、概して慢性副鼻腔炎を伴います。鼻内では鼻甲介の著しい肥厚を特徴としているため、強い鼻閉感、頭痛、臭覚障害などがあります。症状が悪化すると手術で肥厚した粘膜を切除します。
慢性鼻炎の中医学的対処法
漢方では局所の鼻だけでなく、症状を生む体質をとらえて、粘膜の炎症を抑えるものや鼻腔の気の流れを良くするもの、体質を改善するものをあわせて処方します。
慢性鼻炎のケーススタディ
肺は鼻に開窮する
鼻の病気で多いのは、アレルギー性鼻炎と副鼻腔炎(蓄膿症)です。ウイルスや細菌感染が原因で、副鼻腔粘膜が充血、腫脹し、慢性化しやすいので厄介です。症状としては鼻漏、後鼻漏、鼻つまり、嗅覚障害、頭痛、頭重感などが見られます。また、後鼻漏が咽頭、気管へ影響し、二次的に炎症を引き起こす事もあります。
現代医学での治療は、抗生物質や消炎酵素剤、点鼻薬、洗浄などがあり、さらに慢性で鼻茸がある場合は手術療法がありますが、いずれも根治には至っていません。
東洋医学では、鼻の病気は、鼻だけの異常とは捕らえず、体全体のバランスの異常として捕らえています。鼻は気道の一部であり、五臓の肺と密接な関係があります。「肺は鼻に開窮する」と言われ、肺の機能異常が鼻つまり、嗅覚異常、鼻漏などの症状として現れます。また、肺は大腸や脾胃とも密接な関係があります。従って副鼻腔炎を治療するには、肺や胃腸の状態を把握し、体全体のバランスを整える事が大切です。中国の古い書物「黄帝内経」には、副鼻腔炎(蓄膿症)のことが「鼻淵」と書かれています。淵とは深いよどみを指し、濁った鼻汁が多量に溜まる病気を指しています。
代表的な漢方薬には、辛夷清肺湯や鼻淵丸があります。辛夷(こぶしの蕾)や金銀花、菊花などは香りが強く、鼻腔の通りをよくし、膿汁を排泄して鼻粘膜の炎症を改善してくれます。 春先の辛いアレルギー性鼻炎(花粉症)の諸症状や、副鼻腔炎の悩みを解消して、春を楽しみたいものです。
鼻炎と鼻閉
この時期になると鼻炎や鼻閉の方が増えてきます。夏の間は比較的調子がよく、秋になると乾燥や冷えで症状が悪化するケースが多いように思います。
11歳のMくん、3年前にアレルギー性鼻炎を発症しました。花粉の時期だけでなく、1年間通して鼻汁や鼻閉があります。そして、夏の間は比較的症状が軽く、冬になるとひどくなるとのこと。
身体の冷えがあるため、水分代謝が悪くなっているのではと考え、<白朮>や<黄耆>が含まれる<衛益顆粒>などと、つまった鼻を通じさせる<鼻淵丸>を使っていただきました。長い間の症状ですので、即効性は難しいですが改善するものと思われます。
さらに、今まで冷たいものをよく飲んでいたとのことで、今日からお茶は常温か、温かいものを飲み、食べ物も生野菜より熱を通したものを食べるように、お母さんに言いました。子供の間はどうしても冷たいものが増えますが、アレルギーの方は冷やすことは厳禁です。とにかく温めることを理解していただきました。
子供の慢性鼻炎
子供の慢性鼻炎はよくあり、水分を取りすぎて鼻粘膜が肥厚している場合や、少し神経が過敏でデリケートな子供さんなどに多いようです。今日はうれしい症例をひとつ。
11歳の男の子Mくん、元々アトピー体質があり、3年前の小学校2年の頃から鼻炎の症状が出てきました。鼻つまりは年々強くなり、最近では口を開けっ放しで息をするため、習慣的に口を開けていることが多くなってきました。夏の間は比較的良好なのですが、寒くなると粘った鼻汁が出て、鼻閉も強くなってきました。但し、寝ているときは鼻は通じているとのことでした。他店で煎じ薬を半年間もらって飲ませたが、あまり改善せず来店されました。
とても長い経過をたどっていますので改善に時間がかかるかなと思いつつ、まずは鼻を通じさせる<鼻淵丸>と、寒い時期に悪くなるというので<葛根湯加川きゅう辛夷>を使っていただきました。この処方は、清熱解毒といい、清して炎症をとる作用と、温める作用の相反するものを使っているのですが、それぞれが打ち消しあうことなく、作用するようです。
結果、1週間で改善傾向がみられ、2週間でほとんど鼻が通じている状態になりました。その後は多少変化があるものの順調で、継続して使っていただいています。
すべてがこれほど短期間でよくなるものではありませんが、体質と薬がピタッと当てはまるときは、漢方も短期間で効果を見られるもので、この症例はうれしい報告でした。
※その他にもたくさんのケーススタディがありますので、ブログ内で検索してみてください。