「痔の症状と漢方薬」
痔の中医学的考え方
痔は、肛門や直腸の粘膜にある静脈が膨らみ、出血したり、炎症を起こしたりしたものです。内痔核、外痔核、裂肛、脱肛などがありますが、いずれも肛門部のうっ血が主な原因です。
漢方では、便通の改善、血流を良くしてうっ血を改善する、炎症をとる処方を使います。また、内臓下垂が影響する場合は、その改善もあわせるなど、タイプによって多くの処方があります。さらに外用の軟膏や、座薬もあり、痛みのひどいときは座薬が良く効きます。
痔の漢方処方例
槐角丸 大黄牡丹皮湯 乙字湯 紫雲膏
※体質により漢方薬は異なりますので、ご相談ください。
痔のケーススタディ
相談しにくい辛い症状
だれでも一度は経験する痔。人には言えず、病院にも行きづらく、一人悩むことが多いものです。 K子さん35歳は出産後脱肛になり、その後寒くなると出血と痛みで苦しむそうです。Y氏52歳は30代から痔で、ストレスや過労で症状が悪化し、いくら座薬を使っても治らず悩んでいます。
痔の原因は肛門部の血行障害により、一種の静脈瘤となっている状態で、漢方では「お血の疾患」です。症状により以下のように分類されます。
(1)痔核・・外痔核と内痔核に分けられ、排便時の疼痛と出血が主です。 (2)脱肛・・慢性化しやすく、患部が炎症を起こす場合もあります (3)痔瘻・・化膿菌の感染が多く、激痛や排膿が激しかったり、痛みもなく慢性に経過することもあります。漢方では、炎症による痛みがあるときは、熱をさまし血行を良くする大黄や黄連などが含まれている「槐角丸」などがよく効きます。出血があれば、止血効果のある艾葉や阿膠のはいった「きゅう帰膠艾湯」が宜しいです。脱肛であれば、昇堤薬として有名な「補中益気湯」で下垂した脱肛を持ち上げます。便秘を伴う痔疾患には「乙字湯」もよく使われています。症状が重なるときは、組み合わせて用いると効果を早めます。
食べ物では辛いもの(トウガラシ、わさび、コショウ)を避け、アルコール、タバコや油濃い物や、肉類の過食は禁物です。また、外用には「紫雲膏軟膏」が痛みを鎮めますので是非併用したいです。 いずれも放置せず、早く手当てをすることが大事です。
秋の病
九月に入り秋風が吹き始めると、夏の疲れとともにいろいろな病気が出てきます。東洋医学では秋は「肺と大腸」系の病が出ると言い、痔もその一つです。
痔は人間にだけ起きる病気だと言われています。その理由は、二本足で立ったために肛門の周りが圧迫され血行障害を起こし、一種の静脈瘤となるためで、特にお血タイプの便秘症の人がなりやすいです。
痔には内痔核、外痔核、痔瘻、裂肛、脱肛などがあります。肛門の周りを取り囲む静脈は、お腹を通り肝臓に入る血管であるために肝臓の影響を強く受けます。例えばストレスや飲酒で肝臓に負担がかかると肝臓内で血行が止められ肛門の周りのうっ血がひどくなります。痔の治療は肝臓の働きを高めながら、根本原因となっている血行障害を改善することになります。
漢方薬としては「槐角丸」や「乙字湯」がよく使われます。便通を良くし、増血と血行改善をし、痛みと炎症を抑え、肝臓の働きを高め、内臓の下垂(脱肛)を防ぐ働きがあります。
注意する食べ物は、辛いもの(トウガラシ、わさび、カレー等)を避け、タバコ、酒、肉類の過食も厳禁です。外用薬としては「紫雲膏」が良く効きます。また、灸を百会穴(頭の中央、耳から真上で両手を結ぶ線と交差するところ)にすると良いです。いろいろ方法がありますが、いずれも早く手当てすることが大切です。
※その他にもたくさんのケーススタディがありますので、ブログ内で検索してみてください。